Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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超特訓&???回です、ぜひ最後まで読んでやってください



第58話 ただひたすらに

「あー、疲れたー!」

 

「でも確実に強くなれてる気がするな」

 

「ああ。予想以上の成果を得られるかもしれない」

 

 

 ナニワランドの地下に広がる修練場にて、雷門イレブンは苛烈な特訓に励んでいた。エイリア学園のアジトがあるという報告を受けてやってきたこの大阪で、まさかレベルアップの場に巡り会うことになるとは思っていなかっただろう。だがイプシロンとの再戦はもはや目前、使えるものは何でも使うという精神が今必要なものだろう。

 

 

「そういえば加賀美は?」

 

「キャプテンはキーパーの特訓、吹雪さんはシュートの特訓、風丸さんはドリブルの特訓をしてるって言ってたっスけど」

 

「加賀美も1人で別メニューをこなしているらしい。とにかく俺達は俺達でやれることをやろうぜ」

 

 

 土門のその一言で一同は再び特訓に戻る。彼が言っていたように、現在円堂は不安定な足場でシュートが飛んでくる設備でキーパーの特訓、吹雪は強烈な回転をするロボット相手にシュートを決める設備での特訓、風丸はベルトコンベアー上で走り、不規則に飛んでくる脚を避けるドリブルの特訓に励んでいる。

 そして柊弥は、複数の仕掛けを突破してシュートを決める設備で1人四苦八苦していた。この短時間で既に相当動いているようで、汗は滝のように流れ、過呼吸のように息は上がっている。

 ここの設備は10段階のレベルを設定でき、今柊弥が対面しているのはレベル7。参考までに、現在他のメンバーが取り組んでいるのはレベル3である。

 

 

(流石に飛ばしすぎたか)

 

 

 だいたいはレベル1から順々にクリアしているようだが、柊弥は最初からレベル7である。その下のレベルがどの程度か下調べなどしていなかったため一瞬で後悔したとかしないとか。もっとも、途中でレベルを下げないあたりしていないのだろう。

 

 

「もう1回、やるか」

 

 

 汗を拭い再びスタートボタンを押す。直後現れるのは4つの仕掛け。まず1つ目はこちらへ突進してくる巨大なロボット。機械故に人のフィジカルを大きく超越しており、それがレベル7ともなれば相当なものだ。本来は回避を想定されているこのロボットだが、柊弥はそれに対して──

 

 

「ォォオラァッ!!」

 

 

 真正面からぶつかる。伝わる衝撃は少し気を抜けば一気に持ってかれそうな程。だが柊弥は全身に力を漲らせ、歯を食いしばってそれに耐える。真正面からそれを押し退けた柊弥はその弾みに体勢を崩しかけるが、すぐさま前に向き直る。

 直後襲いかかる2つ目の設備。これはイナビカリ修練場にもあったような電撃を飛ばしてくる銃だ。しかしその密度が尋常ではない上、ロボットを回避してすぐに押しかけてくるため避けることは困難。とはいえ全くの不可能というわけでもない。

 

 

「右、左、左、上、最後に左上ッ!」

 

 

 これら5つの電撃がほぼ同時に襲いかかってくる。毎回不規則なパターンで飛んでくるそれを一瞬で見極め、回避する必要がある。その1つでも掠ろうものならば──

 

 

「チィッ!!」

 

 

 全身が焦がされる。この設備は範囲外にボールを出せば自動停止するが、柊弥は逃げない。そのまま続行する。

 次に待ち構えるのは1つ目の仕掛けとは真反対に素早く圧を掛けてくるロボットだ。その上読みにくいフェイントまで織り交ぜてくるためここに辿り着くまでにダメージを負うと抜き切るのは困難を極める。

 

 

「速さが売りなんだ、ロボットなんかに負けてられねえよッ!」

 

 

 柊弥自身の強みの一つである速さ。それで負ける訳にはいかないという意地が柊弥の背中を押す。完璧にフェイントを予測した柊弥は難なくそのロボットを突破する。が、そこには先程の電撃が再び押し寄せてくる。スピードが必要な仕掛けを突破しすぐにやってくるのこの波状攻撃は、一瞬でも気を抜いたら即死は免れない。

 だが柊弥はそこで止まらない。極限の集中力を発揮している今の柊弥はさらにその先を目指す。更なる仕掛けは天井、床、壁あらゆる場所から突き出す槍のようなもの。これも動きを完璧に見きった上で突破しなければあらゆる角度から苦痛が襲ってくる。

 

 

(落ち着け、確実にパターンを見極めるんだ。ここを抜けられないようじゃ──)

