Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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評価やらコメントやらいっぱい来てハッピーで埋め尽くされてます
今後もよろしくお願いしますゥ…

え?日曜じゃなくて月曜になっとるやん?
なんのことですかね


第69話 南国の地にて

「豪炎寺、絶対俺達が見つけ出すからな」

 

「監督が先に行って調査しているんですよね?」

 

「そのはずだけど……連絡がないのよね」

 

 

 福岡から沖縄へと向かっている雷門イレブン。"沖縄に炎のストライカーがいる"。響木から伝えられたその情報の真偽を確かめるために一同は船に揺られていた。確かなのはその人物が炎を扱うストライカーということだけ。彼らが探している人物、豪炎寺である確証は1つもないが、柊弥や円堂、他のメンバーの後押しもあり沖縄行きが決定したのだった。

 

 

(修也……)

 

 

 柊弥は1人豪炎寺へ思いを馳せていた。柊弥にとって豪炎寺は一際特別な存在だった。これまでの人生の中で唯一"相棒"とまで呼ぶ程の間柄である以上、特別でないはずはなかった。

 

 

「気になるか、豪炎寺のことが」

 

「……ああ」

 

 

 気付いたら横にいた鬼道が柊弥に問いかける。海の向こうに見えてきた島を見つめながら柊弥の脳裏には豪炎寺と歩んだ日々がフラッシュバックしていた。

 

 

「おお!見てくださいよ!サンゴですよサンゴ!」

 

「目金さん、そんなに乗り出したら危ないッスよ」

 

 

 そんな柊弥から少し離れた船上では目金が海を見ながらはしゃいでいた。テンション高めな目金とは裏腹にその近くにいる壁山と吹雪は沖縄の暑さにぐったりとしている。雪国生まれな上常にマフラーを巻いている吹雪からすればこの暑さは地獄だろう。

 

 

「つれないですねぇ……って、あわわわわ、うわぁぁぁッ!?」

 

「め、目金さーん!?」

 

 

 その時だった。身体を乗り出しすぎた目金は勢いそのままに海へと落ちてしまった。壁山の声で他のメンバーも全員集まってくる。

 

 

「目金!」

 

「深くは無いはずが……あの焦りようでは分からん」

 

「皆退けてくれ」

 

 

 港に近づいていたため深さはそこまでは無い。だがプールほどの水深があれば人は溺れるもの。今のパニック状態に陥っている目金では尚更その危険性は高いだろう。

 鬼道のその分析を聞いて柊弥は少し下がったところから他の者達へ声を掛ける。助走をつけて船の柵を飛び越え、目金を助けに飛び込むつもりだ。

 

 

「いや、待った加賀美!誰か目金に近づいて行くぜ!」

 

 

 だが土門がいち早く何かに気づき柊弥に待ったを掛ける。土門の指差す方を見ると、凄まじいスピードで人が目金の元へ泳いでいる。褐色肌のその男は目金を抱き抱えると、行きと同じくらいのスピードで陸へと戻っていった。

 間もなくして雷門イレブンを乗せた船が停泊すると、全員が急いで目金の元へと駆け寄る。ブルブル震えていることを除けば特に問題は無さそうだ。

 

 

「全く、気をつけろよ?」

 

「君は目金の命の恩人だ、ありがとう!」

 

「よせよ、礼を言われるほどの事じゃねえって」

 

 

 木野が持ってきた毛布に身を包んでいる目金を他所に円堂はその男へ礼を言う。

 

 

「そ、そうですよ……僕だって泳げるんですから」

 

「バカヤロウ!海を甘く見んな!」

 

 

 ボソボソと呟く目金に対して突然その男は怒鳴る。怒鳴られた目金はビクッと身体を跳ねさせ、危険から身を守るかのように毛布を全身に被った。

 

 

「海は命が産まれるところだ、命を落とされちゃ堪んねぇよ!」

 

「は、はいぃ……」

 

「……ま、無事で何よりだ。それじゃあな」

 

 

 そう言い残して男は去っていく。円堂が引き留めようとするが、その男は背を向けながら手を振ってどこかへ行ってしまった。

 

 

「さて、沖縄にはもう1つ船に乗らないとなんだよな?」

 

「えっと、そのことなんですが……」

 

 

 名前くらいは聞いておきたかったが仕方ないと円堂がそう訊ねる。すると音無が気まずそうに口を開く。

 

 

「えぇ!?船は1日1本でもう行ったぁ!?」

 

「目金ぇ……」

 

「今日はこの島に泊まるしかないわね……」

 

