Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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更新めちゃくちゃ遅れました、申し訳ないです
しばらく更新頻度は期待しないで貰えると助かります・・・流石に1ヶ月も空けないとは思いますが一応、念の為


第54話 影は三度妖しく笑う

「わあああああ!!僕の大事なレイナちゃんが!!」

 

「俺の雑誌も酷いでヤンス!!」

 

「うっしっし!」

 

 

 嘆く目金に憤慨する栗松。理由は明らかだった。2人が大切にしたフィギュアにサッカー雑誌が見るも無惨な姿に変貌……いや、壊されたとかでは無いのだが、これでもかと落書きをされていた。

 犯人は語るまでもなく木暮。イナズマキャラバンに乗り込んでくるや否や、惜しみのない暴れっぷりだな。被害を受けた2人からしたらたまったものではないだろうけれど。

 

 

「木暮君!皆に謝りなさい!」

 

「うっ……ごめんよ」

 

「ま、まあまあ!本人も謝ってるからさ!な?」

 

 

 守の宥めに渋々と言った様子で2人は頷く。

 それにしても、木暮は春奈の言うことは随分と素直に聞くな。塔子が言ってるが、まるで姉と弟のようだ。春奈自身が鬼道の妹ということもあり、弟のように見れる木暮の存在はどこか新鮮なのかもしれないな。

 だがまあ、なんというか。出会って間もないのに春奈そこまで仲が深まって見えている木暮は……少し羨ましいな。

 

 

「加賀美君?浮かない顔してどうしたの?」

 

「あー、なんでもない」

 

「……音無さんに気にかけられてる木暮君に嫉妬してたり?」

 

「断ッじてそういう訳じゃない」

 

 

 通路越しに座っている秋が茶化してくるが、割と本気で辞めて欲しい。

 普通に春奈に聞こえかねない距離だし、他の皆にも変な誤解をされかねない。それで迷惑をするのは春奈だからな。俺が何やら邪な感情を向けているだなんて囃し立てられたらこのキャラバンでの居心地が悪くなってしまうに違いない。

 

 

「だーッ!!」

 

「キャプテン!」

 

 

 そんな収集のつきそうでつかないやり取りをしていると後ろの方の座席から派手な音と守の悲鳴に近い声が聞こえてくる。何が起こったのかと振り返ると、見事に顔面から転んだ守の姿があった。

 身体を起こして何やら足元を見ると、靴紐同士が結ばれていたようでそれで転んだということが分かる。

 犯人はまあ、言うまでもないだろう。

 

 

「木暮ぇぇ!!」

 

「うっしっし!!」

 

 

 ……賑やかになるな、キャラバンも。

 また春奈が木暮を叱ったところで騒ぎは一段落し、東京に向かってしばらく走り続ける。俺は長道に揺られながらも昨日のことを思い出していた。

 漫遊寺の監督に言われた"心"のこと。それに必殺技の完成に近付くアドバイスをくれたあの少年、ヒロトのこと。

 心に関してはやはりよく分からないから置いておくが、出発の時にヒロトに会えなかったのが少し残念だ。改めて礼の一つでもしておきたかった。

 

 

「あら、響木さんからメール?」

 

 

 ふとした時、前の席に座っていた監督がそんな言葉を漏らすものだから思わず聞き耳を立ててしまう。声に出してメールを読む訳ではないからそれで何かが分かるわけではないが。

 それにしても響木監督からか。確か響木監督は理事長と一緒に情報収集などに回っているはずだから打倒エイリアに向けて有力な情報でも手に入ったのかもしれないな。

 また新しい仲間が増えるのだろうか。あるいは、怪我をしていた皆が復活したり……は流石にないか。あの怪我は完治するには少なくとも1ヶ月は掛かるだろう。アイツらとまた戦えたらどれだけ嬉しいことか……

 

 

「影山が愛媛に"真・帝国学園"を設立した?」

 

「影山!?」

 

 

 瞳子監督の口から零れた言葉にキャラバン内のほとんど全員が反応した。特に顕著だったのは鬼道に守。

 話によると影山は北海道の刑務所へと送られている最中に車ごと雪崩事故に遭遇、連絡を受けた現地の警察が現場へ向かうもそこに残っていたのは雪崩に巻き込まれ横転した車と護送に当たっていた警官のみ。影山はどこかへ姿を消していたと言う。

 そんな影山が愛媛にて真・帝国学園という学校を設立したらしい。

 

 

「よし、愛媛に行こう!影山のことだ、何か企んでるに違いない!!」

 

