今週から暇が増えるはずなので多分また週一更新に戻します
「久々に見るがやっぱ凄いな、帝国の校舎は」
「ああ。中学校には見えないな」
「ふっ、俺も自負している」
特訓開始から4日目、俺達は帝国学園へやってきていた。その発端となったのは、鬼道提案のある必殺技習得のためだ。その必殺技というのは帝国学園が誇る連携シュート、デスゾーン。守がリベロに転向して攻撃にも参加出来るようになった今、新しい攻撃手段を確立しようという訳だ。帝国には様々な必殺技のデータが保管されており、その中には当然デスゾーンの記録もある。それを参考にするためにも帝国に練習しに来たという訳だ。
一応俺達は外部の人間扱いだが、元帝国イレブンの鬼道のおかげでそこは問題ないらしい。鬼道も今は雷門中の生徒なんだけどな・・・まあその辺の事情には触れないでおこう。
そんな中学とは思えない風貌をしている帝国の校舎を抜けると、建物の真ん中に位置しているグラウンドが見えてきた。
「俺、土門、円堂はデスゾーン。立向居はムゲン・ザ・ハンドの特訓だ。他の皆も各々必要な練習をしてくれ」
鬼道が今日の方針を皆に伝える。さて、俺はどうしようか。デスゾーンの特訓は手伝えることはないだろうし、立向居のムゲン・ザ・ハンド習得の手伝いでもするか?
「加賀美君、ちょっと良いかい」
「おう、どうしたアフロディ」
何をしようかと頭を悩ませていると、後ろからアフロディが話しかけてきた。
「僕達もやってみないかい?連携シュートを」
──-
帝国での練習が始まってから数時間が経った。何組かに分かれて取り組んでいた練習だったが、それぞれ良い成果を・・・得られてはいなかった。
「3、2、1・・・ストップ!!」
「うっ・・・おわっ!!」
「惜しい!もうちょいだったな」
まず円堂、鬼道、土門の3人によるデスゾーン。まずはボールを中心に回転、鬼道の指示するタイミングでボールを正面に捉えて止まる。いわばデスゾーンの下準備と言える段階だ。一見簡単に見える練習だが、全員でタイミングを合わせてというのは中々に難しい。時間が経ってなお、全員が完璧に合わせることは出来ていない。
「シュタタタ、タン・・・ドバババ、バァーン!」
「おお!すげえじゃねえか立向居!遂に目を閉じてキャッチできた、ムゲン・ザ・ハンドの完成だな!!」
「・・・」
次に立向居によるムゲン・ザ・ハンド。ボールを出しているのは手隙だった綱海だ。ムゲン・ザ・ハンドは円堂 大介によって考案された究極奥義の一角。だが考案者が考案者であるせいで、その詳細は非常に感覚的かつ難解。まずは円堂翻訳によって辛うじて得られた"全身を目と耳にしてシュートの創り出す音を見切る"という段階をクリアするため、目を閉じた状態、心眼でシュートを止めようとしていた。
まさにそれを今成し遂げた訳だが、綱海が言うようにこれで完成ではない。あくまで目を閉じてノーマルシュートをキャッチしただけ。ここからさらに昇華させなければ、来たるエイリア学園との戦いで使い物にならないことは明らかだった。
「中々合わないものだね」
「そうだな・・・」
そして、柊弥とアフロディによる新連携シュートの開発。既に数百回の試行をこなしているが、一向に成功の気配は見えてこない。
「原因は・・・多分俺だ」
「そうかい?撃ち出す僕の責任のようにも思えるけど」
タオルで汗を拭いながら柊弥は失敗続きの理由を考える。2人が目指しているのは柊弥が起点となり、アフロディが撃ち出すという形だけならシンプルなシュートだ。だからこそスタートとなる自分の落ち度である・・・と柊弥は結論付ける。
(クソッ、アフロディに適応しねえと・・・次はもっと出力を抑えるか)
ここまで苦戦しているのにはある理由があった。それは、今回のこのシュートが柊弥にとって全く新しい連携シュートとなっていることだ。柊弥は今まで幾つかの連携シュートを編み出してきた。
まずは染岡、豪炎寺と放つ雷龍一閃・焔。このシュートは至ってシンプル、2人のドラゴントルネードに対して轟一閃を上乗せするだけの、言ってしまえばシュートチェインの延長線上にある必殺技だ。
