Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第47話 雪原特訓、そして・・・

 

 

 エイリア学園からの襲撃予告が入ってから一夜が明けた。

 あれからは今後の展望やらなんやらを共有だけして、それぞれ思い思いの時間を過ごした。俺はどうにも落ち着かなかったからこっそり抜け出して1人特訓していたんだが、春奈に見つかって止められてしまった。

 昼間に試合したんだから今日は休んでください、なんて言われたら立つ瀬が無いというものだ。実は監督からも今日からに備えしっかり休めって釘を刺されてたしな。

 

 

 それで今はと言うと、早速吹雪を交えて練習をするために全員グラウンドに集まっているところだ。

 入念にウォーミングアップをしたとはいえ雪原のど真ん中でユニフォームというのは肌寒い。平静を取り繕うとしている鬼道も震えが隠しきれていないくらいだ。当然俺も寒い。

 

 

「お、来たみたいだぞ」

 

「やあ。遅くなっちゃってごめんね」

 

「吹雪!雷門のユニフォーム似合ってるじゃないか!」

 

 

 視線の先からやってきたのは俺達と同じく雷門のユニフォームに身を包んだ吹雪。先日正式にイナズマキャラバンへの参加が決まった吹雪は、早速今日から俺達と練習に取り組むらしい。エイリア学園がいつ攻めてくるのか分からない以上、連携の確認なども早めに済ませておきたいからな。

 

 

 そういった目的もあり、監督から指示された内容は半分に分かれての所謂紅白戦。ちなみに俺は吹雪と同じチームらしい。仲間としての立ち回りにしっかり慣れていかなければな。

 

 

「始めるわよ、位置につきなさい」

 

 

 監督がそう言うと、目金がグラウンド内にボールを持ってやってくる。

 投げ上げたボールをジャンプボール形式で奪い合い、そこから守の待つゴールを攻守交替しながら狙っていくというのが主な流れだ。

 そういえば目金についてだが、どうやら今後は選手としてじゃなくマネージャー達同様俺達のサポートに回ってくれるそうだ。

 本人曰く、自分ではこれからの戦いについていけないとのことだが……まあいいだろう。確かに今の練習では1人溢れてしまうし、都合が良いといえば良いかもしれない。春奈と組んだ時の情報分析力はかなりのものだからな。

 

 

「それじゃあ始めますよ!」

 

 

 と言って目金がボールを投げ上げる。

 こっちは鬼道、あっちは風丸がジャンパーとして飛んで同時にボールを奪いにかかる。

 

 

疾風ダッシュ!

 

「くっ、いい速さだ!」

 

 

 勝ったのは風丸だった。激しい脚さばきからボールを絡め取り、凄まじい速さで鬼道を置き去りにする。

 鬼道が言った通り速さに磨きがかかっている。昨日の試合を通して何か思うところがあったんだろうか。

 しかし、雪原のプリンスの速さは相当のものだった。

 

 

「……風になろうよ」

 

「なッ!?」

 

 

 吹雪がぬるりと風丸の横から潜り込み、一瞬で前に回り込んだと思ったら次の瞬間にはボールを奪い取っていた。風丸は何が起こったか分からないという表情だが、第三者の俺達から見てもすぐには理解出来ない。

 そのまま独走状態に入る吹雪。一之瀬や鬼道がパスを要求するも一切それに応じない。

 ……成程。大体予想はしていたがやはりか。

 

 

「吹雪!無理をする──」

 

「……!へえ、僕に追いついてくるんだ」

 

「伊達に鍛えてないからな」

 

 

 同じようにパスを求めてもどうせ来ないと高を括った俺は吹雪に対して併走を始める。

 横に並んでやると吹雪は少し驚いたような顔を見せる。

 この驚きの理由はシンプル、今まで自分に追いついてくる選手と会ったことがないからだろう。

 何故ここまでの実力を持つ選手が有名じゃなかったか。それは、大会に出ていないということを加味しても有り余る程の表舞台不足。恐らくは練習試合なんかもあまりやっていないのだろう。