 

 船を逃す原因となった目金は横から前から後ろからとあらゆる方向から小突かれる。そうなっては仕方ない、どうしようか……と一同が悩んでいると、円堂が不意に歩き出してこう言った。

 

 

「よし、特訓だ!」

 

「特訓たって、どこで?」

 

「ほら、あそこ」

 

 

 円堂が指さしたのは砂浜だった。

 

 

「やる気があればどんなとこでも特訓できる……だろ!」

 

「確かに」

 

「よし、やろっか」

 

 

 円堂のその言葉に触発されて他のメンバーもユニフォームに着替えて砂浜へと歩いていく。病み上がりの吹雪は今日はベンチで見ているようにと言われたが、もう1人の病み上がりは他と同じくユニフォームに着替えていた。

 

 

「俺は個人でやりたいことがあるからあっちにいる。聞かれたらそう伝えておいてくれ」

 

「分かった、無理はしないでね」

 

 

 1番近いところにいた木野にそう伝えて柊弥は皆から離れた場所へ向かう。

 そんな柊弥には気付かず他のメンバーは特訓を開始する。中でも円堂は普段よりやる気に満ちていた。円堂が今目標にしているのは福岡で手に入れた祖父のノートに記されている究極奥義、"正義の鉄拳"の習得。これから先エイリア学園からゴールを守るにはこの技が必要だろうと確信しているがゆえの熱意だった。

 

 

 そうして特訓を始めて数十分。砂浜に思わぬ来客が現れた。

 

 

「ヒャッホー!」

 

「あれ、さっきのヤツ?」

 

「サーフィンってやつすかね?」

 

「アイツ、こっちに向かってきてないか?」

 

 

 先程目金を助けた男が波に乗りながら砂浜へと向かってきていたのだ。波の勢いが最高点に達したところで男は大ジャンプ。円堂達が特訓していた砂浜へと着地した。ジャンプした場所から着地点まで10メートル程。波の勢いこそあれどその男のフィジカルが生半可では無いことを一部は見抜いた。

 

 

「あれ、さっきのヤツらじゃん。……サッカーってこんなとこでするもんなのか?」

 

「やる気さえあれば何処でも出来る、それがサッカーさ!」

 

「へー、何か熱いじゃん。頑張れよ!」

 

 

 そう言うとその男は砂浜の端で寝転がる。こんな日差しの強い中寝たらマズイのでは?と疑問が生まれるが、現地民にとっては普通なんだろうと謎の辻褄合わせで納得する。

 

 

 予想外の来客があったが、特訓は再開される。円堂の正義の鉄拳習得、立向居のマジン・ザ・ハンドの更なる進化のために他がひたすらシュートを撃ち込んでいるが、本職のストライカーがどちらも不在のためそのゴールが割られることはない。

 そんな状況を見てか、塔子があることを決意する。

 

 

「リカ、あたしとバタフライドリームやってみないか?」

 

「はあ?何でアンタと?あれはウチとダーリンのラブラブシュートや、ねーダーリン?」

 

 

 塔子のその提案をリカは一蹴する……はずだったが、リカにとって予想外な返答が一之瀬から返ってくる。

 

 

「いや、良いんじゃないかな?」

 

「えっ」

 

「そうだな。攻撃のバリエーションが増えれば戦略の幅も広がる。それに……」

 

「それに?」

 

「頼りきりにならないと誓ったからな」

 

 

 鬼道は1人で特訓しているらしい柊弥を思い、ベンチに座っている吹雪を見ながらそう呟く。

 

 

「はぁ……しゃーない、やったろやないか!足引っ張ったら承知せんで!」

 

「望むところ!」

 

 

 リカとて仲間を気遣う善性を備えている。そう言われてはもう断れなかった。

 

 

「よしいくで塔子!」

 

「おう!」

 

 

 リカと塔子はボールを蹴り上げ、同タイミングで跳ぶ。空中で手を繋ぎながらツインシュートを試みるが、そこでタイミングがズレてしまいリカだけが落ちてしまう。せめてもの苦し紛れで塔子がシュートを放つが、ゴールを大きく逸れて飛んでいってしまう。そして不幸なことに、そのシュートはさっきの男が寝ているところへと直撃した。

 

 

「痛ぇ!」

 

「あっ」

 

「やってもうたな」

 

 

 リカと塔子、ついでに円堂がその男の元へ駆け寄って謝罪する。苦言の一つや二つは覚悟していた3人だったが、意外なことな男は怒る様子もなく何故か感謝してきた。

 

