基本週一更新出来たらいいな、とは思ってますが出来ない時もあると思うのでその時はご容赦くださいまし。Twitterでその辺告知して行けたらと思うのでフォローしてやってください。
イプシロンとの試合が終わって暫く経った。中継で試合の顛末を見守っていた大阪ギャルズのメンバー達が食事を持ってやってきたため、雷門イレブンは食事休憩を取っていた。
試合が終わった直後は冷静さを欠いてどこかへ行ってしまった吹雪も戻ってきている。が、1人だけ姿が見えない者がいた。
「加賀美は…まだ起きないか」
「この試合1番の功労者だからな、しっかり寝かせてやろう」
そう、柊弥である。試合終了してすぐに気を失った柊弥はベンチ付近で横にされていた。何かあったのかと近くの診療所にいた医者を引っ張ってきて診察を受けたが、
「それにしてもさっきの試合はとんでもなかったでヤンスね?」
「そうッスねぇ。イプシロンも強かったッスけど、俺達も強くなってたッス!」
「その通りだ。試合に勝ち越しこそ出来なかったがな」
栗松と壁山が食事をしながら漏らした先程の感想に鬼道も頷く。実際のところ、前回のイプシロンとの試合では全く太刀打ち出来なかった雷門だったが、今回はそうではなかった。試合開始早々に柊弥が点を奪い、1度はシュートを決められたもののその次は完璧に円堂が止めた。そして最後の雷帝一閃はゴールから逸れてしまったが、本来のコースを進めば間違いなくデザームから点を奪えていただろう。今回はそれだけでも大きな収穫だと鬼道が言い、少し離れたところで瞳子も頷く。
「ここからどうするんだろうな」
「うーん、よく分かんねえな。次のイプシロンの襲撃予告があるまではひたすら特訓じゃね?」
「だな!次イプシロンと戦うことになったら絶対に1点も取らせないぜ!」
ほぼ間違いなくイプシロンとの再戦はやってくる。雷門イレブンにできるのは、来るべき時に備えて更に強くなることだけなのかもしれない。そしてその先陣を切るであろう男はまだ目覚めない。
ーーー
「ォォォオオオオオオ!!貫けェェェェッ!!」
俺は腹の底から叫ぶ。千切れそうな右脚、蒸発しそうな身体、ガンガンと痛む頭。それら全ての苦痛を気合いで押さえ込んでただ叫ぶ。俺の持てる全てを込めたこのシュート。これが決まらないのならもうコイツから点を奪うことは出来ない。
「フフフ…ハハハハハハ!!」
デザームは右腕を突き出す。それと雷帝一閃がぶつかり合い、紅の火花を散らす。その時だった。シュートの威力は完全に削がれ、黒煙を上げながらもボールはデザームの手中に完全に収まる。
バカな、有り得ない。最初に点を奪った一本よりも遥かに強く、遥かに重いシュートだったんだ。こんな簡単に止められるわけが無い、そんな力の差があるはずがない。
「フン、どうやら期待外れだったらしい…なッ!!」
「ぐ、ァァァァアアアッ!?」
シュートを受け止めたデザームがボールを蹴る。旋風を巻き起こしながらこちらへ迫ってくるが、俺はそれを回避することが出来ない。何故なら、右脚にもう力が入らず、その場に倒れ込んでいたから。必死に抗うが、為す術なく吹き飛ばされる。
打ち上げられる身体。暴風が視界を遮る中辛うじて見えたのは、無惨にも守がゴールに押し込まれる姿。
「ガッ、クッ…ソ!」
何度も身体を打ち付けられながら減速し、ようやく止まった。顔を上げると、既にデザーム達イプシロンは姿を消していた。
「畜生、何処に行きやがった!!まだ試合は終わってない!!姿を見せろォッ!!」
「おい」
「ぐッ!?」
姿の見えないデザーム達に対して吠えた。その時、誰かに足蹴にされて身体は仰向けになる。一体誰が…とその痛みの方向に目を向ける。
「…吹雪?」
「テメェ点取れてねえじゃねぇか。偉そうにしてた癖によ」