 それに加え、白恋の選手達は良くてもFFの予選レベル。言っちゃ悪いが吹雪1人の存在があのチームの平均レベルを引き上げているような状態だった。

 

 

「……そうかよ、ならこれならどうだァ!?」

 

「まだ速くなんのかよッ!」

 

 

 ニヤリと笑うと吹雪はもう一段階ギアを上げる。なおその雰囲気は試合の時のように別人のそれだ。

 必死に吹雪と並ぼうとするが、段々と併走から追走になっていってしまう。クソッ、こっちはこれで精一杯だってのにまだまだ底が見えてこない。

 

 

「へへッ、そんなもんか!?ガッカリさせやがって!」

 

「言わせておけば……負けるかァ!!」

 

 

 ここまで挑発されて大人しく引き下がるほど俺は大人じゃない。こうなればとことんだ。

 ギアなんてぶっ壊せ、ただ目の前の背中を追い抜くことだけを考えろ。

 

 

「らァァァァァァッッ!!」

 

「やりゃ出来るじゃねぇか!!」

 

 

 まさに無我夢中。吹雪に追いつくためだけにありったけを込める。

 その甲斐あってか、今までにない加速を得た俺は再び吹雪の横に並ぶことが出来た。

 

 

「ちょっと待ったァ!!」

 

「ああ?」

 

「はァ……はァ……きっつ」

 

 

 その時、後ろから待ったの怒号が飛んでくる。

 声の正体は染岡だったが、こちらに向かってくるのは1人だけではなく他の皆全員だった。

 まあ、こうなるよな。

 

 

「お前なあ!一之瀬や鬼道がパスしろって言ってただろ!」

 

「だって、僕いつもこうしてたし……」

 

「そういう事じゃねぇんだよ!お前は雷門イレブンに入ったんだろうが!それに加賀美がわざわざ追いついてきてただろうが!」

 

「待て染岡……それに関しては、俺の勝手だ……それより水……」

 

 

 俺は吹雪に追いつきこそすれど別にパスを要求した訳では無い。言ってしまえばただの意地だ。ここまで体力を消費したが特に意味が無いのが事実。

 

 

「そんなこと言われても……なんか汗臭くて疲れるなあ」

 

「誰が臭いって!?誰がァ!!」

 

「落ち着けって染岡」

 

 

 今にも掴みかかりそうな染岡を一之瀬と土門が前後から抑える。

 染岡の憤慨は最もだが、それと同時に吹雪の言い分も俺には分かる。急に今までと違うチームに所属し、そこのやり方に合わせろと言われても面倒というか、ただ困惑するだろう。

 だからこそ俺が吹雪に追いついてそのキッカケにでもなれればと思ったんだが……まだまだ道は遠そうだ。

 

 

「……俺は、吹雪に合わせてみるよ」

 

「風丸!?お前何言ってんだ!?」

 

 

 すると、風丸がぽつりと呟いた。

 

 

「吹雪のスピードは俺にも必要だ。そうじゃないと……また前の繰り返しになる」

 

 

 暗い声色でそう吐き出す風丸。それにつられてか、はたまた前の光景を思い出してか。皆の顔も一様に暗くなるのが分かった。

 風丸の言うことは最もだ。吹雪と同格、或いはそれ以上のスピードを身に付けなければエイリア学園を倒すことは出来ないだろう。

 吹雪が俺達に合わせることも大事だが、それと同じくらい俺達が吹雪に合わせることも大事になってくる。

 

 

「なら、風になればいいんだよ」

 

「風?そういえば昨日もそんなこと言ってたよな」

 

「うん。着いてきて」

 

 