 

 

 刹那、柊弥は異次元の加速を見せる。

 

 

「アイツらを越えることなんて、出来やしねェんだ!!」

 

 

 柊弥の脳裏に浮かぶのはイプシロン。軍隊のように統率されたあのディフェンスラインを突破し、デザームからゴールを奪うためにはフィジカルは勿論、正確に相手を見極める力も必要になってくる。その意識が柊弥の思考力に拍車をかける。

 自分に突き出される槍を1本、2本と確実に避けそのエリアのゴールが見える。だが直後、柊弥の予想を外れて1本の槍が右から飛び出してくる。

 

 

「喰らうかァァァッ!!」

 

 

 そこで柊弥が見せたのは凄まじい反射神経。槍が動き出したその初動を見て的確に反応する。正しく鬼のような表情を浮かべ、執念の元に歩を進める。待ち受けるのは最後の砦。それはあまりに大きく、硬く、強い機械兵。山と対面しているかのような圧が柊弥へ襲い掛かるが、そんなモノに怯む柊弥では無い。

 一瞬動きを止める柊弥。こちらを向いてどっしりと構えるロボットに対して息を整えながら鋭い眼光を向ける。当然、機械はそれで何かを感じることは無いが、何かを察知してか猛々しい機械音を鳴らす。

 そして、柊弥の背後からはここまで突破してきた仕掛け達が再び迫る。2つのロボットの腕が伸び、電撃と槍が突き刺さろうとしたその瞬間だった。

 

 

 柊弥は、空を駆ける。

 

 

「俺は、こんなところで止まっていられねェんだよォォォォッッッ!!!」

 

 

 全身全霊、渾身、究極。柊弥の放った一撃を言葉に表すならそんなところだろう。雷が轟くが如く豪脚を蹴り込まれたボールは、注がれる力を受け止めきれず対物ライフルの弾丸のように敵へと襲い掛かる。

 機械兵はその両腕を前に突き出し、もっとも最適な形でシュートを止めようとするが、凄まじい勢いに瞬く間に押し込まれていく。その巨体がゴールネットを揺らすのは、それから間もなくしてのことだった。

 

 

「やった、やってやったぞ」

 

 

 力を誇示するように己の力を誇示し、歓喜に震える柊弥。しかし、それは長くは続かなかった。一瞬見せた晴れ晴れとした表情から一転、再び見せた険しい表情のまま柊弥はどこかへフラフラと歩き出す。

 辿り着いたのはあるデバイス。殴りつけるように雑に操作してその設備のスタートラインへ立つ。

 

 

 デバイスの液晶画面に表示されていたのは"10"という数字と、真っ赤な"WARNING!!"の文字。

 ただひたすらに強くあろうとする1人の少年。彼に待ち受けるものが何なのか、今は誰も知らなかった。

 

 

 ---

 

 

 

「皆休憩だ! しっかり休め!」

 

「大阪名物持ってきたでー!」

 

 

 この地下修練場で数時間の特訓に取り込んだ雷門イレブン。決めていたメニューを各々終えたため、1時間ほどの昼休憩に入る。ギャルズのメンバーが差し入れで持ってきたお好み焼き、たこ焼き、串カツと言った大阪フードを前に目を輝かせる面々。半ば取り合いのように群がるが、十分すぎる量が用意されていたためむしろ余るくらいだった。

 

 

「あれ? ちょうど人数分くらい用意したから余らんはずやけど」

 

「そういえば、加賀美がいないぞ」

 

「吹雪さんも戻ってきてないっス」

 

「染岡が抜けたこともあって熱が入ってるんじゃないか?」

 

「だとしてもオーバーワークだ。連れてくるぞ」

 

 

 円堂に鬼道、木野に音無がここにいない2人を呼びに向かう。まず近くにいるのは吹雪。自動ドアが開き、中に入るとそこでは吹雪が咆哮と共にシュートを撃ち込んでいた。その威力はかなり強力なもので、見ている4人にもその圧は伝わってくる。しかし、ゴールを守るロボットはいとも簡単にそれを弾いてしまった。

 

 

「──ッ、畜生ォ!」

 

「ふ、吹雪……」

 

 

 鬼気迫るその光景に誰も声を掛けることが出来なかった。とはいえここに来たのは吹雪に休憩させるため。鬼道が声を掛けると糸が切れたようにいつもの穏やかな表情を戻った。一同の予想に反し、すんなりと指示を受け入れ、他のメンバーの所へ向かう。

