ひとつの山場を超えた当作品ですが、まだまだ終わりません。これからもよろしくお願いします!
俺と修也が放ったファイアトルネードDDはデザームを真正面から打ち砕き、ゴールネットを揺らす。それと同時にホイッスルが鳴り響いて試合終了⋯ようやくデザームに、イプシロンに勝つことが出来た。
試合の途中までが嘘みたいに晴れやかな気分だ。帰ってきた修也が、皆が俺の目を覚まさせてくれて掴めた勝利。これが俺達、雷門イレブンのサッカーだったな。この感覚も久しぶりだ。
「修也、ありがとな」
「こっちこそ。ずっと待っていてくれて、また一緒に戦わせてくれてありがとう」
「どういたしまして、と言いたいところだけど⋯お前を待ってたのは俺だけじゃねえよ、ほら」
「⋯そうだな。戻ろう、皆のところへ」
最後の得点を決めた俺達はそれだけ話して拳を突き合わせ、自陣へと歩いていく。けど、俺達が戻るよりも早く、皆が俺達の方へなだれ込んで来た。
「柊弥!!豪炎寺!!最っ高だぜお前ら!」
「お前も大概だっての。あの土壇場で究極奥義、正義の鉄拳を進化させるなんてな⋯流石だぜ」
「あれは俺だけの力じゃないさ!アドバイスをくれた立向居、感覚を掴むまで一緒に守ってくれた皆、そして絶対に諦めなかった柊弥の、全員の力だ!」
「こんなやり取りも久しぶりだ⋯」
「確かにな!お前はいつも遅いとか色々言いたいことはあるけどさ⋯お帰り!豪炎寺!」
代表して、という訳でもないだろうが守が俺達2人に声を掛ける。シュートを決めたのは確かに俺達2人だけど、やっぱりそこまで耐えてくれた守や皆の頑張りがあってこそのゴールだ、本当に感謝しかない。
「俺、加賀美さんがまた怖くなった時はもうダメかと思ったッス!」
「福岡の時も思ったけど、加賀美さんって1番おっかないよね」
「うんうん、今度こそ俺達も無事じゃすまないかもって覚悟したよ」
「その節は本当に申し訳なく思っております⋯」
「いやいやいや!ジョークだから!本気の土下座しようとしないで、ね!?」
壁山、木暮、一之瀬の順で痛いところを抉ってくる。その件に関しては本当に申し訳ない。いや、本当に。
後になって冷静に考えてみると、自我を飛ばして暴走状態に陥るなんてどれだけ追い詰められてたんだよ。詳しい話は聞いてないけど、本当に皆が怪我とかしなくて良かった。
「⋯加賀美 柊弥」
「デザーム」
とりあえず誠意を土下座で示そうとしたところを一之瀬に止められて皆に笑われている中、背後から声がかかる。
そこにいたのはさっきゴールにぶち込んだデザーム。皆が身構えるが何となく分かる⋯別に俺達に危害を加えようなんてつもりはないみたいだ。
「最後のシュートに焼かれる中で思い出した。サッカーとは、仲間との絆で心の底から熱くなれる。そんな素晴らしいものだったな」
「デザーム、お前⋯」
「感謝するぞ。お前達のおかげでそれに気付けた」
デザームがグローブを外した右手を俺に差し出してくる。その瞳に依然として敵意は無い。
⋯正直、コイツらのことは許せない。やったのはジェミニストームだが、エイリア学園は皆の学校を破壊し、色んな人を不安に陥れた。それに、半田達が怪我をする原因になったのもコイツらだ。
けど、それでも。試合が終われば敵も何も無い。コイツらだって、本当は楽しいサッカーが出来るんじゃないかって考えてしまう。あの時戦ったアフロディ、世宇子中がそうだったように。
「イプシロン"改"⋯強かったよ。今度は何の因縁もなく、楽しいサッカーをしようぜ」
そう返して俺はデザームの手を取ろうとした。
「君達が雷門イレブンか」
その時、青色の光が俺達から少し離れたところで迸った。それと同時に周囲に立ち込めるのは凍てつくような冷気。そしてその中央には、絶対零度のオーラを放つ白髪の男が佇んでいた。
「ガ、ガゼル様ッ」
「ガゼル?まさか、アイツも」
「そう、先日君達の前に現れたグラン、バーンと同じくマスターランクチーム、ダイヤモンドダストを率いている」
俺の思考を読んだようにガゼルと呼ばれた男はそう補足してくる。バーン、そしてヒロトと同格か⋯確かに、そう言われても納得出来るほどの何かを感じる。
「良い練習相手が見つかった。そして、今回の負けでイプシロンは完全に用済みだ」
「用済み⋯?」
その時、俺の脳裏にある光景がフラッシュバックする。そう、あれは北海道でのことだった。ジェミニストームに勝利した矢先に俺達の前に現れたデザームがレーゼ達に同じようなことを言ったんだ。
ということは⋯ガゼルが今からしようとしていることは!
