Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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新年明けましておめでとうございます、今年も本作をよろしくお願い致します
今年の目標は年内世界編まで完結させることです


第56話 またひとつ

「おーい!杉森ー!」

 

「む?円堂じゃないか!」

 

 

 愛媛にて影山、真・帝国学園との戦いを終え一時的に東京へと戻ってきたイナズマキャラバン。自由時間を言い渡されたため河川敷で特訓に取り組もうとした一同は時を同じくして練習に励んでいた御影専農の杉森、そして雷門中のジャージに身を包んだ見知らぬ少年、闇野カゲトことシャドウと遭遇する。

 そこで杉森が対エイリアに備えたバックアップチームを結成していることを知り、感極まった円堂が2人を加えて特訓をしようと提案、それが拒まれる訳もなく、ひたすらシュート音だけが木霊していた河川敷は活気に包まれ始めた。

 

 

「そういえば加賀美さんは何してるでやんスかね?」

 

「さあ。家でゆっくりしたかったとか?」

 

 

 しかしそこに柊弥の姿はなかった。夕方には各々一時帰宅するからと今は特訓することにしたのだが、柊弥だけはそれに参加せずどこかへ行ってしまったのである。その行き先を知るものは1人としておらず、円堂が送った連絡にも反応がないため完全に行方知れずである。

 

 

「珍しいよね、加賀美君が練習に参加しないなんて」

 

「そうね。真・帝国との試合であんなことがあったから少し疲れてしまったのかしら」

 

(柊弥先輩……)

 

 

 常日頃から率先して練習に励んでいる柊弥の今回の行動にマネージャー達も少々の違和感を覚える。が、そんな時もあるだろうとそこまで深く考えることはなかった……1人を除いて。

 

 

(……心配だなあ)

 

「音無さん、加賀美君のこと考えてるでしょ」

 

「ふぇ!?」

 

「ふふ、顔に書いてあるものね」

 

 

 唐突の指摘に思わず声が裏返る音無。木野と夏未は意地の悪い笑みを浮かべながら追求から逃れられないようにそのサイドを固める。

 

 

「ななな何を根拠にそんなこと!」

 

「ふうん、音無さんは加賀美君のことなんて微塵も考えてないんだ」

 

「そうとは言ってないじゃないですか!?」

 

「あら?随分と薄情なのね」

 

「夏未さんまで!?」

 

 

 顔を真っ赤にしながら2人の攻撃を耐え凌ぐ音無。どう言葉を選んで次々カウンターを浴びせられ、武力行使しようにも先輩2人のロックは振り解けない。

 そんな性格の悪い2人はある程度音無をいじめて楽しんだ後その拘束を解き、強めに背中を押してやる。

 

 

「多分だけど鉄塔広場じゃないかな?皆考え事をする時はあそこに行くから」

 

「私も何回かお世話になったわね……円堂君の受け売りだけど」

 

「木野先輩、夏未さん……」

 

「ほら行って行って!じゃないと皆に言いふらすよ!」

 

「ええ!?それは勘弁してくださーい!」

 

 

 木野のフィニッシャーにより音無は走り出した。行き先は提案された通り鉄塔広場。今にも転びそうなほど慌ただしい音無の背中を見送り、木野はぼそりと呟く。

 

 

「まあ、言いふらすまでもないんだけど」

 

「まったくだわ」

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 結構な長さの梯子を登りきり鉄塔から稲妻町を見下ろす。ここに来るのも久しぶりだ。風に頬を撫でられながら眼前の景色を眺めていると余裕の無かった心が少し和らいだように思える。

 急に練習を休むなんて言ってしまったが、皆怒っているだろうか。いや、疑問に思うことはあれど怒りはしないか。察しのいい鬼道なんかにはどういうつもりかバレているかもしれないな。

 

 

「……はあ」

 

 

