Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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最近更新の度に来る感想が増えてきてて嬉しい限りです
物語、というより柊弥の核心をつくようなものもあって凄い読んでくださってるんだなあ⋯とニヤニヤしながら返信している次第です


第72話 背負ったもの

「イプシロン改⋯一体どれだけ強くなってるんだ」

 

「分からん。だが俺達に勝つ以外の選択肢などない」

 

 

 場所は大海原中グラウンド、沖縄の地にて雷門イレブンと進化を遂げたイプシロン改の試合が始まろうとしていた。

 イプシロン改の勝手な因縁で決まったこの試合。雷門イレブンは乗り気ではなかったが、断れば周囲の学校を破壊すると脅された結果、首を縦に振った。

 

 

「アイツらが宇宙人⋯よし!俺も力を貸すぜ!」

 

「良いわ。貴方の実力を見込んでキャラバンに誘おうとしていたところよ」

 

「よし!よろしくな、綱海!」

 

 

 試合開始直前、綱海のイナズマキャラバンへの加入が決定した。早速この試合から入るようで、立向居が代わりにベンチへ行き綱海はDFとして後衛に加わる。

 綱海の加入で火がつき、試合に対して熱意を見せる雷門イレブン。しかし、その輪には混ざらずにイプシロンと睨み合っている男達がいた。

 

 

(イプシロン改⋯必ず勝つ)

 

 

 1人は柊弥。前回のイプシロンとの試合では最後に決めきれず、引き分けになってしまったことをずっと引きずっていた。その上ジェネシスとの試合の後、仲間を守る為に躍起になっているせいで試合への姿勢はかなり前のめりだ。

 

 

(デザーム⋯今度は絶対にゴールを決める。そして、完璧になるんだ)

 

 

 そしてもう1人は吹雪。以前はシュートチャンスこそ巡ってきたものの、デザームから1点を奪うことすら叶わなかった。それに比べ、同じくストライカーである柊弥はデザームからゴールを奪っている。"完璧"を求める吹雪にとってそれは酷な事実であり、導火線となっている。

 

 

 仲間を守ると他の何事も顧みない柊弥と、誰も知らないところで自身の存在意義を追い求めている吹雪。2つの爆弾を抱えたまま試合は始まろうとしていた。

 

 

「吹雪、お前はDFスタートで頼む」

 

「⋯うん、分かったよ」

 

 

 その時、鬼道が吹雪に話しかける。その内容は今の吹雪にとって逆風でしかない不都合なものだったが、すぐに笑みを作り頷く。その内心は穏やかなものでは無いが。

 

 

「FWは加賀美とリカのツートップ。攻めの中核は任せたぞ」

 

「よっしゃ!やったるで!」

 

「⋯」

 

「加賀美、聞いているか?」

 

「⋯ああ、大丈夫だ」

 

 

 ずっとイプシロン改の方を凝視して上の空な柊弥に一抹の不安を抱く鬼道だが、すぐにその不安を振り払う。この試合において得点の鍵になるのは間違いなく柊弥、司令塔である自分か疑いを持てば、ゲームメイクに支障が出る。そう自分に言い聞かせる。

 

 

「⋯今回のキーマンは間違いなくお前だ。序盤はまず相手の様子を窺え。流れを把握出来たら俺が指示を出す。それまではお前は撃つな。良いか?」

 

「了解」

 

 

 鬼道は柊弥に歩み寄り、他の誰にも聞こえないように耳打ちする。今があるかは分からないが、大海原との試合のように独断専行でベンチと交代になっても困る。釘を刺す用に柊弥に指示を出しておいたのだ。

 

 

「よし、行くぞ!」

 

 

 試合前の作戦会議を終え、それぞれポジションに着く。既にフィールドに入っていたイプシロン改の面々は誰一人例外なく不敵な笑みを浮かべている。まるで相手を品定めするかのような、そんな視線で雷門イレブンを待ち構えていた。

 

 

 そして、とうとう試合が始まる。

 

 

「行かせねえよ」

 

「フッ、ならば止めてみるがいい!」

 

 

 ゼルのキックオフでスタート。メトロンがボールを受け取り、それに対して柊弥がプレスを仕掛けて最前線のマッチアップが始まる。

 しかし反対側からゼルが既に抜け出しており、華麗なワンツーで柊弥は抜き去られる。

 

 

(ドリブルもパスも速くなっている。前のままなら見てからでも奪えたのに⋯)

 

 

 一瞬で柊弥を突破したメトロンはそのまま雷門ゴールに向かって切り込んでいく。それに対して一之瀬と塔子が仕掛けるが、接触より早くメトロンは空中へ高く跳ぶ。

 

 

メテオシャワー!

