Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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以前の更新は感想欄で結構反響がありましたね。中には的を得たコメントもあって感服させられました。
さて、そんなお辛い雰囲気の雷門イレブンですがまだまだその暗雲は晴れません。まだまだ彼らに試練が降りかかります。今回の話もまた厳しいものになってます。それでは…


第66話 晴れぬ曇り空

「風丸!こんなとこにいたのか」

 

「……円堂」

 

 

 ジェネシスとの試合が終わり、柊弥と吹雪が病院に搬送されたのを見届けた後に雷門イレブンは解散となった。ジェネシスとの圧倒的な力の差、吹雪の怪我、そして柊弥の暴走。様々なことがありすぎて疲れ果ててしまった一同は気を紛らわせるかのように様々な場所へ散っていた。

 その中で円堂は海岸の方へと向かった。すると、その視線の先に風丸を見つけて歩み寄る。

 

 

「……今日は完敗だったな。全然歯が立たなかったっていうかさ、アイツら絶対イプシロンより上のチームだよな」

 

「……」

 

「でも、新しい目標が出来た。また明日から特訓だ!」

 

 

 あんなことがあったにも関わらず、円堂は前を向いていた。当然、思うところは無数にある。しかしそれでもキャプテンである自分が沈んでしまってはいけないという責任感が円堂をギリギリのところで引き止めていた。

 対する風丸はと言うと、円堂の言葉に対して俯いたまま何も反応を見せない。ただ疲れているのだろう、と思っていた。それがダメだったのかもしれない。

 円堂は、また見抜けなかった。

 

 

「円堂、俺もうダメだよ」

 

「へ……?ダメって」

 

「もう無理だ、勝てる気がしないんだよ」

 

 

 風丸はぽつりぽつりと呟き出す。最初は耳を疑った円堂だったが、次第にそれが聞き間違いでは無いことに気付いてしまう。帝国との練習試合で手を貸してくれた、過去を振り切って戦ってきた、その脚で何度も窮地を救ってきたあの風丸が、敵の圧倒的な力を前に心を折られてしまっている。そんな事実に円堂は困惑を隠せない。

 

 

「何で、そんなことになるんだよ! 確かに今日は負けたさ! でもあれだけ特訓してきて、あともう少しのところまで来ただろ!?」

 

「……」

 

「これからもっともっと特訓して強くなれば、絶対勝てる!!きっと前みたいに楽しいサッカーが出来る!!」

 

 

 そんな声は、届かない。

 

 

「……ごめん」

 

「おい?風丸?」

 

 

 風丸はおもむろに立ち上がる。そして伸ばされた手は掴まれることなく、その背中を逃がしてしまった。何度も何度も後ろから声が掛けられる。しかし、絶望に染まってしまったその心にはその一切が響かない。

 

 

「俺、お前や加賀美みたいに強くなれないよ」

 

 

 その言葉を残してその場を去ってしまった。円堂にはそれを追いかけることも出来たはずだったのに、それをしなかった。何故なら、最後に風丸が残していった言葉があまりに今の自分にとって残酷なものだったから。ジェネシスからゴールを守ることが出来なかったのはもちろん、それ以上に親友の抱えていた闇に気付けなかったこと、今まさにそのせいで仲間が去ろうとしているという事実が自分を否定し、心をその場に縛り付ける。

 

 

「風丸……」

 

 

 とうとうその背中は完全に見えなくなってしまった。それとほぼ同時、円堂の中の何か糸が切れてしまった。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「風丸君が、イナズマキャラバンを降りた……?」

 

「嘘、っスよね」

 

 

 翌日の朝、風丸が雷門イレブンから抜けたことを瞳子から説明されたメンバーは戦慄する。立て続けに起こるこの不幸、その一つ一つが全員の心を深く抉るあまりにも重いものだった。

 

 

「監督、本当なんですね」

 

「ええ。もう東京へ向かったわ」

 

「じゃあ何で止めなかったんですか!?風丸君はここまで戦ってきた大切な仲間なんですよ!?」

 

「……サッカーへの意欲を無くした人を引き止めるつもりは無いわ」

 