 そして次は柊弥が特訓している設備へと向かう。円堂が扉に手をかけようとしたその瞬間、凄まじい音と衝撃が伝わってくる。一体何事かと焦って扉を開けると、ゴールに押し込まれた巨大なロボットと、その前に立ち尽くす柊弥の姿が目に入った。

 

 

「……加賀美」

 

「ん? 鬼道? それに皆も……ああ、呼びに来てくれたのか?」

 

「はい、お昼の時間ですよ」

 

「悪いな、少し集中しすぎてたみたいだ。今向かう」

 

 

 吹雪同様、柊弥もその言葉をすんなりと受け入れた。てっきり2人揃ってまだやると意地を通してくると思っていたため4人は胸を撫で下ろす。

 テキパキと片付けを終え、休憩場所へと向かう柊弥、その後を追う音無、円堂、木野。当然鬼道も戻ろうとしたのだが、ふと気になって設備の管理をする機械に歩み寄る。

 

 

「──!?」

 

 

 そこに表示されていたものを目にして鬼道は絶句した。普段彼が滅多に見せないような、驚きの表情だ。それもそのはず、そこにあったものはあまりに衝撃的過ぎたのだ。

 

 

 

 

LEVEL 10

 COMPLETED!! 

 

 

 

 

「加賀美、お前は本当に規格外なヤツだよ」

 

 

 ---

 

 

「ちょっといいか、加賀美」

 

「どうした?鬼道」

 

「お前にもディフェンスの特訓に参加してもらいたくてな。お前のポジションはFWだが、その速さは攻撃にも守備にも活かせるはずだ」

 

「そういうことか、構わないぞ。俺が前線で圧を掛けられるようになれば後ろを守ってくれる皆の負担も減るからな」

 

 

 昨日、俺はあの設備の最大レベルをクリアした。といってもかなりギリギリだったが。そんなザマではまだイプシロンには届かない。そう思い、ひたすらあそこのレベル10に繰り返し挑戦するつもりだったのだが、鬼道からそんな声が掛かった。

 確かに今の俺なら状況に応じて攻撃、守備を柔軟に切り替えられるだろう。そしてそれを突き詰めることはチーム全体の強化に繋がる。断る理由は無い。

 

 

「吹雪にも声を掛けてある」

 

「ああ。アイツのディフェンス力はチームでも随一だ。学べることは多いだろうな」

 

 

 そんな話をしながら歩いていると、うちのディフェンス陣と吹雪が勢揃いしていた。ここは確か床が動く設備のはずだが、今回は動かさないようだ。

 

 

「今回は2つに分かれ、ひたすらボールを奪い合う!奪ったら方は直ぐに攻撃に移り、奪われたらボールを奪い返すんだ!」

 

 

 終わる条件なんかは特になく、設定した時間ひたすらにそれをこなすようだ。シンプルで良いじゃないか。

 とりあえずで2つに分かれ、互いに向き合う。こっちのチームは壁山、土門、塔子。あっちは吹雪、鬼道、栗松、木暮だ。

 

 

「始めるぞ!」

 

 

 さてどう動こうか。1人で動いたところでこの練習の意味は無いし、上手く皆と連携しながらボールを奪ってみたい。

 

 

「塔子、俺が右から仕掛ける。敢えて躱されるからそこを突いてくれ」

 

「右ね、分かった!」

 

 

 ボールをキープしているのは栗松。俺は素早く栗松へと切り込んでいく。敢えて右側を手堅く固めることによって左へと抜けやすくしておく。そうすれば後ろの塔子も動きやすいはずだ。

 

 

「ここは通さないぜ、栗松」

 

「速すぎるでやんス!!えっと、ここは.右でやんス!!」

 

 

 すると、予想通り栗松は左へと抜けていく。狙いど真ん中だ。

 

 

「いけ、塔子──あれ?」

 

 

 そこで予想外のことが起こる。塔子が予想よりもまだ後ろにいたのだ。フリーとなった栗松はすんなりと鬼道へパスを通す。

 

 

「ごめん加賀美!追いつけなかった……」

 

「気にするな、次は頼んだ」

 

 

 まだ動き始めだからな、仕方ないだろう。とりあえず何度も仕掛けていくしかない……と思っていたのだが、何かがおかしい。

 何度も皆と連携を試みるのだが、上手くいかない。その度に皆謝ってくれるのだが、これは恐らく普段ディフェンスで連携することの無い俺のせいのはずだ。俺が修正しなくちゃいけない。

 しかし、一向に動きを合わせられない。何だ、何が悪いんだ?入り方は完璧なはずなのに、その後が噛み合わない。皆が想定より後ろにいるんだ。何とか修正したいが、このままではあっち側がディフェンスに回れず特訓にならない。とりあえずここは──

