更新してないにも関わらず伸びが止まってなくてありがたい限りです。誤字報告も毎回助かっております。ありがとうございます。
打倒エイリア学園の旅に出てから1日。俺達はエイリア学園の襲撃と財前総理の誘拐が起こった奈良シカ公園へとやってきた。何か手掛かりが掴めるかもしれないという狙いだったが、当の現地は警察の捜査によって立ち入り禁止。監督が掛け合っているものの成果は見込めなさそうだ。
「ったく、ここまで来て門前払いかよ?」
「……俺、お巡りさんに頼んでくる!」
「おい守!……ったく、仕方ない」
キャラバン内には不穏な空気が流れ始めていた。わざわざ遠い奈良までやってきて、結局何も出来ませんでしたなんてことになろうとしているのだから無理もない。
そんな状況に痺れを切らしたのか守がキャラバンを飛び出していく。監督には待機しているように言われてたってのに、仕方ないヤツだ。アイツ1人行かせたら話が拗れそうだから俺も着いていくことにする。
守はいち早く監督と話をしている警官の元へたどり着く。それと同じくらいのタイミングで、1人の警官が無線機を手に取った。話の内容までは聞き取れなかったが、意外な内容であったということがその表情や声色から伺える。
「一体何が?」
「よく分からないけど中に入っていいそうよ。皆を呼んできてもらえる?」
本当によく分からないが急に敷地内のへの立ち入りが許可されたそうだ。俺達にとってはまたとないチャンスであることに変わりないため、遠慮なく好意に甘えることにする。
1度キャラバンに戻り、皆に中に入れる旨を伝える。ずっとキャラバンに揺られていたこともあってか皆嬉々として外へ出てきた。
そのまま監督を先頭に俺達は公園の中に進んでいくのだが、突如夏未の携帯が鳴った。
「パ……理事長?どうしました?」
電話の相手は理事長らしい。夏未の立場ゆえに気軽に父親扱いできないもどかしさを他所に電話の内容を盗み聞きすると、俺達が公園内に入れるようになったのは理事長の働きかけがあったからということが分かった。あの人、顔が広すぎはしないだろうか。
公園はかなりの広さであるため、手分けしてエイリア学園の手掛かりになりそうなものを探すことにした。
見渡してみると、公園のシンボルであるシカの石像や、ここを訪れる人のために整備されていた橋などが破壊されているのが目に入る。校舎を破壊するような連中だ、この行為に微塵も躊躇いなどないだろう。
水辺にやって来ると、1人の男が静かに水面を眺めていた。
「修也、なにか見つかったか?」
「柊弥か。めぼしいものはないな」
残されているのはヤツらの破壊の痕跡くらいなのだろうか。かれこれ30分は捜しているが何も見つからない。
「俺はあっちを探してみる」
共有できる情報もなさそうなので、まだ見ていない場所に行ってみよう。
「柊弥」
その場を後にしようとすると、突如修也から呼び止められる。いつになく神妙な顔付きだ。何やらただならぬ雰囲気を感じる。
「もし、俺がこのチームを離れるって言ったらどうする?」
「何だよ急に。そんなこと起こるわけ──」
「いいから、答えてくれ」
真剣な眼差しに気圧される。
修也がいなくなったら、か。そんなこと考えたこともなかった。いや、考えようともしなかった。それだけ俺にとって修也はいて当然のような存在だったからだ。
かつて俺が迷っていた時に目を覚まさせてくれたのも、支えてくれたのは修也だ。もちろん、守や春奈も背中を支えてくれたが、誰が1番と聞かれたら修也だろう。
そんな修也がこのチームから、俺の目の前からいなくなったら?俺はどうするんだろう。考えたくもない。
けどもし。本当に離れ離れになるとしたら──
「いつまでも待ってる。絶対帰ってくるって信じてな」
「……そうか」
そう返すと、修也は薄く笑ってまた俺に背中を向ける。
「引き止めて悪かったな。忘れてくれ」
「気にすんな」
これ以上話はないようなので俺は次の目的地へと向かった。何で急にあんなことを聞いてきたんだろうか?修也に限ってまさかとは思うが、宇宙人との戦いを前にして不安になったとかだろうか。