「おい!逃げろお前ら!」
「何ッ!?」
「このままだと消されるんじゃないのか!?」
俺はデザーム達に早く逃げるように叫ぶ。だがしかし、デザームはどこか諦めているような表情だった。自分に襲い掛かる運命を受け入れようとしているような、そんな顔だ。
「⋯代償を払う時が来たのだ。我々はその覚悟が出来ている」
「バカ言え!何もそんな──」
「安心しろ」
デザームは落ち着き払った様子で俺の言葉を遮る。
「私達は──」
「さらばだ、デザーム」
デザームが何かを言おうとした瞬間、ガゼルの足元から黒いサッカーボールがデザーム達に向かって放たれる。それはイプシロンの面々の目の前で停止し、先程のような青い光を放つ。
俺は耐えかねて視界を腕で覆う。光が落ち着いて目を開けた時には、既にそこにデザーム達はいなかった。
「デザーム!!」
『雷門イレブン。君達と戦える日を楽しみにしているよ』
いつの間にかガゼルも姿を消していた。去り際に不穏な言葉だけを残して。
しばらくの間静寂が続く。この一瞬で何が起こったのか、誰も飲み込めていないようだった。
「何か⋯やるせねえな」
「エイリア学園がやっていることは許されることでは無い。だが、良い気分ではないな」
「アイツ、心を入れ替えかけてたもんね⋯」
皆の間に何とも言えない空気が流れる。が、それを払拭したのは守だった。おもむろにボールを持ち上げ、ある方向へ転がす。
そのボールが転がって行った先は、修也の足元だった。
「ダイヤモンドダストにプロミネンス、そしてザ・ジェネシス⋯確かにまだまだ色んなチームがいるのかもしれない。けど!」
守は太陽のようにニカッと笑い、堂々と言い切る。
「今はさ、そんなこと忘れて⋯おかえり!!豪炎寺!!」
その言葉で全員が俺の隣⋯修也の方を見る。呆気に取られたエースストライカー様は、何て返そうか考えがまとまらないみたいだ。
「修也、そのボール代わりに蹴ってやろうか」
「⋯ふっ、遠慮しておこう」
見かねて軽く煽ってやると、キザに笑ってそのボールを守に向かって軽く蹴る。そして、胸を張って──
「皆、ただいま」
「おう、おかえり」
──俺達の元へ、帰ってきた。
──-
『雷門中!!イプシロンに勝利おめでとー!!』
「⋯ほんと賑やかね、この学校は」
その日の夜、大海原の好意で祝勝会を開いてもらうことになった。夜の海辺で肉に魚、果てにはスイーツなど様々な料理が振る舞われる。聞く話によると、大海原との練習試合の後にもBBQをしたらしい。⋯俺は一人反省会で参加してなかったが。
ちなみにだが、あの後修也が雷門を離れた経緯が明らかになった。どうやら、俺や夏未の予想通りエイリア学園に接触されていたらしい。しかもヤツらは、修也の妹、夕香ちゃんを人質にしていて揺さぶりをかけていやがった。
その状況を打破するために先手を打ったのが瞳子監督だった。監督は鬼瓦さんへの根回しをした上で修也にチームを離れさせた。鬼瓦さんの紹介で土方の家に匿ってもらっていたようだ。
「ほら豪炎寺!もっと食えよ!!」
「そうだそうだ!腹いっぱい食え!」
「気持ちはありがた──」
俺の視線の先では修也が四方八方から食べ物を押し付けられている。まるで今まで食べられなかったんだからちゃんと食えと言わんばかりに。別に食べてなかった訳じゃないんだろうな⋯というか、土方の家に匿ってもらってたなら逆に食べさせてもらってそうな気がする。
とはいえ、久々に皆に囲まれて満更でも無さそうだ。後から襲われるであろう腹痛は幸せ税ってヤツだな、きっと。
