Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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今回はあの人が登場です
ちょっと短いです
ごめんなさいです


第77話 闇に射す光

「戻ってきたぞぉーっ!!」

 

 

 キャラバンから降りて河川敷に降り立つや否や、守は大声で久々の稲妻町にただいまを叫ぶ。急に叫ぶから隣の壁山が腰を抜かしている。急に叫んだ守も悪いがそれで抜けてしまうような腰ならもっと鍛えなきゃダメだな、うん。

 

 

「さて、ここからどうするかね」

 

「とりあえず家に帰るか?親に挨拶もしないとだし」

 

「そうね、家でリフレッシュするのも大事だわ」

 

 

 戻ってきて早々に特訓⋯という訳ではなく、各々家に顔を出す流れのようだ。流石に俺も一度帰りたいし、異論は無い。

 あ、家に帰ると言えば1つ問題があるよな。それを何とかしないと。

 

 

「俺らはどうするよ?」

 

「皆俺ん家に来いよ!母ちゃんの肉じゃが、最高に美味いんだぜ!」

 

「わあ!俺肉じゃが大好きなんです!」

 

 

 と、そんな疑問を投げかけようとしたがそれより早く守が解決案を提示してきた。流石に塔子とリカまでという訳にはいかないのでその2人はマネージャー達の誰かの家に転がり込むようだ。リカは一之瀬、塔子は守の家に行くつもり満々だったようだが。

 とはいえ男子勢だけでも吹雪、木暮、立向居、綱海と大人数だ。守の家だけでいけるのか?いや、いけそうだな⋯

 

 

「それじゃ、とりあえず今日のところは───ッ!?皆伏せろッ!!」

 

 

 解散しよう、そう言いかけたその時だった。上から何かが迫ってきているのに気が付いた。ほんの一瞬視界に入れただけだったが、つい最近も見たばかりのソレに凄まじい悪寒を感じた俺は声を荒らげ、自分も身を守る。

 直後、凄まじい轟音と衝撃が響き、砂埃が俺達を叩く。砂が入り込んだらまずい目や鼻、口を防げるように顔を重点的に守って正解だった。

 

 

 少し経って砂埃が落ち着いたのを確認し、俺達に襲いかかってきたものの正体を今一度確かめる。

 

 

「⋯黒のサッカーボール」

 

「青の模様⋯ということは」

 

『雷門イレブンの諸君に告げる』

 

 

 青、ということはダイヤモンドダストだな。その答え合わせのようにボールからガゼルの声が再生される。

 

 

『我々ダイヤモンドダストはフットボールフロンティアスタジアムで君達を待っている。来なければこのボールを無作為にこの東京に撃ち込む』

 

「何だって!?」

 

「無作為にだと!?」

 

 

 無機質にそれだけを告げると、そのボールはまるで灰のように消え去った。証拠隠滅も抜かりなし、ってことか⋯

 いや、今はそんなことは良い。ヤツらは無作為にボールを撃ち込むと俺達に脅しを掛けてきた。ということは、呑気に帰宅なんてしてる場合じゃないだろうな。

 

 

「⋯仕方ないわ。すぐにスタジアムに向かうわ!」

 

『はい!』

 

 

 瞳子監督の指示で俺達はイナズマキャラバンに乗り込み、すぐにフットボールフロンティアスタジアムへと出発した。

 それにしても、フットボールフロンティアスタジアムか⋯全国大会がもう昔のことのように感じるな。今思い返すと、決勝戦の直後にジェミニストームと最初の試合だったんだよな。優勝の余韻に浸れるのは一瞬だった。

 

 

 それにしても、ダイヤモンドダストか⋯一体どんなチームなんだろうか。少なくとも今分かっているのはイプシロンよりも上、バーンのプロミネンス、ヒロトのザ・ジェネシスと並ぶマスターランクチームということだけだ。

 ぶっちゃけ、ザ・ジェネシスとの試合では歯が立たなかった。あの時よりもさらに強くなっているとはいえ、その差がどれだけ小さくなっているのかは分からない。

 とはいえ、負けるつもりなんてさらさらない。どれだけ強い相手だろうと戦って勝つだけだ、皆と一緒にな。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「相手は全くの未知数よ、どんな攻撃をしてくるかも分からないわ」

 

「フォーメーションはどうしますか?」

 

「フォワードは豪炎寺君と加賀美君のツートップ。中盤は鬼道君を中心に一之瀬君、塔子さん、立向居君。ディフェンスは壁山君、木暮君、綱海君、土門君でキーパーは円堂君。気がかりはあるかしら?」

 

「いえ、俺も賛成です」

 

 

 ベンチは吹雪、リカ、目金だ。相手の攻撃パターンも分からない以上、中盤以降を厚く構えるべきだろう。そして後手に回って勝てる相手でもないはず、そこは俺と修也の腕の見せどころってやつだな。

 

 