「…すまない」
「ああその通りだ。デザームの言う通り、期待外れだったな」
吹雪の指摘は最もだ、俺はそれを否定は出来ない。すると、そこに更に言葉が突き刺さる。
「き、鬼道」
「使えないでヤンス」
「加賀美さんも所詮こんなもんスか」
「全く、呆れちゃうね」
「うんうん」
「皆、急にどうしたんだよ」
確かに、俺は皆の期待に応えられなかった。けど、今まで1回もみんながこんなにキツい当たり方をすることは無かった。
自分の意識外でどんどん呼吸が荒くなり、胸が痛くなる。身体に上手く酸素が回らなくてクラクラする。
やめてくれ、もう、もうそれ以上は──
「──俺は、お前みたいな弱い幼なじみはいらない」
「まも、る」
「いなくなった半田にマックス、染岡や皆。そして何より…」
「もうやめ──」
「豪炎寺は、どう思うだろうな」
「ぁあ、ああああああああ…」
目の前が段々と真っ赤に染まる。全身の血が、まるでマグマのように煮え滾る。呼吸が、更に荒くなる。頭が…割れそうな程に痛む。
「お前のせいで」
「お前が弱いから」
「だから俺達は」
「こんな目に遭う」
「お前のせいだ」
「お前のせいだ」
「お前のせいだ」
ーーー
「…」
「先輩?先輩!!気がついたんですか!?」
急に柊弥が起き上がった。最も近くで柊弥の看病をしていた音無はそれにいち早く気が付き声を上げる。それを聞いて円堂や鬼道といった他の者も寄ってくる。
「おい柊弥!大丈夫か?」
「急に倒れるから心配したぞ」
「…」
柊弥は無言のままだ。だが急に円堂の足元に膝をつき、縋るようにしがみつく。あまりに唐突の行動だった。どうしたんだと問いかけようと円堂は柊弥の顔を覗き込む。その表情は、まるで許しを乞うているかのようだった。小刻みに身体を震わせ、虚ろな目で、言葉にならない掠れた声で何かを呟いている。
「と、柊弥!どうしたんだよ!」
「次は絶対点を取るから!!頼む…許してくれッ」
「落ち着け加賀美!何を言っているんだ!!」
「もっと強くなる、もっと強くなるから…」
「柊弥!!おい!!」
「もっと、もっともっともっと…」
どれだけ声を掛けても見当違いな返答しかしない柊弥。何か良くないことが柊弥に起こったのだろうということは嫌でも分かった。だがそれが何なのか、本人以外が知るよしなどあるはずもない。
壊れた機械のように同じ言葉しか発さない柊弥だったが、ふとした瞬間にその目に光が戻る。
「柊弥?大丈夫か?」
「…すまない、取り乱した」
そして柊弥は立ち上がり、何処かへと歩いていく。
「…試合は、どうなった」
「引き分けだった」
「そうか」
そう問いかけたのを最後に、柊弥は暗い奥の方へと完全に姿を消す。残された他の者は心配そうにその背中を見送ることしか出来なかった。
「柊弥、大丈夫かな」
「…アイツは強い男だ。信じよう」
「もしもの時は俺たちがちゃんと支えよう、な?」
「柊弥先輩…」
各々が心配を口にする。その中で最もその色が濃かったのは…やはり、誰よりも柊弥へ想いを寄せる音無であることは言うまでもないだろう。
ーーー
「失礼します、旦那様」
鳥のせせらぎと鹿威しの水音だけが響く空間。その静寂を襖が開く音と一人の男の声が切り裂いた。その空間に一人座していたのは吉良 星二郎。外からやってきたのは研崎だった。
研崎は吉良の目の前に座ると、持ってきたアタッシュケースを開けてその中身を見せ、幾つかの資料を並べる。
そのケースの中から顔を見せたのは、紅に煌めく一つの石。紐が通っていることからネックレスのように身につけられるものだと推測出来る。
「デザームから回収したこちらのエイリア石…通常のものより出力が強いことが明らかになりました」
「ほう」
その報告に吉良は笑みを浮かべる。その理由が目の前の石と研崎の報告であることは明確だ。