 練習中なのに良いのか?と思って監督の方をチラッと見ると頷きが返ってきた。

 なら良いだろうと吹雪に案内されて向かったのは、白恋中校舎裏のゲレンデだ。

 凄いな、学校の裏にこんな大規模なものがあるなんて。維持費は学校が出してたりするのだろうか。だとするとかなりの金額が飛んでいきそうだ。

 

 

「おお、壮観ですねえ」

 

「遊び放題でやんスか?」

 

「羨ましいっス!夏未さん、雷門中にもこういうの作れないっスかね?」

 

「馬鹿言わないでちょうだい」

 

 

 思わず吹き出してしまいそうなやり取りを他所に、白恋の皆が何かを準備し始めた。そしてここに来た途端吹雪はどこかへ消えた。

 一体何が始まるんだと様子を伺っていると、唐突に大きな雪玉を作り始めた。身の丈ほどある本当に大きなものだ。

 そんなの何に使うのか不思議に思っていたら、どこからともなく吹雪がやってきた。……スノーボードを持って。

 

 

「……吹雪、それで何を?」

 

「まあ見ててよ」

 

 

 そう言うと吹雪はコースに向かって滑り落ちて行った。

 ハイスピードで滑りつつも華麗に舞うその姿はさながらその道のプロのようだ。聞く話だと吹雪は昔からスキーやスノボを嗜んでいたとか。そういえば吹雪が合流してくる前今年はスキーやらスノボで云々って言っていた気がする。

 

 

 スピードが最高潮に達したタイミングで吹雪が何かを白恋のチームメイト達に頼む。

 するとあろうことか、吹雪が滑るコースに向かって用意していた雪玉全てを放り投げた。

 雪が積もった斜面を猛スピードで転がる雪玉は際限なく加速していき、地面の雪を巻き込んで更に巨大になっていく。

 それを見て危ないと皆が声を上げるが、吹雪はそれをプロ顔負けの体捌きで回避してしまった。

 凄いの一言しか出てこないな。あの速さで滑り落ちながらジャンプなりなんなりなんて俺には出来たもんじゃない。

 

 

「ちょ、ちょっとちょっと!こっちに転がってきますよ!?」

 

「ひぃぃぃぃ!あんなこと言ったからバチが当たるっス!!」

 

 

 その時だった。雪玉が予期せぬ凸凹でコースを変えて目金と壁山がいる所へ迫ってきた。あの雪玉をモロに食らっても別に怪我はしないだろうが……どれ、1つ試してみるか。

 

 

「下がってろ」

 

「加賀美さぁん!!」

 

 

 ……集中、集中。

 右脚にエネルギーを集中させろ。無駄なく、最適な形で研ぎ澄ますんだ。イメージは細くしなやかでありつつも強靭な一振りの刀。

 それは決して折れることなく、どれだけ重く硬いものであろうとも一太刀で──

 

 

「──斬り伏せる」

 

 

 その場で右に身をひねり、身体を正面に戻す際に生じる僅かな勢いを最大限に利用し回転。

 力が存分に乗った回し蹴りを俺の身長よりも大きな雪玉に向かって放つとたちまち雪玉は崩壊し、塊からそれを構成していた小さな粉末へと散っていく。

 

 

「加賀美くぅぅぅぅぅぅん!!」

 

「ありがとうっス!!ありがとうっスぅぅぅぅ!!」

 

「……」

 

 

 さて、早速俺達も吹雪の特訓をやってみるか。あのスピード感に慣れれば何か得られるものもあるかもしれない。

 

 

「加賀美?」

 

「ん?どうした鬼道」

 

「……いや、何でもない。忘れてくれ」

 

 

 何だ?変なヤツだな……まあいいか。

 今までスノーボードなんてやったことがないから防具の付け方なんて分からなかったが、吹雪が手取り足取り教えてくれて難を逃れた。

 

 

「いつからこの特訓を?」

 

「特訓って訳じゃないんだ。小さな頃から遊びの中で──」

 

