Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第5話 雷門サッカー部、本格始動?

「よう守、皆はまたサボりか?」

 

「柊弥! ああ、皆部室でのんびりさ」

 

「まあ、気持ちは分からんでもないけどな……」

 

 

 雷門に来てから1年が経った。

 天馬に対してサッカー部は必ず作ると豪語した後、染岡と半田が入部してくれたが、それっきり新入部員はやって来ず、結局その年の内は4人で細々と活動するしか無かった。

 

 そして俺達は2年生になり、希望を新たにしていたところに栗松、少林、壁山、宍戸の4人が入部してくれたが……最低ラインにも満たない人数ではなかなか周囲に部として認めてもらえず、やはりサッカー部らしい活動は出来ていなかった。

 

 周りから冷ややかな目線を向けられ続け、最初は溢れそうなほどだった皆の熱意はすっかり空になってしまい、今ではこうして俺と守の2人しかまともに活動してないわけだ。

 

 

「俺はこの後河川敷行くけど……柊弥はどうする?」

 

「悪い、今日は本屋行かないとだからパス」

 

「そっか、じゃあまた明日な!」

 

 

 こいつはどんな逆境でも負けない、そう思わせるような元気一色の声を響かせて守は走り去っていった。

 俺は小学生の頃通っていたチームにいって練習させてもらっているから問題ないが、守は未だに実戦経験を積めていない。

 俺がほぼ毎日のように蹴っているからそれなりに鍛えられてはいるだろうが……どうだろう。

 このままでは廃部なんて噂もあるし、何とかしなければとは思うが現状打開策はなし。困ったものだ。

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「もうこんな時間か」

 

 

 本屋で参考書を見繕っていたら、既に日は沈みかけ、空は茜色に染まっていた。

 守はまだ河川敷でちびっ子達とサッカーしているんだろうか。少し覗きに行ってみてもいいな。

 

 

「よし、そうしよう」

 

 

 目的地は河川敷だ。

 さあ出発と思ったが、ここであることに気付く。

 ……路地裏からだろうか。女性の嫌がるような声が微かに聞こえた。

 面倒事の匂いしかしない。だが、それを黙って見過ごすほど男を捨てた覚えはない。

 俺はコソコソと路地裏へ入り込んだ。

 

 

「───す、──てください!」

 

「いいじゃ──、ほら───」

 

 

 嫌な予想は当たってしまったようだ。

 女子がチンピラに絡まれている定番の展開だ。チンピラは2人。正面から喧嘩なんてしようものならどうなるか分からない。だがこちらは私服でなおかつヤツらの背後を取っている。ここは策を弄するとしよう……

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「嫌です! やめてください!」

 

「いいじゃんかよ、ほらほら!」

 

 

 1人で買い物してたら急に変な人達に路地裏に連れてこられてしまった。

 どうしよう……いくら断っても離してくれないし、こんなところに人は通りかかってくれないし……掴まれた腕を振りほどこうとしても、相手の大柄な男の力には勝てない。

 怖いよ、誰か助けて……

 

 

「分からない女だなあ、フトシさん怒らせたら怖ぇぞ!?」

 

「そうだぞお、君みたいな可愛い女の子だから加減してあげてるんだ、俺の優しさ分かっておくれよ」

 

「い、嫌──」

 

 

 一際強く腕を握りしめられた、その時だった。

 ヒュン、と音がしたと思ったら次の瞬間には鈍い音が路地裏に響いた。

 その瞬間、私の腕を掴む力は糸が切れたように弱まり、その隙に振りほどく。

 フトシと呼ばれた男は気を失ったようにその場に倒れ込んだ。そしてその頭の近くには白と黒のボール……サッカーボールが転がっていた。

 

 

「フ、フトシさん!?」

 

「男が寄ってたかって女子襲って、恥ずかしくないのか?」

 

「な、なんだてめえ!! よくもフトシさんを──」

 

「直に警察が来る。大事にしたくなければさっさとそいつ連れてどっか行け」

 

「クソっ!! フトシさん、いきますよ!!」

 

 

 気を失ってはいないようだが、どうやら激しい立ちくらみに襲われているらしく、子分のような男に肩を貸してもらってようやく動けるといった様子だ。

 自分よりも身体のでかい男を若干引き摺りつつ、子分は去っていった。

 

 

「ふう、何とかなるもんだな」

 

「あの、ありがとうございま……」

 

「その前に、ここ移動しようか」

 

「え? ちょっ──!!」

 

 

 腕を引っ張られ、私を助けてくれた男の人は追いつけるくらいの速さで軽く駆け出した。

 先程まで腕を掴んでいた不良の力は強く、恐怖を感じたが、この男の人は優しく、悪い気は一切しなかった。

 

 

「ここでいいか……」

 

「あ、あの……」

 

「礼はいいよ、俺のお節介だから……あれ? 君うちの学校?」

 

「え? ……あっ!! もしかして、サッカー部の……」

 

「そうそう。俺はサッカー部副キャプテン、2年の加賀美 柊弥。よろしく」

 

 

 そういってその人……加賀美先輩は自己紹介してくれた。

 加賀美 柊弥先輩。自分で自己紹介してくれたように、廃部寸前という噂が立っているあのサッカー部の副キャプテン。

 成績はトップクラス。そして何と、小学生の頃にはサッカーで全国制覇を果たしている。その決勝戦は私もある事情で見ていたのでよく覚えている。

 

 