 

 その言葉を皮切りに、積もりに積もった疑念を土門が解き放ってしまった。勝つためにはどんなことでもする、実際吹雪の悩みを知りながら試合に出し続けていたことを瞳子へ責め立てる。

 しかしそれを受けた瞳子は涼しい顔で背中を向け、練習を始めるようにとだけ言い残して去っていってしまう。

 あまりに暗すぎる空気。これから練習だというのにこれではどうしようもないと木野が動き出す。

 

 

「私、風丸君は戻ってくるって信じてるわ!」

 

「……私もです!」

 

 

 木野に音無がそう続くと、鬼道は思うところがあったのだろう、ボールを持ち上げてグラウンドへ向かって歩き始める。

 

 

「始めるぞ、練習」

 

「で、でも」

 

「俺達がサッカーをするのは監督のためじゃない。円堂が毎日言ってるように俺達はサッカーが好きなんだ。そのためにもエイリア学園に勝てねばならない。そうなるためには……特訓だ」

 

 

 明らかに重い空気だったが、鬼道のその言葉で切り替わる。そんな鬼道の背中を追うように他のメンバーもグラウンドへと向かう。風丸が脱退したことへの悲しみも何も晴れたわけではないが、何もしないよりは良い。そんな心持ちだったのだろう。

 だが、その中に一点を見つめたまま動かない者がいた。

 

 

「円堂君」

 

 

 そんな円堂に対して何も知らない木野はボールを差し出す。いつもなら目に爛々と炎を滾らせてそのボールを受け取る、今回もそうだと思っていた。

 しかし、そんな予想に反して円堂はそのボールを押し返してしまった。予想外のことに木野は唖然とするが、間もなくして気付いた。いや、気付いてしまった。

 

 

 円堂の目に、光がないことに。

 

 

「……練習、出来ない」

 

「えっ」

 

 

 ボソリと呟かれたその言葉に木野だけでなく全員振り返って円堂の方を見てしまう。そんな注目も意に介さず、円堂は掠れた声で言葉を続ける。

 

 

「……今の俺はサッカーと真正面から向き合えない。ボールを蹴る資格がないんだ」

 

 

 そう言って何処かへ去っていく円堂を誰も止めることが出来なかった。いつもは大きく、頼もしく感じるその背中は今にも押しつぶされてしまいそうな程に小さく見えた。常に自分達を照らしている太陽が沈んでしまった、そんな言い表せないような何かを全員感じざるを得なかった。

 

 

「アイツ……」

 

 

 それを見た鬼道は焦りを感じずにはいられなかった。柊弥、吹雪の負傷に風丸の離脱、それに加えキャプテンである円堂がこんな状態に陥れば何が起こるか……想像したくもなかった。

 ふと後ろを振り向くと、不安に顔を染めたチームメイト達の姿。円堂が練習に参加せず、柊弥もいない。そんな今、司令塔である自分が折れてどうする? そんな想いが鬼道を突き動かす。

 

 

(円堂、加賀美。今は俺に任せておけ)

 

 

 心の中で鬼道は2人に誓う。お前達が戻ってくるまでは、自分がチームを守ってみせると。

 

 

「……さあ、練習を始めるぞ」

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 あの場から逃げるようにして俺は校舎の屋上へと登ってきた。今日は風が強い。もしかしてこんなところに来ないで特訓しろって背中を押されているのかな。でもごめん、今は……サッカーと向き合える気がしないんだ。

 

 

「……何も、気付けなかった」

 

 

 チャンスはあった、それなのに俺は吹雪のことを何も気付いてやれなかった。吹雪はFWもDFも出来るストライカーだって思ってた。試合になると熱くなって感じが変わるだけなんだって。

 でも、そうじゃなかった。吹雪はずっと苦しんでいたんだ。それなのに俺達は、無責任にアツヤの力ばかり求めてしまった。力になってやるどころか、ただ追い詰めてしまっただけだった。

 

 

「ファイト!!ファイト!!」

 

「声出してけよ!!」

 

「……皆」

 

 

