と、作者が死にかけてる間にも多くのUAや評価ありがとうございます。以前の更新で何度目かになる日間ランキング入りを確認できて内心ニヤニヤしておりました。作品の伸びや感想がモチベーションです、感謝感激
『さあ、後半開始です!雷門は巻き返しなるのか!?』
ハーフタイムを終えて俺達は改めてポジションへと着く。スコアボードには0-1の文字、悔しいことに0はこちら側だ。
だが問題は無い。この後半で2点取って突き放してやれば俺達の勝ちだ。先程俺達のシュートチャンスは尽く点には繋がらなかったが、後半からの俺達は違う。
「吹雪、頼むぞ」
「うん、任せてよ」
そう、吹雪の攻撃への参加だ。
DFとしても優れている吹雪は前半までは守備に参加、最初から攻撃に参加しなかったのは俺達がジェミニストームのスピードに慣れるまで失点のリスクを最小限に抑えるためだった。前半を通して既に適応は出来たため満を持して吹雪が攻撃に参加する、ということだ。
当然吹雪だけに頼りきりになるつもりは無い。俺も染岡もチャンスさえあればヤツらのゴールをこじ開けてやる。
首を左右に回して小気味よい音がなり、目の前を見据えたと同時に後半開始のホイッスルが響いた。
ジェミニストームからのキックオフ。ボールはすぐさま後ろに下げられ、青い宇宙人がそれを受け取る。パス回しによる時間潰しかとも思ったが、レーゼなどが前に上がっているのを見るとそのつもりはないようだ。あくまで俺達を叩き潰すことが目的だからだろう。
当然俺達はすぐさまボールを奪いに行く。誰よりも早く動いたのは案の定吹雪だった。
「アイスグランド」
スケート選手と見間違うかのような華麗な舞。空中で数回回転した後に着地すると、そこから氷が伸びていきボールの持ち主を冷たい牢獄に閉じこめる。打ち上げられる形で奪われたボールは当然吹雪へ。吹雪はそのまま単身上がり、俺達もその後ろに続く。
その時、先行する吹雪から冷たい風が吹き荒れる。凍て刺すようなその空気、そろそろこれが何を意味するのか俺にも分かるようになってきた。
直後吹雪は凄まじい加速と共に一気にシュート圏内へと踏み入る。
「俺の出番だァ!!くらえェ!!」
「チィッ!ブラックホール!!」
勢いのまま放ったのはノーマルシュート。しかし相手のキーパーはそれに対して必殺技を使うことを選んだ。これは吹雪のシュートが脅威として認識された何よりの証拠だろう。キーパーだけではなく他の選手達の表情も僅かに揺らいだのを俺は見逃さなかった。
とはいえ流石に宇宙人。いかに吹雪といえど、必殺技無しで点を奪うことは難しかったようだ。黒い渦が消える頃にはボールはその大きな手の中に収まっていた。
そして大きく振りかぶりボールをぶん投げる。が、あまりに読みやすいぜ?その軌道は。
「もらった!」
そのボールがピンク髪に渡るよりも早く俺が空中でカットする。相当な高さだったが、スピードを鍛える過程で備わった脚力を用いればこの程度の跳躍は難しくない。
そして俺はそのまま地上で待機している吹雪へとシュートのようなパスを送る。
「もう一本だ、吹雪!」
「おう!今度は決めてやらァ!」
そのボールを受け取った吹雪が再び駆け出す。だが今回はその行く手を阻む者がいた。角のような髪型をした大柄な男が吹雪の前に立ちはだかる。
「どけェ!」
「グラビテイション!」
片手首を掴み、掴んだ方の掌を地面に叩き付ける。すると紫色の力場がそこを中心に広がっていく。その領域内に捉えられた吹雪はスピードを完全に殺され、そのまま膝を着いて動かなくなる。恐らくは重力を操っているな。障害物を創り出したりする必殺技なら攻略法はあるが、重力に干渉可能となると厳しいな。あの領域に捉えられるより早くパスを出すか、自力で回避する他無い。吹雪のスピードが殺されるくらいなら俺達も正面突破は不可能とみていい。
ボールは今度こそジェミニストームの手に渡る。こちらの反応が間に合わないほどのパスワークの末にボールを受け取ったのは先程のピンク髪。凄まじい速さで雷門陣内へと切り込んでいく。
しかしそのままシュートは許されない。その動きを見切っていた塔子が前に躍り出て止めに入る。
「ザ・タワー!!」
叩き付けられた雷で視界を奪うと、そのままボールだけ奪い去っていく。
それを見てフリーの染岡がボールを受け取るために声を掛ける。それを聞いた塔子は染岡に向かってロングパス。
「もらい!」
「は!?おい、吹雪!」
「ゴールを奪うんだろ?俺に任せておけって!」
なんとそのパスを吹雪が横入りでカットしてしまった。染岡の静止も聞かずに吹雪はそのまま走る。
点を取れば文句はないが…そう上手くいくか?
