Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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連日投稿ですわ、続きませんわ

評価やら感想やら、本当にありがとうございます
めちゃくちゃモチベになってるのでどしどし送り付けてやってください


第44話 いざ北海道へ

 

 

 1人来た道を引き返す。

 陽は完全に落ちており、既に辺りは真っ暗だ。森の中ということもあって鬱蒼とした雰囲気を醸し出している。

 

 

 正直、まだ修也の脱退には納得がいっていない。

 監督が何故あの試合だけで修也を必要ないと言い切ったのか、そして修也が何故それをすんなりと受け入れたのか。

 けれど、もうアイツはいない。過ぎたことは何時までも気にしていたらキリがない。

 

 

「柊弥!豪炎寺は……」

 

 

 俺の右手に握られたユニフォームを見て何かを察したのか、守は口を噤んだ。

 が、他の皆はそうはいかなかった。

 

 

「加賀美……お前止めなかったのか!?」

 

「豪炎寺さん、行っちゃったんスか?」

 

「そんな……」

 

 

 皆次々に俺に話し掛けてくる。

 当然、皆修也の離脱には納得がいっていないようで、何故止めなかった、何故連れ帰らなかったという疑問がぶつけられる。

 

 

「……今の俺達に出来ることは、エイリア学園を倒すことだ」

 

「でも、豪炎寺抜きじゃ」

 

「そんな弱気になるな。俺達は修也がいなかったから勝てないような弱いチームじゃ無いはずだろ?」

 

 

 染岡が柄にもなく弱気な言葉を吐く。

 コイツも同じストライカーである分、修也がどれだけ凄いヤツだったかが分かっているんだ。だからこれからが不安になる。

 それは当然、俺も同じだ。

 

 

「修也がいないなら、俺達が点を取ればいい。違うか?」

 

「それは……」

 

「皆もそうだ。今までエースストライカーとして俺達を勝ちに導いてくれた修也がいなくて不安なのは分かる。けどそれがどうした?弱気になって修也が帰ってくるか?エイリアに勝てるか?」

 

 

 俺の言葉を黙って聞いていた皆だったが、表情が段々と強気なものになってきた。

 そうだ、俺達は弱気になってる余裕なんてないんだ。

 

 

「だから……勝とう。俺達でエイリアを倒すんだ。そうすればきっと、またアイツと、入院してる皆とサッカーが出来る」

 

「そうだぜ皆!別れはゲームセットなんかじゃない!別れは出会いのためのキックオフなんだ!」

 

「……ったく、良い感じにまとめやがって」

 

 

 守がそう締めると、皆揃ってやる気を見せる。

 俺も負けてられない。修也がいなくなった今、俺はストライカーとして更に強くなる必要がある。

 

 

 それだけじゃない。得体の知れない宇宙人と戦うせいでこれから皆不安になることが多々ある。それをカバーできる副キャプテンも目指さなければならない。

 副キャプテンである俺は、いざというとき守を支えられる存在である必要がある。

 

 

 俺は、強くなる。

 

 

「皆、いいかしら」

 

 

 俺達が決意新たにした中、監督がやってきた。

 

 

「響木さんからメールが来たわ」

 

 

 響木監督からのメールの内容は、北海道の白恋中という学校のエースストライカー、吹雪 士郎を仲間に引き入れろというものだった。

 タイミング的に修也の脱退で欠けた攻撃力を補填するのが目的だろうな。

 俺と染岡のツートップでも構わないが……響木監督の決めたことだ。受け入れよう。

 

 

 その吹雪 士郎という名前に俺達の誰も聞き覚えがなかった。

 キャラバンに戻り、春奈のパソコンで調べてみたが大会での公式記録等は一切なく、1試合で10点取っただの熊より身体が大きいだの、にわかには信じ難い噂話ばかりだ。

 

 

「そんなに凄い選手が所属するチームが、なぜフットボールフロンティアに出場して来なかったんだ?」

 

「……分からないな。人数が足りなかったのか、或いは学校の許可が降りていないのか」

 

 

 そこまでの噂話が立っている選手だと言うのに、実際の記録が一切ないというのはやはり不自然だ。

 俺達なりに先のフットボールフロンティアに出てこなかった理由を考察するがどれもしっくり来ない。

 

 

 ともかく、1度顔を拝まないことには何も始まらないか。

 

 

「実際に会ってみれば分かるだろう。このチームの新しいエースになりうるかどうかが、な」

 