 

 

「貰った」

 

「なっ、いつの間に!?」

 

 

 木暮からボールを奪う。これで今度はこちら側がオフェンス、あっちが守りに来る。鬼道の指示で栗松、木暮波状的なプレスを仕掛けてくるが……動きが直線的だ。何よりスピードも足りてない。

 

 

「甘いぞ」

 

「み、見えなかったでやんス……」

 

「取れる気がしないよあんなの!!」

 

 

 その先で待ち構えるのは鬼道。成程、最初から俺がこの2人を抜く想定で立ち回ってたな、位置が完璧だ。

 何よりやはりテクニックは皆と比べても頭一つ抜けている。巧みに織り交ぜられたフェイント、二手、三手先を潰しに来る体運び。俺にはここまでトリッキーな動きは出来ない。けどな──

 

 

「それを貫くことくらいは出来る」

 

「くッ、なんというフィジカルだ!!」

 

 

 フェイントを使ってくる?ならそれごとぶち抜けばいい。三手先まで読まれてる?ならこっちは四手先を読めばいい。鬼道がどう動くか予想した俺は敢えてそれに当たりにいく。互いにボールを挟んで衝突すればものを言うのはフィジカルの差だ。あの質量を相手しきった今の俺じゃそう易々とは止められない。

 

 

「ここまでだよ」

 

「吹雪、かかってこい」

 

 

 最後の砦として待ち構えるのは吹雪。コイツのディフェンス力は正に天才。ストライカーとしての実力も持ち合わせつつこの精度で守備まで完璧なのは正に天賦の才を持ち合わせているという他ない。いや、才能に加え途方もない努力もあっただろう。

 吹雪の持ち味はやはりスピード。攻守の切り替えには勿論、それぞれにおいても無類の強さを発揮する。一瞬越えられたと思ってもすぐ前を抑えに来る。

 

 

 だが、まだ俺は底を見せてはいない。

 

 

「ふゥゥッ……」

 

「なッ……!?」

 

 

 骨まで溶けるような脱力から、一瞬で身体が鋼鉄になったように錯覚するほどに力を込める。その瞬間俺は雷速を1歩超える。周囲がスローモーションに感じるほどのスピード。これがイプシロンを超えるために1つ上のステージへと消化した俺の必殺技。

 

 

雷光翔破"改"

 

 

 気付いた時には既に吹雪を置き去りにして遥か遠くへ。良い感触だ。このスピード、パワー、テクニック。全て俺が目指したものに限りなく近づけている。

 だがまだまだ上を目指さなきゃならない。もう誰も失わないよう、俺が、例え1人でも──

 

 

「──ただ、ひたすらに強くなってやる」

 

 

 皆は俺が守る。俺の身体がズタボロになろうと、これ以上仲間を傷つけさせはしない。

 

 

「加賀美、見違えたな」

 

「まあな」

 

「流石レベル10をクリアしただけある」

 

「知ってたのか」

 

「レベル……10……?」

 

 

 鬼道の賞賛を素直をに受けとっていると、何やら吹雪が呟いた。その直後、何かに取り憑かれたようにフラフラとその場を去っていく。何事か、鬼道が吹雪に声をかけるが、吹雪が見せたのは追い詰められたような、そんな余裕のない顔だった。

 

 

「こんなトロいことやってられねえ……俺はもっと強くなるんだ!」

 

 

 そう言って吹雪は抜け出してしまった。しばらくして皆で吹雪の様子を見に行ってみると、吹雪は1人でシュートを鍛える設備で何度も、何度も何度もロボットに向けてシュートを撃ち込んでいた。

 

 

「凄い迫力っス」

 

「あそこまで来るとなんかちょっと怖いね」

 

「でも、確実にシュートが強くなってるね」

 

 

 壁山と木暮の言う通り、凄まじい気迫だ。まるで強くなること以外周りが見えていないような、そんな様子だ。加入してすぐくらいのスタンドプレーが再熱してしまわないかが懸念点だな。

 だがしかし、その意気込みは尊敬せざるをえない。自分の限界を超え、さらに強くなろうとしているヤツを俺は止めることなんて出来ないな。

 

 

「俺も吹雪に負けていられない」

 

「戻るのか?」

 

「ああ。まだまだこんなんじゃ足りやしない」

 

「そうか。程々にな」

 

 