「フォトンフラッシュ!」
「うおッ」
その願いは届かなかったようだ。骸骨のような男が高速で回転すると、眩い光を放つ。それに堪らず目を隠した吹雪はその一瞬の隙のうちにボールを奪われる。
そのままこちら側へ攻め込んでくるジェミニストーム。後ろへ戻ってくる吹雪に対して染岡が怒りを浮かべて詰め寄る。
「決められなかったじゃねぇか!何考えてやがる!」
「そう焦んなよ。本番はこれからさ」
そう言って吹雪は染岡を軽くあしらう。
真意が読めないな。あの余裕は吹雪の傲慢さから来るものなのか、はたまた何か狙いがあってのものなのか。前者ならばしっかり取り返してもらわないと困るが、後者ならば…まあ何とかなるか?
俺もボールを奪うために後方へと戻っていく。
目の前ではボールを持った紫髪を鬼道と一之瀬が抑えにいっている。すると、1人が大きく左からボールを受け取るべく走り込んできているのが見える。それを伝えるべく声を出そうとした時には既にパスが出されていたが、何と一之瀬がそのパスコースに割り込んでみせた。
「ここだ!フレイムダンス!」
ブレイクダンスのような動きと共に炎を使役する。一之瀬を包み込むように舞う炎は目の前の敵へと伸びて包み込む。自由を奪われたその選手は派手に転倒し、ボールはそのままフィールドの外へと飛びてていく。
「いつの間にあんな技を?いや、それより…」
「ああ。なんで分かった?」
「癖があったのさ。あの紫髪の選手はパスを出す方向に舌なめずりをする。それが分かれば後はそれを突くだけさ」
成程な。これまで向き合った時はそんな所を見る余裕がなかったから気付けなかったが、そんな分かりやすい癖があったとはな。
よし、ここはひとつ試してみるとしよう。
ボールが出る直前触れていたのはあちらだったため、こちらがスローインの権利を得た。投げるのは風丸だ。
風丸が選んだのは鬼道。真っ直ぐにボールが放たれるが、それを読んでいたのか見てから反応したのか、レーゼが鬼道の前に飛び出るようにしてボールを奪い、そのままヘディングで一旦後ろへ下げる。
そこから続くのは閃光の如きパス回し。下手に飛び込むことは出来ないため一旦様子を見ていると、先程の紫髪にボールが渡った。
近くにいた塔子と共にその行く手を阻むと一瞬動きが止まった後に俺から見て右方向に舌なめずりをする。
その瞬間俺は右に飛びながら指を鳴らす。すると俺の全身から雷が迸り、それが幾つかの剣を創り出す。そのタイミングでちょうどパスが出され、目の前には俺の行動に僅かな動揺を見せながらもそれを受け取る茶髪。地面を削りながらその目の前に飛び出した俺は
「喰らえ、サンダーストームッ!」
直後巻き起こったのは11本が織り成す雷剣の雨。逃げ場のないほぼ密着状態でこれを躱すことは不可能だ。徐々に削り最後の一撃で足元を掬いボールを奪い去る。
本来の用途とはまた別だが、皆に内緒で練習していたブロック技だ。
「ナイスだ加賀美!」
一之瀬の賞賛に頷きを返しながら戦況を確認する。
俺より前には現在染岡、吹雪、鬼道、風丸。風丸はスローインからフィールド内に入ってきたから位置取りが微妙。鬼道は先程のスローインをカットされてから体勢を立て直してはいるが突破力で言えば少々不安。染岡と吹雪は遠すぎる。
なら、答えはひとつだな。
「雷光翔破!受け取れ吹雪ィ!」
雷の如く駆け出した俺は誰にも止められることはない。ボールを奪うべく立ち向かってきた連中を尽く抜き去り、完全フリーの状態で吹雪へと鋭いパスを送る。
「見せてみろよ、お前の本番ってヤツを!」
「…へっ、見てな!」
要求することなくパスが飛んできた事が意外だったのか、一瞬吹雪が俺の顔を見たが激を飛ばしてやるとすぐさまゴールに向かって走り出した。その様はまさに風。凄まじい速さだ。
しかしゴール前に待機していた2人のDFはしっかりと吹雪を抑えに行く。
まさにその時、吹雪が不敵に笑った。
「かかったな?いけェ染岡ァ!!」
滑らか過ぎるバック気味のパスが染岡へと放たれた。万が一に備えてかしっかりと走りこんでいた染岡はしっかりとそれを受け取ると、吹雪と同じくニヤリと笑ってそのままシュートが狙える絶好の位置まで辿り着いた。キーパーと1対1、あの勝負に勝ったお前ならやれるはずだ、染岡!