「賛成だ!あいつの好きにはさせられない!」

 

「なあなあ、影山ってサッカー協会の副会長だった人だろ?そんな人を何で倒さなきゃいけないんだ?」

 

 

 そんな皆のムードに塔子が疑問を持つ。確かに、影山の悪事については表沙汰になっていないから知らないのも無理もないだろう。

 それに答えるように隣に座っていた鬼道がその問いに答える。過去の事件にあの地区大会決勝のこと、それに神のアクアについて。影山が犯してきた悪事を連ねていくと何も知らなかった塔子も他の皆と同じように憤慨する。

 

 

「今度は何を企んでるんだ?」

 

「悪いことに決まってるさ!俺達が止めなきゃ……」

 

 

 先程までは木暮のイタズラによって賑やかだったキャラバン内だったが、今は真逆の空気だ。影山への負の感情が渦巻いて少し息苦しい雰囲気になってしまった。

 そりゃ当然アイツのことは許せない、いや許してはいけない。守のお祖父さんの命を奪い、当時のイナズマイレブンを壊滅に追い込み、自身の生徒である帝国の皆すらも使い潰した。世宇子の件だって影山がアフロディ達の心に付け入ったんだろうな。最後の最後でアイツらと戦って分かったが、世宇子の選手達は元々は俺達と同じく純粋にサッカーを楽しむ連中だったんだから。

 

 

「うわあああああ!!」

 

「どうした壁山!」

 

 

 思案に耽っていたら壁山が急に情けない声を上げた。何があったのかと壁山の座る後ろの方へ振り返ると、これでもかと落書きを施された壁山の顔が視界に飛び込んできた。

 

 

「ん゛ッ」

 

 

 しかも中々にクオリティが高い。壁山の顔を1つのキャンパスに見立てて描かれたストリートアートのようになっているのだ。これには流石に耐えきれず吹き出しかける。他の皆は大爆笑、壁山は「なんで笑うんスか!」と同情を求める。

 やったのは十中八九、いや絶対に木暮だ。その証拠に壁山の手から逃れるために後部座席からこちらの方へと逃げてきている。

 

 

「木暮君!!」

 

「うっ」

 

「シートベルトをする!席から立たない!守れないなら帰ってもらうわよ!」

 

 

 再び春奈の説教を貰った木暮はそそくさと席へ戻っていった。懲りないヤツめ。

 

 

「全くもう!」

 

「……おっと」

 

 

 溜め息をついて春奈が座ろうとした直前、座席に仕掛けられた変なものに気がついた。

 大方木暮が仕掛けたブーブークッションとかそんな類だろう。とはいえこのまま座らせたら春奈が大恥をかかされる。それは流石に看破出来ないだろう。

 サッとそれを撤去し、いい感じの力で座席の下を滑らせるように放り投げる。凄いいい感じを極めたようなその投擲は滅茶苦茶いい感じに木暮が席に座る直前に前に出した足元に滑り込み、全体重をかけられたクッションはド派手な音を鳴らす。

 

 

「えっ」

 

「こ、木暮お前……」

 

 

 一瞬にして木暮に集中する全視線。よもや自分がそれを受けることになるとは思っていなかったのだろう。木暮は言葉を失って立ち尽くしている。

 

 

「身体の割に随分デカいのかますじゃない」

 

「密室でそれは犯罪だよ木暮」

 

「「「あはははは!!」」」

 

「ち、違うってこれは俺じゃ!!」

 

 

 狼狽えながら弁明する木暮と目が合ったのでとびっきりの笑顔を向けてやる。すると木暮は真っ赤だった顔を青白くして席に座った。

 友好の笑顔のつもりだったんだが……どうやら違う何かとして受け取られてしまったらしい。

 

 

 何やかんやとありながらキャラバンは次なる目的地、愛媛へと向かっていく。結構な距離のため長時間座りっぱなしになっていたが、雑談なりなんなりとしていれば案外早く過ぎるものだ。

 そうして俺達はようやく愛媛へと到着。途中のコンビニで昼休憩を挟むことになった。

 移動だけでそこまで腹は減っていなかったのでとりあえずおにぎり2個程度で済ませておくことにする。

 

 

「壁山、そのデカい袋はなんだ」

 

「みかんッス!愛媛は本場ッスからね!加賀美さんも食べるッスか?」

 

「……1個貰おうか」

 

 

 用を足すために向かったトイレから出ると、目の前で壁山がボールでも入ってるのかというほどの大きさの袋を抱えて会計をしていた。どうやら中身全てみかんらしい。

 好意に甘えて1個貰い、外で食べていると守が誰かと電話していた。大方お母さんだろう。

 