 

「良いって良いって、ちょうど良い波が立つ時間だったんだ、サンキュ!」

 

 

 そういって男はサーフボードと共に海へ駆けていった。全く予想できないその行動に3人は呆気に取られていた。

 

 

「沖縄の男って皆あんな感じなのかな」

 

「いや……流石に違うんちゃう?」

 

 

 塔子の言葉にリカが珍しく真面目に返答した。気を取り直した円堂は2人を連れて特訓へと戻っていく。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「この辺で良いか」

 

 

 他のメンバーから放たれたところに柊弥は1人でやってきていた。その理由は単純明快、強くなるため。

 

 

(この前の試合で分かった、雷帝一閃の威力は申し分ないが燃費が悪すぎる。これから先の戦いで皆を守るためにはシュートを撃つ度に極度の疲弊なんてしてられない)

 

 

 それから柊弥は何度も新たな形を模索するためにシュートを撃った。自分が病み上がりの身体であることなど忘れているかのように。こんな様子を見られらば間違いなくストップが掛かる。だが強くなるためにはそれで止まってはいられない。

 今の柊弥を突き動かすのは仲間を守るため、エイリア学園を倒すために強くなるという揺らぐことない意思。

 

 

(修也、お前はあの時力不足なんて言ってたけどな……俺も馬鹿じゃない、何か言えない事情があったことくらい考えれば分かった)

 

 

 そして、戻ってくる豪炎寺のため。

 

 

(だから、戻ってきたお前をそんな事情からも守れるくらい俺は強くなってみせる)

 

 

 視界が一瞬真っ白になり、前のめりに倒れそうになる柊弥。しかし、右脚を前に突き刺すようにして踏ん張ってそれを耐える。大切な仲間達を守る。まるでその想いがつっかえ棒のように柊弥を支えていた。

 しかし、それが思い違いであることに柊弥はまだ気付かない。否、気付けない。自身が柵を乗り越え前のめりになっていることは、バランスを崩して落ちるか誰かに止められるまで気付くことは出来ないのである。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「加賀美どこだー?」

 

「夕飯だよー」

 

「土門、一之瀬。悪いな、熱中しすぎた」

 

 

 日が沈み始めた頃、土門と一之瀬が柊弥を迎えにやって来た。そこで初めてもう辺りが暗いことに気付いた柊弥は練習を切りあげる。前までならまだやらせてくれと言っていたのだろうが、心配はかけさせまいと柊弥は切り替える。

 

 

「ったく、また無茶してたんじゃないだろうな?」

 

「流石にしてないさ、これでも病み上がりだ」

 

「どーだかな?」

 

 

 土門が柊弥を揶揄うようにして小言を並べる。悪い笑みを浮かべながら小突く土門は、軽いように見えて実は相当柊弥を心配していた。柊弥は知らないが、ジェネシス戦の後人一倍瞳子へ食ってかかったのは土門だ。元々土門は仲間に対して熱い男だったが、柊弥には他の仲間よりも強い感情を向けていた。

 それの始まりはフットボールフロンティア地区大会決勝の前まで遡る。元々帝国のスパイとして雷門に潜り込んだ土門。当時顧問だった冬海の悪意によってそれが顕にされた時、向けられた疑念から守ってくれたのが柊弥だった。

 "仲間のために無理でもする男"。それが土門にとっての柊弥である。そんな柊弥に土門は感謝し、同時に尊敬もしていた。だからこそそんな柊弥を心配していた。

 

 

「その辺にしときなよ土門、加賀美が人一倍努力家なのは今更だろ?」

 

「まあね」

 

「けどまあ、あまり無理はしないようにね?」

 

「仰る通りで……」

 

 

 一之瀬も土門程ではないが、柊弥に対して特別な感情があった。鬼道と同じように中盤を制する一之瀬から見ると、自分の更に前で戦う柊弥はある意味憧れ。フィールドの魔術師と呼ばれるほどに技巧に長けた一之瀬にとって道を切り開くその力強さは羨ましくも思えた。それと同時に、いつの日か柊弥と本気で戦ってみたいと心のどこかで思っている。

 

 

「そういやさ、昼間のアイツが来たんだ」

 

「目金を助けてくれたあの?」

 

「そうそう、加賀美がいない時に練習してるとこにも来てさ」

 

「彼、凄いフィジカルだったね。その一面だけならうちのチームで勝てる人はいないかも」

 

「そんなにか……そいつはサッカーをやっているのか?」

 