 手すりに頬杖を着きながら溜息を吐く。ここに来たのは何と言うか……気持ちに整理をつけたかったからだ。真・帝国との試合の中であんな早まった真似をしてしまったことについて。そしてそれが原因となって染岡に無茶をさせてしまったこと。不動を殴り倒したことについては全く後悔はしていない。だがそれが原因である染岡の件は話が別だ。捉え方によっては俺が染岡に怪我をさせたのと同義だからな。本人は思ったよりも軽いと言って今も練習しているが、あんなことになってしまったという事実は揺るがない。

 染岡本人も他の皆も気にするな、と声を掛けてくれたがそうは簡単には割り切れない。そんな状態で練習をしても皆に迷惑をかけるし得られるものはないからこうして逃げてきた……という訳だ。自分の情けなさにまた溜息が出てしまう。

 

 

 まず、近頃の俺はエイリア学園に勝つために努力はしているが、そのせいで視野が狭くなっているというか、心に余裕が持てていないというか。間違いなく実力は高まってきているがそれを持って試合で何かを成せてはいない。点を決めた訳でも、致命的なピンチを超える一手を打った訳でもない。平たく言ってしまえば、俺という存在がこのチームにおいて必要しなくても良いものになりつつあると言ったところか。副キャプテンでもあり、チームを去っていった皆に啖呵をきった立場でこの有様はあまりに無様だ。

 

 

 だからここで切り替えよう。皆の役に立てるように、エイリア学園を倒すために。自分のやったことを綺麗さっぱり忘れる訳では無い、その反省を次に活かすんだ。幸いにして染岡は入院するような大きな怪我では無い。戻ったらもう一度謝って、この件はそれでおしまいだ。このまま悩み続けているだけなら本当に俺がいる意味は無くなってしまう。

 

 

「よし、戻るか」

 

 

 腹は決まった。とりあえず皆がいるらしい河川敷へ戻ろう。

 鉄塔から降り、河川敷へと向かう。すると、目の前から見知った顔が走ってきた。

 

 

「柊弥先輩!」

 

「春奈?どうした」

 

「柊弥先輩を探しに来たんです、皆心配してましたから」

 

「そうか……そうだよな、すまない。今戻るところだったんだ」

 

 

 わざわざ探しに来てくれた春奈と共に再び歩き始める。しばらく無言が続いたが、やがて春奈か問いを投げ掛けてくる。

 

 

「先輩、大丈夫なんですか?」

 

「まあな。いつまでも悩んでる訳にはいかないからな。副キャプテンである俺がこれ以上情けない姿を見せられない」

 

「情けないなんて、そんなことありませんよ!柊弥先輩は何時だって強くてかっこよくて、頼れる私達の副キャプテンです!だからその……元気出してください!」

 

「……そっか」

 

 

 春奈から怒涛の激励を受けてまた少し心が軽くなった。こんなにも俺を思ってくれる後輩の為にも、やはり悩んではいられない。河川敷についたら早速頑張ろう。

 そう思っていると目的地が見えてきたが、何か様子がおかしい。皆でベンチを囲んで慌てふためいているように見える。

 

 

「皆、どうしたんだ?」

 

「加賀美君!その……染岡君が」

 

「だから、何でもないっての!見ろよ、こうしてちゃんと歩け……ッ!」

 

「これ!それ以上下手に動かすでない!本当に手遅れになるのかもしれんのだぞ!」

 

 

 輪の真ん中にいたのは……染岡。脱がされたソックスの下から見えた脚は、これでもかと真っ青に腫れていた。こんなもの、知識がなくとも見ればわかる。重症だ。歩けることが不思議なくらいの、すぐにでも医者に見せなきゃいけないような。

 

 

「古株さん、染岡は」

 

「無理じゃ。お前さん達がイプシロンとの試合を控えていて染岡君が大きな戦力なのも分かっとる。じゃがその上で言わせてもらう」

 

 

 古株さんは一呼吸置き、俺達に言い聞かせるように言った。

 

 

「この脚でサッカーは無理じゃ」

 

「馬鹿言わないでくれよ古株さん!俺は、俺は何ともねえんだ!」

 

「染岡君」

 

 