 

 斜面に少し乗り出す形の状態から少し前に体重を掛ける。すると自重に従ってボードごと前に体勢が崩れ、やがて滑走を開始する。

 心得はないがこのくらいなら感覚で何とかなる。もっとスピードを上げても問題ないな。

 

 

「来たか」

 

 

 どんどん加速していくと、横から急に雪玉が飛び出してきた。

 さっきと同じだ。少し身を捻って無理やり身体に回転のきっかけを与え、接触のギリギリを狙うくらいで回避する。

 イメージが大切だ。こちらのボールを狙ってくる相手を避ける。そしてその影響で止まるどころか逆に加速だ。こっちから奪いに行く時はこの感覚を応用さえ出来れば十分だ。

 良し、なかなか悪く──

 

 

「がッ」

 

 

 何が起こったかも分からないまま大きくコースから外れた。ぶつかった?ということは横から雪玉が来ていたのか?それなのに俺は気付いていなかったとでもいうのか。

 クソッ、集中が足りてない証拠だ。

 

 

「……チッ」

 

 

 上の方から聞こえてくる声達のように、和気あいあいとやれれば良いのかもしれない。けれど、今の俺にそんな余裕はない。

 俺は少しでも強くならなきゃ行けないんだ。吹雪に頼りっぱなしにならず、このチームを引っ張っていける存在になるために。

 だから、俺は止まっていられない。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「やあ加賀美君、調子はどうだい」

 

「吹雪か。まあ……悪くはない仕上がりになってきた」

 

 

 日が暮れ始めた頃、吹雪がやってきた。それで俺はようやく時間の経過を把握した。一心不乱に滑り続けていたからか全く認識出来なかった……いや、しようとしなかったという方が適切か。

 

 

「風になるってこと、分かってもらえた?」

 

「言いたいことは何となくはな……けど、これがエイリアに通じるという確証が持てない」

 

「うーん、あんまり難しく考えすぎたらダメだよ?楽しむことが大切なんだ」

 

 

 楽しむことが大切、か。

 その言葉自体に何の反論もしようがない。サッカーは楽しむものだってことは俺だって十二分に分かっているつもりだ。

 けどそれでも。エイリア学園を倒すためにはそんな悠長なことを言っている余裕はあるのだろうか。俺達がアイツらを倒さなければ、被害がどんどん増えていくんだ。

 

 

 現に、俺達が負けたばかりに傘美野中は守れなかった。半田達は病院送りになった。更に多くの学校が被害にあった。

 

 

「今日はこのあたりにしておこう?夕飯が出来たから呼んできてって言われたんだ」

 

「……悪い、もう少しだけやらせてくれ。今はこの感覚を手放したくないんだ」

 

「ふふっ」

 

「どうした?」

 

「いや、皆が言ってた通りでね。加賀美君は真面目だから、もしかしたら呼んでもまだやらせてって言うかもしれないって」

 

 

 皆が言っていたのか、なんか恥ずかしいな。それと同時にそんな会話が出来るほどに皆と馴染めている吹雪に安心している。

 ……まあ、フットボールフロンティアで優勝するまで一緒に頑張ってきたからそんなこともお見通しなのかもしれないな。少し嬉しい。

 

 

「監督もそれを見越してたみたいで、もしそう言われたらそうさせなさいって」

 

「そっか、手間掛けさせて悪いな」

 

「あまり遅くならないようにね」

 

 

 そう言って吹雪は去っていき、俺は再びボードを身につけ斜面を見下ろす。

 斜面に乗り出し、もう何百回目か分からない加速状態に入る。最初に滑った時の倍の速度は出せるようになった気がするな。だがそれでもまだまだ上を目指す。

 そんな超高速で滑り落ちていくと、幾つもの障害物が目に入る。あれは俺が先程雪で作ったものだ。もう雪玉を転がしてくれる人もいないから何かしらのギミックが欲しくなった末にあれに辿り着いた。まあ俺の背丈くらいに雪を固めて対人を想定しているだけの粗末なものだが。