大人びている修也とて俺達と同じ中学生。心が揺らぐのも皆同じということだろうか。
それにしても修也がいなくなったら、か。口ではああ言ったが──
「それはお断りしたいな」
これ以上、仲間が欠けるところは見たくない。
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あれからまた手掛かりになりそうなものを捜していたが、一向に何も見つからない。まあ今更ではあるが、手掛かりって例えば何なんだという話ではある。
「だ──、─────ない!」
「……守?」
どうしたものかとベンチに腰掛けていると、どこか遠くから途切れ途切れであるが声が聞こえてくる。間違いない、守の声だ。
一体何があったのだろうか。まさかとは思うが、宇宙人がやってきたりでもしたのだろうか。
万が一ということがある、声の方向に向かってみよう。
「おい、何があった?」
「加賀美君、それが……」
秋曰く、何やら目の前にいる黒服の大人達が急に俺達を宇宙人と言い張ってきたそうだ。その理由は守の足元に転がる黒いサッカーボール。あれは、エイリア学園が使っていたボールだ。あれでのシュートをモロに受けたから嫌でも分かる。撃ち込まれたあたりの古傷が疼くのを感じる。
そして守は俺達は宇宙人ではないと証明する、と躍起になっているそう。それに対してあちら側が証明手段として提示してきたのは……なんとサッカーだと言う。
サッカーがなんの証明になるのだろうか。俺達は仮にもフットボールフロンティア優勝校、映像のひとつでも見せれば納得してもらえたのではないだろうか。
なんて考えていると、守より早く瞳子監督がその話を受けた。俺達が戦うのは宇宙人。なら、大人のチームとて軽く勝たなければ困るという。
まあ、監督からすると俺達の力を直接見れるいいチャンスなのかもしれない。決まった以上は全力でやろう。
「しかし、大人のチームを率いるのは中学生の女子か。よく分からないな」
「いいじゃないか!それだけサッカーが大好きって証拠さ!」
守の言う通りだな。相手して立ちはだかる以上全力で戦おう。
「それより加賀美……本当に身体は大丈夫なのか?」
「問題ねえよ。皆こそ大丈夫だろうな?ジェミニストームにこっぴどくやられたのは皆一緒だからな」
視線を1周させると全員頷きで返してくる。が、もしかすると無理をしているヤツがいるかもしれない。手遅れになる前に対処出来るよう俺が目を光らせておかなければ。
「で、鬼道。作戦は?」
「そうだな……」
鬼道は顎に手を添えて考え込む。
本来監督が大筋を考えるのであって、鬼道の仕事はあくまでゲームの中での指示、調整だ。
なぜ瞳子監督がそれをしないのかというと……まあ、単に文字通り俺達だけでどこまでやれるかを見るためとかそんなんだろう。
「攻めよう。風丸や土門も積極的に前線に参加してくれ」
「なるほどな。相手はフィジカルの面で俺達より上。なら引き気味に立ち回るより先に崩した方が良いってことか」
「ああ」
作戦は決まった。守備は壁山に栗松、守に任せて残りは全員で前線を支配しに行く。
マークに着く際も基本は複数。その隙を見計らって俺達FW陣で点数をもぎ取るというのが今回の勝ち方だ。
恐らくこの作戦において中核となるのは、一瞬の隙を得点に繋げることに1番強いスピード重視の俺だ。気合い入れていかねば。
「よーし皆!勝とうぜ!」
守の発破を受けて全員ポジションへと散らばっていく。
反対側に構える相手……SPフィクサーズは流石と言うべきかやはりと言うべきか。大人相応の圧力を放っているし、あのキャプテンも負けてない。
気の抜けない勝負だ。だが宇宙人共を倒すんだからこんなところで躓いてはいられない。
「さあ!雷門中とSPフィクサーズの実況をお送りしますのは私、角間でございます!!」
「角間?どっから来たんだ……?」
「俺たちの後ろから自転車で来たらしいぞ」
どこからともなく現れた角間。なんでここにいるのか疑問に思うと近くにいた染岡が苦笑いしながらそう答えた。
ここ奈良だぞ?東京から出発したのにその後ろをチャリで着いてくるって相当なフィジカルモンスターじゃないか?