 

「だから勉強はちゃんとやってるって!瞳子監督、その辺うるさいから……」

 

 

 どうやら旅のせいで勉強が疎かになっていないか心配されているらしい。ただでさえ勉強はからっきしな守だからまあ親からしたら心配にもなるだろうな。

 ちなみに守が言った通り瞳子監督は勉強に関してはかなり厳しい。毎日勉強する時間が設けられているし、ノルマが終わらなければ練習にも参加出来ない。とはいってもそこまで難しいものではない。大抵は教科書を見ながらやればそんなに苦労はしない。強いて言うなら計算やら証明が付きまとう数学が面倒と言ったところか。俺は結構得意だから苦しくはないが、皆それなりに苦戦しているように思える。特に守。

 まあそんな時は俺や鬼道、夏未辺りがサポートには入るし、たまに瞳子監督も教えている姿を見る。俺も1度だけ監督に教えてもらったが、異常なレベルで分かりやすかった。

 

 

 そういえば俺は母さんに連絡してないな。行ってこいと背中を押されたが、旅立ちの前にあんな怪我をしたこともあって心配されているかもしれない。時間を見つけて俺も電話の1つでもしておかなきゃな。

 

 

「……お?」

 

 

 壁山のみかんを食べ終えキャラバンに戻ろうとすると、視界の先で独特な髪型、もといモヒカンの少年がリフティングをしていた。正確なボールコントロール、それでいて体幹が全くブレていない。只者じゃないな。

 あちらも俺に気が付いたようで目が合った、その瞬間。

 

 

「へッ」

 

「おっと」

 

 

 こちらへボールを蹴ってきた。そんな大それた威力がある訳ではなかったので軽くこちらも受け止めてやる。

 そしてその少年はこちらへ歩み寄ってくる。……さっき只者ではないと評したが、色んな意味で只者じゃないな。雰囲気で分かる。

 

 

「お前、俺を……いや、俺達を待ってたな?」

 

「ご名答。流石雷門の副キャプテン様は鋭いねえ」

 

「柊弥、どうした!?」

 

 

 電話を終えた守がこちらへ駆け寄ってきて、誰かが中から様子を見ていたのかキャラバンにいた皆も外へやってくる。

 

 

「けどさあ、遅くねえ?随分待たされたんだけど」

 

「待たされた、か。さてはお前、真・帝国……影山の手のヤツだな?」

 

「な、なんだって!?」

 

「ピンポーン、大正解」

 

 

 ということは、コイツは俺達が愛媛に向かってくるのを知っていたということになる。だがそれは俺達の他はメールを送ってきた響木監督しか知らないはず。俺達の誰かが名前も知らないコイツに情報を流す理由も手段もないし、響木監督が影山に連絡するなんてもってのほかだ。

 

 

「つまり俺達はおびき出されたって訳か。お前と影山に」

 

「そういうこと!話が早くて助かるねえ」

 

「私達をメールで呼び出した割には、貴方の方こそ来るのが遅かったんじゃない?」

 

 

 この口ぶりからすると瞳子監督はメールが響木監督のものからでないことを既に確認済みだったようだ。それでいて敢えてその話に乗った。目的は……まあ影山の目論見を潰すため、だろうか。

 

 

「俺の名前は不動 明王(ふどう あきお)。お前達を真・帝国へ招待しに来たのさ」

 

「招待だと?」

 

「そうさ、鬼道 有人クン。ウチにはあんたにとってのスペシャルゲストもいるんだぜ?……かつての帝国学園のお仲間さ」

 

 

 不動が口にした言葉は信じ難いものだった。真・帝国の裏にいるのは影山。アイツの闇を誰よりも知っている帝国のメンバーがまたその鞘に納まるなんて全く考えられないからだ。

 その考えは鬼道も同じだったようで、そんな訳ないだろうと強めに否定する。対する不動は自分で確かめてみろと挑発とも取れる言葉を返す。

 

 

 その言葉の真偽を確かめるため、だけでは無いが俺達は大人しく不動の案内で真・帝国学園へと向かうことにした。元々ここまで来たのは影山の企みを潰すため。何か罠があったとしても行かない理由にはならない。

 数十分程キャラバンを走らせると、廃工場が並ぶ港へ入った。寂れた空気に漂い霧まで立ち込めているせいで随分と薄気味悪い。

 ここで降りろ、と指示されたのは海に面した場所。しかしそこには何も無い。

 

 