その反応を見た研崎は懐からまた別の石を取り出す。こちらは紫の中に僅かに紅が混じっている。
「こちらがレーゼから回収した石とその資料です」
「ふむ、見た目もデータも明らかに違いますね」
その感想は至って当然のものだった。レーゼから回収したと言われた石は僅かな紅が煌めくのみで、デザームから回収された方は余すことなく紅に染っている。そして資料に書き記された数値も全く違うものだった。基準を100とした時に150。その差は歴然である。最も、その数字が何を示しているのかについては語られていないが。
「この変化に至る為の仮説もどうやら正しかったようですね」
「はい。恐らくですが…」
「加賀美 柊弥の力がどれだけ引き出されているかによりその変化幅は大きく変わる、という訳ですね」
吉良のその一言に研崎は頷く。満足したように茶を啜る吉良に、ただ静かに座る研崎。沈黙の中に鹿威しの音が木霊した時、ようやく吉良が口を開いた。
「ヒロトを呼んでください」
「御意に」
吉良の命令に背く意思はまだ研崎にはない。今しがた下された要求を果たすべく研崎は部屋を後にした。
それから数分が経ち、再び襖が開かれる。
「お呼びですか、父さん」
「来ましたか。座りなさい」
座るように促されたヒロトは吉良の正面に座る。穏やかな表情のまま吉良はお茶を点て、ヒロトの前に差し出す。それに一口つけてヒロトの方から話を切り出した。
「それで父さん、用というのは」
「以前お前にお願いしたエイリア石についての検証を覚えていますか?」
「はい。加賀美君に接触してエイリア石に変化があるかどうか…でしたね」
「そうです。それに関することで今日は呼び出しました」
吉良は懐から銀色のケースを取り出す。それはかつてヒロトが例の検証のために吉良から預かったものと同じだった。
「ヒロト…いえ、グラン。あなた達ガイアに雷門との接触を命じます」
「イプシロンはまだ敗北した訳ではありませんが…よろしいのですか?」
「ええ。上手くことが運べば…計画の価値は飛躍的に上がるでしょう」
「分かりました」
「加賀美 柊弥の秘める力を引き出しなさい。そうすれば私達の計画は更に1歩前進することになるでしょう」
そう命じられたヒロトはその部屋を去る。自室へと帰る道中、連絡用のデバイスを取り出し自らが率いるチームへと招集をかける。
「加賀美君、ようやく君とサッカーが出来そうだ」
そう笑って自室の扉に手をかける。次にその扉が開き、中から出てきたのは…基山 ヒロトではなく、1人の兵士だった。
ーーー
「くぅー、やっぱレベルMAXの特訓は疲れるな」
「少し飛ばしすぎじゃないのか?円堂」
「まあな。でもほら、次にイプシロンと戦う時に点を取らせないためにももっと強くならなきゃ、だろ?」
鬼道はフッと笑って円堂に手を差し出す。それに引っ張られて円堂が立ち上がると、その部屋の入口が騒々しく開かれた。
扉の向こうから姿を見せたのはイナズマキャラバンの運転手である古株だった。何やら誰かを探しているようで、部屋の中をグルりと見渡したあと2人の元に歩み寄ってくる。
「瞳子監督を知らんか?」
「見てないですね」
「そうか…実は理事長から連絡があってな。円堂、お前さんにも関係のあることじゃ」
「俺に?」
「そうとも。何でも、福岡の陽花戸中で円堂 大介のものと思われるノートが発見されたそうだ」
その言葉を聞いて円堂は驚きを見せる。祖父である大介のノート。それは円堂にとってサッカーと切って離せない代物だった。円堂の代名詞であるゴッドハンド、先程の試合で進化したマジン・ザ・ハンド、フットボールフロンティアを勝ち上がる時に雷門の力になったイナズマ1号やイナズマ落とし。様々な必殺技がその大介のノートに記されていたものだったからだ。
