Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第79話 シーソーゲーム

 ハーフタイムが終わり、それぞれピッチの中に戻っていく。こちらの士気は依然として高いままだが、ダイヤモンドダスト、特にガゼルの表情には先程での余裕が無い。まさか同点で前半が終わるなんて思っていなかったとか、そんなところか。

 マスターランクチームであるコイツらとそこまで肉薄した試合が出来ているのは素直に嬉しいが、前半終了間際、流れは完全にヤツらだった。追いつくのがギリのスピード、そして正義の鉄拳を打ち破ったガゼルのシュート。油断するつもりはさらさらないが、もう一度気を引き締めなきゃな。

 

 

「・・・よし」

 

 

 俺は身を翻し、後ろにいる皆の方を向く。

 

 

「さあ皆!後半も気合い入れていくぞ!」

 

『おお!!』

 

 

 今思えば、試合中にこうして声掛けをするのも久しぶりだ。それこそ、フットボールフロンティア以来な気がする。

 ・・・いや、今は懐かしんでいる場合じゃないな。そういうのは試合が終わってからにとっておこう。

 

 

「・・・愚かな。ならば今一度凍てつく闇の恐怖を教えてやろう!」

 

「させるかよ」

 

 

 ホイッスルと同時、ボールを受け取ったガゼルは疾風怒濤の勢いで攻め上がる。だがその挙動が読めていた俺はすぐさまその行く手を阻む。とはいえ、一対一ではコイツを抑えきれないことはさっき身をもって理解した。雷霆万鈞を使えば一応肉薄はできるが、それでまた大事な時に動きが止まったら本末転倒だ。

 じゃあどうするか。答えは単純明快だ。

 

 

「挟むよ!加賀美君!」

 

「ナイスだ・・・アフロディ!」

 

 

 そう、人数を掛ければ良い。攻めの軸となる俺、アフロディ、修也で圧を掛ければボールを奪ってそのまま攻めに移れる。これが3人体制で動くことによって可能となる攻めと守りのスイッチ。

 

 

「その程度でこの私が止まるかッ!」

 

「クソッ、フィジカルで強引に抜けてきやがったか」

 

「でも、これだけ稼げば充分だろう──鬼道君」

 

「ああ。よくやってくれた」

 

 

 そう、俺達を突破したとしてもコイツらを待ち受けるのは雷門が誇る天才だ。力任せに突破するほど冷静さが欠けていれば鬼道の頭脳の前には格好の的でしかない。

 

 

「よし、反撃だ」

 

「ああ、行ってこい」

 

 

 ガゼルから流れるようにボールを奪った鬼道。それを見て俺達はすぐさま前進を始める。完璧なタイミングで送られてきた鬼道のパスをアフロディが受け取り、そのままの勢いで攻め上がる。

 俺とアフロディによるワンツー、そして後続の修也も交えての連動。必死の表情でダイヤモンドダストの守備陣は止めに来るが、そんなに焦って止められるほど俺達は甘くない。

 

 

「加賀美君!」

 

「決める」

 

 

 次々に俺達にタックルやスライディングが飛んでくるがそれら全てを全抜き。完全フリーの状態でアフロディからパスが来る。

 

 

「させるか!!」

 

「悪いが読めてる」

 

「なッ!?」

 

 

 このまま雷霆一閃をぶち込む・・・そのタイミングで切り返してきたDF2枚が鬼気迫る勢いでボールを奪いに来る。が、そう来ることは読めていた。俺は背後からのスライディングを空中で躱し、そのままボレーでシュート寄りのパスを出す。

 

 

「ふッ、随分乱暴なパスだ」

 

「信頼の証と言ってくれ」

 

 

 そのパスを受け取ったのは修也だ。軽口を叩きながらも満更では無い顔してやがるが、その顔はすぐにゴールを狙うストライカーの目に切り替わる。

 力を漲らせると、全身から炎が燃え上がる。全てを燃やし尽くす圧倒的熱を帯びた爆炎は修也の背後でその力の象徴を形成する。姿を現した炎の魔神は、主と共に空高く舞い上がる。