 ふと聞こえた声に視線を向けると、皆がいつも通り声出ししながらランニングをしていた。鬼道が先頭に立って、土門が後ろから発破を飛ばしている。

 ……確か、いつも風丸が土門みたいに声を出してたっけ。

 

 

『もう無理だ、勝てる気がしないんだよ』

 

 

 風丸。帝国との練習試合が決まったけど人が全然足りなかった時、1番最初に入ってくれたのは風丸だった。皆を後ろから見守って、俺の足りないところをいつも補ってくれていた。

 それなのに、俺はアイツのことを何も分かっていなかった。チームを離れることを考えるほどに思い詰めていたのに。

 

 

 ポツリ、ポツリと空から雫が落ちてきた。間もなくしてそれは雨へと変わり、雷まで鳴り始める。一瞬で全身がずぶ濡れになるけど、今はこの場を動きたくない。

 

 

「柊弥ッ……!」

 

 

 雷が落ちると、柊弥のことを思い出してしまう。アイツはいつだって雷みたいだ。ガムシャラな俺とは違って、いつも落ち着いている。けどサッカーとなると雷みたいに激しいプレーをする熱いヤツなんだ。

 そういえば、俺が初めて誰かとサッカーをやったのも柊弥とだった。母ちゃんにサッカーを許してもらえなくて、不貞腐れて公園に行ったら1人でボールと遊んでいたヤツがいたんだ。それが柊弥だった。

 

 

『君、サッカーやりたいの?俺とやろうよ!』

 

『いいの!?やりたいやりたい!!』

 

『俺は加賀美 柊弥!よろしく!』

 

 

 それから、俺は柊弥とサッカーを始めた。知らないところでサッカーをしてたことが母ちゃんにバレた時は怒られたけど、確か柊弥が家まで来て説得してくれたんだったっけ。

 あの出会いがなければ俺はサッカーをやっていなかったかもしれない。柊弥とボールを追いかけたあの日が全ての始まりだったんだ。

 俺がサッカーをする時、いつも隣には柊弥がいてくれた。クラブチームに通えなくて河川敷でサッカーをしていた時も、雷門に入学してサッカー部を復活させた時も、フットボールフロンティアで優勝した時も。

 なのに、その柊弥は今ここにはいない。俺が柊弥に背負わせすぎたせいで、それに潰されてしまったんだ。

 

 

 全部、俺のせいなんだ。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「……円堂は昨日からあのままか」

 

「うん、食事とほとんど取ってなくて……」

 

 

 翌日になっても円堂は屋上から降りてこようとはしなかった。食事と睡眠の時は降りてきたものの、まともに食べず、寝ている時も何処か苦しそうだった。

 やはりショックはかなり大きい。今は時間が気を紛らわせてくれるのを待つしかないだろうと鬼道は前を向いた。

 

 

「おはようございます!」

 

「立向居君、どうしたの?」

 

「円堂さんに用事があって……でもいないみたいですね」

 

 

 何も知らない立向居は円堂の不在に疑問を持つが、木野がそれとなくはぐらかす。

 

 

「じゃあ、伝言をお願いしてもいいですか?」

 

「ええ」

 

「円堂さんが究極奥義、正義の鉄拳を身につける前に俺がマジン・ザ・ハンドを完成させます!負けませんよ!とお伝えください、それでは!」

 

 

 そう言い残して立向居はハツラツと駆けていった。これで良かったのだ。今の円堂のことを聞かせたら、あの熱意がどこかへ行ってしまうかもしれない。それだけは出来なかった。

 

 

「何時もなら、今の立向居の言葉で奮い立つんだろうな」

 

 

 鬼道がそう呟いて屋上を見る。フェンスに身を預けたまま微動だにしない円堂がそこにはいた。だが円堂を見ているだけでは何も動かない。それを理解している鬼道はテキパキと練習の指示を飛ばす。

 

 

「……円堂君」

 

 

 その横で夏未がある決意をした。練習用のボールを1つ手に取り、そのまま屋上へ続く階段を登った。重い扉を開けると、そこには項垂れたままの円堂がいる。

 夏未はその目の前まで寄り、声を掛ける。

 