「そうだな!くーッ、今から会うのが楽しみだぜ!」

 

 

 その後、北海道に向かってキャラバンが走り出した。

 試合の疲労がまだ抜けきってはいなかったのだろう。時間帯も相まって俺は眠気に抗えず、気付いたら既に眠りに落ちていた。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「……ん」

 

 

 窓から射し込む陽の光に顔が照らされ、混濁しつつも意識が表へと引き出される。

 ……随分長く寝ていたようだ。皆はどこに行ったんだろう?見た限りキャラバンの中には誰もいないようだ。

 

 

「起きたようね」

 

「……瞳子監督」

 

 

 立ち上がって身体を伸ばしていると、助手席にあたる席に監督が座っていたのが確認出来た。

 ……昨日のことがあっただけに、気まずい。

 なんて考えていると、先に監督の方から口を開いた。

 

 

「……昨日はごめんなさいね」

 

「……え?」

 

「もっと言い方というものがあったかもしれない。大人である以上それを考える責任が私にはあったのに、一方的に貴方と豪炎寺君に言葉を吐き捨ててしまったわ。……本当にごめんなさい」

 

 

 俺の思考は停止した。

 寝起きだからという理由ではない。シンプルにこの状況が飲み込めていないからだ。

 俺は昨日のことを受け、この監督に信頼というものを一切持たないつもりだった。北海道の吹雪とやらを仲間にするのも響木監督からの指示だから肯定的に捉えただけ。

 

 

 しかし、昨日のことを一方的に謝られてはこう……毒気が抜かれるような感じだ。

 

 

「……いえ。俺も大人に対しての態度ではありませんでした。すみません」

 

「良いのよ。貴方の怒りはもっともだわ」

 

 

 ……何だろう。本当に思っていたのと違う。

 急に自分の非を認められては、責められるものも責められない。単に実は悪い人ではないというだけなのか?

 

 

 まあいい……が、1つだけ。ほんの1つだけ俺は監督に聞いておきたいことがある。

 

 

「監督。修也が抜けたことは、俺達がエイリアに勝つことに必要なことだったんですよね」

 

「ええ。それだけは信じて欲しい。私の勝手な好き嫌いなんかじゃなく、エイリアに勝てる手段を全力で考えた上での行動よ」

 

「……分かりました。それだけ聞ければ十分です」

 

 

 俺は立ち上がり、監督の前で頭を下げた。

 

 

「エイリアに勝つため、俺達を導いてください。よろしくお願いします」

 

「ええ。勿論よ」

 

 

 今は、この人を信用することにする。

 修也の脱退も必要だったこと。そう考えて俺は次を見据える。

 エイリア学園を倒しさえすれば、全てが解決するはずだからな。なら、やるしかないだろう。

 

 

 監督と話を終え外に出る。

 監督曰く、皆それぞれこの自然環境の中で自主トレに励んでいるらしい。俺もさっさと準備して取り組むとしよう。

 

 

 さて、エイリアと戦うために何が必要だろうか?

 俺の見立てではそれはまず純粋な脚力だ。あのスピードに追い付くのにも、硬すぎるゴールをこじ開けるのにもまずはそこを強化すべきだろう。

 

 

 そしてもう1つ、新しい必殺シュートだ。

 轟一閃やライトニングブラスターをヤツらにも通用するレベルまで改良するという手段もあった。

 だが、新しいアイデアが既に浮かんでいるためそっちを採用することにする。これを習得するまでの過程で必然的に脚力も身に付く気がするしな。

 

 

 そんなことを考えながら歩いていると、比較的開けた場所に出た。そしてそこには俺の身体よりも遥かに大きな岩が佇んでいる。

 

 

「やるか」

 

 

 今は無我夢中にボールを蹴りたい、そんな気分だ。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「加賀美?いるか?」

 

「ん?染岡か。どうした?」

 

「昼飯らし……っておい、こりゃ何だよ!?」

 

 

 柊弥を呼びに来た染岡は驚愕した。

 柊弥が特訓に選んだ場所、それは最初染岡が目を付けていた場所だった。

 しかし、中央に鎮座する巨大な岩が邪魔だったために別の場所でやることにした、はずだった。

 再びここを訪れてみたらどうだろう、そこにあったはずの岩は所々が欠け、穴が開き、歪な形となっていた。

 加えて一帯を包み込む焦げ臭い匂いと、真っ黒のサッカーボール。そして、尋常じゃない汗を流してそこに立っていた柊弥。

 ここで何かとんでもないことがあったのは確かだった。

 

 

「お前もしかして、新しい必殺技が完成したのか!?」

 

「……いや、まだだ。こんなんじゃ足りない」

 

「こんなってお前……世宇子の連中ですらこんな芸当は出来ねぇだろうよ」

 

「エイリアは世宇子より強えよ。そしてまだこのシュートじゃ、そんなヤツらを倒せない」

 

 

 そういって柊弥はボールを拾い上げ、汗を拭いながらキャラバンの方へと歩いて行った。

 呼びに来たはずが1人残された染岡はしばらく立ち尽くして柊弥の後を追う。

 

 

「なあ加賀美、お前は吹雪とかいうストライカーどう思う」

 

「エイリアを倒せる力があるなら大歓迎だ。けど、だからといってソイツ1人に頼るつもりはない。俺とお前も雷門のストライカーだからな」

 

「そうか……俺は、到底受け入れられそうにねえ。どんなシュートを撃てても豪炎寺の代わりになれるヤツなんかいねぇ」

 

 

 

 森林の中、2人のストライカーが互いに胸の内を明かす。

 

 

「そりゃそうだ。誰だろうが修也の代わりになんかなり得ない。ソイツも、俺もお前もな」

 

「けどよ…もし、本当にソイツが雷門に入ったら、豪炎寺の居場所がなくなっちまう。そんな気がするんだ」

 

「分からなくはねえよ。けどソイツが来て、修也も帰ってきたら別に拒みはしないだろ?そういうことだろ」

 

 

 話しているうちに森を抜け、キャラバンと他の皆が待つ広場へと出る。

 円堂や風丸が手を振って早く来いと急かしてきたため、2人は小走りで合流する。

 

 

「……俺は」

 

「あんま難しく考えんなよ。仲間が増える、それで良いんじゃないか」

 

「柊弥ー!染岡ー!早く来いよ!」

 

「おう、悪い悪い」

 

 

 染岡は1人、胸の中で思う。

 

 

(俺は、やっぱり豪炎寺の居場所を守ってやりてぇ)

 

 

 仲間であり、ライバルであり、憧れである豪炎寺に対して、柊弥とはまた違った特別な感情を抱いているのがこの男、染岡である。

 

 

 そんな染岡の悩みを他所に、既に腹を鳴らしている円堂や壁山は今にもおにぎりの海に飛び込みそうな勢いだ。

 

 

「柊弥も来たし、早速──」

 

「──待ちなさい!手は洗ったの!」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 2人が戻ってきたことで食欲を抑えきれなくなった円堂が大量に握られたおにぎりに手を付けようとしたが、夏未が手を洗ったのかとそれを止める。

 今回は全員洗っていたようで、綺麗になっているのであろうその手を夏未に見せつける。

 しょうがないわね、と言った微笑みを浮かべて夏未がGOサインを出すと皆一斉に飛び付いた。

 

 

「皆、ご飯の後はお風呂に行って汗を流して来なさい」

 

「近くに温泉があるみたいです!」

 

「マジか!最高だな!」

 

 

 この一瞬だけは、自分達に課せられた使命を一旦忘れて年相応のように皆はしゃいでいた。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「ねえ、塔子さん」

 

 

 食事、風呂を終え、瞳子の計らいで行われたキャンプファイヤーでまたはしゃいだ後、男子はキャラバン、女子はテントに分かれ明日に備えて寝る準備をしていた。

 外に設置された女子用のテントの中、寝袋に身を包んだ4人の女子達によるガールズトークが幕を開けようとしていた。

 

 

「……貴女は、円堂君のことが好きなの?」

 

「うん、ああいうやつは大好きだよ」

 

「それは、男の子としてですか?」

 

 

 夏未のド直球な問いに対して、塔子はこれまた正直に答えた。表に出してはいないが、それを聞いて木野と夏未が警戒心を強めたのは本人達しか知る由もない。

 そしてそれに対して音無が追加で問い掛ける。その答えに対して、先程の2人は無意識のうちに身構える。

 

 

「そんなこと関係ないだろ?友達として、サッカー仲間として大好きだよ」

 

「……そう」

 

「皆はどうなの?好きな男の子とかいないの?」

 

 

 塔子が仕掛ける。

 年頃の中学生の心を突くようなその質問に、塔子を除く全員が冷や汗をかく。

 

 

「わ、私はいないかな」

 