「おおおおおォォォォッッ!!」
染岡が咆哮と共に高くボールを蹴り上げると、何かが地を砕いて姿を現す。それはいつものドラゴンより強大な力を感じさせる翼竜、ワイバーンだった。
蹴り上げられたボールと共に空中から地上へと降り立ったワイバーンは、染岡がボールを再び蹴り抜くと共に相手のゴールへと大口を開けて突っ込んでいった。
そのパワーもスピードも、何もかもがその場にいた全員の予想を大きく超えやがった。追いつくことすら出来ないキーパーの後ろのゴールネットが大きく揺らされ、ホイッスルが鳴る。
それが意味するのは、俺達の加点。
「────やったぁぁぁ!!エイリア学園から点を取ったぞぉぉぉぉ!!」
守のその大歓喜を皮切りに全員が染岡へと飛び付く。試合中だというのに嬉々として騒ぎ立てる皆から一歩引いたところで1人佇む吹雪へ近寄ると、俺より早く吹雪の方が口を開いた。
「あの場面で俺にパスを出してくるとはな。てっきり要求しない限りもう出してこないと思ったぜ」
「あんなに余裕を見せてたんだ。何かしら考えがあるだろうなっていう希望的観測に賭けてみただけさ」
「はっ、もしただの虚勢だったらどうしたんだか」
「その時は後で殴ってた」
「おー怖い怖い」
そんな軽口を叩きあっているとベンチの方で目金があのシュートに名前をつけていた。その名も"ワイバーンクラッシュ"。ドラゴンクラッシュからワンステップ登った必殺技に相応しい名前だな。
そんな盛り上がりをしている皆だが、試合はまだ終わっていないしなんなら同点だ。そろそろ引き戻してやろう。
「まだ同点だ、皆もう1回気を引き締めていくぞ」
「そういうこった。まあ決勝点は俺が決めてやるから見てろって」
俺の言葉に吹雪が続く。それで皆今一度真剣な表情に戻り、それぞれのポジションへと戻っていく、
その過程で俺が目にしたのは、明らかに余裕を失ったレーゼと困惑を隠せないジェミニストームの面々だった。
「我々が失点…そんなことが、あっていいはずがないのだッ!!」
ホイッスルと共にこの試合の中で間違いなく1番のスピードで走り出すレーゼ。あまりの速さに誰も追いつけず、行く手を阻むことが出来ない。
レーゼがディアム、リームと名を呼ぶと茶髪とピンク髪がそれに迫るスピードで切り込んでいく。
これはマズイな、俺の経験則から来る読みだと相当なシュートが飛んでくるはず。レーゼがあそこまで深く切り込んでいる以上阻止は不可能、なら大人しく守りに徹するのが吉。
恐らく出てくるのは連携技。となると守1人は勿論壁山と塔子のシュートブロックでも少し危ないかもしれない。
俺がいなければな。
「壁山!塔子!守!俺が時間を稼ぐ!その隙にしっかり体勢整えとけ!」
「柊弥!?」
レーゼが高くボールを蹴り上げ、他の2人がそれに追従するように飛び上がったくらいのところで俺もゴール付近へと到着する。
蹴り上げられたボールは上空で小宇宙のようなフィールドを展開し、その中央にあるボールを2人が蹴り落とす。凄まじいエネルギーを秘めているそれに対して、更にレーゼが追い打ちを掛けるかのように蹴りを叩き込み、こちらへ向かって放つ。
「ユニバースブレイクッッ!!滅びよ地球人ッ!!」
肌で分かる。凄まじいシュートだ。連携技であることもあって間違いなく先程の染岡の新必殺技よりも、俺の練習中の技よりも、吹雪のエターナルブリザードよりも強力だ。
だからこそ、俺も後ろに下がってきて良かった。雷門最強のこの守備に更にもう1つ加われば、止められないものはない。
「これが本来の使い方だ!!サンダーストームッ!!」
バックステップと共に指を鳴らして飛び上がり、空中で11本の雷剣を呼び出す。直後俺が生み出すのは雷雨の如き剣閃。迫り来るシュートに対して次々と襲い掛かる剣は、僅かにではあるが確実にシュートの威力を削ぎ落とす。
残念なことにこのシュートはやはり強力、11本という数量を誇る剣は次々に折られ霧散する。だが、稼いだ時間は十分のはず。
「後は頼むぞ!お前ら!」
「はいッス!ザ・ウォール改!!」
「任せて!ザ・タワー!!」
引き際と判断し身を引くと、そこには準備万端の2人がいた。片や巨大な壁を創り出し、片や塔の頂点から猛々しい雷を叩き付ける。
それでもシュートを完全に殺しきることは出来ないが、大きく威力が落とされる。十分なくらいだろう。
ここまで俺達が気合い見せてたんだ、お前も見せてくれるよな?
「守ッ!!」
「へへっ、皆ありがとな…このシュート、絶対に止める!!」
十分な溜めから呼び出された魔神は絶対的な安心感を俺達に与えてくれた。
突き出された右手とシュートが衝突した瞬間、凄まじい衝撃が俺達にまで伝わってきた。守も堪らず後ろに押されかけたが、決死の表情で踏ん張ってそれを耐えてみせる。
「絶対、絶対に止めるんだァァァ!!」
咆哮。守に応えるように魔神も雄々しく吠える。その瞬間一際強い光が放たれ、一瞬俺達の視界は奪われる。
視界が戻った時に俺達が目にしたのは、シュートを堂々と止めきった守の姿だった。
「行くぞッ!!反撃だァッ!!」
守がロングパスを出す。それを受け取ったのは染岡。隣の吹雪と共に颯爽とジェミニストームのゴールへ向かって走る。
先程のワイバーンクラッシュを警戒したのだろう、レーゼが絶対に撃たせるなと染岡へ徹底マークを指示する。すると当然染岡は厳重なマークを受け、それ以上の進行を許されない。
しかし、それが染岡の狙いだった。
「いけェ吹雪ィ!!」
「染岡!?」
先程の意趣返しのように染岡が吹雪へパスを出したのだ。自分がマークされることを予想した上で吹雪に撃たせることを選んだのか?この土壇場でそんな…随分燃えることするじゃないか、染岡。
一瞬吹雪は困惑を見せた。しかしすぐさまいつもの笑みを浮かべ、受け取ったボールと共にシュートの体勢に入る。
「吹き荒れろ!エターナルブリザァァァドッッ!!」
ボールを両足で挟み込み回転、その瞬間これまで以上の暴雪風が巻き起こる。完全に凍りついたボールに向かって回転しながら付けた勢いのまま思い切りシュートを放つ吹雪。ゴールに向かうまでにシュートが描く軌跡全てが凍りついていることが威力の高さを物語っているだろう。
相手のキーパーは必殺技で抵抗を試みるが、あまりの勢いに身動き取れず、そのまま空中へと投げ出された。
ゴールを守る者がそうなればその後は語るまでもない。ゴールごと凍りつかせたシュートが全てを教えてくれる。
『ゴール!!!吹雪のエターナルブリザードが炸裂!!ここで試合終了だァァァァ!!』
得点を告げるホイッスルと共に鳴らされたのは試合終了のホイッスル。スコアボードは2-1。2点が示すのは雷門、そう俺達だ。
「────ッ、やったぁぁぁぁぁ!!!!!」
誰よりも早く声を上げた守につられ、その場の温度が上がるくらいの熱気と歓喜がフィールドを包み込んだ。
俺はその場で胸の辺りを抑え、ここにいない仲間達の顔を思い浮かべる。
「半田、マックス、影野、少林、宍戸…修也。俺達は…勝ったぞ!」
アイツらと戦えなかったのは残念だが、その想いは俺がちゃんとここに連れてこれただろうか?…いや、俺が疑っちゃいけないな。預かったのは他でもない俺自身なんだから。
いつまでも鳴り止まない拍手喝采が俺達の勝利を祝福している。今はこの勝利を素直に喜ぼう。
俺も守達に混ざる。その場にはマネージャーや目金、更に白恋の皆も集まって大騒ぎだった。
中には泣いてるヤツもいる。どれだけのこの勝利が大きなものなのかが嫌でも分かる。
だが、そんな大盛り上がりだったからこそ。その空気を切り裂く様なことには敏感になってしまっていた。
「…お前達は知らないんだ、本当のエイリア学園の恐ろしさを」
その場とは真逆の、氷のように冷たい声で呟かれた言葉に全員が声を止めてしまった。
ジェミニストーム撃破!!おや?レーゼの様子が•••
柊弥の新技のモチーフですが、一部の人には分かるかもしれません。もし興味あるという方は「ヘブバン 月歌 千紫万紅」と調べれば多分動画がヒットするはずです、多分。