もしかしたらあいつにサッカーやらせたら化けるかな……なんて考えは捨ておき、目の前に意識を戻した。
その直後にホイッスルが鳴り響き、バックパスで染岡から俺にボールが渡る。
「来るぞ!ボディシールドだ!」
とんでもない身体つきの男が俺の前に立ちはだかった。
その後ろに違う2人が続き、背中を支える形でパワーを注ぐとそれが前へと伝導していき、最終的に最前列の男へと伝わった。
「負けるかよッ!!」
「ふんッ!!」
その強大さはまるで要塞。それに対して俺は真正面からぶつかりに行った。
衝突の瞬間、俺が感じたのは人ではなく大きな壁に身体を寄せに行った時のような感覚だった。
ビクともしない。確かに俺自身パワー型では無いが、スピードに比例する形で力は増幅するはず。
それにも関わらず、この男は文字通りビクともしない。
「くッ!」
そしてついに押し負けたのは俺だった。
衝撃波のように放たれたエネルギーに弾き飛ばされ、転ぶことなく着地するがボールは相手に渡ってしまった。
「鬼道!」
「ああ!」
鬼道に声を掛けると、分かっていると言わんばかりの頷きが返ってくる。
俺が伝えたかったのはあれを正面突破は不可能だということ。まあ、そうするまでもなくアイツは分かっていそうだったが。
転がっていくボールは相手に確保された。
1つ言わせて欲しい。相手が着てるのがスーツなせいで背番号による識別が出来ないのが面倒すぎる。
FFと違って選手データがないから名前でも呼べないのが歯痒いったらありゃしない。
そんな文句はさておき。相手のパス回しに割り込んだ修也によってボールは再びこちらが握った。
修也がそのまま上がっていく。するとツンツン髪の男が修也の前に立ちはだかる。
「プロファイルゾーン!」
「くッ!」
足元から光り輝く板状のエネルギーが舞い上がり、修也を空中へ大きくかちあげる。
あのチーム、SPを名乗るだけあって守備の面が段違いだな。まだキーパーがどれほどのものか分からないが、俺の見立てでは御影専農の統率力と千羽山の防御力を足して2で割ったくらいだ。
「行ったぞ染岡!」
「ッ、おう!」
染岡に指示を飛ばすが、一瞬反応が遅れてしまったせいか相手を捉えることが出来なかった。
ボーっとしていたのか?あの染岡が?
にわかには信じ難いな。アイツは試合中に上の空になるようなヤツじゃない。
「風丸!壁山!一旦守備に回れ!」
「あぁ!……くッ」
「は、はいっス!」
ボールを確保したい鬼道の声に風丸と壁山も少し反応が遅れ、結果シュートが狙える位置まで侵入を許した。
……おかしい。さっきから普段はありえないようなミスが多い。染岡に風丸、そして壁山。一体何が原因だ?
「「トカチェフボンバー!」」
上がって行った2人組がシュートを放つ。
互いの腕を握り、鉄棒競技の技であるトカチェフを模した連携でシュートに大きな力を加え、それをゴールに向かって放つ。
「爆裂パンチ"改"!!」
最後に見た時よりも強力で速いパンチがシュートを真正面から捉えた。
一撃一撃が確実にシュートの威力を殺していき、最終的にはパンチの威力が勝ったことで大きく弾き返す。
「ナイスセーブだ守!」
飛んできたそのボールを俺が受け取り前へと運ぶ。
それを見てか染岡がいち早くゴール前へと向かっていったのを確認出来たのでロングパスを送る。
今度は逃すことなくボールを手中に収めた染岡が十八番の構えに入る。
「ドラゴン──」
「ザ・タワー!!」
相手のキャプテンが染岡の前に立ちはだかる。
足元が青く光ると、地面から高い塔が出現し、その頂点から染岡に向かって雷を落とす。
脚を振りかぶっていた染岡は為す術なく雷に打たれ、ボールをその場に残して大きく吹き飛ばされる。
「詰めが甘いね、宇宙人」
「クソッ……ッ!?」
俺は見逃さなかった。染岡の顔が歪んだその瞬間を。
今の攻防でどこか痛めたか?いや違うな、もっと前からだ。恐らくエイリアとやった時の怪我が治っていない。そう考えればさっきからの不調にも納得が行く。
風丸と壁山も同様だろう。まったく、試合が始まる前にあれだけ警告したっていうのに無茶しやがって。
コイツらがこんなことをするのはきっと俺達に迷惑がかかるとかそんな辺りだろう。
ありがたい心配だがその前に自分の身体を1番に気遣って欲しいものだがな。
再びボールを受け取った染岡はゴールに向かって走り出した。その進行方向にはさっきのやつが待ち構えている。