次に円堂、豪炎寺、鬼道の内2人とのイナズマブレイク。このシュートは鬼道が起点となり、3人が同時に蹴り込む技。言わば、柊弥はただタイミングを合わせてシュートするだけ。鬼道、豪炎寺とで放つ皇帝ペンギン2号も同様だ。
最後に豪炎寺とのファイアトルネードDD。この必殺技は2人が完璧に呼応して初めて出来る超必殺技。柊弥にとって最も信頼のおける相棒である豪炎寺がパートナーであり、同じファイアトルネードを1つに重ねるという性質。この2つの要因で成り立っている。
これらの必殺技と今回の必殺技で異なる点は、柊弥が起点となっていること。そして全く性質の異なる2つの必殺技を組み合わせていることの2点だ。柊弥はそれに気付けていない。無論、アフロディも同様に。
「少し休憩にしようか」
「そうだな・・・詰めすぎも良くない」
アフロディの提案で2人は一旦休憩に入る。ベンチに戻ってスポーツドリンクを口に流し込みながら、柊弥はフィールドに散らばる他のメンバーを観察していた。1人だけ停止位置がズレてる円堂を見て軽く吹き出したり、何度も諦めずに挑戦する立向居に対して何かを感じたのか微笑みながら頷いていた。
「柊弥せーんぱい」
「おう春奈・・・もしかして、その荷物は」
「はい!頼まれていたもの、ちゃんと買ってきましたよ」
すると音無はその荷物を地面に降ろす。ズシン、と重めの音が鳴ったことから結構な重量であることが分かる。女子である音無が平然とそれを運んでこれたのは、日々のマネージャー業で鍛えられたおかげか、或いは・・・
「それにしても、なんでこんなものを?」
「必要なんだ。これから俺がもっと強くなるためにな」
ーーー
帝国での練習が始まってから2日目。俺達は変わらずそれぞれの課題に打ち込んでいた。デスゾーン2にムゲン・ザ・ハンド、そして俺とアフロディの必殺シュート。これからの戦いにはどれも必須だ。
俺とアフロディの進捗は・・・それなりだ。シュートとしては成立した。俺が繋ぐ威力を調整することで、アフロディが撃ち出すことが出来るようになった。だが完成して間もないせいかゴールを奪うのにはまだ心許ない。そこはトライアンドエラーで何とかするしかないだろう。
デスゾーン2もいい所まで来たようだ。昨日からずっと続けていた回転からの停止、とうとう全員揃うようになったらしい。とは言っても鬼道からすれば及第点くらいらしいが、後は実践で調整するしかないらしい。
ムゲン・ザ・ハンドは・・・難航しているみたいだ。立向居は焦っているようだが、仕方ない。なにせ大介さんが残した究極奥義だ。一朝一夕で何とかなるものじゃない。
「やってるな、お前達」
「佐久間!源田!皆!来てくれたか」
とりあえずあと何回かアフロディと合わせてみようとしたところで予想外の来客が現れる。声のした方からやってきたのは、佐久間や源田達帝国イレブンだ。あの様子だと鬼道が呼んでいたみたいだな。
「佐久間・・・その脚は」
「ああこれか、気にするな。これでも順調に回復しているんだ」
「お前達の監督が最新医療を紹介してくれたおかげでな。俺はもう完全復活さ」
佐久間と源田は、先の真・帝国の一件で身体にダメージを負った。だがその後運ばれた病院で最先端の治療を受けたらしく、源田は回復、佐久間ももうすぐ普通に動けるようになるらしい。2人ほどの実力者がサッカーから離れるようなことにならなくて本当に良かったな。
「世宇子中のアフロディ・・・鬼道から話は聞いたぞ、お前も影山に利用されてたって」
「俺達の分も、雷門と一緒に戦ってくれよ」
「佐久間君、源田君・・・ああ、勿論さ」
そうか、アフロディと帝国はちょっとした因縁があったな。このやり取りをみた感じ別に問題はないようで安心だ。帝国も影山の魔の手に踊らされていた時があったからな、そういう面で理解が出来るんだろう。
「さて鬼道、早速だが始めようか。練習試合」
「練習試合?」
佐久間の急な提案に俺達は疑問符を浮かべる。だが話を聞くとその提案の訳が分かった。どうやら鬼道が特訓の成果を試す実戦の場として帝国イレブンとの練習試合を計画していたらしい。確かに、それぞれ試合の中で身に付けたことを試しておくに越したことはないな。特訓して即エイリア学園との試合で実践、では中々にリスキーだからな。
「円堂、土門。俺達はこっちだ」
「こっちって⋯帝国?」
「ああ、お前もだ加賀美」
じゃあ早速始めようか、というところで鬼道から待ったがかかった。デスゾーン2を練習しているこの3人が帝国側で試合をするというのは分かる。それに加えて俺も帝国側として雷門の皆と試合するのは何故だろうか。
「お前のスピードはこのチームの中で唯一ダイヤモンドダストに匹敵するレベルだった」
「成程。デモンストレーションか」
「ああ。これからの戦いに備えてな」
そういうことなら理解した。確かに俺をアイツらに見立てて戦ってみれば本番を想定した戦略を練ることも出来る。それに──
(──皆と、
これが俺の本心だ。今まで背中を預けて戦ってきた皆と全力で戦いたい。
「キャプテンに鬼道さん、土門さん⋯それに加賀美さんまで敵になるッスか!?」
「良いねえ、燃えるじゃねえか!!」
「俺もだ⋯全力で行くぞ、お前ら」
決まりだな。俺達4人は帝国側のベンチに行きユニフォームを受け取る。袖を通してみるとやたら肌触りが良い。やっぱ金あるんだろうな。移動にあんな装甲車みたいなバス?使ってるくらいだもんな。
視線の先では守達も帝国のユニフォームに着替えている。鬼道はやっぱり懐かしい感じがするな。土門はやけに様になっている⋯ああそうか、土門は元帝国だったな。守は⋯うん。
春奈に準備してもらったあれは⋯まあこの試合は良いか。
「鬼道、フォーメーションは?」
「お前は寺門とツートップだ。俺達は全員中盤に入る」
「よろしくな、加賀美」
「おう、こっちこそ」
基本俺はいつも通りの動きで良い。3人は連携をしつつデスゾーン2を狙うみたいだから、様子を見ながらそのサポートに回ろう。
「さて、早速始めるか」
どこからともなく現れた古株さんが審判をやってくれるらしく、ホイッスルを鳴らす。それと同時に寺門から俺にパスが回る。顔を上げると、雷門側のツートップが俺を出迎える。
(早速かコイツら⋯)
修也にアフロディ。2人が容赦なく俺の行く手を阻む。ダメだな⋯全く隙がない。俺単独での突破は不可能、そして⋯キックオフからすぐ寺門は左に抜けている。パスを通すための道を開くこと自体は難しくはない。
「パスコースを作るだけなら簡単、とでも思ったかい?」
「ダメか?」
「ダメだ」
俺の動き出しを読んだアフロディが初動を潰しに来る。それならアフロディが動いたことで出来た穴を突けば良い⋯と思ったが、そこをすぐさま修也がカバーに回る。
厄介だなコイツら⋯アフロディは単純に読みが鋭い、そして修也はそれを想定して俺が取るであろう行動を抑えに来てる。いわゆる癖読みか。
「けど、それだけじゃ甘いな」
コイツらはあくまで俺が前にボールを送ることしか想定していない。保持しているのが俺なである以上、この場の主導権を握っているのは俺。急にその方針を変えるのも俺の気分次第ってことだ。
「ナイスパス」
「ぼちぼち来ると思ってな」
俺が選択したのはバックパス。それも超近距離になるパスだ。単純に後ろに戻しただけじゃそれを見て修也かアフロディ、或いはラインを上げてきている一之瀬かリカ辺りがそのパスから生まれるルートを潰しに来る。
だから俺はギリギリまで待った。パスを出すその瞬間まで俺だけに意識を向けさせるための溜め。それを解き放った時に作り出される展開は──
「いくぞ、速攻だ」
「了解、
鬼道を軸とした速攻が展開される。鬼道を中心に左に守、右に土門。その前を先導するように俺と寺門が走る。
「止めるぞ!」
「了解やダーリン!」
「おう!」
最前線の俺と寺門にそれぞれ塔子とリカ、パスの選択肢を潰すために一之瀬が鬼道に徹底的にマークに着く。その上塔子とリカが鬼道から俺と寺門のルートを潰している。なるほど、3人でこの5人の攻めを完璧に潰しに来たな。
さて鬼道、どう動くんだ?
「なッ!?」
「すげえ!声掛けも無しに連携した!」
いざとなったら無理やりに状況を動かせるように鬼道の動きを注視していると鬼道が唐突にバックパス。さっき抜いた修也とアフロディがそれに向かって走り出すが、それより早く洞面が通り抜けるようにしてそのボールを確保する。
そのプレーに意識を向けたが最後、一之瀬のプレスが緩んだ隙を見逃さず鬼道がすぐさま一之瀬を越えた。間もなくしてボールは鬼道に戻り、流れるように俺の足元に送り出される。
(行け)
(そういうことね)
アイコンタクトで鬼道の意思を悟った俺は攻めの五角形から外れて一気に加速する。鬼道のご要望は俺単体での突破、お膳立てしてもらった以上はやり遂げなきゃな。
「加賀美!そう簡単に通れると思うなよ!」
「来たな綱海!止められるもんなら止めてみろ!」
綱海の武器はそのフィジカルの強さ。加えて感覚も一級品だ。必殺技を使ってこないとしても、真正面からのぶつかり合いを制するのは至難の業だ。
だがそれに頼ってしまうのが綱海の弱点。己の肉体と感覚に自信を持ったプレーは小手先のテクニックに弱い。
「右か!」
「甘い」
「うおッ!?」
アウトサイドでボールを右側に軽く送り出す。それを見た綱海は重心を右に寄せるどころか既にボールの方へ身体ごと寄せた。それに対して俺は左足で地面を蹴ってボールの距離を縮め、再びボールに近づいたところで今度はインサイドで左側に素早く戻す。完全に右に動いていた綱海は急には止まれない。切り替えそうと無理に重心を戻してバランスを崩した綱海を置き去りに俺は走り出す。
次は⋯木暮か。
「止める!」
あの体制は旋風陣だな。確かに強い技だが壁山のザ・ウォール、塔子のザ・タワーと比べて重心が低めなせいで狙いが分かりやすい。けど折角だ、正面突破してみようか。
旋風陣は木暮の天性のボディバランスを活かして逆立ちの状態で高速回転、名前の通り旋風を生み出してボールを奪い取る必殺技でシュートブロックにも応用できる。その特性上どれだけオフェンス側のフィジカルが強くてもボールだけ奪われてしまう。
「旋風陣!!」
考えうる対抗策は2つ。まず1つ目は全力でボールを押さえつけること。ボールだけ奪いに来るならボールだけ守れば良いの理論だ。けどこれは今回はパス。俺は大人しく木暮にボールを奪われる。
「やった!」
「残念、敢えてだ」
「うえぇ!?」
2つ目。必殺技を出し終えた後を狙う。これは生み出される風に身体を持っていかれないだけの体幹を備えていることが大前提だ。木暮は必殺技の後回転を止め、浮いたボールを脚で止める。ボールと脚が触れるまでのコンマ数秒、ここが狙い目だ。ボールが浮いたのを確認した瞬間に地面が爆発するほどの踏み込みで加速。その勢いのままボールだけをかっさらう。
「加賀美さん!ここは絶対に通さないッスよ!!」
「良い気合いだ壁山!!行くぞォッ!!」
最後の1枚、壁山。壁山の武器はやはりその大きな身体だがもう1つ、ポジショニングの良さがある。幾らその巨体で相手の進撃を阻止しようとしても、その相手の正面を抑えてなければ意味は無い。だが、壁山は常に相手の正面からぶつかりに行く。
「ザ・ウォール"改"!」
そしてこのザ・ウォール。広範囲を巨大な岩壁で塞ぐ単純で強力なブロック技だ。壁山自身の強靭さも相まって旋風陣同様にシュートブロックでも猛威を振るう。
バカ正直にぶつかって突破することはまず不可能。だがついこの前この壁が越えられるのを俺は見ている。
「上から通らせてもらう⋯ぞッ!!」
「あっ⋯」
壁山も心当たりがあるみたいだな。そう、ダイヤモンドダストとの試合でガゼルが見せた跳躍による突破だ。こんな荒業が出来るのはごく一部だろう。少なくともこの場では俺だけ。
「さあ行くぞ立向居!!全力でなッ!!」
「は、はいッ!!」
壁山を抜き去り、最後にゴールを守る立向居との真剣勝負。そのタイミングで俺の脳裏には試合開始前の鬼道とのあるやり取りがフラッシュバックしていた。
『鬼道、シュートについてだが俺は普通に狙って良いのか?』
『というと?』
『この試合はお前達のデスゾーンの実戦投入の場であり、立向居がムゲン・ザ・ハンドを掴むための場でもある。双方の機会を潰すようなことをして良いのか?ってことだ』
『確かにそうだな⋯よし』
『どうするんだ?』
その時、さっき突破したDF達が俺に再び襲い掛かる。
「行くぞお前ら!!」
「おお!」
「はいッス!!」
その声を聞いた俺は、ボールを天に向かって送り出す。
『綱海に木暮、壁山。この3人がディフェンスラインを突破されて尚お前に食いついて来たのなら⋯その時は全力で撃て。良い機会になる』
3人に抑えられるより早く、俺自身もその身を天に投げる。下からこちらを見上げる皆をよそに俺は空中で再び出会ったボールを斬り刻む。文字通りの全身全霊、そこに手心なんてものは微塵も存在しない。全ての力を脚に込め、幾度も叩き付けた。
暴発ギリギリまで一点に注ぎ込まれた雷は悲鳴を上げるように脈動、俺はそれを無理やりに圧縮し、再び一点に抑え込むと共に天から地へ雷鳴を鳴らす。
「雷霆⋯一閃ッ!!」
そして、その落ちてきた雷に対して一閃。圧倒的力を秘める雷霆を己の力として従える。
「ザ・ウォール"改"!!」
「旋風陣!!」
壁山と木暮がシュートブロックに入る。だがそれは無謀。衝突した瞬間2人を大きく押し退けて雷霆は突き進む。
(ダメだ、完成には程遠いムゲン・ザ・ハンドじゃ止められる気がしない!!)
「マジン・ザ・ハンド"改"!!」
立向居は魔神を使役してゴールを守ろうとする。だが、俺の雷霆は魔神だろうが何だろうがぶち抜く。雷を何十本と束ねた雷霆の一太刀は、例え神であろうと斬り捨てる。
「ぐ⋯うわァァッ!!」
「させ──ぐォッ!?」
身体ごと押し込まれる立向居がゴールラインを割るより早く綱海がそれを支えに入る。が、数秒として持ち堪えることなく2人はゴールネットに叩き付けられ、炸裂する雷に全身を貫かれる。
(これが加賀美さんの全力⋯これからエイリア学園からゴールを守るためには、俺もこのレベルに到達しなきゃダメなのか!!)
「立向居」
「は、はい!」
「お前なら必ずムゲン・ザ・ハンドを自分の物に出来るし、俺のシュートだって止められる。一緒に頑張ろうぜ」
「⋯はいッッ!!!」
良い気合いだ。鬼道の言ってた通り良い機会にはなったみたいだな。奮起しているのは立向居だけじゃないようだし。
「次は絶対に抜かせないッス⋯!」
「俺も⋯このままじゃダメだ!!」
「そうだな、全員でもっと強くなってやろうぜ!!」
まったく、最高の仲間達だよ。本当に。
ーーー
「クソッ、中々安定しないな」
「帝国のデスゾーンと全く同じ⋯なんだよな?」
「ああ、完璧に同じだ」
雷門と帝国による練習試合も終わりに差し掛かっていた。柊弥の全力に触発されて試合はどんどん熱を帯びていったのだが、一部の目的は未だに果たされずにいた。デスゾーン、そしてムゲン・ザ・ハンドの完成だ。
デスゾーンは一見上手くいっているように見える。だが、撃ち出しのその瞬間だけしか必殺技を名乗るに相応しい威力は保てていない。ムゲン・ザ・ハンドに至っては、未だに必殺技としての核を形成出来ていない。円堂 大介の残した究極奥義であることを考えればそう簡単に行かないのも当然の話だ。
(何が⋯一体何が違うんだ。俺の知っているデスゾーンと全く同じプロセスだ。だが目に見えて駄目⋯考えろ、考えるんだ)
鬼道は途切れさせることなく思考を巡らせる。自身もよく知る帝国の必殺技、デスゾーン。その完成系に至るために必要なプロセスは確実に再現出来ている。そう、帝国の頃と全く同じように。
(──そうか、そういうことか!!)
その時鬼道は天啓を得た。自分が踏んだのは帝国としてのプロセス。そして佐久間がハーフタイム中に漏らした言葉。その2つが鬼道の思考を書き換える。
『雷門は良いチームだな、一人一人が活き活きしてる。今のお前もな』
(デスゾーンは帝国の意思統一によって成り立つ必殺技。しかし雷門は帝国とは違う。帝国には帝国の、雷門には雷門のやり方がある!!)
「円堂!土門!もう一度だ!!」
「おう!!」
鬼道が声を上げて走り出し、それに追従するように円堂と土門も走る。その様子を見ていた柊弥はフッと笑ってパスを送る。
(何か掴んだか、鬼道)
柊弥からのパスを受け取った鬼道は2人と共に跳び上がり、ボールを中心にして回転を始める。3点から成り立つ三角形が紫のオーラを生み出し、中核であるボールに注ぎ込まれる。
「よし!」
「いや、まだだ!!」
先程までなら撃っていたタイミングに達したが、鬼道が待ったをかける。その指示に円堂も土門も戸惑いを見せるが、今この場において鬼道の言うことは絶対。2人も鬼道に倣い回転を続ける。それを見ていた帝国の面々は戸惑いを見せるが、そんなものはお構い無しだ。
「⋯今だッ!!」
鬼道が声を荒らげ、円堂と土門もボールに寄る。そしてとうとうデスゾーンが放たれた。
『デスゾーン!!』
紫色の死のエネルギーを内包したシュートが立向居の守るゴールへと襲い掛かる。先程までの途中で勢いを失ってしまうようなシュートだったら簡単に止められたのだが、今回は違かった。一向に衰えることの無い圧倒的なパワー。ここまで失敗に終わったデスゾーンしか見ていなかった立向居は一瞬気圧されてしまう。
「こ、これは──」
間もなくして立向居の頭上をデスゾーンが通過し、ゴールネットが揺らされる。しばらくの間焦がされるゴールネットがその威力を物語っているだろう。
「雷門版デスゾーン⋯完成だな」
後ろからその顛末を見守っていた柊弥はその威力に無意識に口角が吊り上がっていた。それとほぼ同時に試合終了を告げる長めのホイッスルが鳴る。 スコアは2-2の同点。帝国側は柊弥と鬼道達、雷門側は豪炎寺とアフロディがそれぞれ1点ずつ奪い取った。それぞれが健闘をた
それとほぼ同時。そのグラウンドにいた者達は何かを感じ取る。その中で最も早く反応した誰かが声を荒らげた。
「伏せろ!!」
直後、轟音と共に砂塵が巻き上がり、グラウンド全体を衝撃波が襲う。いち早く目を開けた柊弥の視界に飛び込んだのは、赤と青の光。段々と晴れていく砂塵の中からうっすらと姿を現したその正体に、柊弥は顔を顰めた。
「ガゼル⋯それに、バーン」
カオスとかいう負けイベ。
果たしてこの小説ではどうでしょう