「じゃあ、そこにはまた新たな必殺技が!?」
「それは分からん。じゃがそうと見て間違いないんじゃないか?」
「円堂 大介のノート…もしかすると、イプシロンを打破するきっかけを掴めるかもしれない」
「こうしちゃいられない!早く瞳子監督に伝えないと!」
円堂が部屋を飛び出し数分走り回ると瞳子の姿が見えた。その向かい側には柊弥もいた。
「瞳子監督!…あ、すみません。何か話してましたか?」
「いえ、今ちょうど終わったところよ。何かしら」
「実は…」
取り込み中ではないということで円堂はノートのことを瞳子に伝える。すると瞳子は少しの間考えた後、口を開く。
「確かに、円堂 大介さんの残した必殺技は大きな武器になるわね」
「それじゃあ!」
「ええ。次の目的地は福岡の陽花戸中よ!昼には出発するから皆に伝えておいて」
「はい!」
瞳子がそう指示を飛ばすと円堂はすぐ走り去っていく。そして再びその空間に静寂が訪れ、他に誰もいないことを確認した上で瞳子は柊弥に話し掛ける。
「それでさっきのことだけれど、本当に大丈夫なのね?」
「はい、特に怪我や不調もありません。このままキャラバンに乗せてください」
「そう、ならいいわ」
失礼します、と短く告げて柊弥はその場を後にする。一人残された瞳子は考え込むような仕草を見せる。
(あの試合の終わり、加賀美君は倒れた。医者は過労だと言ったけれど、私にはそうとは思えない。もっと何か、別の要因があったのでは…そう思えて仕方ない)
瞳子は柊弥の状態について心配していた。あの試合で柊弥が見せた力は本物だった。だがそれと同時に何処か様子がおかしかったと瞳子は感じていた。まるで勝利に取り憑かれた鬼のような、そんな危なっかしいオーラを発していた加賀美の姿が鮮明に思い出せる。
もし柊弥が何か不調を訴えるようなら、1度このキャラバンから下ろすことも考えていた。しかし本人は平気だと言い、事実この修練場でのレベルMAXの特訓を先程平然とこなしていた。それならば良いだろうと判断こそしたが、やはり引っかかるものがある。
「…今は彼の力が必要ね」
思うところはある。が、柊弥の力無くしてエイリア学園に勝利することは不可能だと確信に近いものも得ていた。そちらの思いが瞳子の背中を押し、柊弥に関してノータッチでいることを決めた。
しかし、彼女は近い未来に後悔することになる。この時の自分の決断を。
ーーー
「全員揃ってるわね?」
「はい!確認しました」
「よし、それじゃあ出発よ!目的地は福岡!」
あれから少しの時間が経ち、出発の時刻が訪れた。ナニワランドを出発したイナズマキャラバンが次に向かうのは福岡にある陽花戸中。目的は言うまでもなく円堂 大介のノート。
この戦いが始まってから雷門に加入したメンバーは大介のノートに関しての知識がないため道すがら円堂が自分達とノートとの関係性をについて語る。
盛り上がっている車内だったが、柊弥はその輪の中にいなかった。この旅が始まってからは音無と隣の席だったが、考え事をしたいと言って空いている席に1人で座っている柊弥。周りのメンバーが話しかけるが何処か上の空だった。
(もっと強くなるにはどうすれば良い?)
終始柊弥の脳内にあったのはその問い。だが幾ら考えても答えは出てこない。あの修練場での特訓で柊弥はかなりの成長を見せた。だからこそ、現状で更にその上を行く方法が思い浮かばなかったのである。しかしこのままではダメだという焦りが柊弥を煽る。
一向に浮かばない答え。柊弥には苛立ちが積もっていくばかりであった。そうしていると、やがて柊弥の意識は闇へと落ちていった。深い、深い深淵の中へ。
悪夢に魘される柊弥。暗躍するヒロト。この2人が交差した時、一体何が起こるのか…