「あらそう?私もよ」

 

 

 木野と夏未がそれに対してとった行動はズバリ回避。

 余計な波を立てぬためにも、速攻で頭に浮かんだ男の顔をかき消し、そう取り繕った。

 そして卑怯にも、2人は共通の標的に狙いを定めた。

 

 

「でも、音無さんは……ねえ?」

 

「ふふっ、そうよね」

 

「えっ?音無はいるのか!?」

 

「ふぇ!?え、えっとぉ……」

 

 

 そう、音無である。

 塔子と違いここ数ヶ月雷門イレブンのマネージャーとして3人で活動していたため、音無が柊弥に好意を抱いているのはもはや明白だった。木野に至ってはそのフォローを度々している程である。

 

 

「分かった、加賀美だろ!アイツモテそうだもんなー」

 

「あら正解」

 

「夏未さん!?バラさないでもらえますか!?」

 

 

 トドメを刺したのは夏未だった。

 まだ塔子の図星を突いた一言だけだったら幾らでも回避しようがあったが、夏未のその一言によって完全に音無の逃げ道は塞がれた。

 色恋の話に関してはやはり興味が尽きない年頃であるせいか、塔子はすぐさまそれに食いついた。

 

 

「加賀美のどんなところが好きなんだ?」

 

「えっと……言いきれません」

 

「うんうん、音無さんたら練習中もずっと加賀美君のこと見てるもんね」

 

「木野先輩!?傷抉らないでくれませんか!?」

 

「諦めなさい音無さん。貴女に出来るのは今ここで加賀美君への熱い気持ちを語り尽くすことだけよ」

 

 

 どんどん追い詰められていく音無。

 すると、何かの弾みに吹っ切れた音無は決意を固める。

 

 

「……良いですよ、ここまで来たらとことんです!寝れると思わないでくださいね!」

 

「望むところ!」

 

 

 こうしてガールズトークという名の音無による柊弥語りは始まった。

 ちなみにこの話はあまりに長くなったため、同じテントで寝る瞳子の登場によって強制的に打ち切りとなった。

 それでも深夜2時くらいまで続いたため、他の3人は必要以上に煽ってしまったことを心の底から後悔した。

 それとは逆に音無は、普段語ることの無い想い人への感情を語り尽くしたせいか、3人とは対照的にこれでもかというほどの質のいい睡眠が出来たという。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「起床!出発するわよ!」

 

「朝か」

 

 

監督が鳴らすホイッスルで目が覚めた。

未だに睡眠中のヤツらはとりあえず頭を引っぱたいて強制的に起こす。

特に壁山。頭まで被って全力で拒絶するのやめろ。とっとと動いてキビキビ動け。

 

 

「…ぷはぁ」

 

「柊弥先輩!おはようございます!」

 

「春奈か、おはよう」

 

 

顔を洗っていると後ろから元気そうな声が聴こえいた。顔を見ずとも余裕で誰だか分かる、春奈だ。

春奈がタオルを手渡してくれて初めて気づいたが、俺は顔を洗いに来たというのにタオルを持ってきていなかったようだ。

 

 

「今日はやけに元気だな」

 

「まあ、色々ありまして!」

 

元気なのは何よりだろう。

だが1つ気になることがある。

 

 

「…何で秋達はあんなにゲッソリしてるんだ」

 

秋と夏未、塔子といった春奈を除く女子陣がやけに疲れきった顔をしている。いや疲れたというか…供給過多に耐えきれなくなった的な、胃もたれ的な?

慣れない寝床だったから寝れなかったのだろうか?気持ちはわからなくもないが。

…まあ、良いか。




現在音無の柊弥に対する想いを知っているもの(知ってしまったもの)
・木野(何度も背中を押している)
・夏未(自分のライバルじゃなくて安心している)
・塔子(思った以上にガチな音無にドン引きした)
・鬼道(アイツになら妹を任せられる…いやでも、と葛藤中)
・豪炎寺(柊弥を見る音無の視線で察した。本人は明らかにしていないが、柊弥もその気があることを唯一知っている)
・土門(29話で木野、豪炎寺、鬼道と共にデート中の2人を尾けていた。動機は街を散歩してたらコソコソしている3人が見えたから)
・響木さん(監督の広い視野の前には全てお見通しだった)
・風丸(察した)
・一之瀬(土門がバラした。それを知った音無は土門に轟一閃をぶち込んだとか何とか)

ちなみにそのうち全員にバレる
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