 

 

 オーバーヘッドでメトロンがボールに蹴り込むと、分裂して隕石のように地上に降り注ぐ。爆風に行く手を遮られた一之瀬と塔子は突破を許してしまう。

 

 

「くっ、必殺技の精度も進化している!」

 

「アイツら本当に強くなってる!」

 

 

 その後も凄まじいパスワークを展開するイプシロン改。そのスピードに適応できない雷門イレブンは後手に回ることを強いられてしまう。フィジカルを評価されて雷門イレブンに仲間入りした綱海ですら追いつけない程なのだから相当だろう。

 

 

 そして最終防衛ラインすら軽々と突破される。その時ゴールに向かって走っていたのはゼル、メトロン、マキュアの3名。何を狙っているかは火を見るより明らかだった。この3人の連携シュート、ガイアブレイクだ。最終的に円堂は止めて見せたが、その威力は本物。進化した今どうなるかは計り知れない。

 

 

ガイアブレイク!!

 

 

 3人がエネルギーを解放したことにより砕かれた地面がボールに纏わりつく。その中心に存在するボールを撃ち抜くように3人同時に蹴り込むと、大地の力を得た強力なシュートがゴールへと襲い掛かる。

 例に漏れず、ガイアブレイクも以前より強くなっていた。だが、ゴール前の円堂は焦らない。何故なら、進化したのは自分もだから。

 

 

正義の鉄拳!!

 

 

 放たれた究極奥義は正確にシュートの中心を捉える。正義の名のもとに繰り出される拳は絶対的な強さを誇っており、迫る一撃を完璧に殺す。

 相手も進化してあるが、こちらも確実に進化している。その確信が雷門イレブンを奮い立たせる。

 

 

「俺達も負けちゃいられないぞ!」

 

「おう!」

 

 

 それが顕著だったのは土門と一之瀬だった。弾かれたボールは再びイプシロンに渡ったが、2人の信頼の元に成り立つ連携で再び奪い返す。

 

 

「よっしゃ!頼むぞ!」

 

「よし」

 

 

 そのパスを受け取ったのは柊弥。これがスイッチとなり雷門側の攻撃が始まる。凄まじい速さで切り込んでいく柊弥は、他の追従を許さない。柊弥を止めるべく立ちはだかった全てを真正面から打ち壊し、一気にゴール前まで抜ける。

 

 

(まだだ)

 

「分かってる」

 

 

 ほんの一瞬、柊弥は鬼道の方を見る。小さく首を横に振った鬼道から意志を汲み取った柊弥は、逆サイドに走り込んできたリカにボールを預けた。

 

 

「今回はちゃんとパスしたな、後で褒めたる!」

 

 

 完全フリーの状態でボールを得たリカは勢いよく右脚を振り上げる。そしてその勢いのままボールの中心を蹴り抜く。

 

 

ローズスプラッシュ!!

 

 

 薔薇の花弁を散らしながらデザームの待ち構えるゴールへ向かうリカのシュート。並のキーパーなら十分に驚異になりうる威力を秘めている⋯はずだった。

 

 

ワームホール

 

 

 だが、このデザームにとってはそうではなかった。あくまでワームホールはデザームのサブウェポン。それでも十分に殺し切れる程度にはリカのローズスプラッシュは驚異にはならなかった。

 

 

「悪くない。だが私の求めるレベルには程遠い」

 

 

 そう吐き捨て、デザームはボールを投げ捨てる。コロコロと転がっていくボールが辿り着いたのは、柊弥の足元だった。

 

 

「お前だ。お前が撃って来い!それ以外は脅威にならん!」

 

 

 あくまで自分の敵になるのはお前だけだ、デザームはそう柊弥に言葉を投げる。焚き付けられた柊弥は⋯ただ黙ってそのボールを見つめていた。

 

 

『⋯今回のキーマンは間違いなくお前だ。序盤はまず相手の様子を窺え。流れを把握出来たら俺が指示を出す。それまではお前は撃つな。良いか?』

 