「それにしても、呼び出したくせに相手はいないっスね」

 

「ふふん、僕のオーラに臆したのでしょう」

 

 

 壁山と目金が何とも気の抜けたやり取りを交わしている。確かに、警戒してスタジアムの中まで入ってきたのは良いが誰1人いなかったんだよな。俺も正直ヤツらが待ち構えていると思っていたから少し驚いた。

 だが、呼び出してきている以上出てこないなんてことはない。さあ、何処から来る。

 

 

「やはり隠しきれないんですかねえ、僕の圧倒的──ひィ!?」

 

「圧倒的何だよ、目金」

 

「な、なんてもないです⋯はい⋯」

 

 

 目金がいつもの目金節を炸裂させる直前、割って入るように先程も見た青い光が相手側のベンチに立ち込める。その中から姿を現したのは、青を基調としたユニフォームに身を包んだ11人。その中心にはガゼルがいる。

 

 

「⋯来たか」

 

「ふッ。加賀美、円堂⋯君達に凍てつく闇の冷たさを教えてあげよう」

 

「じゃあこっちも教えてやるよ。俺達の熱は氷をも溶かすってことをな」

 

 

 ガゼルの啖呵にそう返してやると、余裕に満ちた笑みだけを残してフィールドへ入っていった。それに続いて他のメンバーもそれぞれのポジションに着く。

 

 

「よし、俺達もいくぞ!」

 

『おお!!』

 

 

 それに呼応するように俺達もフィールドに足を踏み入れ、自陣の最前線でダイヤモンドダストの連中と向き合う。

 エイリアのヤツらと対面する度に思うが、やはり不気味なヤツらだ。掴めない何かがある、そんな雰囲気だ。

 

 

「俺達の情報は間違いなくバレている。マークされるだろうが攻めまくるぞ、修也」

 

「当然だ。俺達はストライカーだからな」

 

 

 隣の修也と静かに拳を合わせる。そして、それを見計らったようにホイッスルが鳴り響いた。

 キックオフはこちらから、早速攻め上がろうとしたその時──

 

 

「何ッ!?」

 

「中央を空けた⋯余裕たっぷりじゃねえか」

 

 

 何とヤツらは端に逸れ、俺達へ道を空けやがった。ここまで下に見られるといっそ清々しいな。だがそれはそれとして腹が立つ。そんなに余裕なら、まずは1発ぶち込んでやろう。

 

 

「修也」

 

「ああ⋯分かってるッ!!」

 

 

 空けられたスペース、そのド真ん中を走るように修也がシュートを放つ。ノーマルシュートだが、その威力は十分。センターサークルから相手ゴールまで一直線に飛ぶそのボールはゴールネットを──

 

 

「⋯ダメか」

 

 

 ──揺らすことは無かった。

 

 

「準備運動ってことにしておこうぜ⋯俺達の本気はこんなもんじゃねえ」

 

「ああ。絶対に点を決める」

 

 

 そう誓ったその時、相手のキーパーは豪快なスローを放つ。その速さは先程の修也のロングシュートに引けを取らないほど。俺達2人は回避し、その行く末を見届ける。

 何とそのロングスローは反対側のゴールである守のところまで飛んできていた。どんな肩してやがる⋯バケモノが。

 

 

「皆呑まれるな!!行く──ッ!?」

 

 

 守がそう皆を鼓舞したとほぼ同時、ダイヤモンドダストの連中は既に雷門側へと入り込んできていた。動き出しが全く分からなかった⋯コイツら、スピードが尋常じゃない。気を抜いたら一瞬でボールを盗られるな。

 

 

 気を取り直して守からパスが繋がれる。鬼道を中心にこちらのラインがどんどん押しあがっていくと思われたが、ガゼル達前衛がすぐさまその流れを断ち切る。あのスピードに慣れるのには少し時間がかかるな⋯慣れたとしてもそれに追いつけるかどうかは別だが。

 雷門陣地の中でボールの主導権は何度も入れ替わる。その中で一度ガゼルが守に向かってシュートを放った。何の変哲もないノーマルシュートだが、守の身体が凄まじい勢いで押し込まれかけた。少しでも警戒を弛めていたら今ので先制されていただろうな。

 

 

 以前としてボールは俺達前線へ上がってこない。こうなったら俺も奪い合いに参加するか?いや、それだとこっちのターンになった時にすぐ攻め切れない。ここは皆を信じて待つ。

 

 

「⋯ここだッ!」

 

「ナイス鬼道!攻め上がるよ!」

 

 

 流れはダイヤモンドダストのまま⋯かと思われた。鬼道がタイミングを上手く測って相手のパスに割り込んでボールを自分のものにした。鬼道に主導権が渡ったのなら、絶対俺達のところまで来てくれる。

 

 

「一之瀬!」

 

「よし!」

 

 

 鬼道から一之瀬にパスが繋がり、一気にこちらの流れになる。それを見て俺と修也はいつでも抜けられるように待ち構える。

 一之瀬が単独で上がり、目が合った俺に向かってパスを出す──かと思われた、その時。

 

 

フローズンスティール!!

