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「柊弥、本当に身体は大丈夫か?」
「ああ。びっくりするくらいにな」
病院でアフロディに別れを告げ俺達は雷門中に戻ってきていた。俺も気絶して病院に運ばれたのに身体に異常がなくて助かった。
一応先生と話はしたけど、初めてジェミニストームと戦った時みたいに有り得ない回復力がどうのこうのらしい。まああの時は長期入院必須の怪我だったから今回とは訳が違うが⋯自分でもよく分からん。
「あっ、柊弥先輩!キャプテン!」
「大変なの、ジェネシスのグランが!」
「ヒロトが⋯!?」
どうなってる、まさかジェネシスが攻めてきたのか?いや違うか。秋の言い方からして来たのはヒロト1人。けどアイツ、1人で何しに来たんだ?偵察をしようにも皆は特訓をしていないから得るものなんてない。
「⋯一旦落ち着け2人共。ヒロトが来たのはわかった、何かしてきたのか?」
「何かしてきたわけじゃないんだけど⋯」
「瞳子監督を"姉さん"って呼んだんです!!」
「姉さんって、どういうことだよ」
監督が姉さん⋯益々意味が分からなくなってきたが、とりあえず春奈と秋から経緯を聞くことにした。
まず何で2人がそれを目撃したのかについて。これに関しては完全に偶然だったようで、マネージャー達とリカが適当に敷地内を散歩していたら偶然瞳子監督を発見。何をしているのかと疑問に思い見つからないように眺めていると、監督が唐突に声を上げる。焦って隠れた4人だったが、その視線の先にいた男こそがヒロトだった。
監督とヒロトの密会、この時点で既に大問題だったが本題はそこから。話していた内容はこうだ。
『ヒロト⋯』
『やあ、昼間は見苦しいところを見せちゃったね⋯けど安心してよ、ジェネシスに選ばれたのは俺達だから』
『⋯』
『それじゃあ、待ってるよ⋯姉さん』
これでハッキリしたことがある。瞳子監督はほぼ間違いなくエイリア学園の関係者、それもヒロトの血縁である可能性が高い。
となると、だ。ここで浮上する可能性は⋯瞳子監督がエイリア学園のスパイであるということ。俺達の前に現れたタイミングを考えても辻褄は合う。けどそうだとすると逆に辻褄が合わなさすぎることの方が多い。仮にスパイなら、なぜ俺達をここまで強くする必要があった?疑われないため?それにしては度を超えている。偽装工作のためにある程度監督業務をこなす必要はあるだろうけど、今や俺達はエイリア学園最強格のチームに勝てるレベル。仮に監督があちら側ならエイリア学園が敗北する可能性をここまで大きくするか?
⋯ダメだ意味が分からない。何はともあれ、一度直接話を聞くしかない。いきり立ったリカが皆を巻き込んで既に監督に詰め寄っているらしいから、俺達も急ごう。
「監督!答えてください!」
校門を通って皆が集まっているグラウンド横まで小走りで向かう。途中で夏未の強い声が聞こえてきた。その周りにいる皆は疑念に満ちた視線を監督に向けており、その監督は夏未の問い掛けに答えることなく俯いたまま。
「皆」
「加賀美君、円堂君⋯」
「聞いてや!コイツエイリアのスパイやで!!」
リカもそういう結論に辿り着いたか。これは相当にキレている、冷静に話ができるような状況じゃないな。
「そういうことか⋯監督が時々いなくなっていたのはエイリア学園に連絡を取るためだったんだな」
「それによ、姉さんって呼ばれてたってことは⋯」
「⋯監督は、宇宙人?」
「説明責任があると思いますね」
「どちらにせよ話してもらおうじゃないか、なあ!?」
土門に綱海、木暮、目金が次々監督を捲し立てる。マズイな、皆感情に呑まれ過ぎている。落ち着いてるのは俺、修也、鬼道、吹雪⋯そして守。
「皆⋯俺が話を聞く」
「円堂⋯」
