そして、豪炎寺の復活と共に望まれていた展開をようやく皆様にお届けできます。
ぜひ頭の中で立ちあがリーヨあたりを流しながらご覧下さい
「加賀美、頼む」
「俺はここで安静にしてなきゃだけど、思いだけは常にお前達と一緒にいてえ。だから連れてってくれよ、俺の魂」
エイリア学園と戦いが始まってから、何人もこのチームを離れてしまった。半田にマックス、影野、少林、宍戸。一番最初の試合で負傷してしまい、この旅が始まる前に入院による離脱を余儀なくされた。
そして染岡。真・帝国学園との試合の中、チームのために身体を張って無理をしたことでサッカー選手にとって命とも言える脚を負傷、皆と同じく怪我でこのチームから降りた。
「約束する。また10番を背負うに相応しいストライカーになってから、絶対に戻ってくる」
そして、修也。本当はどんな理由があってこのチームを離れたのか、俺には分からない。けど、離れたくて離れたわけじゃないのは分かる。
アイツがいなくなってから俺は段々とおかしくなっていった気がする。雷門中サッカー部としてフットボールフロンティアを優勝するために戦い始めた時からずっと隣にいた修也がいなくなって、どうしようもなく寂しかった。不安だった。
それと同時に、もう誰も失いたくないと思った。だから俺はひたすらに強くなるために時には無茶もした。
「頼むぜ、柊弥!」
「加賀美⋯任せるぞ」
「加賀美に繋ぐんだ!」
「柊弥先輩!」
俺は皆からの信頼に応えたかった。ストライカーとしても、副キャプテンとしても。どれだけ過酷な特訓でも、皆の為だと思えば全く辛くなんてない。例えそれが、俺の本心を押し殺すことになったとしても。
そう、思っていた。
『加賀美さんのせいで、俺達はこんなことに』
『どうして、どうしてこんなことしたんだ』
『お前が弱いから負けた』
『貴方は本当に役に立たないのね』
『お前なんか、俺の親友じゃない』
『…消えろ』
ある時からどうしようもなく辛く、苦しくなった。そんなこと皆が言うはずない、俺のただの思い込みが創り出す悪夢だって分かっていた。皆俺の事を想ってくれている、何があっても大切な仲間達なんだ。
だから俺は強くなりたかった。誰にも頼らず、皆を守れるような、そんな存在になりたかった。それが正しいことだってずっと信じて突き進んできた。いや、突き進むことしか出来なかった。
けど、今ようやく分かった。俺は間違っていたんだって。
「皆のために戦うんじゃない、皆と……俺達と一緒に戦おう」
目の前には、あの時手を伸ばしても届かなかった修也がいる。修也だけじゃなくて、守が、鬼道が、皆が俺のことを待ってくれている。秋や夏未、それに春奈。監督も後ろから俺の背中を押してくれている。
ああ、やっと分かった。
「加賀美!」
「加賀美君!」
「加賀美さん!」
「柊弥!」
「柊弥先輩!」
俺は、独りなんかじゃない。
「柊弥」
「皆、ありがとう⋯俺と一緒に戦ってくれ!!」
修也の手を握りしめ、声高らかに皆にそうお願いする。それに対して皆は笑いながら頷いたり、返事をしたり、俺の背中を叩いたり、それぞれの形で答えてくれる。
そして目の前の男は、力強く俺の手を握り返した。
「おかえり、相棒」
「ただいま、相棒」
前を見据える。不思議とさっきより視界が広いように感じる。さっきまで見えなかったものが見える。聞こえなかった声が聞こえる。感じられなかったものも感じられる。
俺はもう折れない、迷わない。隣を走ってくれる相棒が、背中を任せられる親友が、一緒に戦ってくれる仲間達がいる!もう大丈夫だってことをこの試合で証明してやるんだ!