「それが初心者らしいんだ。それなのにちょっと俺達とやったら円堂からゴールを奪ってさ……おっと、そろそろ着くから続きは中で」

 

 

 柊弥がいない間に起こったことを話していると、予約もしていなかったのに受け入れてくれた宿へ辿り着いた。

 扉を開けて中へ足を踏み入れると、わいわいと盛り上がる雷門イレブンと例の男が料理を囲んでいた。

 

 

「おう!お前が加賀美ってやつか!」

 

「さっきはどうも。加賀美 柊弥だ、よろしく」

 

「俺は綱海 条介!よろしくな!」

 

 

 綱海、と名乗ったその男と柊弥は握手を交わす。ちょうど綱海の隣が空いていたためそこに腰かけると、並んでいた料理に柊弥は思わず息を飲む。

 様々な魚や貝の刺身といった沖縄ならではの品々が並んでいるが、とある皿の上に乗っているカジキであろう魚のお頭が凄まじい存在感を放っていたのだ。

 

 

「凄まじく豪勢だな」

 

「いやー、昼間サッカーやらせてもらったお礼にってちょっと釣りすぎてよ」

 

「カジキを釣り……?」

 

 

 綱海の奇想天外な行動に驚愕しながらも柊弥は刺身を口へ運ぶ。その横で塔子が綱海に話し掛ける。

 

 

「綱海、お前のおかげでバタフライドリームを習得できた!ありがとう!」

 

「おお?まあ、助けになれたなら何よりだ」

 

「なあなあ、綱海ってここの中学なん?」

 

「いーや、ここにはサーフィンに来ただけで沖縄の中学に通ってる」

 

「へえ、歳は?」

 

「15」

 

 

 15、その数字を聞いた瞬間一同の顔にやっちまった、という文字が浮かぶ。このチームは15歳、つまり中学3年生はいない。つまり、円堂や柊弥、塔子達は知らなかったとはいえ歳上にタメ口で話していたことになる。

 

 

「あ、知らなかった、ものですから……その、歳上だとは思っておらず」

 

「いいっていいって、そんなことは海の広さに比べたらちっぽけなもんだろ。タメ口でいいって」

 

「え、ああ……」

 

「おいおいノリが悪いな、堅苦しいのは抜きで宜しく、な?」

 

 

 こちら側に手を差し出す綱海。円堂は少し考える素振りを見せるが、吹っ切れたような表情でその手を握る。

 

 

「おう!よろしく!」

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 翌日、雷門イレブンは沖縄行きの船に乗り込もうとしていた。円堂はてっきり綱海も同行するのかと思っていたが、どうやらまだこの島に残るそうだ。

 

 

「綱海!またどこかで会おうな!」

 

「おうよ!お前らとは案外早く再開する気がするぜ」

 

 

 円堂と綱海は昨日のように固い握手を交わす。それを皮切りに一同は次々船へと乗り込む。汽笛が響いてまもなく港を発った船を綱海は手を振りながら見送る。

 

 

「サッカー、か」

 

 

 そう呟いて綱海は船に背を向けて携帯を取り出す。その画面に表示されているのは、音村という名前。

 

 

「あーもしもし?急で悪いんだけどよ──」

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「着いた!沖縄!!」

 

「南国の日差しは眩しいっスねえ」

 

「言うほどさっきの島と変わらないだろ」

 

 

 船に揺られること一時間。紆余曲折を経て雷門イレブンはとうとう沖縄の地へと降り立った。

 

 

「響木さんの話ではこの辺にいるんだよな?炎のストライカー」

 

「ああ!だからここにキャンプを張って徹底的に張り込み調査だ!」

 

 

 円堂のその言葉で各々行動開始する。言い出しっぺの円堂はというと、少し離れたところでサッカーボールが打ち上がったのを見てもしかしたらと駆け出した。

 だがその期待は外れたようで、そのボールを蹴っていたのは小さな子ども達だった。もしかすると、炎のストライカーの情報を持っているかもしれない。そう思って円堂はそこに割り込むようにして飛び込んだ。

 

 

「よっと」

 

 

 飛んできたボールを軽くリフティングして見せる。すると、その子ども達は予想外の行動に出る。

 

 

「……うわあああん!」

 

「うえっ!?」

 

「泣かせた!!」

 

「泣かせた!!……うえええん!」

 

「……円堂、何をしているんだ」

 

 

 立向居と共に円堂を追いかけてきた鬼道が子どもを泣かさた円堂に対して冷ややかな目線を向ける。滅多に向けられることの無いそれに焦ってすぐ否定するが、子ども達は泣き止まない。