 そんな幾つもの雪塊全てをトップスピードのまま滑り抜けるのが目的だ。これが出来るようになれば昼間から散々目指したことは出来るだろう。

 

 

「行くぞッッ!!」

 

 

 1つ目。接触の瞬間に右に逸れてミリ単位で回避する。

 2つ目。1つ目の直後に目の前に現れるため今度は左への回転とともに避ける。

 3つ目と4つ目。前を見るとすぐ目の前に待ち構えている。回転の勢いが殺しきれていないため跳躍で躱す。

 5つ目。跳躍からの着地は重心が大きくぶれすぎることも無いので余裕を持って避ける。

 6つ目。折り返しだ。大きくフェイントを掛けることを想定して右に、左に大きく揺れながら横を抜ける。

 7つ目。フェイント直後で身体がブレブレのため必要最小限の動きで避ける。

 8つ目。安定を取り戻したため今度は派手に飛んでみる。

 9つ目。躱すのはこれで最後。着地直後で不安定ながらもしっかりと回避。

 最後。これにはスピードを維持したまま思い切りぶつかる。たかが雪と言えど自立を保たせるためにある程度の硬さはある。衝突の瞬間全身を強い衝撃が襲い、大きく減速する。これが狙いだ。

 その減速を利用して延長線上に置いてあるボールを拾い上げ、()()()()()()()()()()

 

 

 まだボードと足が着いた状態で即席のジャンプ台から飛ぶ。すると空中へ身が投げ出されると同時にボードが離れていく。そしてその状態で手に取ったボールでシュートを放つ。可能な限り全力で。

 そのボールが向かう先はかなり硬めに作った雪だるま。それに対して雷を纏ったシュートがぶつかると、その瞬間にそれは崩壊する。ようやく成功だ。

 そして俺はあらかじめ集めておいた柔らかい雪の上に落ちる。1歩間違えれば大怪我のこの特訓。誰かがみている状況ではできたものでは無い。

 

 

 試行回数186回。200に到達までに成功できて良かった。

 ここまではそもそも雪塊を避けきれない。シュートに入れない。撃てたとしても見当違いの方向へ飛んで行ったり、威力が足りず破壊しきれなかったりの連続だった。

 だが分かる、これを達成した俺は1つ上に登れた。今日の午前中の何倍も高い場所へと辿り着けたはずだ。

 

 

 それが出来ればもう十分。いい加減戻らないと怒られそうだし大人しく校舎の方へ向かうとしよう。使ったものは片付けて作ったものは後々邪魔にならないようにしっかりと雪に戻しておく。

 灯りが着いて声が聞こえる方へ向かえば大丈夫だろうかと思い、それっぽい教室の扉を開けるとそこには皆がいた。大体が食事を終えて喋っているようだが。

 

 

「柊弥!遅かったな」

 

「ああ。だがいいものは掴めた」

 

「そっか、なら良かった!」

 

 

 着席を促されて座ると、程なくして夕飯が並ぶ。

 ……やけに少ない気がするのは俺の気のせいだろうか。

 

 

「柊弥先輩、ちゃんと30回以上噛んでくださいね!消化吸収率を良くするためです!」

 

「ああ、そういうこと。ちゃんと噛めば満腹中枢が云々っても言うしな」

 

 

 疑問に思っていると春奈が補足説明をしてくれる。監督の指示らしい。

 まあこれも強くなるためと思えば苦ではない。壁山や守のように大食らいだと厳しいところがあるかもしれないが。

 それに、今回の量はともかくうちのマネージャー達が作る食事が美味しくなかったことがないからな。

 

 