 

「立ちなさい!立って、私のシュートを止めなさい!」

 

 

 夏未は円堂にそう言い放つ。円堂は少し驚いたような表情で顔を上げるが、すぐにまた俯いてしまう。一瞬見えたその目はやはり曇っていた。それを見た夏未は胸が締め付けられるような苦しさを覚えるが、その手に持つボールを円堂へと蹴る。飛んでくるボールに対して無防備なままの円堂は当然その衝撃をそのまま受ける。マネージャーに過ぎない夏未のシュートなどさほど痛くはない。真に痛むのは……ボールを蹴ったはずの夏未の心だった。

 

 

「何よ!落ち込んでいたって何も変わらないじゃないッ!?立ってボールを止めて見なさいよッ!!」

 

 

 懇願にも似たそんな悲痛な叫びが円堂に突き刺さる。それでも円堂は動かない、話さない。夏未の中の円堂 守とは、今目の前で燻っているような男ではなかった。近くにいるとその熱が自分にも移ってしまうんじゃないかと思えてしまうような、まるで太陽みたいな男だ。

 こんな声を掛ければいつもは奮い立つはず。しかし、そんな期待はビリビリに破られた。

 

 

「───ッ!!」

 

 

 辛かった。いつもこのチームを引っ張ってきた円堂がこんなに暗く沈んでいることがあまりに辛すぎた。それ以上に、自分が円堂の助けになれないことが何より重い。目頭が熱くなり、喉の辺りが苦しくなってくる。その言葉にできない辛さに耐えかねて夏未はその場から走り去ってしまう。

 

 

「夏未さん」

 

「木野さん……あなたも?」

 

 

 その時、夏未は木野が持っているものに気が付いた。それは夏未が円堂の元を訪れている間に他のメンバーが円堂のためにと握ったおにぎり。昨日からまともに食事をとっていないなら、きっと腹を空かせているだろう。そんな木野の提案で練習を中断してまで握ったものだ。

 

 

「お腹、空かせてるかなって」

 

「ええ、そうね。私ちょっと風に当たってくるから……お願いね」

 

 

 夏未はそう言って階段を降りていく。それを見送った木野は再び扉を開けて円堂の元へ。

 

 

「円堂君、これ皆で作ったの。おばさんのより美味しくないかもしれないけど……食べて?」

 

 

 夏未に続く来訪者に円堂は少し顔を上げるが、やはりその目は虚ろなまま。きっとまだその時じゃない。そう自分を納得させて木野はその場を去る。

 残された円堂は、そのおにぎりを見てまた自己嫌悪に陥る。皆が自分のために色々してくれているというのに、自分はこんな有様。このままじゃいけない。そう分かっているが、動くことは無い。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「旦那様、失礼します」

 

「どうぞ」

 

 

 襖の向こうから研崎が姿を見せる。その片手には銀色のアタッシュケース。それを見た吉良は珍しく口を歪ませる。

 吉良の正面に座った研崎は早速と言わんばかりにそのケースの中身を見せる。中に大切にしまわれていたのは()()()()()()

 

 

「こちらのエイリア石……200%の出力が確認されました」

 

「それはそれは……何よりです」

 

「これはもはやエイリア石ではありません。在り来りなネーミングですが……()()()()()()()とも言うべきでしょうか」

 

 

 吉良はそれを聞いて高らかに笑う。真・エイリア石と言い改められたその存在は、自分の計画の価値を跳ね上げるという確信があるからだ。長い時間をかけて進めてきたこの計画がここに来て更に飛躍するというのだから、心躍らないはずがなかった。

 

 

「ヒロトは何処に?」

 

「彼は先程グラウンドに向かっておりました……加賀美 柊弥との接触で何か焚き付けられたのでは?」

 

「そうですか。それもまた良いでしょう」

 

 

 

 

 研崎の言った通り、ヒロトはユニフォームに着替えてグラウンドに来ていた。その場にはヒロト1人しかいない。しかし、その目にはしっかりと映っていた。あの時対峙した怪物、興味の対象が。