 

 

「ゴラァァァァ!!誰だァ!俺の弟達を泣かせたのは!!」

 

「あのお兄ちゃん俺達のボールとった!」

 

「いぃ!?そんなつもりじゃなかったんだ!ごめんごめん……」

 

「本当かぁ?大体怪しすぎるだろ、その眼鏡!」

 

 

 突如、大柄な男が野太い声を上げながらやってくる。その迫力に一瞬萎縮した3人だったが、身にまとった割烹着を見て何とも言えない心持ちになる。

 円堂が弁明を試みるが、割烹着の男は鬼道のことを羽根帚で指して怪しむ。ゴーグルにマント、ドレッドヘアー。残念ながら鬼道は見た目だけでいえば怪しまれる要素満載だ。

 

 

「失礼なやつだな」

 

「ふんッ」

 

「待ってくれ!俺、皆がサッカーしてるの見て聞きたいことがあってさ……俺、雷門サッカー部の円堂 守!」

 

 

 円堂に対して少しの間警戒を見せていた大男だが、急にその雰囲気を和らげて円堂に話しかけた。

 

 

「お前ら、宇宙人と戦ってるっていうあの雷門中か!悪い悪い。俺は土方 雷電。サッカー部に所属してんだ」

 

 

 円堂と土方は握手を交わす。

 

 

「それで?聞きたいことってのはなんだ?」

 

「俺達、炎のストライカーを探しにここに来たんだ。もしかしたらソイツは俺達の仲間かもしれなくて」

 

「炎のストライカー……悪いが聞いたことも見たこともないな」

 

「そっかあ……」

 

 

 土方のその本当に肩を落として落ち込む円堂。それを見た土方は何かを言おうとしたが、やはりと思いとどまる。土方の中で何か葛藤があったことを円堂達が知ることは無い。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「加賀美君、少し良い?」

 

「夏未か、どうした」

 

 

 それぞれが豪炎寺捜索に赴いている中、柊弥はキャラバンが停車している近くで海を眺めていた。太陽に照らされて煌めく海。それに比べてずっと暗く落ち込んだままの自分が情けなく思えて柊弥は自嘲的な笑みを零す。

 だが、そんな俯瞰は横から自分を呼ぶ声によってかき消される。呼び声の正体は夏未だった。

 

 

「少し貴方と話がしたくてね」

 

「構わない。丁度あっちにベンチがある」

 

 

 柊弥は海を見ながら座れるベンチを指差す。夏未も立ち話をするつもりはなかったようでそのベンチに腰掛ける。

 

 

「それで、話というのは?」

 

「……豪炎寺君のことよ。彼と人一倍距離が近かった貴方の意見を聞いてみたくて」

 

 

 夏未が提示した話題は豪炎寺についてだった。柊弥は表情を変えずに話に耳を傾ける。

 

 

「豪炎寺君の離脱……私は何か裏があるとみてるの」

 

「というと?」

 

「奈良でのあの試合……確かに豪炎寺君はらしからぬミスを連発した。皆も今までもの私もそれが原因で監督は豪炎寺君をチームから外したと思っていたわ」

 

 

 夏未は力強く言い切る。

 

 

「本当は別の理由……豪炎寺君を何かから守るために離脱という手段を選んだのではないかって」

 

「……俺も同意見だ。口には出していないが、恐らく鬼道も」

 

 

 夏未の辿り着いた結論は柊弥の抱いているものと同じだった。表沙汰にすればチームが揺らぐかもしれない、そう懸念して自分の中だけに留めていた考えだ。

 

 

「アイツは去り際に自分の力不足、と言っていたがそれは有り得ない。確かに試合でミスを連発したが、修也のストライカーとしての実力は俺なんかよりも遥かに高い。そしてあの監督がそれを見抜けていないはずがない」

 

「貴方と豪炎寺君にそこまでの差があると私は思っていないけど……まあ、そうよね。ここからは仮説なんだけど豪炎寺君は……」

 

『エイリア学園に接触されていた可能性が高い』

 

 

 夏未と柊弥の言葉が重なる。仮説まで2人は同じように考えていたことを示す。

 

 

「それで私達に迷惑が掛かると思って離脱を監督に打診した、ということかしらね」

 

「恐らく。或いはそれを察して監督が抜けるように言ったか」

 

「これはもしもの話だけど、豪炎寺君がまだエイリア学園に狙われていた場合。きっと豪炎寺君は……」

 

「いいや、必ずチームに戻す」

 

 