「豪炎寺 修也に焚き付けられて何を勘違いしているのか分からんが…先程まで醜態を晒しておいて我々に勝てると思うのか?」
「勝てるかどうか、今から見せてやるよ」
デザームが挑発気味に話しかけてくる。さっきまでの俺だったら苛立ちながら答えていたんだろうな。
「ここからが本当の加賀美 柊弥だ。もたもたしてたら追いつけないぜ」
「面白い⋯ならば、今一度叩き潰してくれる!」
試合再開のホイッスルが鳴る。スコアは1-2でまだ負けている…けど余裕だ。今の俺達ならデザーム、イプシロンに勝てる。そんな自信しかない。
「修也!速攻で仕掛ける!」
「ああ!」
試合再開してすぐ俺達は勝負を仕掛ける。キックオフは相手からのためまずはボールを奪う必要があるな。
ならやることは簡単だ。俺が修也に声をかけると、ボールをキープしているマキュアの前にプレスを掛けてくれる。一切抜けられる穴が存在しない修也という壁の前で一瞬たじろぐマキュア。その一瞬が命取りになる。
「そこだッ」
「ッ!マキュアやっぱりお前嫌い!」
意識は完全に修也に向いている。そうなってしまえば、俺のスピードに対応することなど出来ない。二人の間をすり抜けるようにして足元のボールだけをかっ攫う。
そしてその勢いは殺さない。スピードはそのままに俺は相手ゴールへと駆け上がる。
「フハハ!抜けるものなら抜いてみるがいい!」
その時、先程の挑発を現実にするためにデザームが俺の前に立ちはだかる。デザームのフィジカルは俺より上だ、真正面からぶつかったところで押し負けるだろうな。
なら、馬鹿正直に戦わなければいいだけだ。
「ほう…だが見えているぞ!」
俺はデザームにタックルを仕掛けるフェイントを掛ける。だがデザームの観察眼も流石、それがハッタリだと瞬時に見抜き本命のルートを塞ぎに来る。
だが残念、それは俺の本命じゃない。
「通るぞ」
「何ィ!?」
そう、二重のフェイントだ。流石にこれは見極められなかったようで、デザームの顔が一気に焦りに染まる。
「くッ、侮るなッ!」
しかしデザームも一流。何とフェイントに掛かった上ですぐさま身体を切り返してそのコースすらも抑えに来た。圧倒的なフィジカルの為せる技か、敵ながら素晴らしい。
けどデザーム、お前は1つ思い違いをしているぜ。
「お前、何時まで俺が1人でサッカーしてると思ってんだ?」
「任せろ」
「豪炎寺 修也ッ!?」
デザームが俺の前を塞いでほぼノータイム、ノールックでヒールパスをだす。そのパスは背後から走り込んできていた修也が完璧に受け取る。今の俺には修也の…いや、皆の足音、気配が完全に読み取れる。もう独り善がりは閉店してるんだ。
「さて」
修也にボールを任せて俺は逆サイドから駆け上がる。デザームを欺いた俺に警戒しつつもさっき簡単に1点奪ってみせた修也へのマークの方が手厚いな。
だが焦燥で圧のかけ方が甘い。こんなんじゃパスを通してくださいと言っているようなものだ。
ここで活きるのは北海道で身に付けたこのスピード。最短最速で修也のパスを受けられる場所に駆け抜ける。
さあこっちだ修也。俺にお前が見えているのと同じように、お前にも俺が見えているはずだろ!
「柊弥!」
「ナイスパス」
修也から弾丸のようなパスが飛んでくる。並の受け手ならその威力に押し負けそうだが、俺ならそうはいかない。そしてアイツも俺なら受けられることを分かって出してる。気持ち良い信頼だ。
俺はそのまま前線に上がる。中陣を突破すると、屈強なイプシロンのDF達が俺の前に立ちはだかる。力任せの突破も出来なくはないが…その必要は無いな。
後ろから来てるだろ?鬼道。
「人使いが荒い副キャプテン様だ」
「そう言わず助けてくれよ」
「ふっ、言うようになったじゃないか」
俺の右に躍り出た鬼道にパスを出す。俺もその横に並ぶようにして駆け上がる。
鬼道の強みはテクニック。フルに発揮された時のその技量に追い付ける者は敵でも味方でもかなり限られるが、俺なら順応出来る。
「このビートを加えれば…こっちの守りが甘くなる!」
大柄なDF、タイタンと相対する鬼道。全ての能力値が高水準であるイプシロンのDFを突破するのは容易ではない。
だがその時不思議なことが起こる。鬼道が独特なステップで踏み込んだ瞬間、進行方向を一気に変える。タイタンはそれに一切反応出来ない。
あれは大海原の音村と同じ…いつの間にモノにしてやがった?