「うん、美味い」

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 特訓は続く。

 吹雪の特訓をこなしつつ、しっかりとボールを使った練習も織り交ぜる。

 あの後染岡も前向きに取り組むようになり、何となくチーム全体での一体感が高まってきたように思う。それに皆、日が経つにつれて感覚が研がれていっている。

 かく言う俺も明らかにレベルが上がっている。皆が退散したあとあの特訓を数回やっているが、あれから1度も失敗をしていない。

 

 

「しッ!!」

 

 

 何より、その成果がそっくりそのまま現れてきている。

 スピードはもちろん、不安定な状態からでも十分な威力のシュートを撃てるようになったし、あの必殺技も少し安定するようになった。まだまだ目指しているレベルは先だが。

 

 

マジン・ザ・ハンド!!

 

「いけェッ!!」

 

「ぐッ……うわァッ!?」

 

 

 それでも、守の全力からゴールを奪い取れるくらいのレベルには到達出来た。

 

 

「いてて……柊弥!すげぇよあのシュート!エイリア学園のシュートよりも強いんじゃないか!?」

 

「実際にあれを受けたお前が言うなら自信が持てるよ。ありがとな」

 

 

 まだまだヤツらも底は見せていないだろうから断定は出来ないが、吹雪に任せっきりになることなく点を狙える可能性が出てきたのは良いことだ。

 守のそんなやり取りを交わしていると、後ろから吹雪が声を掛けてきた。染岡も一緒だ

 

 

「加賀美くん、いいかい?」

 

「どうした?2人して」

 

「ここ最近の成果を試そうと思ってな。俺ら3人で勝負しねぇか?」

 

「へえ……それは、今の雷門のエースは誰か。ここで決着つけようってことでいいのか?」

 

「へッ、そう思ってくれていいぜ」

 

 

 面白い。エースという座に固執はしてないし、俺の中のエースは修也しかいないが今の俺達の力を互いに試し合うのに興味はある。ここは1つ提案に乗るとしよう。

 勝負の内容は至ってシンプル。3人でボールを奪い合いながら先にシュートを決めた方が勝ち。

 

 

「お前ら、準備はいいか?」

 

「当然」

 

「うん。何時でも」

 

 

 目指すゴールとは反対のゴールの辺りに置かれたボールを3人で囲む。審判は守が務めるようだ。

 

 

「それじゃあ……スタート!!」

 

「先手必勝だ!!」

 

 

 開始の合図と同時に3人全員にボールを奪いに行く。最初に支配権を得たのは染岡だ。確保するや否やすぐさまゴールへと駆け出す。

 無論俺と吹雪はそれを良しとはせず、すぐにボールを奪いに行く。意図せずに1vs2の構図になっているが、複数を相手取ることもあるしこれはこれで良い練習になる。

 

 

「悪いね、もらっていくよ!」

 

「何!?」

 

「流石に速いか」

 

 

 次に仕掛けたのは吹雪。ぶつかり合いでは染岡のパワーに勝てないと判断してか、すぐさま前へと躍り出て凄まじいスピードでボールを掠めとった。

 染岡と俺は吹雪の後を追うが、あまりの速さにその距離はどんどん離れていく。

 このままでは為す術なく吹雪がゴールネットを揺らすだろう。

 

 

 前までの俺なら、な。

 

 

「甘いな、今の俺ならそのくらいなんてことない」

 

「……!!やるね」

 

 

 染岡を置き去りにするくらいの加速で一瞬で吹雪へと肉薄する。追いつかれるとは思っていなかったようで、僅かに反応を遅らせた吹雪からボールを奪い取った。

 現在の位置はちょうどセンター付近。このまま俺が決めさせてもらう。

 

 

「おらァ!」

 

「くッ、気合入ってるじゃねぇか」

 

「へへッ、当然だ!」

 

 