 必死に訴える染岡。それとは裏腹に鋭く冷たい声が俺達の耳に飛び込んでくる。

 いつの間にかそこにいた瞳子監督は、迷うことなく言い放つ。

 

 

「貴方にはキャラバンを降りてもらうわ」

 

「そんな!染岡は大丈夫って言ってるんですよ!?染岡は俺達の大切な仲間なんです!」

 

「大切な仲間だからこそよ。もし彼がチームに残れば間違いなく無理をするし、それを気遣って貴方達は満足のいくプレーが出来なくなるわ」

 

「……その通りだ、風丸。悔しいが監督の言っていることは間違っちゃいない」

 

 

 残酷な事実を突きつける監督に対して風丸が真っ向から反論する。だが瞳子監督はそれを突っぱねたうえで染岡本人がそれを受け入れる。それを聞いた皆は落胆と動揺を隠せない。

 監督が染岡を病院に連れていくことになり、俺達は練習続行するように言い渡される。俺も当然練習に混ざる。そのために戻ってきたのだから。

 暫く暗いムードが続いたが、俺達がいない間に転校してきていたシャドウのシュートが守からゴールを奪いかけたり、木暮がイプシロンとの試合で見せたあの必殺技を完成させたりで明るい空気を取り戻した。

 

 

 だが、俺はどうしても顔を上げることが出来なかった。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「すみません、お見舞いに来たんですが……」

 

 

 翌日、俺は染岡が入院した病院へ足を運ぶ。確か部屋は半田達と同じはずだから……ここか。

 その部屋の扉の前に立ち、ノックの後に中へ入る。

 

 

「加賀美!加賀美じゃないか!」

 

「加賀美さんだ!来てくれたんですね」

 

「ああ。急に悪いな」

 

「加賀美、お前練習は」

 

「抜けてきた。どうしてもお前と話がしたかったからな」

 

 

 そこにいた染岡にそう切り出すと気を遣ってか他の皆が部屋を出ようとするが別にその必要は無いのでここにいてもらう。染岡のベッドの横に椅子を置き腰掛け、話を切り出す。

 

 

「脚、どうだって?」

 

「1ヶ月は大人しくしてろとよ。全く、俺は何ともねえってのに」

 

「……すまない」

 

「何でお前が謝るんだよ?」

 

「お前が怪我をしたのは俺のせいだ。俺があんなことをしたから、お前が無茶をしてこうなったんだ。だから本当はこうしてお前に会いに来る資格なんて俺にはない。けれどこうして謝らなければ俺の気が済まないんだ。だから……すまない」

 

 

 椅子から立ち上がり頭を下げる。許してもらおうだなんて思ってない。それで染岡の脚が治るわけでもないんだから。ただしっかり面と向かって謝らなければ、俺は染岡の仲間……いや、友達を名乗る資格はない。

 病室内はしばらく静寂が包まれる。その間、ずっと俺は頭を下げていた。それに痺れを切らしてか染岡が口を開く。

 

 

「頼むから頭上げてくれよ、加賀美」

 

「……だが」

 

「いいから。上げないなら一生許さねえ」

 

 

 そんなことを言われてはどうしようもない。俺は頭を上げ、真っ直ぐに向き直る。染岡は少し気まずそうにしつつも、ニカッと笑って俺に言葉をかける。

 

 

「お前がそんなに謝ることじゃねえよ。お前はお前のやりたいようにやった、俺は俺のやりたいようにやった。その結果がこれなんだから、別に後悔しちゃいねえよ。まあ、お前らと一緒に戦えなくなっちまったのは悔しいけどな!」

 

「……すまない」

 

「だーかーら!謝んなって。言ったろ?俺はお前のサッカーが好きなんだ。申し訳ねえって思うなら俺の分も頑張ってエイリア学園と戦ってくれよ」

 

「当然だ。こうなった以上、必ずお前の意思に応える」

 

「お前は真面目すぎんだよ、あの熱血バカの幼なじみでどうしてそうなるかね」

 

「だからなのかもね、加賀美が真面目ちゃんなのは」

 

「ははっ、違いない」

 

 