「お前、どこにも学校なんてねえじゃねぇか!」

 

「短気なやつだな、少し待ってな」

 

 

 不動が何やら携帯を操作する。すると──

 

 

「──何か、揺れてないか?」

 

「……!皆、海だ!!」

 

 

 轟音と共に海面が、地面が揺れる。何事かと身構えたその時、巨大な船……いや、潜水艦が浮上してきた。その大きさは異常そのもので、戦艦と言って差し支えないレベルに巨大な船体を誇っている。

 まさかあれが真・帝国学園の校舎だとでも言うのか?そうだとしたら……

 

 

「……規格外すぎる」

 

 

 そう呟かずにはいられなかった。

 煌々と黒に光るその船体の一部が開き、階段がこちらへと伸びてくる。そこから俺達を見下ろしていた人物は、相も変わらず不気味な雰囲気を纏っている。

 

 

「久しぶりだな雷門イレブン……鬼道」

 

「影山ァッ!!」

 

「影山 零治!貴方はエイリア学園と何か繋がりがあるの!?」

 

 

 激昂する鬼道と問いを投げかける瞳子監督。そうか、この誘いに乗ったのは影山の裏にエイリア学園が絡んでいると踏んでのことか。

 

 

「どうかな。ただエイリア皇帝陛下からのお力添えを受けているのは事実だ」

 

「エイリア皇帝陛下?」

 

「ソイツが敵のボス、ってことか」

 

 

 宇宙人の皇帝、か。得体の知れない存在がまた出てきたものだ。しかしそんなことより今気になるのは、影山がその皇帝から力を借りているという事実。この巨大な潜水艦も、もしかしたら脱走の手引きもソイツから受けたのかもしれない。

 

 

「さあ鬼道、昔の仲間に会わせてあげよう」

 

「待て影山!!」

 

「鬼道!!俺も行く!!」

 

 

 奥へ消えていく影山、そしてそれを追う守。皆で着いていこうとしたがその行く手を不動が阻む。

 

 

「お前ら野暮だな。感動の再会に水を指すんじゃねえよ」

 

「お前らがあの2人に何かしないとも限らないだろう。信用出来ない」

 

「心配するなよ。お前達には俺達真・帝国と試合してもらうために来たんだからさ。鬼道と円堂、2人に潰れられちゃ倒しがいがないだろ?」

 

 

 試合か。俺達はコイツらの悪巧みを潰すためにここまで来たが、逆にコイツらの目論見が読めない。俺達をここに呼び出して試合をすることだけが目的だったのか?いいやそんな筈がない。連中の目的は恐らく俺達を潰すこと。それがただの私怨なのか、後ろにいる皇帝とやらの指示なのかは分からないが、何かしらの理由がある筈。

 

 

「来な。アンタらは試合まで控え室で待機してなよ」

 

「……監督」

 

「……行きましょう。この試合の中でエイリアに関する何かが掴めるかもしれないわ」

 

 

 ということで俺達は不動の案内で移動することになった。中は学校のような設備は一切なく、船の真ん中にグラウンドがあり、他には部屋が幾つかある程度だった。まるで最初から俺達をおびき寄せるためだけに造られたかのような設計だ。

 そしてその控え室とやらに移動する途中、俺達はグラウンドにいる守達を見た。そこにいたのは──

 

 

「佐久間に源田?影山の言ってたのはあの2人だったのか」

 

「本当だったのかよ……何であの2人が」

 

 

 佐久間。帝国のFWの1人だ。エースナンバーを背負っていないにも関わらずそれに匹敵する実力を備えた男だ。鬼道の補佐をしている印象が大きく、間違っても影山に再度従うような男には思えない。

 

 

 源田。帝国が誇るキング・オブ・ゴールキーパー。実はアイツとは小学生サッカーの頃からの顔見知りだ。キーパーとしての実力は当時の小学生の中ではナンバーワンだ。だがその実力に決して驕ることはなく、常に研鑽を欠かさず相手にも敬意を払う一本筋の通ったヤツだ。

 

 

 だからこそ、だ。何故よりによってあの2人が影山の元へ戻ってしまったのかが理解出来ない。それに何か様子がおかしい。最後に見た時より随分と闇を感じさせるようになった。

 ここまで来たら何となく分かるが、間違いなく影山が何かしているだろう。

 

 

 そうしていると守と鬼道が控え室に来た。あの2人と何かあったのか鬼道は随分精神的なダメージを負っているように見える。声を掛けてみるが問題ない、と取り繕われてしまう。