 息付く間もなく染岡がタックルを仕掛けてくる。こいつのフィジカルは前々から飛び抜けているものがある。それを全力でぶつけられたら俺も楽にはいかない。

 衝突の度にこちらも全力で押し返そうとする。だがやはり染岡に勝ちきれず、再びボールは染岡へと渡った。

 そしてその瞬間、背後から雪嵐が吹き荒れる。

 

 

「なかなかやるじゃねェかテメェら!!こう来なきゃ面白くねェ!」

 

「ここまで来たらとことんだ……恨むんじゃねぇぞッ!」

 

「上等だ!かかってこい!」

 

 

 吹雪が先程以上のスピードで迫りボールをかっさらう。それを俺がまた奪い、染岡がまたぶつかる。

 そんなやり取りが絶え間なく続く。既に勝負が始まって10分が経とうとしている。

 

 

「キリがねェ!!この辺りで終わりにしてやるぜェ!!」

 

「させるかよォッ!!」

 

「そんな簡単に行くと思うかッ!!」

 

 

 吹雪が足を振り上げ全力でボールに対して蹴り込むが、それと全く同タイミングで俺、染岡も蹴りを放つ。

 三者三様のエネルギーが混じり合い、ボールを中心に凄まじい力場を作り出す。猛々しくも冷たく、轟くようにフィールドの外まで波のように伝わっていく。

 

 

「オオオオォォォッッ!!」

 

「何ッ」

 

「ぐッ!?」

 

 

 全員全力だった。その中で1歩先を行ったのは染岡だ。

 染岡の方から凄まじい力が伝わってきたと知覚した瞬間、俺と吹雪の体勢は崩れ、大きく弾き飛ばされる。

 そのままゴールの方を向き、シュートを放つ。俺達はそれを阻止することは出来ず、蒼いエネルギーを纏ったそのシュートがゴールを貫いた。

 

 

「そこまで!染岡の勝ち!!」

 

「よッッッしゃァァァァ!!」

 

「やるじゃねぇか、染岡」

 

「うんうん。見違えたね」

 

 

 負けた、か。

 俺も強くなっから当然だが、染岡もかなり強くなっていた。以前までだったら勝てた勝負だったが、修也への思いと俺達への対抗心が染岡をワンランク上に引き上げたようだ。

 それに吹雪もやはり強い。居を突いたから何とかなったが、アイツにはスピードではやはり勝てない気がする。

 

 

「吹雪、加賀美」

 

 

 染岡がこちらへやってきて手を差し出す。俺達はそれを強く握り、地面から立ち上がる。

 

 

「俺達は3人で雷門のストライカーだ。エイリア学園……ぶっ倒してやろうぜ!」

 

「そうだな、絶対勝つぞ」

 

「うん、僕も頑張るよ」

 

 

 3人で手を合わせる。染岡の吹雪への嫌悪感も今となってはもうないようだ。今の俺達ならアイツらに絶対勝てる、そんな気がするな。

 強くなったのは俺たちだけじゃない。他の皆も同じだから。

 

 

「よーし!!3人に負けないように俺達も特訓だ!!エイリア学園に勝つぞ!!」

 

 

 守の一言で全員グラウンド内に走って入ってきた。やる気は十分すぎるくらいのようだ。

 よし、やるか。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 翌日。外は少し薄暗く、何やら不穏な空気が流れている。

 何となく分かる。ヤツらが来る。

 

 

「……守、来るぜ」

 

「おう!」

 

 

 暗雲が渦巻き、その中から怪しい紫色の光が地へと降り立つ。見たことがある光だ。

 一際強く発光すると、その中から俺達が待ち構えていた顔が複数現れる。

 エイリア学園、ジェミニストームだ。

 

 

「来たかレーゼ……もうお前達の好きにはさせない!」

 

「今ここでケリを着けてやる!」

 

 

 ここで勝って全てを取り戻す。この戦いもこれで終わりだ。




パワー
染岡>柊弥>吹雪
スピード
吹雪>柊弥>染岡
って感じのパワーバランスです、多分
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