『お前だ。お前が撃ってこい!それ以外は脅威にならん!』

 

 

 柊弥の中で鬼道の声、デザームの声が交互に響く。無限に感じる葛藤の中、苛立ちだけが募る。仕掛けるか、合わせるか。2つの選択肢に板挟みにされた。

 

 

 その末に、柊弥が選んだのは──

 

 

「やってやるよォッッ!!」

 

「加賀美!!」

 

 

 ──突き進むことだった。

 

 

「フハハハ!!良いぞ、来い!!」

 

「ラァァァァァッ!!」

 

 

 蹴る、追いつく、蹴る、追いつく⋯何度もそれを繰り返し、一撃の破壊力は極限まで高められる。もはやその規模は災害。抑圧されしその激情が破壊力となり、敵を撃ち滅ぼさんと荒れ狂う。

 

 

雷帝一閃ッ!!

 

 

 蹴り込むその瞬間、あまりの踏み込みに軸足を中心に地面が砕ける。地を砕き、空を裂きながら怒れる雷帝の一撃が雄叫びを上げる。

 

 

ドリルスマッシャー!!

 

 

 それを嬉々としてデザームは真正面から迎え撃つ。雷帝一閃とドリルスマッシャーがぶつかった瞬間、雷を伴う凄まじい衝撃波がフィールド全体を叩く。

 

 

(何という重さ!期待通りだッ!!)

 

 

 デザームの身体が徐々に押し込まれ、ミシミシと音を立てながらドリルにヒビが入る。次第にデザームの額に汗が浮かぶ。

 傍から見れば柊弥のシュートの圧倒的優勢。だが、それにも関わらずデザームは笑う。

 

 

「面白いッ!!最高だァァッ!!」

 

 

 その時、ドリルの回転が目に見えて速くなる。凄まじい音と火花を散らしながら更に速くなる。

 そしてその影響か、段々と雷帝一閃の威厳が失われていく。

 

 

「私の勝ちだ」

 

「──嘘、だろ」

 

 

 やがて完全に威力は殺される。それを見て柊弥は全身の力が抜け、膝から崩れ落ちてしまった。決して力量差に絶望した訳でも全ての力を使い果たした訳でもない。

 柊弥には確証があったのだ、この一撃が()()()先制になると。

 

 

「もっとだ、もっと撃って来い!!」

 

 

 デザームは再び柊弥にボールを送る。膝を着く柊弥の元に差し出されるように転がってくる。

 

 

「まだ底を見せていないだろう!?あの試合の最後で見せた力はまだこんなものではなかったはずだッ!!さあ立て、そして私を楽しませろォッ!!」

 

「ならお望み通り⋯ぶっ壊れるまで撃ってやる」

 

 

 柊弥は挑発に乗せられて立ち上がった。もう完全に仲間との調和など意識の外だった。デザームを壊すこと、それだけを至上命題として立つ。

 

 

「寄越せェッ!!」

 

「なッ」

 

 

 柊弥が再び雷帝一閃を撃つ⋯誰もがそう思った。しかしそれは予想外の乱入者によって遮られることになる。

 

 

「何をしている⋯吹雪ィ!!」

 

「点を決めるのはお前じゃねェ!!この俺だッ!!」

 

 

 柊弥の怒声に振り向くことなく吹雪はデザームに向かっていく。柊弥に吹雪、2つの爆弾は早々に爆発してしまった。

 

 

「貴様も来るか!加賀美 柊弥に気を取られて忘れていたぞ!」

 

「うるせェェェ!!」

 

 

 デザームの何気ないその一言が吹雪を更に滾らせる。まるで自分が元から眼中に無いような言葉に歯を剥き出しにして怒り狂う吹雪はそのままシュート体勢に。

 

 

エターナルブリザードォッ!!"V2"ッ!!

 

 

 放たれたエターナルブリザードもまた進化していた。まるでフィールドに突如現れた暴風雪のような破壊力を秘めるエターナルブリザードは轟音を立てながらデザームへ襲い掛かる。

 しかし、それを見たデザームの表情は嬉々としたものから一転、能面のように無へと変わる。

 

 

ワームホール

 

 

 デザームが選択したのはドリルスマッシャーではなくワームホール。そのことからデザームにとってエターナルブリザードは雷帝一閃ほどの脅威では無いということを否応にも突き付けられる。

 さらに、今の吹雪にとって着火剤にしかならない言葉が投げ掛けられる。

 

 

「この程度か⋯期待していたが、加賀美 柊弥ほどでは無い」

 

「んだとこの野郎ッ⋯!」

 

 

 冷淡な目付きのままデザームはボールを投げる。それはDFであるタイタンが受け取ったが、すぐさま吹雪が奪い返した。

 

 

「吹雪!俺が決める……ボールを寄越せッ!!」

 

「うるせェッ!!」

 

 

 吹雪の横についた柊弥がボールを要求するが、吹雪が返したのは怒号であってボールではない。

 

 

「テメェも俺を見下してんだろ!?俺じゃ絶対デザームから点は奪えない、自分なら奪える!!そう思ってんだろ!!」

 

「──俺はただッ」

 

「黙って見てろッ!!お前も、豪炎寺も必要ねェ⋯俺が決める!俺は、完璧にならなくちゃならねェんだッ!!」

 

 

 "見下している"。吹雪に言われたその言葉にそんなことは無いと反論しようとした柊弥は脚を止めてしまった。

 勿論、柊弥としては見下しているつもりなんてなかった。しかし、心のどこかで吹雪では決められないが自分なら⋯思っている自分がいることに気付いてしまった。

 完全に吹雪の主張を否定しきれない。そんな迷いがその脚を縛り付けた。

 

 

「デザァァァァァァムッ!!」

 

「フン⋯」

 

 

 吹雪は殺意すら感じるほどの怒気を帯びた咆哮をデザームにぶつけ、再びエターナルブリザードの構えに入る。

 対するデザームは相変わらず興味無さげに吹雪を見ているが、警戒は怠っていない。

 

 

エターナルブリザード"V2"ッ!!喰らえェェェッ!!

 

ワームホール

 

 

 それを見ていた他のメンバーは心做しか先程の一発よりも威力が高まっているように感じた。

 しかしそれとは裏腹にデザームは先程と同じようにワームホールで完璧に止め切って見せる。

 

 

「まだだァッ!!」

 

「⋯なら、満足するまで撃ってみろ」

 

 

 そう言うとデザームは吹雪の足元へボールを転がす。完全に舐め切られている吹雪は感情を剥き出しにしてゴールに牙を剥く。

 

 

エターナルブリザード"V2"ッ!!

 

ワームホール

 

エターナルブリザードッ⋯"V2"!!

 

ワームホール

 

 

 二度、吹雪は全力でエターナルブリザードを放つ。しかしそのどれもがデザームを打倒するに足らない。

 この短時間で全力のシュートを3本も撃った吹雪は目に見えて消耗していた。ギラつくその目にも段々と光が無くなってきた。

 しかしそれでも吹雪は撃つ。文字通り全存在を賭けて。

 

 

エターナルブリザードォォッ!!"V2"ゥゥゥッ!!

 

 

 その一撃は吹雪にとって最高のシュートだった。威力、スピード共に申し分ないまさに全身全霊。これでゴールを奪えなければもう誰も奪えない、そうとすら思える一撃だ。

 しかし、現実はあまりに残酷だった。

 

 

「くだらん」

 

 

 デザームはその一撃に対してワームホールを使うことなくただ右腕一本を差し出すのみ。それにも関わらず、吹雪渾身の一撃は簡単に、まるで当然のように抑えられた。

 その光景を見て、吹雪だけでなく他の誰もが呆気に取られる。

 

 

「この程度、必殺技を使うまでもない」

 

「な⋯そんな馬鹿な⋯」

 

 

 狼狽える吹雪、その目には先程までの闘志はもう宿っていなかった。

 

 

「お前はもう必要ない、消えるがいい」

 

 

 デザームのその言葉は吹雪の心に突き刺さる。今の吹雪にとってはあまりに致命的な言葉だった。

 

 

「士郎としても必要ない」

 

「アツヤとしても必要ない」

 

 

 "必要ない"。その言葉が何度も吹雪の中で反響し、吹雪の心を確実に、丁寧に崩壊させていく。

 吹雪の様子がおかしい事に円堂や鬼道は気付く。しかし、遅すぎた。

 

 

『じゃあ僕は、俺は一体何なんだァァァァァァァァァッ!?』

 

 

 その慟哭が引き金となり、吹雪の心は完全に崩壊する。糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。

 

 