 鬼道の忠告を背に俺はあのエリアへと戻る。レベル設定は当然10。クリアは当然、いかに余裕を持って突破出来るかが今日、明日の課題だ。そして明後日には、恐らくイプシロンとの再戦になる。

 首を洗って待っていろイプシロン、デザーム。お前らを倒すのは俺だ。

 

 

 

 ---

 

 

 

 イプシロンとの試合前最後の夜。雷門イレブンは各々の時間を過ごしていた。緊張を紛らわせるために談笑する者、チームを勝利へ導くため戦術を見直す者、ここにいない仲間に思いを馳せる者。そして──

 

 

「オオオラァァッッ!!」

 

 

 現状に満足せず、更に上を目指す者。この修練場に入って初日でレベル10までクリアした柊弥は、あれから何度も同じレベル10を繰り返しクリアした柊弥、その度にクリアまでのタイムは縮まっていき、最終的に30秒弱で突破するに至った。参考までに、最初のタイムは5分である。他のメンバーも全員レベル10まで辿り着いたが、そのクリア回数は柊弥がダントツだろう。

 正気の沙汰とは思えないそんな所業をやり遂げた柊弥は、もはや特訓開始前とは比較にならない領域へと辿り着いていた。全ての仕掛けを流れるように突破し、最後の機械もそのままの勢いで撃ち砕く。最後に至ってはこれまでに蓄積させたダメージもあり、所々から黒煙が上がる。

 

 

(随分とやったな、皆もう切り上げてるかな)

 

 

 汗を拭い、残っていたドリンクを一気に飲み干して外に出る。エレベーターに辿り着くまでに様々な設備があるが、柊弥の予想通り既に誰もいなかった。だが、静かな通路を抜けてエレベーターへ辿り着くと、1人の人影があった。

 

 

「春奈」

 

「柊弥先輩、お疲れ様です」

 

 

 そこにいたのは音無。柊弥の姿を確認して歩み寄ってくる。

 

 

「もう特訓は良いんですか?」

 

「ああ。あまり無理をしすぎても明日に響くからな」

 

「そうですね。さ、戻りましょう?ご飯の時間ですよ」

 

 

 どうやら夕飯の時間だったようだ。これ以上待っても来なかったら恐らく奥の方まで迎えに行っていただろう。

 

 

「明日のイプシロンとの試合、勝てそうですか?」

 

「勝つ。と言いたいところだが、正直断言は出来ない。アイツらは強いからな……」

 

「そうですよね……でも私、信じてます、皆はイプシロンなんかに負けないって」

 

「だな、負けるつもりはない。ここで勝って、今度こそ終わらせるんだ」

 

 

 その言葉を最後に会話は途切れる。が、音無は何やら落ち着かない様子で柊弥の方をちらちら見ている。当の本人はそんなことを他所に明日のイプシロン戦のシミュレーションをしているのだが。

 会話のないままエレベーターは上層へたどり着く。キャラバンが停車している方へ考え事をしながら柊弥は歩き出す。

 

 

「柊弥先輩っ!!」

 

 

 その時、音無が柊弥を呼び止める。急な大声に少し驚いた様子で柊弥は後ろに振り返る。そこには、顔を赤く染めながら真っ直ぐに自分のことを見つめている音無。

 これまで見たことの無いようなようなその表情に、何があったのかと少し心配になる柊弥。

 

 

「私、マネージャーになってから何回も柊弥先輩の凄いところを見てきました!帝国との練習試合と決勝戦、世宇子中との全国決勝、エイリア学園との戦い……どれもカッコよくて、今でも鮮明に思い出せます!」

 

「あ、ああ?」

 

 

 突然のその言葉に柊弥は困惑を隠せない。音無の意図を掴めない柊弥は頭に疑問符を浮かべながらも、真っ直ぐに音無を見る。

 

 

「そして……そんな柊弥先輩の姿に、気付いたら夢中になってました!」

 

「春奈」

 

「明日は大切な試合、今言うべきじゃないってことは分かってます!だけど、何か嫌な予感がするんです。このままじゃ柊弥先輩が何処か遠くへ行ってしまうんじゃないかって、そんな気がして……」

 

「……」

 

「だから、だから言わせてください!!」

 

 

 

 

 

 

 

「私は、柊弥先輩のことが……好き、です」




とうとう想いを伝えた音無ちゃん、これに柊弥はどう答えるか
何で音無ちゃんは柊弥がどこかへ行ってしまうんじゃないかと感じたのか、どこかでネタバラシしたいですね。感想なんかで考察を寄せてくれるとニヤニヤできるのでぜひ。普通の感想でも泣いて喜ぶのでぜひぜひぜひ…
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