 

 

「あまり調子に乗らないでもらおうかッ!」

 

「くッ!」

 

 

 そのままシュート・・・というところで、修也の表情が曇る。何故なら、いつの間にか後ろまで下がってきていたガゼルが空中で修也と対面したからだ。全く気配が読めなかった、どうやってあの殺気紛いのオーラを隠したのやら。

 だが、そう来るならこちらにも手はある。

 

 

「修也!こっち寄越せッ!!」

 

「柊弥?・・・よし」

 

 

 ガゼルによって完璧にシュートコースは潰されている。だが辛うじて僅かなパスコースだけは残っている。修也がそこを通せるかに賭けて俺は走り出す。

 真正面のガゼルに対して左斜め下、ゴールとは全く違うコースだが、このまま撃てずに奪われるより100倍マシだ。

 

 

「受け取れェッ!」

 

「何ッ!?」

 

「ナイス返却・・・ッ!!」

 

 

 修也はほぼ爆熱ストームの勢いで俺にボールを送り出す。それを右脚で受け止めるが、とにかく重いし熱い。あの野郎、さっきの意趣返しのつもりか。後でクレーム入れてやる・・・

 

 

「決めるッ!!」

 

 

 受け取ったボールに対して俺は一発蹴り込む。力が逃げてしまわぬようにコントロールしながら、ボールとすれ違いざまに何度も斬り刻む。そしてボールに込められるエネルギーが頂点に達すると、ボールから雷が発散、そして一瞬で収束する。

 本来の工程を省略した形だが、蹴り込む力と込めるエネルギー量を強めに調整してある。空中から撃ち落とす手間を省いた分のロスはこれで補えているし、何より──

 

 

(ここで止められるようじゃ、この試合にも、ヒロト達にも勝つことなんて出来ねえ!!)

 

「貫け、雷霆一閃ッ!!

 

 

 最後の一刀の元に全てを解き放つ。それは万物を斬り裂く破壊力を秘めたシュートとなって敵を穿つ。

 

 

「アイスブロ──」

 

 

 相手のキーパーが必殺技を繰り出そうとしたようだが、遅い。その時には既に雷霆一閃はキーパーの眼前に迫っていた。腕に集約させた冷気を雷の熱に溶かされながら為す術なくゴールに押し込まれていった。後半開始から約5分、流れはこっちに引き寄せたぞ。

 

 

「流石の連携だね、2人共」

 

「当然。俺らは相棒だからな」

 

「そういうことだ」

 

 

 修也と無言のハイタッチを交わすと、横からアフロディが入ってくる。修也のパスから繋がったこの1点だが、その過程にはアフロディの力が必要不可欠だったな。俺達3人の攻撃はアイツらにしっかり通じている。

 2人と一緒にポジションに戻っていくが、その過程で俺達に向けられた怒りに満ちた冷たい視線を俺は見逃さなかった。

 

 

「加賀美 柊弥・・・ッ!!」

 

(さて、ここからどうくるかな)

 

 

 明らか殺意の混じった視線。俺を潰しに来るか点を奪いに来るかとどっちかだろうな。正直なところ前者の方が試合的には助かる。恐らく守からゴールを奪えるのはガゼルのみ。そのガゼルがゴールを捨てて俺1人に躍起になるなら失点のリスクはほぼゼロになる。

 離脱せざるを得ないほどのプレーをされると後々困るが、流石にそこまではないだろう。仮にされたとしても芯を外すくらいのことは出来るとは思うけどな。

 

 

(どっちだ・・・?)

