Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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カオス戦完結ゥ!!
最初のアフロディの過去描写は捏造です。あったかなあ原作に⋯


第87話 闇を照らす

『力が欲しくないか?』

 

 

 今でも覚えている。あれは僕にとって最も蓋をしたい記憶であり、向き合わなければならない戒めでもある。暗い部屋、グラスで煌めく液体、怪しく揺れるあの眼光。

 

 

 僕達世宇子中サッカー部は弱小ながらも細々と、楽しく活動していた。いつの日かフットボールフロンティアで優勝することを夢見て、皆でボールを追いかけていた。

 そんな時だった。彼が、影山が僕達の元にやってきたのは。彼は様々なものを僕達に与えてくれた。実績がなくて十分に貰えなかった予算も、練習するための設備も、美しいユニフォームも何もかも。

 サッカー協会副会長、という肩書きもあり最初こそそれは有り難さしかない施しだった。けど、それは彼の真の目的のための撒き餌に過ぎなかったんだ。

 

 

 差し出された液体を口に含めば、全身に力が満ちた。何でも出来る、フットボールフロンティアも夢じゃない。僕はあの水、神のアクアに一瞬で心を掴まれてしまった。キャプテンである僕が溺れれば、ついてきていた皆もそうなるのは時間の問題だった。

 与えられた偽りの力を自分の力と勘違いし、それを欲望のままに奮った。正に神様になった気持ちだったんだ。だから佐久間君や源田君、帝国学園の皆をはじめ色んな人達を平然と傷付けた。

 

 

 そんな僕が生まれ変われたのは、彼のおかげだった。

 

 

「いくぞアフロディ⋯受け取れェェ!!」

 

 

 フットボールフロンティア全国大会、その決勝で僕の前に立ちはだかった加賀美 柊弥。確かにその実力は高いが、神である僕の前には無力。

 そう、思っていたんだ。

 

 

『キャプテンであるお前が勝負を諦めるな!! 俺達は今、全身全霊でこの試合に臨んでいるんだ!! ドーピングをしていようが、神様がなんだろうが関係ねェ!! 最後の1秒まで立って戦え!!』

 

 

 あの瞬間、彼が全てを覆した。ひたむきに努力を重ねた人間の力があれほどまでに強く、与えられただけの偽りの神の力はこれほどまでに脆い。そう教えられたんだ。

 そして僕は、いや僕達は僕達自身を取り戻せた。あの短い時間だけでも、僕達が憧れて求め続けたサッカーが出来たんだ。

 それは全て君のおかげなんだ、加賀美君。君があの時僕に怒ってくれたから、全力でぶつかってくれたから。

 

 

 だから、僕は君に応えたい。

 

 

「オオオオオオォォォォォォッッッ!!!」

 

 

 加賀美君が送り出してくれたボールに対して僕は軋む脚を叩き込む。相手のディフェンスを回避出来ずに右脚を挫いてしまったけど、そんなことは関係ない。

 極限を引き出す、魂を込める!あの日の君がそうだったように!

 

 

「ぐッ⋯負けるかァァァァァァァァ!!」

 

 

 僕の闇を君が照らしてくれたように、僕がこの試合の結末という先の見えない闇を光で染める!!

 僕は神様なんかじゃない、けど神様みたいな人間を目指すことなら出来る!今は見習いの神様で構わない、だから今僕に出来ることを全力でやり遂げる!

 またいつの日か──君の横に並びたいからッ!!

 

 

「決めろッ!!!」

 

ライトニング⋯ジャッジメントォォォッ!!

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「ッ、アイスフォートレス!!

 

 

 アフロディが撃ち出した俺達のライトニングジャッジメント。俺はありったけを込めて送り出した。そしてアフロディはそれに応えた⋯これ以上ない、俺達2人の全身全霊だ。

 それを迎え撃つカオス最後の砦、クララとグレント。まずクララが壮大な氷壁を創り出す。だがみるみるうちにその中心は溶かし削られ、全体がヒビだらけになる。

 

 

 いける、ブチ抜ける。

 

 

「ぐゥ⋯ッ!?」

 

 

 次の瞬間、氷壁は粉々に打ち砕かれて巻き上げられた氷塵が雨のように降り注ぐ。そんなことはお構い無しにシュートは進み続ける。

 次に待ち受けるのはキーパーのグレント⋯だったが、その前に割り込む2つの影。

 

 

ファイア──

 

──ブリザードッ⋯!