「そしてこのリズムに追い付けるのはお前だ、加賀美」
「ドンピシャだ」
タイタンを突破した鬼道は先程の修也程ではないにしろそれなりに強いパスを出す。それは止まらずに進み続ける俺の足元にピッタリ収まる。最高のパスだ、鬼道。
俺は完全にフリー。何人足りとも俺の道を妨げることなど出来ない。
「貴様など恐るるに足らんぞ、加賀美 柊弥!」
「奇遇だな!俺もお前なんて怖くねえ!」
ゼルが俺にそう吐き捨てる。しかしそれは俺と同じ、啖呵を切り返してやる。
余裕の笑みを崩さないゼル。それを他所に俺はボールを空中に蹴り上げる。それを見ると先程までの雷帝一閃と違うことに気付いたゼルは少し顔を顰めた。
「最初から空中に!?」
天へ昇る龍の如く高度を上げていくボール。俺は逆雷のような軌跡と共に地を砕きながらボール以上の速度で跳び上がる。俺は空中でボールを追い越し、そのすれ違いざまに雷を纏った脚で斬り裂く。
一度斬られたボールはその場で動きを止める。それに対して俺は何度も斬り掛かる。あくまでボールは動かさず、自分だけが何度も空中で身を翻して。
前までの雷帝一閃は何度も撃ち込み乗算式に荒れ狂うエネルギーと共にシュートを放つ必殺技。それが前までの俺の限界だった。
エネルギーは自分の心の強さに左右されるもの。心が不安定ならば勝手に暴れ出し、反対に落ち着いていればその全てを思うがままに支配できる。今みたいに、一点に固定し続けることだって難しくない。
強さとは腕力だけでなく心からもなるもの。漫遊寺の監督が俺に教えてくれたのはこういうことだったんだ。
最後の一撃を浴びせた途端ボールからは金色の雷が迸る。今までの蒼、荒れてた時の紅とは全く違う黄金だ。
爆発したように溢れ出したそれはすぐさま収束、同タイミングで俺は下に堕とし、それより早く地上に降り立つ。
「あれは新しい必殺技なのか!?」
「けど…前よりも!」
いいや違うぜ土門、これは新しい必殺技なんかじゃない。これが完成形なんだ。
独りで圧倒的な力を振るう帝王のシュートなんかじゃない、お前達と一緒に戦うための加賀美 柊弥のシュート!
「これが本当の俺⋯加賀美 柊弥だッ!!」
強く、速く、寸分の迷い無く刀を振り抜く。
ーーー
柊弥が放った真の必殺技、雷霆一閃は幾本も雷を束ねた一本の稲妻となってイプシロン改のゴールへと襲い掛かる。その様は仲間と一つになって戦う柊弥の姿そのものだった。
それを見た豪炎寺は確信する。やはり柊弥は自分の相棒であり、自分は柊弥の相棒であると。
「お前はやっぱり最高だ、柊弥」
イプシロンのキーパー、ゼルは為す術なくゴールへ押し込まれる。もはや必殺技の構えに入ることすら許さない、雄々しき雷霆の一撃が炸裂する。
雷門中副キャプテン、加賀美 柊弥は再び轟く。愛する仲間達の存在を再認識し、自分の在り方を取り戻したこの男にもはや迷いなど微塵もない。
『ゴォォォォル!!雷門の加賀美、帰ってきた豪炎寺に続いてとうとうイプシロン改から点をもぎ取りました!!』
「うおおおおォオオオオオオオオッ!!」
得点を噛み締めるかのように柊弥は咆哮を上げた。今まで押し殺してきた"歓喜"という感情を全て解き放つかのように天を仰ぐ。少々荒々しいが、それは柊弥にとっての産声。生まれ変わった自分をこの世界に見せつけるための第一声だ。
「柊弥ーッ!!」
「ナイスシュート加賀美!!」
「このチームの副キャプテンはやっぱり君だ!!」
そんな柊弥に円堂、土門、一之瀬が飛びかかる。揉みくちゃにされながらも柊弥全員とハイタッチを交わし、自陣へ走りながら戻る。そしてそこでも塔子や壁山、綱海達と喜びを分かち合う。
「やったな加賀美!アンタカッコイイよ!」
「俺の憧れの加賀美さんが戻ってきたッスぅぅぅ!!」
「おい壁山泣くなって!でも分かるぜ!ありゃあ俺も憧れちまう!!」
そしてその様子を離れたベンチから音無は見守っていた。
「柊弥先輩⋯良かった⋯本当に良かった!」
「あら音無さん、行かなくて良いの?」
「どさくさに紛れて混ざってきたら?」
「そ、それは流石に⋯あとからこっそりと行ってきます」
感極まって涙を流しながら柊弥を目で追っていた音無だったが、夏未と木野にからかわれてすぐさま我に返る。後から行くことを明言しているあたり正気なのかは怪しいところではあるが。
(加賀美君、それが本当のあなたのサッカーなのね)
瞳子もまた心の中で安堵していた。自身が追い詰めたも同義の柊弥が本来の在り方を取り戻してくれたことが堪らなく嬉しかったのだ。