かく言う俺も皆に揉みくちゃにされた。今だからこそ言うけど無茶しすぎなんだよとか、もっと頼れよだとか。ご最もなお説教をされてしまった。とりあえず皆には心の底から謝罪をぶつけてきた。その謝罪を行動で示せと次々皿に肉が盛られた時は絶望したな。だから修也、お前も俺と同じ苦しみを味わってくれ。頼んだぞ。
「加賀美、隣座るぞ」
「おう」
腹休めのために少し離れたところにいたら鬼道が隣に腰掛けてきた。その手には飲み物だけが握られている辺りコイツも腹休めだろう。俺や修也みたいに胃袋の限界を超えてはいなさそうだが。
「ようやく前の雷門イレブンが戻ってきた」
「ああ。修也も帰ってきて、イプシロンも倒せたからな」
「お前も元の副キャプテン様に戻ってくれたしな」
「ウグッ⋯ゲームメーカーのお前にはマジで迷惑かけたよ、ごめんな」
「フッ、その分今後はしっかり働いてもらうぞ」
「任せとけ」
中間管理職に首輪をつけられながらも俺は目の前でわいわい騒ぐ皆を見ていた。修也にひたすら食事を押し付ける守に土門。同じように一之瀬に押し付けまくるリカ。壁山にイタズラを仕込む木暮⋯本当に見てて飽きないよ、俺の仲間達は。
「ダイヤモンドダスト、かあ⋯」
その時、ふと昼間のアイツ⋯ガゼルのことを思い出した。マスターランクチーム、ダイヤモンドダスト。間違いなくイプシロン"改"より手強い相手になるだろう。
それにダイヤモンドダストだけじゃない。修也を探していた時に接触してきたバーンの率いるプロミネンス。そして、ザ・ジェネシス。ヒロトには色々と聞かなくちゃいけないことがあるからな。何で京都で俺の手助けをしてくれたのか。俺達の敵だと言うならあんなことをする必要はなかったはずだ。
何となくだけど、アイツには何かがある。もしかしたら試合が終わった時のデザームみたいに⋯なんてことは考えないでおこう。いざ対面した時に迷ったりは出来ないからな。次会った時は絶対に俺が⋯いや、俺達が勝つ。
「⋯俺はそろそろお暇しよう」
「ん、また食べに行くのか?」
「ああ」
唐突に鬼道が席を立った。腹休め終わるの早くないか?鬼道財閥の息子ともなると消化スピードも訓練していたりするのだろうか。してないだろうな。
「柊弥先輩」
⋯ああ、不自然に何処か行ったのはこういうことか。
「どうした?春奈」
「隣、座りますね」
そう言って春奈は俺の隣に腰掛ける。
⋯ヤバい、何か話さなきゃいけないのは分かっているけど、どう言葉を切り出せば良いのかが分からない。今こうして対面したことで色々と思い出してしまう。福岡の病院でのやり取りとか、大阪でのイプシロン戦の前の⋯アレとか。前と違って色々冷静になった今考えると、なんというかこう、すごく困る。
「豪炎寺先輩が戻ってきてくれて本当に良かったですね」
「あ、ああ。やっぱりこのチームのエースストライカーはアイツだからな⋯嬉しいよ、本当に」
色んな葛藤と戦っていると、先に春奈の方から話を切り出してくる。何とかそれに返答するが、自分でも分かるくらい動揺している。くそッ、頼むから落ち着け俺。
「でもそれ以上に⋯私は前の柊弥先輩に戻ってくれたことが嬉しいです」
「⋯春奈にも心配掛けたよな。後から秋に聞いたけど、福岡で俺が入院した時は毎日見舞いに来てくれてたんだろ?ありがとな」
「いえ、良いんです」
そこで会話は終わってしまう。離れたところで皆が騒いでいるせいでこの静寂が際立って物凄く気まずい。
「先輩、私が大阪で話したこと⋯忘れてないですよね?」
「⋯当たり前だ。アレを忘れるほど人格終わってないぞ、俺」
「ふふっ、なら良かったです」
そう言って春奈は悪戯っぽく笑いかけてくる。ここでその話を出てきたってことは⋯そういうことなのか?今ここで返事を出せってことなのか?