「監督、話してください。本当にアイツの⋯ヒロトの姉さんなんですか?」
皆とは違う、落ち着いた声色で守が前に出る。その意図を汲んでか皆も監督への追求を一旦止めた。それに対する監督はどこか後ろめたさを隠しきれておらず、明らかに目線が泳いでいる。
まあそうだろうな⋯監督が何か抱えているのはまず間違いない。一体それが何なのか。けど一度それが露呈した以上はそれを話してもらわなきゃ困る。少なくとも、間違いなく近いうちにあるジェネシス戦の前にはな。
「⋯確かに、私は皆に隠してることがあるわ。けれど今はまだ話せないの」
やがて、瞳子監督はそう口を開いた。けれどまた口を噤み、何かを考え込む。痺れを切らして言葉を促そうとしたんだろう、誰かが息を吸ったその直後ら再び瞳子監督が語り出す。
「皆には私と一緒に富士山麓まで来て欲しいの。そこで全てを話すわ」
「富士⋯?」
「なんで富士山麓なんですか!」
「⋯そこに宇宙人がいる」
鬼道がそう呟くと皆揃って顔を強ばらせる。このタイミングで富士山麓へ行くことを提案、そこで全てを話すともなればそれで確定だろうな。富士山麓といえば有名な樹海⋯なるほど、確かに宇宙人が身を隠すにはうってつけの場所ってわけだ。そういえば何年か前に富士山麓かニュースに出てたような⋯いや、今はどうでも良いか。
「出発は⋯明日の8時よ。それまでに準備を整えてちょうだい」
それだけ言い残して監督はどこかへ去っていってしまった。残された皆は当然穏やかな雰囲気じゃない。監督への不満がここぞとばかりに爆発している。特に一之瀬、土門はこれまで見た事がないくらいに怒っている。怒りを見せていなくともやはり疑念や恐怖、マイナスな感情に皆支配されてる。
「⋯結局監督は何も答えてくれなかった。この戦い、疑問がいっぱいあったけど着いてきたのはエイリア学園に傷付けられた皆の想いに応えたかったからだ」
「一之瀬⋯」
「けど、監督には皆の想いなんて届いてない⋯こんな気持ちじゃ、俺は富士山になんか行けない」
「俺も同じ意見だ。もう我慢の限界だ」
一之瀬、土門が揃って明日への不参加を表明する。
「鬼道はどうよ?」
「どっちに転ぶにしても判断材料が足りないな」
「はっ、お前らしいよ」
鬼道は中立ってところか。他の皆は言葉に出してこそいないが、多分不参加よりの中立だろうな。これまでの頑張りがある以上、下手に引けなくなっている。かといって進んで監督に着いていくとも言えない。
「⋯加賀美、お前はどうなんだ?」
「行くに決まってるだろ」
皆が黙り込む中、鬼道が俺に話を振ってくる。それに対しての返答は決まっているようなものだ。降られなくても話すつもりだったしな。
「一之瀬も言ってたけど、俺達は怪我で一線を退いた皆の想いを背負ってる⋯いやそれだけじゃない。今となっては俺達がエイリア学園に対抗出来る唯一のチーム。この国の人達皆の希望と言っても過言じゃない」
「⋯それはそうだけど」
「でもな、一之瀬に土門の言いたいことも分かる。瞳子監督は隠していることが多すぎる。俺達はまだ子供だ、そんな大人に任せるのは抵抗があるよな」
けど、きっとあの監督は俺達を裏切らない。
『エイリアに勝つため、俺達を導いてください。よろしくお願いします』
『ええ。勿論よ』
あの時の言葉はきっと嘘じゃない。
「それでも俺は監督を信じて戦う⋯また、皆で楽しいサッカーをするためにな」
「その通りだ!何も迷う必要は無い⋯富士山に行けば、エイリア学園の全てが分かるんだ!」
「待て円堂、俺も一之瀬達が迷う気持ちが理解出来る。一緒に行くかはそれぞれが決めるべきだ」
「けど!!」
「皆には考える時間が必要だ」
「⋯鬼道の言う通りだ、守」
鬼道に俺が言葉に熱が籠ってきた守を制すると、なにか思うところがあったのかすんなりと引き下がる。