 染岡の苦言にマックスが、半田が便乗してくる。そう言われると少し心に来るというか、何とも言えない気持ちになる。

 だが、今の俺にはそんな軽口がとてもありがたい。

 

 

「だからよ、ほれ」

 

「どうした?」

 

「拳だよ拳。俺はここで安静にしてなきゃだけど、思いだけは常にお前達と一緒にいてえ。だから連れてってくれよ、俺の魂」

 

「成程な……任せとけ」

 

 

 染岡と拳を合わせ、心に誓う。俺が染岡の分も頑張ると、エイリア学園を必ず倒してみせると。

 

 

「よし、じゃあさっさと練習に戻れ!ここで油売ってたら吹雪にストライカーの座取られちまうぞ!」

 

「ああ。ちゃんと吹雪と2人で頑張るよ」

 

「おう!じゃあ、またな」

 

 

 皆に見送られて俺は病室を後にする。他でもない染岡本人にあそこまで言われてはこうクヨクヨしていられない。少しでも早く特訓に戻らなければ。

 俺が、染岡の分も点を取る。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「うおおおォォォ!!」

 

「うぐッ!……柊弥!気合入ってるな!」

 

「当然だ。染岡の分も俺がエイリア学園から点を奪うんだ」

 

 

 翌日、俺は気持ちを切り替えて特訓に励んでいた。今強化すべきはやはりシュート。染岡が欠けたことにより低下する攻撃力を何とかして補わなければならない。ストライカーを担うのは俺と吹雪の2人だが、この役目は何としてでも俺が担いたい。染岡への義理を通すという意味合い以上に、俺の1人のストライカーとしてのプライドがそれを後押ししている。

 

 

「だが流石にオーバーワークだ。一旦休め」

 

「いや、まだやらせてくれ鬼道。こんなんじゃまだまだ足りないんだ」

 

「ダメだ。自分を追い込むのは結構だがそれでお前まで欠けられたら不味い。ここは譲らんぞ」

 

「……分かった、お前がそう言うなら従うよ」

 

 

 俺はまだまだやれるが、鬼道から休憩を指示されてしまった。染岡に続き俺まで怪我をしたらチームが崩壊しかねないというのは理解出来るため、大人しく従うことにする。

 ベンチに戻り手渡されたタオルで汗を拭い、ドリンクを喉に流し込んでいると監督がをやってきたのが横目で見えた。

 

 

「皆聞いて、次の目的地が決まったわ」

 

 

 降りてくるや否や、練習中の皆を集め次の目的地を告げる。示されたのは関西、天下の台所と称される大阪だ。何でもあそこにエイリア学園のアジトがあるらしい。

 もしそれが本当なら確実にエイリア学園と戦えるだろう。だが、あの得体の知れない連中がこんなに早くしっぽを出すか?少し疑わしいところがあるが、理事長の調査に基づいての決定らしいので俺に口出しは出来ないな。どちらにせよ虱潰しにでも探さなければアジトの特定なんて出来やしないだろう。

 それにヤツら、デザームは去り際に再戦を宣言していた。これが外れたとしても近いうちに試合をすることになるだろう。

 

 

「よし!次の目的地は大阪だ!こっちから乗り込んでやろうぜ!」

 

「大阪っスか……お好み焼きにたこ焼き、串カツなんかも美味そうッスねえ」

 

「おいおい、遠足に行くんじゃないんだぜ?」

 

 

 壁山がそんな気の抜けたことを口にすると土門が鋭くツッコミを入れる。皆笑いながらも練習の片付けを始め、程なくして出発の準備も整った。

 

 

「じゃあ出発よ、乗りなさい」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 目指すは大阪、エイリア学園のアジト。もし本当にそこにアジトがあったのなら間違いなくイプシロンとの試合になるだろう。俺はそこで何としてでも点を奪って勝ちを掴んでみせる。

 だから見ててくれ染岡、俺がお前の分も戦ってみせるから。




1話のうちに曇らせから抜けたと思ったらまた曇らされ、また晴れる主人公。書いてる人はきっと人の心がないんです
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