 2人の準備をも終わり、俺達は揃ってグラウンドへ出る。反対側から同じタイミングで真・帝国イレブンも顔を出してくるが、随分不気味な連中だ。尾刈斗とはまた違う、どこか危なげを感じるような不気味さだ。

 

 

「鬼道君、あの2人は貴方のチームメイトだったのよね」

 

「だった、ではありません。今もチームメイトです」

 

「そう……この試合、貴方に任せるわ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 鬼道を中心に作戦会議が始まる……が、正直作戦などない。相手は全くの未知数だ。1つ懸念点なのは、佐久間が語ったというヤツらの秘策。その詳細は定かでは無いが、影山が絡んでいる以上碌でもないものである可能性は高い。

 

 

「とにかくやるしかないだろ、アイツらに勝つ。そして2人の目を覚まさせてやろうぜ」

 

「加賀美……ああ!」

 

 

 とりあえず試合には勝つ、そして2人を助け出し、影山の背後にいるエイリアの秘密を暴く。それが俺達の狙いだ。

 控えはまだ怪我の治らない目金と日の浅い木暮。まだ連携が不十分な以上如何に能力が高いとはいえ木暮を出すのはリスキーだからな。

 

 

「加賀美、吹雪。前のイプシロン戦で煮え湯を飲まされた分暴れてやろうぜ」

 

「うん、そうだね」

 

「当然だ。こんなとこで負けてはいられないからな」

 

 

 そうして試合が始まる。すぐさま不動からボール奪いに行くが……コイツ、テクニックが凄まじい。恐らくは鬼道や一之瀬のような技術で相手を圧倒するタイプだ。負けじとプレスを掛け続けるがやはりボールは奪えない、

 

 

「お前に用はないっての、引っ込んでな」

 

「くッ!」

 

 

 そしてとうとう抜かれてしまった。そこに佐久間も加わり、2人は凄まじいスピードで切り込んでいく。アイツら、イプシロン程ではないが間違いなくジェミニストームと同等、いやそれ以上だ。

 どんどんゴールへ近づく2人を止めようと皆が動こうとするが、徹底的なマークで最小限の人数しか動けない。やがて最後の砦も破られ、佐久間がゴール前で守と向き合う。

 

 

「うおおおおおォォォォッッ!!」

 

「何て気迫だ……」

 

 

 このまま佐久間に撃たせるのは何かマズイ。そんな予感がして俺はすぐさま走り出す。それは鬼道も同じだったようで佐久間を止めにかかる。

 

 

「やめろ佐久間ァ!!」

 

皇帝ペンギン──

 

「それは──」

 

 

 俺より前を走る鬼道は手を伸ばしながら必死に佐久間へ訴えかける。何だ、一体何をそこまで焦っているんだ鬼道。

 だがやはり撃たせてはいけないという俺の予想は当たっているらしい。鬼道を追い抜かし佐久間を抑えようとさらに加速する。が。

 

 

「──禁断の技だッッ!!」

 

──1号ォ!!

 

 

 地面を砕き姿を現したのは真っ赤なペンギン。その1匹1匹が凄まじい力を誇っているのが分かる。恐らく皇帝ペンギン2号は勿論、あの試合で見せた帝国の奥義、皇帝ペンギン死神(リーパー)よりも強力だ。

 そしてペンギン達は佐久間の振り上げた脚へと喰らいつく。佐久間の脚はペンギンと同じような真紅のエネルギーを纏い、その全てをボールへとぶつける。

 

 

ゴッドハンドォ!!

 

「円堂!!」

 

「ぐッ、何だこのシュート──」

 

 

 守がすかさずゴッドハンドで応戦するが、一切の拮抗すら許されなかった。まさに全てを破壊するかのようなシュートは神の手を喰い破り、ゴールネットを激しく焦がす。

 そして、そのシュートが破壊したのはそれだけではなかった。

 

 

「ぐッ、ァァァァァァッ!?」

 

 

 シュートを放った佐久間、アイツまでもが苦しみに悶えるような声を上げながらその場に蹲ってしまった。

 あの威力、あの反応、そして鬼道の言葉。……大体読めた。

 

 

「鬼道、あのシュートは」

 

「……皇帝ペンギン1号。凄まじい威力を誇る代わりにストライカーの身体すらも破壊する禁断の技だ」

 

「それを佐久間に授けたのは影山……ってことか」

 

 

 自分の目的の為には教え子の犠牲すら厭わない……やはり、アイツはもう一度叩き潰さなきゃダメだ。俺達も腹を括らなければこの試合……確実に犠牲者が出る。




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