 そんな感じで色んな要素を兼ね備えており、雷門中女子の中での人気はかなり高い。

 

 

「えっと、私は1年、新聞部の音無 春奈(おとなし はるな)って言います。さっきは本当にありがとうございました!」

 

「音無さんか、よろしく。大変だったね、運良く通りすがれて本当に良かった」

 

「私1人じゃどうしようもなかったので本当に助かりました……」

 

 

 同じ学校の先輩とはいえ、初対面の男性と話を途切れさせないのは予想以上に難しい。

 沈黙に耐えかね、とりあえず何か話そうとしたがそれより早く加賀美先輩が口を開いた。

 

 

「あ、俺この後行くところあるんだ。それじゃ気をつけて帰ってくれ」

 

「あっ、ちょっと!!」

 

 

 そう呼び止めたけど、加賀美先輩は既に走り出して止まらなかった。

 どんどんと背中は小さくなっていき、私は完全に見えなくなるまでそれを眺めていた。

 

 

「加賀美先輩、か……」

 

 

 今度学校で会ったら話しかけてみよう。

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「それでさ、そいつすっげーんだよ! こう、バシューン! ってシュートしてさ! 柊弥にも負けてなかったんだぜ!?」

 

「はあ、そんなヤツが……」

 

 

 翌日、守は俺の顔を見るなり矢継ぎ早に昨日あったことを話してきた。

 何でも、不良に絡まれた時に白髪の男が鋭いシュートでその不良達を追い払ったそうだ。

 俺よりすごいシュートか……よく俺のシュートを受けている守が言うなら信憑性はあるな。お目にかかりたいものだ。

 

 

「はい静かに、朝のホームルーム始めるぞ」

 

 

 先生が入ってくると、守も流石に静かに前に向き直った。

 すると、先生は廊下に対して入室を促した。誰かいるのか……? 

 その疑問はすぐ晴れることとなる。

 

 

「あーーー!!!!」

 

「あっ」

 

 

 廊下から教室に入ってきたその正体に驚きの声を漏らしてしまうが、それ以上の大声で守がかき消した。

 

 

「今日から我が校に転入となった、豪炎寺 修也(ごうえんじ しゅうや)君だ。仲良くするように」

 

 

 豪炎寺と言うその男は、静かに一礼して指定された自分の席へと座った。

 やはり、間違いない。豪炎寺 修也……名門、木戸川清修のエースストライカーだ。そんな男が何故ここに? 

 

 

 気になって仕方なかったので、昼休みに入った瞬間に豪炎寺に話しかけに行った。

 が、それよりも早く守が豪炎寺に食いついていた。サッカーをやっていたのか、サッカー部に興味はないか、サッカー部に入らないかの三拍子だ。だが豪炎寺は……

 

 

「サッカーはもう、やめたんだ」

 

 

 と言っている。豪炎寺ほどの男がサッカーやめた? 何か事情でもあるのだろうか。去年、俺達は試合に出られなかったため、俺は様々な学校の試合を見に行った。

 その中で最も印象に残っているのが、豪炎寺のシュートだ。あれほどのシュートは見たことがなかった。そんな豪炎寺がサッカーやめた……やはり、何かしらの事情があるとしか考えられないな。

 

 

 そんなことを考えていたら、半田が息を切らしながら教室に入ってきた。

 

 

「円堂!! 冬海先生が大事な話があるから校長室に来いって! もしかして廃部の話なんじゃ……」

 

「廃部!? そんなことさせるか!!」

 

 

 鼻息を荒くして守は教室を出ていった。

 廃部か……やはりこのままでは避けられない運命なのだろうか? 天馬、約束果たせなかったらごめんな……

 

 

 暫くすると守が帰ってきた。

 

 

「おう守、先生は何て?」

 

「練習試合だ」

 

「……ん?」

 

「帝国と!! 練習試合だ!!」

 

 

 なるほど、練習試合か。相手は帝国……帝国学園とか。

 っておい、待てや。

 

 

「帝国? 帝国って、あの?」

 

「そうだ! 全国覇者のあの帝国だよ!!」

 

「……マジか」

 

 

 それにしても、帝国か。あそことは少なからず因縁がある。

 俺は、全国大会を優勝した影響からか、多くの学校からうちに来ないかと誘いをもらった。そこには、豪炎寺がいた木戸川清修も、今まさに話題に登った帝国も含まれている。

 だが俺は、守とサッカーをやりたいが為にその誘いを全て蹴った。綺麗さっぱりと。

 

 そして俺の代わりというわけではないだろうが、知っているやつが1人帝国に行った。

 鬼道 有人(きどう ゆうと)。現帝国学園サッカー部キャプテンだ。アイツは、俺が決勝で戦ったチームのキャプテンだった。

 今でも鮮明に思い出す……アイツの的確すぎる指示のせいで、思うように動けなかったことを。最終的には何とか勝ったが、リーダーとしての素質は間違いなくアイツの方が上だった。そんなヤツがあの帝国で日々研鑽しているのだと考えると……ワクワクしてくる。

 

 

「でも俺らは部員が足りてない……どうするんだ?」

 

「部員は集める! 帝国にも勝つ!! 廃部になんかさせない!!」

 

「……やっぱり廃部の話出たんだ」

 

 

 そういう大事な話は早く言おうぜ、キャプテン。

 さて、部員勧誘でしばらく忙しくなりそうだ。




次回、部員勧誘を経て帝国戦へ
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