 

 

「加賀美君、また君とサッカーやりたいな」

 

 

 直後、ヒロトは閃光と化す。再び来るであろうあの血湧き肉躍る戦いに備え、今以上に力を高めるために。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「加賀美君、吹雪君……それでも私は、貴方達を試合に使うわ」

 

 

 病院のある一室、そこには柊弥と吹雪は入院していた。先日運び込まれた2人は未だ目を覚まさず、ただ眠り続けている。そんな2人を瞳子は見舞いに来ていた。返事など当然返ってこないが、瞳子は2人へ不退転の決意を話す。

 だがその時、片方がピクりと動いた。

 

 

「ぅあ……ぁぁ……」

 

「加賀美君!?」

 

「監督、失礼します!」

 

 

 動いたのは柊弥。これまで一切の反応がなかった柊弥だったが、声を漏らしながら身体が動いた。突如のことに声を上げた瞳子、そして病室の外で様子を伺っていた夏未がその声で病室へと入る。

 

 

「うぅ……」

 

「加賀美君!しっかり!夏未さんナースコール!」

 

「はい!」

 

 

 意識が戻ったのならまずは医者を呼ぶべきだ、そう判断した瞳子は夏未にナースコールのボタンを押させる。間もなくして医師と看護師が病室へ駆け込んでくるが、柊弥は依然として呻き声を上げるのみ。

 

 

「加賀美さん!聞こえますか!」

 

「嫌だ、何でこんな……嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ……」

 

「加賀美君!!気をしっかり保つんだ!!」

 

 

 ようやく言葉としてまとまったそれは、拒絶の声。何が起こっているのかは分からないが、激しく気が動転している。その場にいた全員が柊弥に声を掛けるが、それが聞こえていないのか柊弥は未だもがき苦しむのみ。

 

 

「嫌だァァァァァァァァァッ!!」

 

 

 突然柊弥は声を荒らげ、身体が跳ねる。ベッドから落ちては頭を強打する可能性もある。それを防ぐために医師と看護師は柊弥の身体を必死に押さえつける。怪我人として運び込まれて来たとは思えないパワーに驚くも、必死に押さえる。

 それは1分程続いた時にプツンと切れた。急に電池が無くなったように動かなくなった柊弥。どうやら再び眠りについたようだ。

 

 

「先生、加賀美君は……」

 

「……精神科医の友人に聞いたことがあります。酷いストレスを抱えて入院してきた患者は、先程のように寝ている時に急に暴れ出すと。恐らくそのストレスが原因で酷い悪夢を見たのでしょう。今は安定したようですが……次同じことが起こらないとも言えませんな」

 

「……そうですか」

 

「お二人のお見舞いが終わったらしばらく看護師を付けておきましょう。何が起こるか分かりません」

 

「それでしたら悪しからず。今日はもう帰りますので」

 

 

 そう言って瞳子は夏未を連れて病室を後にする。

 

 

「……監督、お願いがあります」

 

「それは円堂君を励ますことかしら? それなら逆効果よ。私は今まで皆に隠し事をしてきたのだから」

 

「そんなことではありません。監督は監督のままでいてください……それだけです。失礼します」

 

 

 監督であれ。そうとだけ伝えて夏未は先に帰って行く。その背中を見送りながら、瞳子は呟いた。

 

 

「……私なんかが、本当にこのチームの監督が良かったのかしらね」

 

 

 その言葉に込められたのは後悔、侮蔑、謝罪といった様々な感情。今こんな状況になっているのは間違いなく自分の責任。きっと響木あたりに任せた方が良かったのだろう。

 だがそれでも、今ここで歩みを止めるわけにはいかなかった。父の……吉良 星二郎の計画を止められるのは、自分とこのチームしかいないと確信しているから。

 

 

「報いは必ず受けるわ。けど今は……私が監督であることを許して欲しい」

 

 

 そう呟いて瞳子は歩き出す。己のやるべきことをやるために。




サラッと明かされる柊弥と円堂の出会いの日。こんなタイミングで明かすものじゃないだろ?ご最もです…
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