 

 

 バーン、ガゼルだ。アイツらいつの間にあんなところに!?間に合うどころかシュートブロックする余力まであるのは完全に想定外⋯いや、アイツらの意地か。最後の最後は意地のぶつかり合い⋯勝つのは俺達か、アイツらか。

 

 

 いや、俺達だ。

 

 

「うォォォォォォオッ!!」

 

「チィッ!!しつけえンだよテメェッ!!」

 

「私達は負けないッ!!絶対にこの試合に勝つ!!」

 

 

 俺はすぐさま身体を起こし、2人の脚が交差し受け止めているボールに更に蹴り込む。さっきのでもうエネルギーなんてスッカラカンだ、俺の身体が許す限りの力押しだ。

 けど、元々ライトニングジャッジメントの本領は全てを貫く破壊力。いくらその前にシュートブロックが挟まれていようとそれでもキツイだろ!?そこに俺がもう一押し加えてやれば⋯

 

 

「負ける、かよォォォッ!!」

 

「クソ⋯がぁッ⋯!!」

 

「僕達が⋯負ける⋯ッ?」

 

 

 コイツらに、勝てる。

 

 

「クララ、バーン様、ガゼル様⋯後は俺がッ!!」

 

 

 全部貫いたシュートはそのままゴールに向かって飛んでいく。だいぶ威力は削られた⋯後はグレントのバーンアウトを突破出来れば──

 

 

「これが、俺の最後の手段だ」

 

 

 その時、グレントの纏う空気がガラッと変わった。これまで見せることのなかった圧倒的な熱量。

 ⋯オイ、嘘だろ?まだ引き出しがあるって言うのかよ?

 

 

ヘルフレア⋯フィストォッ!!

 

 

 グレントの右拳に紫の炎が宿る。その紫炎はバーンアウトの赤い炎とは次元が違う、まさに地獄の炎。

 グレントはそれを容赦なくシュートに向かって叩き付ける。

 

 

「負けるものか⋯勝つのは、我々カオスだッ!!」

 

 

 暫しの膠着の後、神の雷を飲み込んだ地獄の炎。一際強く燃え上がると、力の向きが切り替わる。

 

 

「オオオオォォォッ!!」

 

 

 シュートが、弾かれる。緩やかながらも、高く。

 

 

「ァッ──」

 

 

 あの必殺技は相当の消耗と負荷なのか、グレントの右腕は力なくだらんと垂れている。ボールを確保して、もう一度撃てば確実に決まる。そう思った時にはもう動き出していた。

 けど視線の先では既にバーンとガゼルも動いていた。それどころか、俺より明らかにボールに近く明らかに速い。

 

 

「まだ終わっちゃいねェッ!!」

 

「ホイッスルが鳴るまで私達は止まらないッ!!」

 

「──ッ!?」

 

 

 それでも諦める訳にはいかねえ。試合が終わったらぶっ倒れような構わねえ。最後にもう一度全身を燃やそうとしたが、その瞬間視界が急激にブレる。全身を襲った衝撃、気付いた時には⋯俺は地に伏せていた。

 

 

「ッし!もらッ──」

 

 

 バーンがボールに届く、ヤツらのカウンターが始まる。

 まだ、終わってない。終われない。まだ立ってボールを追い掛けられる。

 

 

させるかァァァァァァッ!!

 

「ッ!?テメッ、どこからッ──」

 

 

 その時、今まで聞いたこともない獣のような声が聞こえてきた。アフロディだ。あの時のように美しい長髪をグシャグシャに、端正な顔をボロボロにして。

 ボールはまだ高い。バーンは跳んではいるがまだ届いていない。それに対してアフロディは凄まじい勢いの走り込みからの跳躍、ジャンプの速度は段違いだった。

 

 

「届けェェェェッ!!」

 

 

 バーンを空中で追い越したアフロディは額をボールに叩き付ける。全身全霊を込めた、泥臭いヘディングシュート。

 しかしそれでいて狙いは正確。グレントが右腕を上げられないことを見抜き右方向、その上脚を伸ばすのも難しい上方向。右上のゴールポストギリギリを狙った正に最後の一撃。

 

 

 その一撃は、神から俺達に差し伸べられた救いの一手。

 

 

「ぶち抜け、アフロディッ⋯」

 

 

 その一手が齎す結果を見届けるより早く、俺の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「決まっ⋯た?」

 

 