 夏未の言葉を遮って柊弥は立ち上がる。夏未が横から覗いたその目からは、決して揺るがないのであろう意思が感じ取れた。

 

 

「アイツがエイリア学園に狙われていようと、それで皆に危険が及ぼうと……俺が必ず守る」

 

「加賀美君……」

 

「そのために俺はいる。その責務を果たすためなら──」

 

 

 少しの静寂の後、柊弥は言い切る。

 

 

「──命なんて惜しくない」

 

 

 その時、夏未は少し身を引いてしまった。まるで修羅のようなその形相、そして触れるもの全てに牙を剥くかのような凄まじい覇気に呑まれてしまいそうになったから。

 

 

「……そんな貴方を、誰が守ってくれるのかしらね」

 

「ん?」

 

「いいえ、何でもないわ」

 

 

 夏未は柊弥が聞こえないような声で呟く。その言葉に込められていたのは100パーセントの心配だった。音無のような恋情混じりのものではなく、1人の仲間、友人としての。

 だが、柊弥にその言葉は伝えない。あくまでマネージャーに過ぎない自分がその決意に異を唱えるべきでは無いと思ったから。

 

 

「柊弥先輩!夏未さん!ここにいたんですね」

 

「あら音無さん、どうしたの?」

 

「キャプテンが皆に紹介したい人がいるって連れてきたんです、来てください!」

 

「分かった」

 

 

 静寂を破るように音無が2人の元へとやってくる。それを聞いて柊弥は1人先にそこへ向かった。

 後を追うように2人で歩く夏未と音無。横で何かを言いたそうにしている音無に対して、夏未が先に口を開いた。

 

 

「……心配しなくても、加賀美君に手を出すつもりはないわよ」

 

「うぇ!?何のことでしょうか!!」

 

(こんなに貴方のことを思っている人もいるというのに……少し前のめりすぎじゃないのかしら?)

 

 

 そんなことを考えているうちに他のメンバーが屯している場所に着く。紹介したい相手というのは、円堂の隣に立っている大柄な男だと言われずとも分かった。

 

 

「俺は加賀美 柊弥。よろしく」

 

「アンタがあの加賀美か!俺は土方だ、話は聞いてるぜ」

 

「話?」

 

「……ああ、円堂からな」

 

(あれ、俺土方に柊弥のこと話したっけ?)

 

 

 一瞬そんな疑問を抱く円堂だったが、まあいいかと土方のことを皆に紹介した。

 

 

「こいつのディフェンスは凄いんだ!だから是非一緒に戦ってもらおうと思って」

 

「おっと、それは出来ない相談だ。俺には弟達がいる、分かるだろ?」

 

 

 円堂が仲間として迎え入れたいと口にするが、土方はすぐさまそれを辞退する。その理由は弟達の面倒を見なければならないからというもの。家族のことなら仕方ない、と円堂はそれを了承した。

 

 

「おーい」

 

「炎のストライカー、見つけたぜ!」

 

「何だって!?」

 

 

 その時、未だ戻ってきていなかった吹雪と土門が合流する。何と炎のストライカーを見つけたと言う。皆が期待に胸を膨らませながら階段を上がってくるその正体を待つ。

 

 

「炎のストライカーはこの南雲だ!」

 

「よう、アンタらが雷門イレブンか」

 

 

 だが、その期待は残酷にも折られることになる。姿を見せたのは豪炎寺ではなく、真っ赤な髪の男だった。

 

 

「キャプテンの円堂、それに加賀美。俺はずっとアンタらに会いたかったんだ」

 

「俺達に?」

 

「ああ。あの雷門イレブンの矛と盾。興味が湧かない訳がねえ」

 

「……それは光栄だ」

 

 

 柊弥は自分に向けられるその視線に何か違和感のようなものを感じた。まるで品定めするかのような視線、更にその裏には何か別の意図もあるように思えた。だが、初対面にそんなことを言うのも気が引ける。自分の考えすぎという可能性もある。

 

 

「なあ、俺をテストしてくれよ。このチームに俺が相応しいかどうか……俺対雷門イレブン、どうよ?」

 

「随分と自信満々だな」

 

「自信があるから言ってんだ」

 

「監督、良いんですか?」

 

「……ええ、構わないわ」

 

 

 実際に南雲のシュートを見たという吹雪と土門の後押し、そこに瞳子の了承が加わったことで南雲のいうテストを実施する方向となった。

 

 

(俺達へのあの視線、あの自信……何かがある。真・帝国の不動のような、そんな読み切れなさがある)

 

 

 柊弥は警戒を解かずにフィールドへ入る。他のメンバーはあそこまで言う南雲の実力を見るのが少し楽しみといった様子だ。

 

 

「じゃあ行くぜ……紅蓮の炎を見せてやる!」

 

(速い、だが追い抑えられる)

 

 

 ホイッスルが鳴り、南雲がスタートを切る。そのスピードは相当なもので、一瞬柊弥は驚くも難なく反応する。

 しかしその時、南雲が不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「そらよっ!」

 

「なッ!?」

 

(何て跳躍力だ!それに飛んだ瞬間も見えなかった……アイツ、只者じゃない!)