 

 

 ガゼルの一挙手一投足を見逃さぬよう全ての集中をガゼルの初動に向ける。パスを受け取ったガゼルが選んだのは──

 

 

「そっちか!」

 

 

 ゴールを奪うことだった。パスを受け取ってすぐに加速。凄まじいスピードで雷門陣営に切り込んでいく。そう来るなら俺もラインを下げて守備に回ろう。

 

 

「行かせないぞ、加賀美 柊弥」

 

「ガゼル様の邪魔はさせない」

 

「チッ、手厚い護衛だな」

 

 

 ガゼルを追い掛けるため動き出す・・・ところだったのだが、その時俺の行く手が阻まれた。ダイヤモンドダストのMFが2人がかりで俺を止めに来たようだ。無理やり突破出来ないこともないが、多分一気に消耗する。試合終了が近かったら逃げ切るためにそれもありだが、まだ天秤が水平になる可能性がある以上は悪手。

 

 

「アフロディ!修也!」

 

「ああ!」

 

「分かってるよ!」

 

 

 俺が動けない、なら少しでも後ろの人数を増やす。アフロディと修也の2人はすぐさま後ろに走り出す。その時には既にガゼルは雷門側の中盤まで切り込んでいた。

 それとほぼ同時、俺に着いているマークがMFの2人からDFの2人に変わり、そのMF達も上がって行った。俺に対する警戒だけを強め前衛の手札を多くする、確実に攻め潰しに来やがったな。

 

 

「壁山!」

 

「はいッス!ザ・ウォール"改"!!

 

「私を止めるには低すぎる!」

 

 

 ガゼルの行く手を阻むように壁山がザ・ウォールを展開する。しかしガゼルはその壁を大きく飛び越える。空中でガゼルは後ろから上がってきたドロルにパス。だがそのパスコースを読んでいた塔子がドロルとマッチアップ。

 

 

ザ・タワー!!

 

ウォーターベール!!

 

 

 得意のザ・タワーで塔子がダイヤモンドダストの猛攻を阻止しに掛かる・・・が、ドロルも必殺技で対抗する。ドロルはボールを下に叩き込む。すると、下から噴水の如く水柱が顔を出す。それはあまりに凄まじい勢いで、正面衝突したザ・タワーを完璧に粉砕してみせた。

 だが塔子のこのディフェンス、そして壁山の健闘は無駄じゃない。稼いだその時間のおかげで第三の矢が間に合う。

 

 

「土門!挟め!」

 

「おうよ!」

 

 

 後ろまで戻ってきた鬼道と逆サイドから走り込んできた土門がドロルに対して双方向プレスを仕掛ける。完璧な位置取り、タイミングだ。これで流れは切り替えせる、俺がコイツらを引き剥がしさえすれば・・・

 

 

「甘いッ・・・!」

 

「嘘だろ!?」

 

「馬鹿な・・・速すぎる!」

 

 

 が、その時なんとガゼルが空間を切り取ったようにその場に姿を現した。ドロルからボールを奪うようにして支配権をキープ、まだスピードに上があったってのか・・・いくらなんでも規格外過ぎる。

 

 

「これで2点目だッ!!」

 

「くッ、絶対に止めるッ!!」

 

 

 有り得ないスピードでボールを手中に収めたガゼルはその勢いのままゴール前まで一気に駆け抜ける。守とガゼルの間に入れるDFは全て抜かれてしまった、完全に一対一だ。

 勿論守を信用していない訳じゃない。だが先程同じ流れでガゼルに点を奪われているのもまた事実だ。いくら守が試合中に進化するキーパーでも、正義の鉄拳が完成のない究極奥義だとしてもそんな急に次のステージへ昇るのは難しいと言わざるを得ない。

 

 

 けど、もうお前しかいないんだ。

 

 

ノーザンインパクト・・・凍えるがいいッ!!

 

 

 再びガゼルの必殺シュート、ノーザンインパクトが放たれる。まるで白銀の矢のようにゴールへ向かっていくそのシュートは相も変わらず凄まじいスピードだ。並のキーパーなら溜めの余裕すらない。

 

 

はァァッ!!正義の鉄拳!!

 

 

 そして再度絶対零度のシュートと相見える正義の鉄拳。双方が触れた瞬間に衝撃波がフィールドを駆ける。

 先程の攻防はまさに一瞬だった。抵抗する余地すら無く正義の鉄拳は打ち砕かれてしまった。だが今は違う、ノーザンインパクトの火力に押し負けず拮抗して見せている。しかしそれもほんの一瞬、徐々に守は押し込まれ始める。

 

 

(警戒が緩んだ、今しかないッ!!もう少し耐えてろよ守ッ!!)