 カオスゴール前で繰り広げられた最後の応酬。撃って、弾かれ、奪い合ってまた撃って。そしてようやくその試合に幕が下ろされる。

 誰もが視線を集中させた先ではゴールネットが緩やかに揺らされ、その直前、直後でそれとは別に2つの影がその場に倒れ込む。

 

 

「柊弥!!アフロディ!!」

 

 

 円堂がそれに気付いて2人の元へ走り出すと、豪炎寺や鬼道、他のメンバーもその場へ向かう。それより早くその片方⋯アフロディは片膝をつきながら身体を起こすが、どうやら立ち上がれないようだ。

 

 

「アフロディ、大丈夫か?」

 

「うん、それより加賀美君を⋯ぐッ!?」

 

「お前⋯まさか脚を」

 

 

 鬼道が真っ先にアフロディに駆け寄るが、そこでようやくアフロディが脚を痛めていたことに気付いた。だがそんなことはお構い無しにアフロディは這いながら柊弥の元へ。

 先に柊弥の元へ辿り着いた円堂が肩を揺らすが反応は無い。焦って身体を抱き起こすがそれでもだ。

 

 

「柊弥、おい!柊弥ッ!!」

 

「落ち着け円堂!気絶しているだけだ⋯」

 

 

 何度も声を掛ける円堂を合流した豪炎寺が制する。反応こそないものの呼吸はある、ただ気絶しているだけだと判断した。

 

 

「俺達が⋯負けた?」

 

「馬鹿な、そんなことが⋯」

 

 

 その横ではバーンとガゼルが絶句していた。カオスのメンバーが何やら声を掛けようとしては躊躇い、結局近付けていない。2人がこの試合にどれだけの想いを掛けていたかを理解していたからこその躊躇い、下手な言葉など掛けられるはずがなかった。

 

 

 そしてその時、スタジアムのはるか上空から黒いサッカーボールが落ちて来る。着弾と同時に白い光が辺りに満ち、それが止むと同時にに先程までそこにいなかった人物が立っていた。

 

 

「お前は⋯!」

 

「やあ、円堂君。フィールドプレイヤーに転向したんだね」

 

 

 カオスの前身となったプロミネンス、ダイヤモンドダスト。この2つのチームに並びマスターランクのチームに位置するザ・ジェネシス。そのキャプテンである男⋯グラン。またの名をヒロトだ。

 

 

「何しに来た!」

 

「今日用があるのは君達じゃないんだ⋯バーン、ガゼル。何勝手なことをしている?」

 

「俺達は認めない、お前達がジェネシスに選ばれたなど!!」

 

「私達が雷門を倒し証明する⋯ジェネシスに相応しいのは私達だと!!」

 

「⋯往生際が悪いぞ」

 

 

 そう言葉を荒らげる2人に対して冷たい視線を向けると、足元のボールが再び白く発光する。

 

 

「加賀美君は⋯疲れてるみたいだね。よろしく伝えておいてよ」

 

「待て──」

 

 

 柊弥を抱えながらも円堂はヒロトを引きとめようとするが、ヒロトは柊弥を一瞥して身を翻す。間もなくして再びボールが強く発光し、視界を埋め尽くすほどに光が広がる。それが止んだ頃にはカオスのメンバー、ヒロトは姿を消していた。

 

 

「⋯うッ」

 

「アフロディ!!」

 

「皆!加賀美君とアフロディ君を入口へ!救急車を呼んだわ!」

 

 

 直後、柊弥の近くまでやってきて膝をついていたアフロディが気絶。倒れる2人を目の当たりにして狼狽える雷門メンバーに瞳子が素早く指示を飛ばす。

 こうして、雷門とカオスの試合は幕を下ろした。4-3⋯エイリア学園最強格であるチームに、とうとう雷門イレブンは勝利を収めることとなった。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「⋯ここは」

 

「起きたかい?加賀美君」

 

 

 横から声がした。まだ自由の効かない身体を寝かせたまま顔を横に向けると、そこにはアフロディがいた。その身にまとっているのは病院着。

 

 

「そうか⋯病院か」

 

「うん。あの試合の後気を失ってここに運ばれてきたんだ」

 

 

 気絶⋯ああ、そういえば試合の途中、アフロディがヘディングを仕掛けたところで意識が飛んだんだったな。全身痛いが⋯骨折とかはないな。身体も起こせる。

 

 

「そういえばアフロディ、脚は」

 