「⋯そうだな、そうだよな。今夜一晩あるもんな」
「どれだけ時間があっても変わらないよ⋯俺は降りる」
「ダーリン⋯」
「何で監督は何も話さないんだ?隠してたって良いことないだろ」
「結局、信じた俺達が馬鹿だったのかな?」
「本当にそうかしら。監督はいつも勝利を第一にした的確なものばかりだったわ」
「ああ。それに修也の時もだ。憎まれ役になってでも修也と夕香ちゃんを守ろうとした⋯」
「その通りだ。だから俺は監督を信じる」
「僕も行く⋯行くしかないんだ。こんなところで立ち止まりたくない」
「あたしも行く!本当のことを知りたい⋯パパのためにも」
「俺は⋯俺は⋯」
「⋯やっぱり俺は納得いかない」
守が口を開いたのを皮切りに皆が自分の考えをどんどん言葉にする。明日監督に着いていく意志を見せたのは修也、吹雪、塔子。そこに加えて俺と守。否定派が一之瀬、土門。鬼道をはじめ他の皆はまだ決めかねているといったところだな。
「⋯皆頭を冷やそう、俺も考える」
皆が言いたいことを言い終わって再び訪れた静寂を破ったのは鬼道。それだけ言い残して踵を返した。それに釣られるように皆もその場を去っていく。1人、また1人とその場を去っていき最後に残ったのは俺と守、秋だった。
「皆、大丈夫かしら⋯」
「俺は皆を信じてる⋯だから大丈夫だ!」
「そうだな。きっと皆来てくれるさ」
今まで一緒に戦ってきた皆を俺は信じる。それだけだ。
ーーー
「ああは言ったものの、落ち着かねえな」
あの後残った俺達も解散し、各々自宅に帰る流れになったが結局俺は帰らず適当に歩き惚けているだけだ。最初はカオスとの試合で入り込んだあの超感覚に慣れるため1人でボールでも蹴ろうかと思ったが流石に安静にした方が良さそうだから止めておいた。
まずあの感覚も恐らくは何かしらの条件があって初めて発揮出来るものだ。極限状態における火事場の馬鹿力なのか、はたまた別の何かなのか。正直良く分からない。
感覚の鋭敏化、バカみたいな脳の回転率、それに伴った身体パフォーマンスの向上。自由に使えたら正直滅茶苦茶強いけど、その分消費も凄いだろうな。感覚としては雷霆万鈞を身体じゃなくて脳に使ってるような感じか?
化身といいあの状態といい、この頃は自分で出来ることがよく分からなくなってきたな⋯仕方ない、やれることを愚直にこなすしかないな。
「あれ、修也と吹雪?」
そんなことを考えながら歩いていると、河川敷のグラウンドでボールを蹴る吹雪とそれに後ろから近付く修也の姿が目に入った。
吹雪⋯さっきは富士山に行く意志を示していたけど大丈夫なんだろうか。俺は後から聞いた話だけど、吹雪の過去は凄まじいの一言に尽きる。幼少の頃に自分以外の家族を全員亡くし、そのストレスから自分の中に弟、アツヤの人格が産まれる。過去の試合で吹雪の人が変わったような雰囲気はそれが原因だったらしい。
アイツは独りじゃない、俺達が着いている。仲間がいるのに独りで戦っている気になってた俺だからこそそれを教えられるんだが⋯これは吹雪自身が乗り越えなきゃ行けない問題だ。俺達に出来るのはその手助け。今はとりあえず修也に任せよう。
「あれ」
「あ、加賀美」
吹雪に話しかけ始めた修也を横目に通り過ぎしばらく歩くと、前から一之瀬と土門、リカが歩いてきた。コイツらも落ち着かなくて徘徊してたクチか。立ち話もなんだからとりあえず河川敷の坂に腰掛けることにした。
「やっぱり、加賀美は監督に着いていくのか?」
「ああ。それを聞くってことはお前らは⋯」
「⋯正直、迷ってるんだ。監督への疑問とかは払拭出来てないけど、ここで逃げ出したら今までの苦労が台無しになっちゃう気がしてさ」
「俺も。お前達が行くのに自分だけへそ曲げるのも⋯なあ?」