 

 

 突如南雲はボールと共に空中へ跳んだ。その圧倒的瞬発力に柊弥は目で追うのが精一杯だった。

 

 

「ディフェンス!」

 

「おう!」

 

「よし!」

 

 

 一瞬で中陣まで突破される。鬼道がすぐさま後陣へ指示を出すが、反応出来たのは塔子と吹雪の二名。壁山と木暮はその大立ち回りに圧倒されて動くことが出来なかった。

 

 

ザ・タワー!!

 

「へっ」

 

 

 塔子がザ・タワーで迎撃する。が、南雲は聳える塔に向かって思い切りシュートを放つ。その威力は相当なものだったらしく、ザ・タワーはすぐさま崩壊、塔子は難なく突破されてしまう。

 

 

アイスグランド!

 

「それも読めてるぜ」

 

 

 ノータイムで吹雪が追撃を仕掛ける。塔子を突破して息をつく間もない完璧な追撃のはずだった。しかし、南雲は氷撃に飲まれるより早く再び跳躍、吹雪も追いかけて飛ぶが足元にも及ばない。

 

 

「行かせないっス!」

 

「止める!」

 

 

 ここで動けなかった壁山と木暮が両サイドから挟み込むように仕掛ける。それに対して南雲は再び空からそれを突破してみせる。地上より空中にいる時間の方が長い凄まじいプレー、それを可能にするのは南雲の誇る絶妙なボールコントロール。

 

 

「さあ!紅蓮の炎で焼き尽くしてやる!」

 

 

 南雲が更に高くボールを蹴り上げる。それを追い掛けるように南雲もオーバーヘッドの形で跳躍。描く軌道は正に太陽の表面で観測されるコロナのようだった。

 

 

「させるかよ」

 

「おっと、来ると思ってたぜ!」

 

 

 ボールに蹴り込む直前、柊弥が同じ高さまで跳んだ。すると南雲は待っていたと言わんばかりに顔を歓喜に染める。

 

 

アトミックフレア!!

 

"真"轟一閃ッ!!

 

 

 今柊弥がいるのは足場のない空中。本来ボールにエネルギーを注ぎ込む工程が踏めない分右脚に注ぐはずだった全エネルギーを集中させる。

 誰も手の届かない高さで炎と雷が交差する。手の届かない、というのは高さだけの話でもなく、その次元もだ。あの場に踏み入ろうものなら荒れ狂う雷と燃え盛る炎にその身を焼かれて堕とされる、そう確信してしまった。

 

 

「良いパワーだ……けど足りねェなァッ!!」

 

「チィッ!!」

 

 

 そのぶつかり合いは拮抗していたように見えた。しかし南雲にはまだまだ余力があった。それに対して柊弥は本来の形でない空中での轟一閃。軍配が南雲に上がるのはごく自然なことだった。

 

 

「オラァッ!!次はお前だぜ円堂!!」

 

(正義の鉄拳はまだ全然未完成、ならアレしかない!)

 

 

 円堂は即座にマジン・ザ・ハンドの構えに入る。

 

 

マジン・ザ・ハンド"改"!!

 

 

 呼び出された魔神と共に円堂は炎の一撃を抑え込もうとする。しかし、柊弥と違って拮抗することすら許されなかった。紅蓮の炎は触れた瞬間魔神を焼き尽くし、円堂ごとゴールネットを大きく揺らす。

 

 

「どんなもんよ」

 

 

 全員、目の前で起こったことに驚愕していた。柊弥に真っ向から打ち勝ち、円堂からゴールすらも奪ってしまった。まさにその力は圧倒的、このチームで南雲に並び立てる実力者いないという事実をいやでも突きつけられる。

 

 

「すげぇぜ南雲!まさか本当に一人で俺達を倒しちまうなんて!」

 

「へっ、テストは合格でいいな?」

 

「もちろん!ですよね、監督!」

 