「ああ⋯軽い捻挫みたいだ。骨折じゃなかったらだけまだ良かったかもしれないね」

 

「⋯そうか」

 

「落ち込まないでね?僕達の最後のシュート、あれが原因じゃない。その前の着地ミス、あの時の脚の痛みとそう変わらないんだ」

 

「とは言っても、怪我しているところに無茶させたのには変わりないだろ?すまない⋯もっとやりようはあったかもしれない」

 

「良いんだよ、僕が望んだのだから」

 

 

 そういうとアフロディは松葉杖をつきながらベットから立ち上がる。

 

 

「加賀美君、屋上に行きたいんだけど着いてきてくれないかな」

 

「怪我人を1人で行かせる訳にはいかない。勿論着いてくさ」

 

 

 とは言っても屋上まではエレベーターが通っているし、病室からも近かった。エレベーターから降りるとそこはもう屋上の出入口だった。

 扉を開けるとそこにはオレンジ色の空が広がっていた。さっき目を覚ました時は気付かなかったけど、今は夕方だったか。

 

 

「あれ、守?」

 

「柊弥!目を覚ましたのか!」

 

「ああ。ついさっきだけどな」

 

 

 屋上に行くと、そこのベンチで守が1人座っていた。俺達もそのベンチに座り、目の前の沈んでいく夕陽を眺めながら話し始める。

 

 

「僕は⋯この脚じゃもう戦えないね」

 

「軽い捻挫と言っても治療期間、リハビリを考えるとな⋯」

 

「折角同じチームになれたけど、仕方ないよな」

 

 

 アフロディが儚さを目に宿しながら上手く動かせない脚をさする。守も言っているが⋯仕方ない。ヒロト達ザ・ジェネシスとの決着が数ヶ月も後になるなら話は別かもしれないが、きっと近いうちにこの戦いが終わる気がする。俺の直感に過ぎないけどな。

 

 

「それにしても加賀美君、あの試合の最後⋯何か掴んだんじゃないかい?」

 

「⋯ああ。上手く言葉に出来ないけどな。あらゆる感覚が研ぎ澄まされて、頭の回転速度が凄かった。目や耳から入った情報を元に頭が勝手に最適な行動を弾き出す⋯それがあったからカオスのあのディフェンスラインを無傷で突破できた」

 

「うーん、時々柊弥が見せるあの凄い力とはまた別なのか?」

 

「あれか。確かにあれとはまた違うな⋯今回のは更にその先の何か。けどあの時の爆発的な力は無かったんだよ」

 

 

 爆発的な力⋯化身だ。今回のあの感覚の中でも化身を自由に出すことは叶わなかった。一体何があの力を呼び起こす鍵になるのか、未だによく分からない。

 

 

「けど、加賀美君はきっとまだ強くなるよ。僕が保証する」

 

「だな!けど柊弥だけじゃない、俺達ももっと強くなる!」

 

「⋯そうだな。怪我が治った時にはお前もだぞ?アフロディ」

 

「手厳しいね」

 

 

 そう言ってアフロディは笑う。

 

 

「⋯加賀美君」

 

「何だ?」

 

「エイリア学園との戦いが終わって、僕の怪我が治ったら⋯また僕とサッカーやってくれるかい?」

 

 

 アフロディが俺にそう問い掛けてくる。何言ってるんだが、コイツは。そんな答え、1つしかないに決まってるだろうに。

 

 

「当たり前だ。その時はライバルとしてか、また仲間としてかは分からないけどな」

 

「ふふっ、どちらでも望むところだよ」

 

 

 俺が拳を突き出すと、アフロディが軽く拳を突き合わせる。

 ありがとうな、アフロディ。お前がいたからこそあの試合に勝つことが出来た。次お前に会う時はエイリア学園との戦いが終わった後、その報告かな。

 だから、後は任せてくれ。絶対俺達は勝つから。




ライトニングジャッジメント、直接ゴールとして決まるか弾かれるか直前まで迷いました。
怪我している状態で撃ったところでシュートブロック2枚、バーンアウト君渾身の新技を抜けるかな?と思って結局後者にしました。シンプルに原作以上にアフロディを活躍させたいと思ってその後のヘディングまでねじ込みたかったのもありますが正直賛否両論かな⋯と
兎にも角にもカオス戦完結です。長かった⋯とうとう次はジェネシス戦と考えるとビックリですね。カオス戦に負けず劣らず自分の描きたいものをぶち込むつもりなのでどうぞお付き合い下さい。
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