 

 

 ダイヤモンドダストの大柄なDFが凄まじいスピードで一之瀬にスライディングを仕掛けた。あの体格であのスピード⋯間違いない、アイツが相手の守備の要だ。

 

 

「ぐうッ⋯!」

 

「まさか⋯一之瀬ッ!!」

 

 

 大きく吹き飛ばされた一之瀬だが、その場で脚を抑えて動かない。まさか負傷か、確かにあのスピードで不意をつかれたら受け身を取るのは難しい。

 

 

「おい!大丈夫か!」

 

「ああッ⋯!俺のことは良いから、加賀美は皆からのパスに集中するんだ!」

 

「──ッ、おうッ!」

 

 

 すぐさま一之瀬に駆け寄るが、痛みに顔を歪めながらも一之瀬は自分に構うな、役目に没頭しろと俺に激を飛ばす。本当は心配だ、近くにいておきたい。だが、一之瀬の言う通り俺にはやらなきゃいけない使命がある。自分の持ち場に戻ってボールの行方を追う。

 

 

 大柄なDF、ゴッカから放たれたロングパスはガゼルの元へ。そのまま駆け上がるガゼルに対して土門がプレスを仕掛けるが、ガゼルのスピードに手も足も出ない。ガゼル、やはりこのチームの中でも更に別格か⋯

 

 

「さあ、止めてみたまえ」

 

 

 あっという間に深くまで攻め込んだガゼルは先程よりも強く蹴り込む。ノーマルシュートと言えどその威力は本物。何度も守に任せてはいずれ解禁される必殺シュートに対応出来なくなるかもしれない。

 そんな心配を汲み取るように、塔子と壁山がシュートコースに割り込む。

 

 

ザ・タワー!!

 

 

 塔子が迫り上がる塔の頂点から雷を落とす⋯より速く、ガゼルのシュートがその塔を撃ち砕く。塔子はグラウンドに叩きつけられるが、しっかりと受け身は取れている。

 そして、その背後には更に壁山が控えている。

 

 

ザ・ウォール"改"!

 

 

 壁山がその肉体を巨大な壁へと変貌させる。これまでの特訓でさらに壁山の守りは強靭となった。しかし、塔子が威力を削った上でもそのシュートは強かった。完全に威力を殺しきることが出来ず、ボールは観客席の方へ飛んでいった。

 一時プレイは中断だが、かえって良かったかもしれない。これで負傷した一之瀬を外に出してやれる。

 

 

「一之瀬、肩貸すぜ」

 

「ああ、すまないね⋯」

 

 

 俺は一之瀬に肩を貸してベンチまで連れていく。応急処置のためにソックスを脱がせると、その脚は少し腫れている。これではプレイ続行は厳しいな⋯リカと交代するしかない。

 

 

「⋯あれ、ボールが帰ってきたっス」

 

「ん?」

 

 

 監督に話して交代の指示をもらおうとしたその時、壁山が素っ頓狂な声を上げた。そんなバカな、観客がいる訳でもないし、誰かが取りに行った訳でもない。予備のボールで試合再開しようとしていたところなんだからな。

 だが、実際にボールはピッチの中、というか俺の真後ろに戻ってきている。ということは誰かがボールをこちらに戻した以外有り得ないんだが、俺と一之瀬以外は全員フィールドに立っている。

 

 

「一体誰⋯が⋯」

 

 

 その時だった。何かがふわりと、柔らかく地に舞い降りた。まるで羽の生えた天使のように、軽やかに。

 俺は、その正体を見て言葉を失った。何故かって、ここにいるはずがないヤツが、そこにいたから。女子と見間違う美しい長髪、白色のユニフォームの袖には、葉のような意匠のキャプテンマーク。

 そう、コイツがここにいるはずがないんだ。雷門でも、ダイヤモンドダストでも、どちらでもないのだから。

 

 

「何でここにいるんだ──アフロディ」

 

「久しぶりだね、加賀美君」

 

 

 舞い降りたその男、アフロディはボールを持ち上げ俺の元へ歩み寄ってくる。思わず一瞬警戒してしまったが、別にその必要は無いとすぐさま警戒を解いた。

 そして、次にアフロディが告げたのは予想だにしない言葉だった。それこそ、俺が言葉を失うくらいに。

 

 

「僕を、君達と一緒に戦わせてはくれないか」

 

「えっ」

 

 

アフロディからの共闘の願い。まさかの頼みに対して、俺は素っ頓狂な声を返すことしか出来なかった。




本来負傷するのはリカ→ベンチにいるため被害者になったのは一之瀬、南無三

そして舞い降りた元神様。柊弥とアフロディの絡み、ずっと描きたかったんですよねえ
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