「ウチは正直分からへん⋯このチームに入ったのも途中からだし、加賀美やダーリン達と違って入院している雷門中の仲間のことも分からんから」
3人がそれぞれ葛藤を口にしてくれる。さっきも言ったが、コイツらが監督を疑って従いたくない気持ちも理解出来るんだ。あそこまで露骨に何かを隠された上で信じることは簡単なことじゃない。何かが違えば俺もそっち側だったと思う。
だからこそ、無理強いは出来ない。
「俺は、俺達全員に自由に選ぶ権利があると思う。だから仮に明日皆が来なくても、それを攻めることは出来ない。けどやっぱり俺はエイリア学園を倒して前みたいな日常を取り戻したい。皆と一緒にボールを追いかけることに夢中になりたい⋯そのためには覚悟を決めるしかないと思ってるんだ」
「俺もだよ。雷門サッカー部の中では俺が1番歴が浅いけど、皆で特訓してたあの時間が大好きなんだ。そのためには⋯でも」
「無理に結論を急ぐ必要はないだろ。明日の朝まで時間はある。それまで沢山悩んで、沢山考えてくれ」
俺はそう言って立ち上がり、3人を一瞥する。
「きっと明日で全てが決まる。だから俺は戦う。お前達も一緒に戦ってくれたら⋯心強いし、嬉しいな。それじゃ」
伝えたいことは伝えた。後はアイツら次第だ。
ーーー
あれからまた色んなところを歩き回って、その度に誰かと会った。鉄塔広場に行けば綱海に立向居、商店街に行けば秋と塔子。皆何かやっていないと落ち着けなかったんだろうな。
その後も別に目的も無しに歩いていると、気付いたら雷門中までやってきていた。そういえば久々に部室を見ておきたいな。
「⋯そりゃそうか」
もしかしたら元に戻っているかも⋯と期待していたけどやっぱりそんなことは無かった。あの日ジェミニストームに壊されて瓦礫の山のままだ。サッカー部の印だけは回収してキャラバンに乗せたんだよな、確か。
俺達の旅はここから始まったんだったな。ジェミニストームと初めて戦って、ボロボロに負けて。その次の日やりきれない気持ちのままここに来たら皆も集まって来て。理事長と響木監督に瞳子監督を紹介されて旅立って。
最初は奈良に行ったんだったな。塔子達SPフィクサーズに宇宙人と勘違い⋯いや、俺達が雷門イレブンだって知ってたのにそういう体裁で試合を吹っかけられたな。それでその後はジェミニストームと再戦、また為す術なくやられた。そしてその後は⋯修也がチームを去った。
次は北海道。修也が抜けた穴を埋めるために白恋のエースストライカー、吹雪を仲間にするために北の大地まで行ったな。最初吹雪と会った時は驚いた、何せ全く歯が立たなかったからな。最初は染岡と吹雪の仲もどうなることかと心配だったが、何だかんだ良い関係に収まった。
吹雪に教えてもらった雪山特訓でスピードを身に付け、とうとうジェミニストームにリベンジ達成⋯と思いきやデザーム率いるイプシロンが現れてまだまだ戦いは終わらなかった。
その次に行ったのは京都。イプシロンの襲撃が相次いでいるという報告を受けて向かった先で出会ったのが漫遊寺にいた木暮。最初はとんでもないイタズラ小僧だったな。ヒロトと初めて会ったのもあそこだ。
その翌日イプシロンが漫遊寺を襲撃。早速イプシロンとの戦いに身を投じた俺達だったがそこにあったのは大きすぎる力の壁だった。確かあの時からかな⋯俺が焦り始めたのは。
確かその次は愛媛。影山が警察を欺き真・帝国学園を設立したという報告を受けた俺達は影山の企みを潰すべく向かった先では帝国の佐久間に源田が待ち構えていた。そしてあの試合を語る上で外せないのは不動。アイツのやったことは絶対に許さないが、実力は確かだった。結局目的もよく分からなかったけどな。最終的に影山は行方不明、真・帝国学園の潜水艇も海に沈んだ。
⋯そして、あの試合で負傷した染岡がチームを離れた。あそこから本格的に俺は周りが見えなくなり始めた。染岡の穴を埋めるため、あれ以上仲間を失わないため。