 

 

 自分達のキャプテンの絶対的シュートが一瞬でゴールに突き刺さらなかったことに驚いたのか、ダイヤモンドダスト全員の気が一瞬緩くなった。俺はそれを見逃さない。大柄なDF、ゴッカと小柄ゆえにスピードに長けたクララの2人を出し抜き、センターライン付近から守が粘るゴールへと走り出す。

 

 

「なッ、いかせるかァッ!!」

 

「黙って通せッ!!雷霆万鈞ッ!!

 

 

 だがヤツらも一流のDF。俺の動き出しに対応してすぐさま圧を強めてくる。だがもう遅い、そんな反応じゃ俺は止められない。失点を防げるなら多少の消費はやむを得ない。雷霆万鈞で俺の120%のスペックを引き出して更に加速する。

 

 

「ぐ・・・ォオッ!!」

 

 

 みるみるうちに守が押し込まれていく。ゴールまではあと半分。

 

 

「耐える・・・絶対に耐えてみせるッ!!」

 

 

 そこでさらに守が意地を見せ、一瞬後退が止まる。ゴールまであと3分の2。

 

 

「君如きに止められるものか・・・大人しく敗北を受け入れるがいいッ!!」

 

 

 苛立ちを募らせたガゼルが吠え、それに呼応するようにシュートの威力が増す。ゴールまであと4分の1。

 

 

「くッ・・・クソォッ!!」

 

 

 遂に黄金の拳が打ち砕かれ、絶対零度の一撃がゴールに突き刺さらんとする。ゴールは、もう目の前。

 

 

「届けェェェェッッ!!」

 

 

 意を決して跳ぶ。どこかに当たれば最悪コースは逸れる、それだけで十分だ。

 

 

「うッ・・・クソが・・・ッ!!」

 

 

 だが、ダメだった。爪先が触れるより早く、シュートは俺の身体より更に奥へと進んでいた。無情にもゴールネットが揺らされる光景を目に刻まれながら、受け身なんて考えてなかった俺の身体は数度地面を転がった。

 全身に走る痛みに歯を食いしばりながら聞こえたのは、失点を告げるホイッスル。

 

 

「間に合わなかった・・・悪い、守」

 

「何言ってんだよ、1人であのシュートを抑えきれなかった俺のせいだ。こっちこそごめん!」

 

「元はと言えばシュート前にボールを奪えなかった俺達が悪いっス・・・」

 

「そうだね・・・ごめんな2人共」

 

 

 慰めにしかならないから言わないでおくが、これに関しては誰も悪くない。単純に相手の方が上手だったというだけだ。ダイヤモンドダストの速攻にフィジカルで追い付ける俺を先に潰し、その突破力をフルに活かしてディフェンスラインの突破。果てには誰にも読めないガゼルのボールキープからのシュートでフィニッシュ。まず初見で対応出来るものじゃない。

 

 

(けどヤツらのやりたいことは分かった・・・次は無い)

 

 

 恐らく次のキックオフ後も俺を抑えに来る。なら、俺からキックオフで修也にパス、俺はその後すぐに後ろに下がって対策する。鬼道の作戦は確実に機能している、そこに俺というピースが加わればまた優位に立つことができるはずだ。

 この試合、まだ全然勝ちに行ける。

 

 

「修也。次お前にボールを渡したら俺はすぐアフロディとスイッチする」

 

「さっきのダブルマーク対策だな。分かった」

 

 

 同じことをアフロディにも伝えポジションに着く。キックオフは俺から、ホイッスルが鳴ると同時に修也にパス。それと全く同じタイミングでまた俺に2枚着きにくるが、すぐさまアフロディと入れ替わりそれを回避する。

 これで俺はフリー、なおかつボールはまだ修也がキープしている。ちょうど隣にいる鬼道はいつでも前に出る姿勢を整えている。

 なら打つ手は一択だよな、ゲームメーカー様。

 

 

「いくぞ皆!速攻だ!」

 

 

 鬼道も前線に参加しての一斉攻撃だ。ディフェンスには塔子、壁山、木暮だけを置きそれ以外の全員で仕掛けに行く。 後半も残り半分を切った、そして相手の総合値はこちらよりも上。この状況で再び点差をつけるためにはリスク承知で攻め立てるしかない。

 

 

 修也から一旦ボールは鬼道に預けられ俺達FW陣は自由に前へ出る。当然シュートを警戒して俺達に対し重点的なマークが置かれるが、その分鬼道達後続に対する圧は軽くなる。

 先程のように一切動かせないようなマークを狙ってくるが、常に動き続けている俺を捕まえるのはそう簡単にはいかない。

 

 

「もっと人数掛けて15番止めるぞ!」

 

「ダメだ!それだと10、11がフリーになる!」

 

 

 ダイヤモンドダストの誰かがそう声を荒らげると俺に対しての警戒がより一層強くなる。俺が自由に動き回ることでどうやらあっちの対応が曖昧になっているらしい。

 

 

(それならッ!!)

 

「ッ!?こっち来たぞッ!!抑えろ!!」

 

「いや違うフェイントだ!騙されるな!」

 

 

 俺を抑えようと走っているヤツらの方へ敢えて向かっていく。普段が冷静なのかどうなのかは分からないが、混乱している中にもっと火薬をぶち込んでやれば更なる混沌が生まれる。今の俺が演じるべきは相手を圧倒するナイトではなく、相手を欺くためのピエロだ。

 相手のテリトリーに踏み入るその半歩手前、俺は身体を翻し逆走する。はたから見たら意味不明なその動きにダイヤモンドダストの思考は一瞬でも停止する。ただでさえ対応が後手に回っている中、思考を止めることは致命的。その証拠に、ボールは既に鬼道と共にダイヤモンドダスト側の中盤を超え、ゴール付近には修也、アフロディが構えている。

 

 

「悪くない作戦だが、私には通用しない」

 

「なッ、ガゼル!?」

 

 

 その時、ガゼルが鬼道の前に立ち塞がる。あの野郎、他のヤツらと違って最初からボール保持者だけを見て動いてやがったか。

 

 

「鬼道君ッ!」

 

「アフロディ!!」

 

 

 鬼道とガゼルの一対一、と思われたがそこに神からの救いの手が差し伸べられる。ガゼルの動きを読んでいたのかアフロディがゴール前から切り返し、鬼道の近くまで走り込んで来ていた。

 その一手はまさに鬼道にとって救世主。背後から下がってきていたこともありガゼルの反応も一瞬遅れる。鬼道とすれ違いざまにボールを受け取ったアフロディはすぐさま周辺を見渡す。が、すぐ近くにパスを出せる相手はいない。その上まだアフロディの位置はガゼルのテリトリー。迂闊なボールキープは命取りになる。

 

 

「クララッ!!」

 

「はい!フローズンスティール!!

 

 

 まさにその時、アフロディの死角となる位置からクララがアフロディにスライディングを仕掛ける。回避は不可能、為す術なくボールはダイヤモンドダスト側に、しかも考えうる限り最悪の形で渡る。

 

 

「カウンター来るぞッ!!」

 

 

 クララがスライディングでアフロディごとボールを弾くとほぼ同時、ガゼルが鬼道をフル無視して走り出していた。そのボールはピッタリとガゼルの足元に収まった。

 今後衛には鬼道どころか綱海、土門、立向居もいない。さっきのガゼルの大立ち回りを見るに壁山、塔子、木暮が全力で止めに行っても止まらないかもしれない。

 

 

(それなら、俺が行くしかねェッ!!)

 

 

 すぐさま俺はガゼルに向かって走り出す。試合も残り5分と少し。ここまで来たら消耗なんて度外視だ、持ってるもの全部出し切ってでも止めてやる。

 

 

「行かせない!!ザ・タワー!!

 

「ここで止めるッス!ザ・ウォール"改"!!

 

「だから、その程度で私は止まらない!!」

 

 

 ガゼルは塔子と壁山が織り成す双璧に臆せず突っ込んでいく。ほぼ同時に展開されたザ・タワーとザ・ウォール。それに対してまずガゼルは加速そのままに跳んでみせた。その標的は壁山が作り出した巨大な壁。先程と同じようにガゼルはそれを飛び越えるが、それを見計らったように塔子が雷撃を落とす。

 もはや回避不能のように思えたが、なんとガゼルはザ・ウォールを踏み台にして更に高く跳躍して躱してみせた。凄まじい高度まで跳んだガゼルは、一旦下に走り込んできていたもう1人のFW、フロストにボールを落とす。

 

 

 けどな、その一手は──

 

 

「──完全に読めてんだよッ!!」

 

「馬鹿なッ!?」

 

 

 塔子と壁山を突破するのに時間がかかること、その過程で足場のない空に跳んでしまうこと、最後の最後でパスを選ぶこと、そしてそのパスが同時に前線に上がって行ったフロストに向けてのものであること。全ての読みを通した俺の勝ちだ!

 

 

「加賀美 柊弥ァ!!」

 

「なッ、化け物かよお前ッ!!」

 

 

 だがそこで終わるガゼルじゃなかった。俺がまた前線に戻るよりも早く地上に戻り、光の速さで俺の目の前に立ちはだかる。

 クソッ、どうやって警戒マックスのこいつを抜く?雷霆万鈞をフルに使ってもコイツの全力には一歩劣る。

 

 

「え、キャプテン!?」

 

「柊弥ッ!!こっちだ!!」

 

「円堂 守!?何故上がってきている!?」

 

 

 その時、後ろから木暮の困惑した声が聞こえてくるとほぼ同時に俺のすぐ横に守が姿を現す。俺がサシでガゼルに勝てないこと、パスコースが完全に死んでることを見兼ねて来てくれたんだろうが流石に予想外、というよりリスキーすぎる。

 だがこれしかない。俺がここで奪われればどの道もう失点は確定、乗る以外の選択肢はもう残されてない!

 

 

「守!!」

 

 

 幸いにして守の登場でガゼルの動きが止まっている。俺は守にパスを出しガゼルを抜き去る。

 

 

「させるかァァァ!!」

 

 

 だが、予想外にさらに予想外が重なる。何とフロストが守と俺の間に割って入り、パスをカットしてきた。

 クソッ、ガゼルですら反応が遅れたってのに何でコイツは動けた!?どちらにせよ最悪だ、守がゴールに戻るまでの時間を稼ぐしかない!

 

 

「ガゼル様ァッ!!」

 

「よくやったフロストッ・・・!これで終わりだ!!雷門イレブンッ!!」

 

「終わらせねえよォッ!!サンダーストームV2ッ!!

 

 

 パスカットされた瞬間守も俺もすぐさま切り返す。位置的にもスピード的にもすぐにぶつかれるのは俺だ。雷霆万鈞で全能力に強引にブーストをかけ、その状態で剣の雨を持って少しでも時間を稼ぐ。

 この試合で一度も見せなかった必殺技にガゼルは顔を歪める。そのままボールをキープしていれば間違いなく俺に奪われる、それを理解しているガゼルはフロストにボールを戻した。

 

 

「キャプテンが戻るまで時間を稼ぐ・・・俺だって壁山達みたいにやれるんだ!!」

 

「ナイスだ木暮ッ!!そのままプレスかけ続けろッ!!」

 

 

 フロストとガゼルのワンツーで突破されれば終わり、俺がそこに割って入れるかは一か八か・・・というところで唯一後ろに残っていた木暮がフロストのマークに着いた。万が一の時のシュートブロックで下がってくれてても良かったが、これはこれで大きい。俺がガゼルにマンマーク出来る。

 

 

「無理やりにでいい!出せフロストッ!!」

 

「やらせねぇって言ってんだろ・・・!雷光翔破"改"ッ!!

 

 

 ガゼルが全力で俺を振りほどきに走る。コイツのフルスピードに俺は対応出来ない・・・だから、本当の最終手段を切る。雷霆万鈞での底上げした状態で雷光翔破だ。もはやこのワンプレーが終われば恐らく動けなくなる、がどっちにしろこれで試合は終わりだ。ここまで来たらもう負けなければ良い、引き分けで次に繋いでやるッ!!

 意識が遠のきかける身体に鞭を打つ、まだ倒れるな、ホイッスルが鳴るまでは耐えてみせろッ!!

 

 

「くッ、鬱陶しいッ!!」

 

「いかせねェ・・・俺達はもう負けねェんだよォォォ!!」

 

 

 ここまで追い込んだ今の俺のスピードはガゼルと同格、いける、凌ぎ切れるッ!!

 

 

「退けェェェ!!」

 

「がッ!!」

 

 

 その時、唐突に大きな衝撃が俺に襲いかかる、互いにトップスピードを保ったままガゼルがショルダーチャージを仕掛けてきた。ファールを取られないギリギリを攻めた強行突破、コイツももう余裕がねえ。

 

 

(クソッ、負け、るか──)

 

 

 大きく体勢を崩しながらも建て直してガゼルに喰らいつこうとしたその時、身体から力が抜けた。クソがッ、試合終了までは持つと思ったが今のショルダーで一気に持ってかれた・・・!

 

 

「待て・・・ガゼルッ・・・!」

 

「そこで見ているがいいッ!!君達の終わりの瞬間をねッ!!ノーザンインパクトォッ!!

 

 

 間髪入れずガゼルはシュートを放つ。だが、俺と木暮の粘りは無駄じゃなかった。

 

 

「絶対止める・・・何が何でも止めてやるッ!!」

 

 

 守が間一髪、シュートとゴールの間に割って入った。拳にエネルギーを集中させ、片脚を大きく振り上げる。

 だが、俺は気付いてしまった。必死なあまり、守が大きなミスをしてしまったことに。

 

 

「守ダメだッ!!そこじゃハンドになるッ!!!」

 

 

 そう、守はまだペナルティエリアの外にいた。そこで正義の鉄拳なんて使えば、当然ハンド。それに気付いた守の顔は一瞬強ばったが、すぐさま目の前のシュートに集中する。

 

 

「こうなったら・・・!」

 

 

 そして守は腕を引っ込め、なんと頭からシュートにぶつかりに行った。シュートコースが逸れる可能性はあるが、それにしたって無茶すぎる。あんな威力のシュートを頭で受けたらどうなるか──

 

 

「負けるかァァァァ!!」

 

 

 守が吠える。しかし、それとほぼ同時に一気に身体が押し込まれる。もうダメかと思った、まさにその時。

 

 

「うォォォォォ!!」

 

「なにッ!?」

 

「・・・マジかよ」

 

 

 守の額から正義の鉄拳のような拳が飛び出してきたのだ。それはなんとノーザンインパクトの威力を完全に殺し切り、最後のピンチを完璧に凌ぎきってみせた。

 そしてそれを見届けたようにしてホイッスルが鳴る、試合終了だ。得点は・・・2-2。

 

 

「ギリ耐えた・・・か」

 

 

 マスターランクチーム、ダイヤモンドダスト。このチームと同格であるザ・ジェネシスに完敗した俺達は今回引き分けることが出来た。当然勝ちではないしこれで終わりでもないが、俺達が成長したことを実感するには十分すぎる。

 

 

「そこまでだよ、ガゼル」

 

 

ホイッスルが鳴ってもなお、全員が今目の前で起こったことを処理しきれず固まっている中、コート外から予想外の来客が現れる。

 

 

「・・・ヒロト」

 

「やあ、加賀美君」

 

 

ザ・ジェネシスのキャプテン、グラン・・・いや、基山 ヒロト。ヤツは嬉しそうな笑みをこちらに向けていた。




試合内容は結構原作と変わりましたが、終わり方自体はほぼそのまま。きっと次の更新では円堂君にキーパーをやめてもらいます。
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