けどこの件にはエイリア学園との戦いが終わってから応えるつもりだったし⋯俺はどうするのが正解なんだ、誰か教えてくれ、頼む⋯
「催促する訳じゃないですけど、もっかい伝えますね?」
「えっ」
立ち上がった春奈は、座ったままの俺の顔を覗き込むようにして言葉を繋げる。
「私は柊弥先輩のことが好きです」
「───ッ」
「あ、赤くなった」
そう言われて俺は反射的に顔を隠す。きっと今酷い顔をしているんだろう。
けど、こうしてまた面と向かって言われたからにはしっかり応えなきゃダメだろう。これは1人の男としての意地の見せどころだ。腹を括れ⋯
「春ッ──」
「ストップです」
顔を上げて第一声を絞り出す⋯が、それより早く口元を手で塞がれる。突然のことに思考が追いつかない俺は言われた通り言葉を止めてしまう。
「言ったじゃないですか、催促するわけじゃないって。だから待ちますよ⋯この戦いが終わるまで」
そう言うと春奈は俺に背を向けて立ち上がる。
「その時まで楽しみに待ってます。先輩が私に正面から向き合ってくれることを⋯それでは!」
その言葉を最後に春奈は皆の方へ小走りで向かう。残された俺は一人呆けていた。
確かに、男が一度決めたことを曲げるのもカッコ悪いか⋯安易にそれを破ろうとしたことは反省しなきゃな。
けど春奈、もう俺の答えは出てるんだよ。本当はあの時に伝えたかったけど、本音を押し殺して戦わないと何処かで押し負けてしまいそうだから逃げたけど、決まってたんだ。
「⋯まあ、いいか」
まだこの気持ちには蓋をしておこう。あっちもそれを望んでいるなら、エイリア学園との戦いに決着付けたときに伝えれば良いさ。
そのためにも、もっと強くならないとな。皆と一緒に、な。
ーーー
「ボール行ったぞー!」
「ここは行かせないッスよ!豪炎寺さん!」
「なら止めてみろ!壁山!」
翌日、俺達は大海原のグラウンドを借りてボールを追いかけていた。特に特訓という訳でもないが、まあ時間潰しといったところだな。
何に対しての時間潰し、と言うと、この沖縄を離れる船が来るまでのものだ。当初の目的の修也は戻ってきた、綱海も仲間になった。もう沖縄に留まる理由がないからな。次の目的地もないのでとりあえず一旦東京に帰るらしい。確かに、そろそろ母さんのところに戻らないとな。真・帝国との試合の後に戻った時は結局顔出さなかったし。多分どやされるんだろうな⋯覚悟しとくか。
修也が帰ってきたことで皆活気に満ちている。当然俺も。だがそんな中でも、1つ気がかりなことがある。
「⋯吹雪」
そう、吹雪のことだ。イプシロンとの試合で激しく取り乱して交代してからと言うものの、皆と会話すらろくにしていないようだ。
⋯あの試合の中で少し吹雪と衝突してしまった以上、一度話をしておきたいな。あっちがどう思っているかは分からないが。
「よし」
意を決して俺は吹雪の方へ向かう。吹雪はユニフォームに着替えてこそいるものの、練習には参加せずにずっと海を見ているばかりだった。
「吹雪」
「⋯加賀美君」
「少し話さないか?」
「⋯うん、いいよ」
了承を得られたので俺も吹雪の隣に立って海を眺める。さざ波の音が木霊するが、目的はそれを聞くことじゃない。早速俺は吹雪に話を切り出す。
「あの試合でのことなんだけどさ」
「あ⋯あれは気にしないで。ちょっと冷静じゃなかっただけなんだ⋯ごめんよ」
「そうか?⋯なら、分かった」
例のことについて話そうと思ったんだが、吹雪がそう返してくる以上深堀するのも良くないな。話題を変えよう。
「なあ吹雪、練習しないのか?皆待ってるぜ」
「⋯うん、ちょっと気分じゃないんだ」
「そうか⋯無理強いはしないさ。けど、俺はお前とサッカーしたい」
誘いをやんわりと断る吹雪対してそう返すと、少し驚いたような顔で吹雪は俺のことを見てくる。
「どうした?俺の顔になにか付いてるか?」
「⋯ううん、少しびっくりしただけだよ。まさかそんな直球に想いをぶつけられるとは思ってなかったから」
「そう言われると少し恥ずかしいな。他意はないからな」
「ごめんごめん。⋯けど、ありがとう」
吹雪は少し笑って再び海を見る。
「僕、怖くなっちゃったんだ。ボールが、サッカーをすることが」
「怖い?」
「うん。デザームとゴール前で戦って、必要ないって言われて⋯凄く怖くなったんだ」
必要ない、か。確かにあの時そんなこと言われたら、俺もどうなってたか分からないな。それほどまでに追い詰められていたのは自覚しているから。
「けど、俺達にはお前が必要だぞ、吹雪」
「⋯えっ?」
「お前はこのチームの一員なんだ。例えお前がボールを追いかけることが怖くなったとしても、それでも俺達にはお前が⋯吹雪 士郎という存在が必要なんだ」
「⋯僕が、必要」
「その通りだ」
「修也、いつの間に」
俺が吹雪に思いの丈をぶつけていると、突然背後から別の声が入ってきた。つられて後ろを向くと、そこにはボールを持った修也が立っていた。マジでいつの間にいたんだ、全然気付かなかったぞ。
「吹雪、お前は今怖くなったと言ったな」
「⋯うん」
「それは俺も、皆も同じだ」
「皆が?」
「ああ。だけど、その怖さを抱えて生きてる⋯それだけなんだ」
「怖さを、抱えて⋯」
コイツはこう、何で人の心に刺さるようなことしか言わないのかね。全くもってその通りだよ。乗り越えたものの、俺はまだいつ自分を見失うかが怖い。それに、誰かがこのチームを離れてしまうことも怖い。
けど、それでも生きるしかないんだ。人間ってそういうものなんだから。その恐怖に立ち向かえるヤツだけが勝利を手に出来るんだよな。
「そうだぜ吹雪。だからお前の背負ってるもの、少し俺達にも背負わせろよ」
「豪炎寺君⋯加賀美君⋯」
「おーいそこの3人!立向居にシュート撃ってやってくれよ!」
「お、お呼びだぜ」
「行くか⋯吹雪」
「⋯うん!」
ゴール前の守から俺達3人に声が掛かる。修也は守が認めた立向居に興味津々のようで、我先にと向かって行った。それに続くように俺と吹雪も守と立向居の元へ。
「よろしくお願いします!豪炎寺さん!」
「全力で行くぞ、立向居!」
ボールを投げ渡された修也は、早速シュート体勢に。ボールを高く打ち上げ、自分も炎を纏いながらそれと同じ高さまで跳ぶ。流石に一本目から爆熱ストームは撃たないか。
「ファイアトルネード"改"!!」
「負けるもんか!ゴッドハンド!!」
修也のファイアトルネードと、立向居の青いゴッドハンドがぶつかり合う。その衝突は一瞬拮抗するが、それを破るように修也の炎は更に燃え上がる。すると立向居のゴッドハンドは砕け散り、そのままゴールに押し込まれる。
やはり立向居のゴッドハンドは守と比べても遜色ない仕上がりだな。けど流石修也、それすらも上回ってみせる。
「凄い⋯凄いです!豪炎寺さん!」
「お前も凄いじゃないか、立向居」
「熱いじゃねえか⋯けどここは譲ってやるよ、吹雪!」
立向居がこちらにボールを投げてくる。こんなやり取りを見せられたら俺もすぐ撃ちたくなるが、同じように目を輝かせてるヤツがいる。別に焦らなくても立向居は逃げない。だったら先に吹雪に譲ることにした。
俺は吹雪に軽くパスを送る。本当に軽いパスだ。
「──うッ」
「⋯吹雪?」
けど吹雪は、全身が強ばったように動かない。先程まで撃ちたそうにしていた目も一瞬にして曇ってしまった。
⋯思っていたよりも、吹雪の抱えてしまったものは重いみたいだ。
「大丈夫か?あんなに誘ったけど無理はしなくても良いんだぞ」
「⋯うん。僕、このチームのお荷物になっちゃったね」
「馬鹿。言ったろ?俺達にはお前が必要だ。荷物なんかじゃねえよ」
とりあえずボールを蹴ることは難しそうだからベンチまで連れて行く。無理をさせるのは良くないからな。それでここにいること自体が嫌いにでもなったら本末転倒だ。
ゆっくりで良い。吹雪が元通りサッカーが出来るための手伝いをしよう。それが皆に立ち上がらせてもらった俺だから吹雪にしてやれることだ。
俺達は絶対見捨てないからな、吹雪。
ーーー
「ガゼル、雷門イレブンに接触したようだね」
「ああ。面白い連中だったよ。なんであそこまで熱くなるのかは分からないけど」
「良いじゃねえか、熱いヤツは好きだぜ」
暗闇の中、グランに問い掛けられたガゼルはそう答え、それにバーンが同調する。それが不快だったようで、ガゼルはバーンに対して挑発気味に小言を漏らすが。それでヒートアップしていく2人の言い合いをグランが止める。
「雷門と戦うつもりかい?」
「ああ。イプシロンを倒したその実力を確かめてやろうと思ってね」
「へっ、そのまま吠え面かかされちまえよ」
ガゼルは雷門イレブンに対して試合を挑む意向を見せた。そんなガゼルに対してグランは心の中で笑う。
(あのガゼルがここまで言うなんてね。加賀美君、君達はどれだけ俺達を楽しませてくれるんだい?)
己の興味の中心でもある柊弥、そして雷門イレブンに対してグランは静かに期待を膨らませる。以前は完璧に叩き潰したが、雷門イレブンは必ず強くなってまた自分達の前に現れるという確信があったからだ。
そして、雷門イレブンへの興味が止まらないのはグランだけではない。試合を挑もうと画策しているガゼル、実際に雷門イレブンに単騎で挑みに行ったバーンも同様だ。
イプシロンを打ち破った雷門イレブン。しかし次なるエイリアの魔の手はすぐそこまで迫っていた。
そしてそれと同時、また別の場所でも雷門イレブンへ思いを馳せている者がいた。
「加賀美君⋯ようやく、君達とまたサッカーが出来そうだ」
美しい長髪を持つまるで神話の女神のような少年は静かに笑う。かつて交わした約束が果たせる日が近付いていることを確信していたから。
それぞれの思惑が交差する日は、すぐそこまで近付いてきている。
これにて沖縄編は完結。
次からは東京に戻ってあのチームと激突です。最後に出てきた彼もアップを始めたようです。