それと同時に、この場でただ1人俯いている吹雪のことが心配になる。何とかして吹雪にもあの輪に混ざってもらいたい。だがゆっくりで良い。無理をさせてはいけないと前を見る。
「ポジションチェンジだ!!私がキーパーに戻る!!」
その歓喜の渦を打ち破るようにデザームが声を荒らげ、自身がキーパーに戻る旨を宣言する。
そして雷門イレブン⋯主に柊弥と豪炎寺を指さして声高らかに告げる。
「私がお前達を必ず止めてみせる!!お前達の全てを叩き潰してやるッ!!」
「やってみな」
「今の俺達は誰にも止められない」
そうしてデザームとゼルは交代、イプシロンのボールから試合は再開となる。既に後半も終了間近、決着の時は刻一刻と近付いてきている。
「なッ!」
「悪いね、このボールは彼らに譲ってもらうよ!」
豪炎寺の登場によって流れが切られるまで見せていたのと寸分違わないパス回しで慎重にラインを上げていくイプシロンの前衛達。しかし、その途中に入り込んできた一之瀬によってそれは遮られる。
「いけッ!加賀美、豪炎寺!!」
「ナイスだ一之瀬!!」
そしてそのボールはすぐさま2人のストライカーの元に。当然イプシロンは全力でボールを奪い返しに行く。後ろにデザームが控えているとはいえここで逆転されたら自分達は終わり。躍起にならないはずがなかった。
だがしかし、この2人は止められない。焦りからプレーするイプシロンでは、今この時を純粋に楽しんでいる柊弥と豪炎寺を止めることは叶わない。
阿吽の呼吸で攻め上がる雷と炎は誰にも止められない。互いのことなら何でも分かると言わんばかりの凄まじい連携で気付いた時にはデザームが構えるゴール前へ。
「さあ!雷霆一閃でも爆熱ストームでも何でも来るが良い!!真正面から打ち砕いてくれるッ!!」
「残念、そのどちらでもねえよ」
「決めるぞ」
柊弥が真上にボールを蹴り上げると、左右対称の形で二人揃って一瞬力を溜める。その後、回転と共に二人の脚には炎が宿った。
「あれは!!」
「成程な⋯この試合の締めに相応しいじゃないか」
「久々に見れるんだな、あの二人の絆の象徴!」
もはや雷門イレブンは二人が点を決めることを一切疑っていない。何故なら、今から放たれるのは互いにレベルアップを果たした上で再誕するあの二人だけのシュートだから。
回転する度に二人の炎は猛烈に燃え上がる。その勢いはそれぞれが爆熱ストーム、雷霆一閃に匹敵するのではないかというほどに凄まじい。
「行くぞ、修也ァァ!!」
「ああ、柊弥ッッ!!」
二人は互いの名を呼ぶ。初めてこのシュートを撃った、帝国学園との予選大会決勝の時のように。
互いの高さ、気迫、高揚が最高点に達し、全くの同時、完璧なタイミングでボールに互いの脚をを叩き込む。
これこそが加賀美 柊弥と豪炎寺 修也の絆の結晶。最強で最高のシュート。
『"真"ファイアトルネードDDッ!!』
双炎は一つになり、爆炎となる。仲間の想いを背負った二人の想いが燃え盛り、全てを燃やし尽くさんと猛り荒ぶる。
(こ、これは──)
デザームは抵抗するべくドリルスマッシャーを放つ。が、ドリルの先端とシュートが触れた瞬間全身を炎に包まれる。視界までもが炎に染まる中、デザームは満足気に笑っている自分に気が付いた。
(ようやく分かった!私が本当は何に心を躍らせていたのか!!)
次の瞬間、デザームの力の象徴であるドリルは粉々に砕け散る。
(ヤツらの強さではない、その強さの裏にあるあの絆に惹かれていたのだ!!)
直後、デザームは腹に爆炎の一撃を受けゴールに押し込まれる。それと同時にホイッスルが高らかに鳴り響いた。それは得点を告げると同時に、試合の終わりを示すホイッスル。
決着をつけたのは二人のストライカー。彼らは多くは語らない。ただお互いに笑いあって、その拳を突き合わせるのみ。
長きに渡る因縁は、今この瞬間を持って終わりを告げた。
雷霆一閃 風属性 TP80
本来の自分を取り戻した柊弥が放つ彼の"究極奥義"
独りで荒れ狂う雷帝では無く、仲間達と束となり轟く雷霆こそが彼の目指したサッカーである。
ーーー
復活の爆炎と再轟の雷霆、この2つのタイトルはリメイクを決めた時から考えていたサブタイトルでした。
リメイク後のこの作品の執筆を初めてほぼ2年、ようやくここまで来れたことが何より嬉しいです。
ただの作者の妄想劇場の延長戦でしかないこの小説ですが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです。