Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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今週はちゃんと投稿出来たようですね(他人事)
しばらく更新してなかったのにUAの伸びが凄かったです、不思議、感謝


第82話 混沌

「我らはカオス」

 

「カオス⋯だって?」

 

 

 突如として俺達の前に現れたバーンとガゼル。見たことない顔ぶれも混じっている⋯恐らくプロミネンスのメンバーだろう。以前の試合で戦ったダイヤモンドダストのメンバーもいる。

 

 

「我々の挑戦を受けろ、雷門イレブン!」

 

「受けねば⋯分かっているな?」

 

「また黒いボールを無作為に撃ち込むつもりか⋯」

 

 

 ダイヤモンドダストの試合を受けた時の脅しと全く同じ、って訳だ。今ここに監督はいない、変にヤツらの挑戦を受け取るのは悪手か?

 

 

(いや、違うな)

 

 

 大人がいないからって引くのか?違うだろ。俺達はもうそんな甘えを口に出来る立場じゃないはずだ。もう負けない、皆でそう決めたよな。

 

 

「当然、ここで決着をつけてやる」

 

「柊弥の言う通りだ!やるぞ皆!」

 

「はっ、そんな焦んなよ」

 

 

 その挑戦状を受け取った⋯つもりだったが、バーンがニヒルな笑みを浮かべながら俺達の意気込みを一蹴してきた。一体何を企んでる⋯?

 

 

「試合は1週間後だ」

 

「1週間?」

 

「ああ。私達はあれから更なるパワーアップを遂げた。君達も万全の状態で臨たまえ」

 

「随分余裕だな」

 

「この試合は俺達の力をアイツらに示すためのモンだ⋯貧弱なお前らを相手にしても意味がねぇんだよ」

 

 

 アイツら、というのが誰を示しているのかはよく分からない。だがコイツらがこの試合で何か企んでいるのは理解出来た。少なくとも、俺達に危害を加えるとかでは無い、あくまで自分達の中だけでの何かだな。

 だがそれはそれとして、コイツらと戦わなければならない事実は変わらない。時間をわざわざ作ってくれると言うなら、存分に利用させてもらう。

 

 

「⋯皆、良いか?」

 

「ああ。どちらにせよ戦わなければならないことには変わらん」

 

「決まりだな」

 

 

 鬼道や皆が頷きで肯定してくれる。それを見たバーンが黒いボールを取り出すと、カオスの面々は光に包まれる。

 

 

「それまで精々強くなってくれたまえ」

 

「宇宙最強は⋯俺達だ」

 

 

 赤と青のコントラストが眩しい光に包まれてアイツらはこの場から去っていった。先程までの喧騒が嘘だったかのようにその場に沈黙が訪れる。

 

 

「よし、じゃあ早速特訓だ!!」

 

「だな」

 

 

 それを破るように守が発破をかけ、それに呼応するように皆も動き出す。ヤツら、あれから更に強くなったとか言ってたな。当然俺らも強くなっているが、現状に満足したらおしまいだよな。

 という訳でこの一週間、春奈に用意してもらったアレを使おう。一体どれだけ成長できるかな。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「はぁ、はぁ⋯クソっ」

 

 

 カオス達が雷門イレブンに宣戦布告をした3日後、とうとう決戦まで折り返しとなったその日。練習時間を過ぎてもなお立向居はイナビカリ修練場で1人マシンと向き合っていた。帝国学園で練習試合を終えてからというものの、雷門中での特訓がメインとなっていた。各々カオスとの試合に向け連携や必殺技、フィジカルの強化に励んでいる。

 

 

(円堂さん達はあのデスゾーンをさらに進化させた。加賀美さんとアフロディさんも既に連携シュートが形になっている)

 

 

 練習試合の最後に完成させたデスゾーンは既に凄まじい威力を誇っていた。しかし、試合中にインスピレーションを得た鬼道がそれを更に上のステージへと押し上げてみせた。

 更に、柊弥もアフロディによる必殺技も既に完成一歩手前である。練習試合では披露する機会がなかったが。

 

 

「ふゥッ⋯ドババババーン、シュタタタターンッ!!」

 

 

 思考に耽ける立向居に対してマシンからボールが放たれる。それを立向居はしっかりとキャッチしたが、どうやら満足は出来ていないらしい。

 それもそのはず、立向居が目指しているのは託された究極奥義ムゲン・ザ・ハンド。未だその完成に程遠いことは他でもない立向居自身がよく理解していた。それに加え同時期に着手し始めた2つの連携技が完成していることがその焦りを加速させる。

 

 

「やってるな」

 

「加賀美さん!まだ修練場にいたんですね」

 

「お前こそ、もう練習時間はだいぶ過ぎてるだろ?お互い様だ」

 

 

 その時、立向居がいたキーパー特訓用の部屋の扉が開かれた。外から入ってきたのは柊弥、息が乱れ汗まみれであることから相当の特訓をこなしてきたんだろうと立向居は心の内で察する。

 

 

「加賀美さんは何をされていたんですか?」

 

「スピード、スタミナの強化だな」

 

「なるほど⋯でも、ここの修練場のメニューは全てクリア出来るんですよね?」

 

「まあな、だから⋯ほら」

 

 

 立向居の疑問に答えるように柊弥はあるものを見せた。それを見た立向居は息を呑む。疑問を払拭されてまず真っ先に抱いたのは「正気の沙汰では無い」という感想だった。

 キーパーとはいえ立向居にもスピードやスタミナ、パワーといった身体強化は必須。それゆえ何度かイナビカリ修練場の特訓にも取り組んでいる。最初は余裕を持てていたものの、終盤はグロッキー。それなのにも関わらず、柊弥はその負荷を倍増させるようなことをしていた。まず自分なら出来ない、そう確信得るほどの。

 

 

「もしかして⋯それを今日の練習でずっと?」

 

「ああ。流石に接触もある紅白戦だったり連携の練習では使えなかったけど、ここを使っての特訓は常にだな」

 

「凄すぎる⋯俺には到底出来そうもありません」

 

「そう気を落とすなよ、何事にも自分のペースってのがある⋯必殺技の習得にもな」

 

 

 最後にそう付け加えられ、立向居の身体がビクッと跳ねた。

 

 

「身の丈を外れた熱意は時に自分を滅ぼすぞ、前の俺みたいにな」

 

「⋯それでも、俺はムゲン・ザ・ハンドを習得しなくちゃいけないんです!円堂さんから託されたこのゴールを、雷門イレブンの一員として守り抜くために!!」

 

「⋯そうか」

 

 

 自嘲気味に過去の自分を例に挙げた柊弥に対し、立向居はハッキリと返した。その目には真っ直ぐな光が燃えていた。

 

 

(先輩面してみたが、いらなかったかもな。立向居なら大丈夫だ)

 

 

 忠告も兼ねた自分の言葉は不要だったと反省しつつ、柊弥は落ちていたボールを拾い上げる。

 

 

「じゃあやるか、徹底的に付き合うぜ」

 

「良いんですか!?お願いします!!」

 

 

 その後2人が修練場から出てきたのは、夕食の時間になっても来ないことを心配して見に行ったマネージャー達に叱られてからだとか。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「ああ⋯疲れた⋯」

 

「時間を見なかった自分を恨むんだな」

 

「すみません加賀美さん⋯俺に付き合ってもらったばっかりに」

 

 

 俺達は今近くの銭湯に来ている。今日から学校に泊まりながら特訓している訳だが、流石に学校に風呂はない。とはいえ家まで風呂だけ入りに行くのも⋯と思っていたところに光明が舞い降りる。何と学校からそう遠くないところにある銭湯の人が是非入りに来て欲しいと申し出てくれたのだ。それだけじゃなく、エイリア学園を倒すために戦っている俺達がこの町に戻ってきていることを聞いて色んな方々が良くしてくださっている。この前なんて膨大な量の食材が届いたらしい。

 

 

 それで何でこんなに疲れているかというと、食事後にマネージャー達にそんなに体力が有り余っているなら片付けを手伝うようにと言われて働きまくったからだ。昨日も時間を見ずに遅れていったからその罰らしい、自業自得だ。

 

 

「それにしても鬼道」

 

「何だ」

 

「お前ゴーグル外すんだな」

 

「⋯やはりお前を待とうだなんて言うべきではなかったか」

 

「冗談です鬼道さん」

 

 

 いや、誇張抜きに鬼道がゴーグルを外したところを初めて見た。こう言いたくなるのも勘弁して欲しい。確か奈良から北海道に向かう前に温泉に行った時もコイツ外してなかったからな。今回は一般の人もいるからと外したらしいが、店主さんが気を利かせて貸切状態にしてくださったおかげで鬼道の貴重なオフショットを晒しただけになったな。

 

 

「それにしてもさ、あのカオスってチーム⋯どんだけ強いんだろうな」

 

「さあな。少なくともあれだけ苦戦したダイヤモンドダストに加え、断定それと同格なプロミネンスが結託したチームだ。一筋縄じゃ行かないだろうさ⋯守、湯船に浮かぶな」

 

 

 ぷかぷかと浮かびながら真面目な話をしているアホを無理やり座らせる。アイツら、更にパワーアップがどうとか自信満々に言ってたからな。間違いなく激戦になるだろう。

 

 

「まあ、負けるつもりは微塵もないけどな」

 

「そうだね。必ず勝とう」

 

「アフロディ⋯随分遅かったな」

 

 

 そんな話をしていると、アフロディが遅れて湯船には入ってきた。ここまで時間がかかった理由は一目瞭然、その長い髪だ。女性陣を含め最も長いその髪を洗うのに凄まじい時間がかかったんだろう。普通に10分とか掛かってたからな。

 

 

「大変だ!壁山がのぼせた!!」

 

「おいしっかりしろ壁山ァ!!」

 

 

 のんびりしながら他愛もない話をしていたら、土門が焦りを全開に俺達の方へやってきた。なんでも熱い風呂で我慢比べをしていたら壁山がヤバいらしい。数人がかりで急いで引き上げ、脱衣所に連れて行く。鬼道は何をやっているんだと頭を抱えていたが、かなり軽度なものだったようですぐに回復した。

 

 

「なんか、こんなバカやるのも久々だな」

 

「良いじゃないか。決戦は近いが適度なリフレッシュは必要だ」

 

 

 ロビーの休憩スペースでコーヒー牛乳を啜っていると、隣に修也が来た。俺達の視線の先では10本以上の牛乳を抱えた壁山が土門や木暮から小突かれている。最近は別にギスギスしてたとかでは無いがやっぱり皆張り詰めてたからな、こういう風に皆で笑い合えるとそれも解れるというもの。

 この光景をまた見るためにも、まずはカオスとの試合に勝たなきゃな。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「来たな」

 

 

 カオスとの試合当日。雷門イレブンは試合場所に指定された帝国学園グラウンドにて待ち構えていた。緊迫した空気の中、全員が待機している方とは逆のベンチに黒のボールが落ち、赤と青の光を放つ。その光が止めば中から姿を現したのはバーンとガゼルを先頭にしたカオス。

 

 

「逃げずに来たか」

 

「当たり前だ!俺達はお前らに勝つ!」

 

 

 バーンが挑発気味に言い放つが、臆することなく円堂が言い返す。全員がそれに同調するように真っ直ぐな視線を向けると、上等と言わんばかりにバーンが口角を吊り上げる。

 

 

「加賀美、打ち合わせ通りに」

 

「おう」

 

 

 到着してすぐカオスはピッチに入る。それに対して雷門イレブンもそれぞれポジションに着くため走る中、鬼道が小声で柊弥に話し掛ける。

 

 

「さあ始めよう⋯我々の力を示す」

 

「ああ⋯真のジェネシスは俺達だ」

 

 

 そして、とうとう試合の火蓋が切って落とされた。キックオフはカオス側、ツートップであるバーンとガゼルからのスタートだ。この試合は2人にとって大きな意味を持つ、それゆえに選択したのは超速攻、2人の突出した実力をフルに活かした先制だ。

 最前線で最初にぶつかった豪炎寺もアフロディもその速攻に肉薄するがあと一歩届かない。最初の壁を越えたバーンとガゼルはスピードを落とすことなく雷門陣営に切り込んでいく。

 

 

 が。

 

 

「ここだ」

 

「なッ⋯」

 

「どこから現れた⋯加賀美 柊弥ッ!」

 

 

 音もなく現れた柊弥が2人のパスに割り込んだ。そのスピードにバーンは言葉を失い、ガゼルは目を見開く。文字通り柊弥の動きが目で追えなかったのだ。柊弥が卓越したスピードを誇ることは2人も知っていた、それでもなお反応が出来ないレベルのパスカットだった。

 

 

 そんなことはお構い無しに柊弥は加速する。その速さはまさに雷速⋯いや、光速の域に達していた。

 

 

「クソがッ、何でこんな速え!?」

 

「ドロル!リオーネ!止めろッ!!」

 

 

 反応が遅れたバーンとガゼルではもはや追い付けない。ガゼルが声を荒らげるとドロルとリオーネが真正面から柊弥を抑えに来たが、右左と揺さぶるフェイントから生じた隙で先行のドロルを、そのドロルを抜いた先に待ち構えていたリオーネをスピードで正面突破。瞬く間に中陣まで切り込んだ柊弥はそのまま駆ける。

 

 

「こっからは行かせねェ!!」

 

「全員で行くぞ!!」

 

「おォ!!」

 

「ええ!」

 

 

 ここで止めなければマズイ、そう本能で感じとったカオスのDF4人は即連動し柊弥を完璧に囲む。ドリブルもパスも許さない完璧な包囲網、そのはずだった。

 

 

「まだ上が残ってるぞ」

 

「はッ⋯」

 

 

 あくまでそれは地上の話、彼らは目の前にいるのがその気になれば天すらも掴む男であることを失念してしまっていたのだ。

 直後、柊弥の姿がボールと共に消える。それを知覚した時には暴風が上に向かって吹き荒れる。それに釣られて上を見上げると、そこには雷霆を従える鬼神が鎮座していた。

 

 

雷霆一閃(G2)

 

 

 天が割れ、雷鳴が轟き唸った。降り注ぐ稲妻は正しく絶対の一撃。

 

 

「う、うぉ───」

 

 

 それを止めることなど⋯不可能。

 

 

「この試合、勝つのは俺達だ」

 

 

 前半2分、先制点は雷門イレブン。




柊弥「負けイベ?知るかそんなもん」
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