Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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スプラに無限に時間吸われてます
ちょっと短めです


第53話 力の意味

 

 

「らァッ!!」

 

 

 全身全霊で撃ち込んだシュートがゴールネットを揺らす。もう何回この流れを繰り返しただろうか? イプシロンとの試合が終わった後、何も出来なかった無力感やら怒りやら、自分の中でごちゃごちゃになっているこの気持ちを晴らすために1人ボールを蹴っていた。

 辺りは既に真っ暗、当然だ。時刻は22時を刺そうとしているくらいだ。夕飯や風呂などは既に済んでおり、各々休息に入る時間帯だ。他の皆はおそらく既に眠りに着いている頃だろう。

 明日の早朝にここを発つため本当は早めに休むべきだ、当然の試合の疲れもあるからな。しかし──

 

 

『1つ助言をくれてやろう!! 己のシュートに追い付くスピードは大したものだが、貴様には増幅した力を制御しきるパワーが備わっていない!』

 

 

 デザーム、敵であるヤツから突きつけられた助言のようなものが頭にこびりついて離れない。それに先程の鬱憤が加わって身体は寝ることを選んでくれないんだ。

 パワーが備わっていない、というのはそのままの意味か。あのシュートは度重なる打ち込みによって威力が乗算式に跳ね上がるためコントロールしきるにはそれ相応の力が必要になる。先の特訓でシュートに追いつくスピードは完成したが、まだパワーが足りていないというのは否定出来ない要素ではある。

 だがそれは一朝一夕で身に付くようなものでは無い。北海道でスピードを身に付けた時の、何か特別な環境さえあれば或いは・・・

 

 

 

「お困りのようですな」

 

「貴方は・・・漫遊寺の」

 

 

 掛けられた声に振り向くとそこには漫遊寺の監督さんがいた。いかにも修行僧な見た目は荘厳さを感じさせる。杖をつきながらこちらへ向かってくると、近くのベンチに腰かけた。

 

 

「何か迷っておられるようですな」

 

「分かるんですか」

 

「これでも僧として多くの人を見ておりますゆえ・・・よろしければ話してみてくだされ」

 

 

 その人の言葉はやけに心へと入り込んできた。あまり関わりのない人にする相談では無いとは思うが・・・ここは言葉に甘えてひとつ。

 

 

「・・・力が欲しいんです」

 

「ほう」

 

「俺はサッカープレイヤーとして絶対ではなくともそれなりの実力があるつもりでした。しかし、エイリア学園の襲来でそれは大きな驕りであると痛いほどに思い知った」

 

 

 脳裏に過ぎるのはジェミニストーム、イプシロンに対して為す術なく打ちのめされた俺自身の姿と、同じく倒れ伏す仲間達、皆の姿。

 

 

「俺は強くなりたいんです。手の届く場所にいる仲間全員を守りきれるような、そんな力が欲しい」

 

 

 フラッシュバックする半田が、マックスが、影野が、少林が、宍戸が苦しむ姿。そして俺に背を向け去って行く修也。

 俺が宇宙人なんかに負けないくらい強かったら、そんなことは起きなかったのかもしれない。先程の試合で少なくとも引き分けまでは持っていけたのかもしれない。皆が傷つくことはなかったのかもしれない。そう思うと拳に力が入り、肉の奥の骨がミシミシと音を立てる。

 

 

 そんな俺を見て監督さんは二、三度頷いた後に月を見上げ、口を開いた。

 

 

「貴方の求める強さとは、つまるところ腕力ですな。敵に打ち勝ち、皆を守るための強い力」

 

「はい」

 

「ですがね、私はこう思うのです。強さとはひとえに腕力のみからなるものでは無いのです」

 

「・・・というと」

 

「"心"です。例え天下無敵の腕力、即ち身体を備えていてもそれを存分に振るうための心が鍛えられていなければ、それは持ち腐れにしかなりません」

 

 

 心。言い換えればメンタル。今の俺にはそれが備わっていない、ということなのか? 少なくとも自分では宇宙人と戦うために常に強気な心持ちでいたつもりだ。

 だが本当はそんなことはなかった、ということか? 

 

 

「思う存分悩まれると良い。貴方ほどの強きお方ならば、果てに必ず答えを見つけることは出来ましょうぞ」

 

 

 そう言って監督さんはまた何処かへ去っていった。

 強さとは腕力だけではなく、心からなるものである・・・ダメだ、経験の浅い俺ではその言葉を理解することは出来ない。

 ならやはり、今はひたすらに鍛えることしか出来ない。守がいつも言っていることではないが、流した汗は必ず自分を裏切らない。それを信じて、ただひたすらに動いていたい。

 

 

 1人ボールを抱えてゴール前に立つ。イメージするのは昼間に見たばかりのデザームが構えるゴール。俺はそこに向かって全力で蹴り込む。

 闇を、風を斬り裂いてボールはまたゴールネットを揺らす・・・ことは無かった。

 理由は単純明快、人がそのシュートの行く手を阻んだからだ。

 見慣れない赤髪の少年、おそらく同じくらいの歳であろう人物が俺のシュートを軽く止め、遊ぶようなリフティングを見せた後地面に落とす。

 

 

「良いシュートだね。流石雷鳴ストライカー、加賀美君だ」

 

「お前は? 漫遊寺の生徒・・・では無さそうだな」

 

「俺はヒロト、基山(きやま) ヒロトって言うんだ」

 

 

 ヒロト、と名乗ったその少年はボールを爪先で転がしながらこちらへと歩み寄ってきた。その細かな一挙手一投足と俺のシュートを軽く止めたことからサッカーの嗜みが一般以上にあることが伺える。

 

 

「お前、さっきから見てたな?」

 

「バレちゃった? 悪気はなかったんだ」

 

「漫遊寺の監督と話し終わったのを見計らったような登場だったからな。別に責めちゃいない」

 

 

 と言いつつこちらへ転がすようにボールを返してくる。それを足底で回転をかけながらつま先に乗せ、軽く上げて腕の中に納める。

 

 

「宇宙人との試合、見てたよ。あのシュートは惜しかったね」

 

「最後の一本か、あのチャンスをものに出来ないようならまだまだだ」

 

「自分に厳しいね。フットボールフロンティアの中継て見たことないシュートだったけど、新しい必殺シュートかい?」

 

「まあな。中々完成まで持ち込めないが」

 

 

 初対面だが随分とフレンドリーなヤツだ。別に悪い気はしないからいいが、ここまでグイグイ来られるのはあまり経験がない。

 

 

「・・・最後の打ち出す直前、空中から下に向かって踵で叩き付けるのはどうかな」

 

「踵・・・そうか! 脚の中で1番硬い部分かつ、重力に従って落とすように最後のエネルギーを注げばその過程で失われる威力は最小限に抑えられる」

 

「そういうこと。まあ結局打ち出す場面で踏ん張らないと威力は減衰してしまうけどね」

 

 

 思いもよらぬところで必殺技のヒントを得ることが出来た。イメージが崩れない前に早速試してみよう。

 まず一発目、それなりのエネルギーを注ぎながら大きく前へと送り出す。

 二発目、そのコースに先回りし、今度はやや上空へと蹴り上げる。

 そこからはそれの連続だ。威力を増幅させるために何度も蹴り上げ、目指すのは更なる高み。

 もはや触れる俺すらを焼き尽くす勢いで迸る雷に耐えながら俺はとうとうボールに強烈な踵落としを浴びせる。かなり強めの力を加えられたことで空より落ちる稲妻のようにボールは地面へ。

 これまで以上の手応えに半ば感嘆しつつも最後の仕上げに俺は駆ける。空中で身を翻し自分自身も稲妻のように地面へ落ちる。ボールより先に辿り着くために強烈なGを感じながらも着地、しっかりと構え──

 

 

「いけェェェェェッッッ!!」

 

 

 しっかりと地面で踏ん張りを効かせたボレーシュートを決める。だがボールの内包するエネルギーがあまりに強大すぎるせいでやはり大爆発が起こる。

 結果だけ見れば明らかな失敗。だがそれでもゴールへ突き刺さるシュートは昼間に放ったそれより数倍強いように思える。

 この必殺技の土台はこれで完成と言っていい。後は俺がこのシュートに喰われないようになるだけだ。

 

 

「良い脚応えだ。お前のおかげだ──」

 

 

 ヒロト、と名を呼ぼうとした時にはそこには誰もいなかった。おかしいな、ついさっきまで横から俺を見ていたはずなんだが・・・

 

 

「まあ、いいか」

 

 

 お礼は今度会った時言えば良い。確証はないがアイツとはまたどこかで会いそうな気がするからな。

 とりあえず、ここらで切り上げて俺も寝ることにする。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「ただいま帰りました、父さん」

 

「戻りましたか・・・ヒロト」

 

 

 古風な襖が開き、外から入ってきたのは赤髪の少年。それを迎えたのはどこか温和そうな雰囲気を感じさせる、年配の男性。

 男の名は吉良 星二郎。日本で有数の規模を誇る"吉良財閥"の会長である。

 ヒロトは吉良の前に正座し、吉良は再び口を開く。

 

 

「それで、何か成果は得られましたか?」

 

「いえ、接触に加え、必殺技を間近で観測しましたが・・・特に反応は」

 

 

 そう言ってヒロトか懐から取り出したのは銀色の小さなケース。その中から姿を見せたのは、紫色の光を放つ怪しい石。

 それを見た吉良は何処か残念そうな含みを持たせた溜息を吐き、再びケースに閉まったそれを懐に収めた。

 

 

「夜分に御苦労でした。今日はもう休みなさい」

 

「はい、失礼します」

 

 

 ヒロトが部屋を後にしてすぐ、吉良は硏崎という名を呼ぶと奥の襖から長身痩躯で少々顔色の悪い男が姿を現す。

 その男は吉良の忠実な秘書である。呼ばれて直ぐに部屋に入り、吉良の横へ立つ。

 

 

「ヒロトが彼との接触を図りましたがやはり変化は無かったようです」

 

「成程・・・ではやはり、"コレ"に至るにはもっと密接な接触が必要になるかと」

 

 

 そう言って硏崎が懐から取り出したのは、紫の中に紅色が混じり淡く光る石。先程の紫色の石とはまた違った怪しさを醸し出していた。

 

 

「イプシロン達はどうでしたか?」

 

「こちらの物と同じような変化がデザームの石に確認されました。試合終了間際に全力に近いシュートを受けたからと考えられますが、依然として出力に目立った差は見られません」

 

「ふむ。となるとあの潜在的な力を引き出した上でなければ意味が無さそうですね」

 

 

 そう言って何かの操作をすると、目の前のモニターにある映像が映し出される。

 それはフットボールフロンティアの決勝、世宇子との試合の中で得体の知れないオーラを解放し圧倒的な立ち振る舞いを見せる柊弥が映る映像。

 

 

「まだまだ彼、ひいては雷門中には強くなってもらわなければなりませんねえ・・・頼みますよ? 瞳子」

 

 

 その笑みに宿されたのはドス黒い野望。そんなものか向けられていることは、当の本人達は知る由もないのであった。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「ご迷惑をおかけ致しました。我々の代わりに戦っていただいたこと、感謝しております」

 

「こちらこそ、色々とありがとう!」

 

 

 翌日の9時頃、俺達は漫遊寺イレブンの見送りを受けながら京都を出発しようとしていた。

 監督曰く、この後はイプシロンとの再戦に備えて一旦東京、雷門へ戻り調整に入るつもりらしい。

 

 

「そういえば、木暮君は・・・?」

 

「木暮ですか、確かに姿を見ないですね」

 

 

 春奈が木暮の行方を尋ねるも、柿田をはじめ誰もその所在を掴めていないという。ユニフォームは返されているようだが、最後にまた姿を拝んでおきたかったな。1度だけとはいえ共に戦った仲間だ。

 

 

 漫遊寺イレブンや監督さんとの話を終えて俺達はバスへ乗り込む。その際、俺の方を見て微笑みかける監督さんを発見したため一礼を返しておく。

 結局昨日は寝るまで言われた強さについて考えてみたが、やはりしっくりくる解答が浮かばない。時間をかけて見つけていくしかないようだ。

 それとあの少年、ヒロトを探してみたがやはり見つからなかった。大人しくまた会えるのを楽しみにしておこう。

 

 

「それではご武運を、雷門イレブンの皆様」

 

 

 激励を受けてキャラバンは走り出す。

 中では皆がイプシロンのこと、それに一緒に戦った木暮の話している。中には木暮を入れなくて良かったのかという声もあったが、何を毛嫌いしているのか目金が心の底からの拒絶を見せている。実際キャラバンに引き込めればかなりの戦力になったかもしれないだけに姿すら見れなかったのはやはり残念だ。

 

 

「あ、あのう・・・盛り上がってるところ申し訳ないんスけど」

 

 

 皆で話をしていると壁山が1番後ろの席から恐る恐るといった声色で声を上げる。

 何があったのだろうか、と思いながら皆後ろを向くと、次々驚きの声が車内に響いた。

 

 

「うっしっし」

 

「・・・不法侵入か?」

 

「いや、家宅や建物ではないからセーフだ」

 

 

 鬼道から冷静なツッコミが飛んでくる中、いつ紛れ込んだのか木暮が壁山の隣でイタズラな笑みを浮かべる。

 それを見て瞳子監督が漫遊寺の監督さんにすぐ連絡を取るが、木暮の意思ならばそのまま連れて行ってやってくれとのことだ。

 木暮に意志を問うと、もはや着いてくる気満々のようなので監督がキャラバンへの乗車を正式に認めた。

 

 

「またキャラバンが賑やかになるな」

 

「あはは・・・そうですね」

 

 

 その呟きに春奈が笑って返してくる。まあ賑やかなのは悪いことじゃないし、木暮の潜在能力は確かなものだから何だかんだ良い方に転ぶだろう。きっと。




もう少しで10万UАらしい
感謝感謝
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