ここは俺が助け舟を出した方が良い気がするな。
「染岡!無理するな!」
「なっ、無理なんか!」
「良いからこっちだ!」
サイドから走り込んでいき染岡にそう声を掛けると、案の定強がりが返ってきたが半ば無理やりにボールをこちらに送らせた。するとすぐさまターゲットがこちらに向いた。
「やらせないよ!ザ・タワー!!」
さっきのように塔が出現し、雷が俺に向かって降り注ぐ。
こうして対面するとなかなかのプレッシャー。壁山のザ・ウォールに勝るとも劣らずと言ったところだ。
だがな。
「俺に雷で挑もうなんて……100年早いぞッ!!」
脚に力を集中させ、極めて軽い踏み込みからそれを爆発させて加速を得る。
時折使っているテクニックなのだが、そろそろ名前をつけてみるのもいいかもしれない。雷光翔破とはまた違った応用が効くからな。
「速い!?」
落とされた雷が俺を撃つよりも速くその場を抜ける。
そこをやり過ごせばもうゴールは目前、先制点は俺が頂く。
「轟──」
「ここでホイッスル!!スコアレスのまま前半終了です!!」
ボールにエネルギーを集め始めたその瞬間、前半終了のホイッスルが高らかと鳴り響いた。
クソっ、何とか勝利への礎となりたかったんだがな。
そうだ、そんなことを気にしている場合ではない。
俺はすぐさまベンチへ戻り、試合を見ていた監督に進言すべく声を掛ける。
「監督」
「大丈夫よ。分かってるから」
口を開いたその瞬間、手でそれを制された。
そう言ってまもなく、監督は染岡、風丸、壁山を呼び出し、後半からはベンチへ下がるように指示を出した。
そんなことをすれば、11人丁度で試合をしている俺達は数的不利を背負わされることになる。その事に対して反発が出るが、監督は自分の口から説明することはなく俺に視線を送ってきた。
「まあ待て皆。言いたいことは分かる。けどな、コイツら3人は隠してるだけで前の怪我が治りきっていないんだよ」
「ええ!?でも、治ったって」
「自分達が欠ければこの試合に不利になってしまう。そう思っての行動だったんだろ」
3人をそれぞれ見ると、揃って後ろめたさ全開の態度を見せる。
俺の言葉にギョッとしたマネージャー陣が3人の身体を無理やり調べると、案の定腫れが引いていなかったりで全員ベストとは程遠い状態だった。
「こっちはここから8人で試合か……」
「やれるな?鬼道」
「ふん、誰にものを言っている」
鬼道をそう煽ってやると、余裕に満ちた笑みをうかべる。
コイツの見せ場はまさにここからだからな。人数が欠けたこの状況で、どれだけその穴を埋めるゲームメイクができるか。天才ゲームメイカー様の腕の見せ所だ。
鬼道が提示した作戦はこうだ。
攻撃は俺と修也の2人。その他は全員前に出て俺達が点を決めるためのサポートだ。
この作戦は守への絶対的な信頼の元成り立っていると言っても過言でないだろう。なにせ常に後ろを守るはずのメンバーも全員押し上げる訳だからな。
必要に応じて守備もするが、まあそこは鬼道が上手く指示するさ。
そうして後半が始まる。
ボールは皆が奪ってくれると信じ、すぐさま俺と修也は前線へ押し上がった。
試合再開まもなく、俺達の期待通りボールは俺達の元へと送られてくる。
怪我をしていた3人が抜けることでかえってゲームメイクがしやすくなったようだ。鬼道の指示は全員が万全であることを前提としたものだろうしな。
人数不利は運動量でカバー。その手綱は鬼道が完璧に握っているという訳だ。
「柊弥、決めるぞ!」
「当然!」
俺と修也は共にゴール前へ。
何度もボールを奪いに来たが、俺達の完璧なコンビネーションの前にはそんなもの小さな障壁でしかない。
「いっけぇぇぇぇ!!」
後ろから守の激励に背中を押されて修也は空へと飛び上がり、俺は更に前へと進む。
高く蹴り上げられボールだったが、修也はそれと同じ高さまで飛び上がり、携えた炎を脚に宿し、重々しい蹴りを叩き込む。
「ファイアトルネード!!」
放たれた渾身のファイアトルネード。しかし、これで終わりではない。
シュートはゴールではなく、その手前地点へと落ちていく。もしそのまま進めば地面に対して強烈に叩きつけられるだけ。
しかしそんなことは起こり得ない。なぜなら──
「さっきは中途半端ですまなかったな。詫びと言ってはなんだが、この1本で帳消しにしてくれ……轟一閃、"改"ッ!」