 

 その実力差に円堂は落胆することなくむしろ歓迎の意を見せた。握手を交わす円堂と南雲。そこに瞳子が寄ってくる。

 

 

「……構わないわ。けれど幾つか質問をさせてもらうわよ」

 

「良いぜ?何でも聞きなよ」

 

「単刀直入に聞くわ、貴方は何処の学校の生徒なの?」

 

 

 その質問を投げ掛けられた時、明らかに南雲の表情が変わる。まるで自分の悪巧みを大人に叱られた子どものような、そんな表情だ。

 黙りこくる南雲。それとは反対に厳しい視線を向ける瞳子。

 

 

「エイリア学園だよ」

 

「この声は──」

 

「……ヒロト」

 

 

 暫くその空間を静寂が包み込んだ。しかしそれを両断したのは、想定外の乱入者の声だった。

 全員がその声の方向を向く。そこにいたのは、先日ザ・ジェネシスとして福岡で自分達を完膚なきまでに叩き潰した男だった。

 

 

「……チッ、邪魔すんなよな。俺はお前のお気に入りがどんなヤツらか見に来ただけだっつーの」

 

「騙されちゃダメだ、加賀美君に円堂君」

 

 

 その時、ヒロトがあの黒いサッカーボールを下に向かって蹴り出した。無造作に放たれたシュートだったが、ヒロトの放つそれは自分達の必殺技に匹敵、あるいはその上をいくことはこの前の試合で痛感させられていた。

 そのシュートに向かって円堂が迎撃体制を取る、が。

 

 

「どいてな」

 

 

 南雲が前に躍り出る。なんと南雲はそのシュートを軽々とトラップして見せた。そしてその直後南雲を中心に竜巻が巻き起こる。それが止み、中から姿を見せた南雲の装いは随分と変わっていた。

 

 

「南雲、お前……」

 

「こっちが本当の俺だ。エイリア学園、プロミネンスのバーン。覚えときな」

 

「プロミネンス……また新しいチームが」

 

「グランよぉ!さっき言った通り今回は偵察に来ただけだ。けどもしコイツらが俺達の邪魔になるようなら……潰すぜ」

 

 

 南雲……バーンが冷徹な視線を雷門イレブンに向ける。そう声を掛けられたヒロトは南雲の近くに寄り、鋭い目付きで睨みつける。

 

 

「潰す?それは俺たちの方針じゃないだろう。強いヤツは俺達の仲間にしてもいい、違うか?」

 

「仲間?ああ、あの豪炎寺ってやつみたいにか?」

 

「──おい」

 

 

 ボールを挟んで睨み合う2人。何を話しているのか意味が理解出来なかったが、豪炎寺の名が出た瞬間ある男の雰囲気がガラリと変わった。

 

 

「お前ら、修也に何をした?」

 

「さあ、何だろうな?」

 

「答えろ」

 

「へっ、良いぜ?俺達は──」

 

「お喋りが過ぎるぞ」

 

 

 バーンが柊弥の問いに答えようとしたその時、ヒロトが黒いボールへ蹴り込む。すると周囲を眩い光が包み込んだ。その光が消えた頃、2人の姿も消えていた。

 

 

「消えた……またエイリア学園の技術か」

 

「あの2人、豪炎寺のことを知ってるみたいだった」

 

「……おい、加賀美」

 

 

 鬼道が柊弥に声を掛けた。だが柊弥は何も答えない。ただ、その顔つきは険しいものだった。

 

 

(あの瞬間、俺はアイツに全く適わなかった。それにさっきの発言で確信した。アイツらは修也に接触している)

 

 

 柊弥は拳を力の限りしめる。

 

 

(もっと強くなる。次会った時は叩き潰せるくらいにッ!!)

 

 

 言葉にせずそう誓う柊弥。どんな言葉をかけても今は届かないと感じた鬼道は柊弥ではなく他の全員に言葉を投げる。

 

 

「炎のストライカーは豪炎寺ではなかった!気を取り直して仕切り直すぞ!」

 

「だな、アイツが俺達の探してたストライカーじゃなくてある意味良かったんじゃないか?」

 

「そうだね、まだ豪炎寺の可能性が出てきた」

 

 

 豪炎寺捜索に前向きな希望を持つ雷門イレブン。自分の無力に怒りを覚えているのは柊弥だけだった。

 その一部始終を見ている者がいたことに気付いた者は誰もいない。




前回少なかったぶん今回は文字数多めです、これで1日遅れたことは有耶無耶に出来ましたね
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