「吹雪!!」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 

 すぐさま全員吹雪の元に駆け寄る。円堂や鬼道が声を掛けるが、まるで心が抜け落ちているかのように何の反応もない。言葉を返すどころか、身体を動かすことすらしない。

 吹雪 士郎、そして吹雪 アツヤはもう立てなかった。

 

 

「選手交代!!立向居君、吹雪君と交代してDFに入って!」

 

「は、はい!」

 

 

 瞳子が立向居に交代の指示を出す。一切自分で動こうとしない吹雪に円堂と鬼道は肩を貸し、ベンチまで連れていく。

 

 

(吹雪、こんなになるまで無理をして⋯もう大丈夫だって言っていたのは嘘だったのか)

 

(確かにお前の悩みはお前にしか解決できない。だがこれではあまりに⋯)

 

 

 ベンチに座らせられた吹雪に瞳子やマネージャー達が声を掛けるが、やはり反応はない。心配で仕方ない円堂達だが今は試合中、吹雪の分も戦い抜くことを誓ってフィールドに戻る。

 

 

(吹雪⋯何でそんなに無理をした。そんなに追い詰められていたなら俺に任せておけば⋯!)

 

 

 柊弥もまた別の形で吹雪のことを案じるが、それはあまりに見当違いだった。だが吹雪の胸中は誰にも分からないもの、柊弥を責められる立場の者がいるとしたら、それは吹雪自身くらいだろう。

 

 

「加賀美、吹雪が抜けた今単騎でデザームを突破できるのは恐らくお前だけだ。だから前半みたいな独走はやめて俺の指示を聞け、良いな?」

 

「⋯それじゃダメだ、鬼道」

 

 

 鬼道が柊弥に釘を刺すようにそう告げる。しかし、柊弥は珍しく鬼道の指示に対して反論を見せる。

 

 

「今俺達は明らかに劣勢、そんな状況で点を奪えるのが俺だけなら尚更攻め手を緩めちゃいけない」

 

「加賀美」

 

「だから俺にボールを集めろ。もう、誰も無理なんてさせねえ」

 

 

 柊弥の鋭い眼光が鬼道を射抜く。その視線は仲間に向けるようなものではなかった。あまりの覇気に鬼道は一瞬気圧されたが、すぐに気を取り直す。

 

 

「⋯お前も、無理をしているんじゃないだろうな」

 

「当然」

 

 柊弥に負けないくらい強い視線を柊弥に向ける。そのやり取りの後、少しの間考えて鬼道は柊弥に背を向け、全体に声を掛ける。

 

 

(どうする、確かにデザームから点を取れる可能性があるとすれば加賀美の雷帝一閃だ。ザ・フェニックスやイナズマブレイク、皇帝ペンギン2号などの連携技もあるが前者2つは円堂が上がることが前提、皇帝ペンギン2号も染岡が欠けた今その穴を埋められるヤツがいない)

 

 

 鬼道は迷っていた。本当に柊弥に任せていいのか。口ではこう言っているが、柊弥1人に負担を掛けることのリスクを考えると頷ききれない。吹雪のように限界を越えて動けなくなるか、ジェネシス戦の時のように暴走してしまうか。或いは、予想も出来ない惨劇が起こるか。

 勿論そんなことにはならずただ点を奪えて有利な状況を作れる可能性だってある。

 

 

「鬼道」

 

 

 熟考する鬼道に対し、柊弥が声を掛ける。

 

 

「信じろ」

 

 

 その言葉に鬼道が顔を上げる。そこにいたのは、鬼道のよく知る副キャプテンとしての柊弥だった。

 

 

「⋯皆聞け!これからは加賀美にボールを集めろ!」

 

『おう!』

 

 

 鬼道の指示に全員が応える。一方、柊弥はというと──

 

 

(俺には、皆の想いに応える義務がある)

 

 

 大切な仲間達に背を向け、ただ真っ直ぐにイプシロン改を見据えていた。

 

 

(立ち止まりも退きもしない、死んでも勝ってやる)

 

 

 その背に宿るのは不退転の決意。ここからが柊弥に立ちはだかる更なる試練の始まりだった。




試合開始早々吹雪が退場、柊弥が暴走気味というトンデモ状態。どうなっちゃうんだー(棒読み)


あ、明日も更新します。元々この話と次の話で1話だったんですがあまりに長くなったので分割です。
次の話の最後は⋯?
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