シュートチェイン。
シュートからシュートに完璧なタイミングで繋げることで、本来以上の威力が引き出される。
炎と雷が互いに荒れ狂いながら相手のゴールへと向かう。
「させん!セーフティプロテクト!!」
青色の盾が複数出現し、ゴールを覆い隠すようにして防御体制をとる。
しかし薄い壁では俺達は止められない。止められるわけがない。
案の定、シュートが触れた瞬間その簡素な要塞は崩壊し、ゴールネットが揺らされた。
「ゴール!!豪炎寺と加賀美の完璧な連携!!人数不利を背負いつつも、雷門が先制点を奪った!!」
修也とハイタッチを交わしつつポジションに戻る。
……相手のキャプテンがこちらに対して羨望の眼差しを向けていたのは気のせいだろうか。明らかに敵である宇宙人に向けるものではなかった。
まあそんなことを気にしても仕方ないので試合に集中する。
試合再開直後、守備寄りから攻撃重視へと切り替えた相手が速攻を仕掛けてくる。
突然のことに俺達は対応しきれず、易々とゴール圏内への侵入を許してしまったが……
「「セキュリティショット!!」」
相手のFW2人が連携シュートを放つ。
2人分の力が加えられているというだけで止めることは困難になる。
しかし、こっちのキャプテンはそんなにヤワじゃないみたいだ。
「マジン・ザ・ハンド!!」
黄金の魔神がそのシュートを真正面から殺して見せた。
守のやつ、マジン・ザ・ハンドを完全に自分のモノにしたな。
そして守がシュートを止めた直後、試合終了のホイッスルが鳴る。
点数は1-0。こちらの勝利だ。
「負けたよ、流石は日本一の雷門イレブンだ!」
「いやぁそれほどでも……って」
「「「えええええ!?」」」
何となく耳が痛くなりそうな予感がした俺はすぐさま耳を塞いでおいた。
そりゃ皆驚きたくもなる。宇宙人宇宙人と言いながら襲いかかってきたヤツらが実は全て知ってたなんて言われたら……なあ?
「私は財前 塔子!よろしくね!」
「あ、ああ……」
そう言って財前は守と握手を交わした。
ん?財前?その苗字ってもしかして……
「ん?ああ、そうなんだ。私は総理大臣の娘なの」
「「「はあああああ!?」」」
「総理大臣の娘が、総理のSPで構成されるチームのキャプテンか。無茶苦茶だな」
それから俺達は事の顛末を聞いた。
塔子は攫われた総理を救い出すため、超強力な助っ人を探していたらしい。
それと並行してエイリアの痕跡を洗っていたのだが、そんなところに偶然やって来たのが俺達雷門イレブンだったようだ。
サッカーが好きで俺達の決勝も見ていた塔子はすぐさまそれに気付き、声を掛けようとしたが、優勝チームの実力をどうしても見てみたかったため難癖つけて試合に持ち込んだらしい。
「あんた達ならエイリアに勝てるかもしれない、私と一緒に戦って欲しいんだ!パパを助け出すために!」
「勿論さ!」
「断る理由はないな……なあ皆?」
「「「おう!!」」」
俺の問いかけに皆は肯定の意を示す。
それを聞いた財前……総理と紛らわしいので以後塔子と呼ぶ。塔子は、涙ぐみながら感謝を述べてきた。
その時だった。
『地球の民達よ、我々は宇宙の果てからやってきたエイリア学園だ』
「みんな!モニターを見て!」
突如、真っ黒だったモニターに映像が映り、少し前に聞いたあの声がした。確か……レーゼ。
『我々は野蛮なことは望まない。この星の秩序であるサッカーにより、我々に逆らう意味が無いことを示して見せよう』
野蛮は望まない?学校を破壊して皆を怪我させたヤツらがどの口で言ってやがる。
頭に血が上り始めたのが分かったが、こんなところで勝手にキレても何も得はしないので落ち着くことにする。
「塔子様!ヤツらは奈良シカTVからこの映像を流しているようです!」
「奈良シカTV……監督!」
「ええ!皆行くわよ!」
監督の一声で皆キャラバンに乗り込んだ。
早速リベンジできるな……宇宙人共。
「絶対倒してやる……なあ、修也?」
「……ああ」
どこか上の空な修也。まあ試合の直後だから少し疲れているだけだろう。
今度こそ俺と修也、染岡でアイツらから点を奪ってやる。そしてこんなこと辞めさせてやるんだ。
気合いは十分だ。絶対勝ってみせる。
それなのに、何故だろう。
何か……嫌な予感がする。
後半が少し薄くなっちゃったかなあ…
SPフィクサーズとの試合はあまり見どころないと思ってるのでご勘弁。