次に向かったのは大阪。エイリア学園の基地があるとか何とかだったな。結局そこにあったのは基地というよりは特訓施設。そこに辿り着けたのはリカと出会えたおかげだったな。あの時は一之瀬を賭けて試合をしたらしいが俺は春奈と遊園地を回っていたから分からなかった。一応基地捜索という名目で。
そこの特訓施設、ナニワ修練場では今までで1番無茶をした。最高レベルを何度も何度もクリアし、その上雷霆一閃の前身となるシュートを生み出したんだからな。そのおかげで、と言うべきかイプシロン相手に引き分けまで持ち込むことが出来た。決着はつかなかったけどな。
そして福岡。大介さんのノートがあるという話で陽花戸中に向かった俺達は円堂の大ファンである立向居と出会った。無事ノートも受け取り打倒イプシロンのため更に特訓を⋯というところでヒロト達ザ・ジェネシスが襲来。力の差は圧倒的すぎて、俺達は為す術なく打ちのめされた。そしてそこで俺が暴走、ヒロト達が撤退するほどの大暴れをしたらしいけど記憶が無い。
その試合が落とした影はあまりに大きかった。風丸、栗松の離脱。俺と吹雪の緊急搬送、そしてあの守が酷く落ち込んでいたらしい。立向居の熱意に打たれて何とか持ち直したらしいが、守には悪いことをした。アイツのことだ、きっと俺のことも自分のせいだとか考えたんだろうな。
最後に、東京に戻ってくる前に行った沖縄。あそこが俺にとっての運命の地になった。修也と思わしき炎のストライカーの目撃情報。それを聞いた俺達はすぐさま沖縄へと向かった。けどそこにいたのは修也じゃなくて、エイリア学園のバーン。結局その時は会えずじまいだったけど、修也がいる可能性はまだ残ってるということでしばらく滞在していた。そういえば土方は元気だろうか、修也を匿ってくれてたのもアイツだし次会ったら改めて例を言いたいな。
そして現地の学校である大海原で出会ったのが綱海。俺達と会った時はまだサッカー部じゃなかったのにその翌日には入部していたらしい。どんな行動力だよ。
大海原との練習試合の後、ついに運命の時が訪れた。イプシロン改の襲来だ。あの試合の中で吹雪がトラウマ再発で退場、俺も現状に絶望して意識が遠のいた⋯その時だった。どこからともなく炎のシュートが飛んできて、俺の闇を燃やし尽くした。修也が帰ってきたんだ。アイツが独りじゃないってことを教えてくれたおかげで俺は戻ってこれた。
それからはこっちに戻ってきてダイヤモンドダストと試合、その中でアフロディと再開。守がリベロに転向、立向居がキーパーになって帝国と練習試合。今日カオスと試合をして今に至る。ってところだな。
「その旅も、もうすぐ終わりだ」
明日、間違いなく俺達の戦いは終わる。瞳子監督の言うことが正しいのなら、エイリア学園の本拠地が富士山にはある。そこでヒロト達、ザ・ジェネシスに勝って終わらせてやるんだ。そうすれば怪我をした半田達も、風丸や栗松も戻ってこれる。アフロディとまたサッカーだって出来る。絶対勝ってやる。
「あれ、柊弥先輩?」
「春奈?何してたんだ?」
「木暮君と壁山君がイナビカリ修練場で特訓するって言ってたんでついていったんです!あの2人、入り方分からないので⋯」
「ああ、納得」
木暮は雷門中じゃないし、壁山は多分機械操作の類は無理だろうからな。確かに春奈が着いていかないとダメだっただろう。
「先輩も特訓ですか?」
「いや、散歩してたんだ。無性に部室が見たくなってな」
「なるほど⋯」
そう言うと春奈は俺の横に来て部室を眺める。春奈も雷門サッカー部の一員、やっぱり思い出深いんだろうな。
「柊弥先輩、きっと明日でエイリア学園との戦いは終わりますよね」
「ああ、確実に」
「⋯勝てますよね、また前みたいな日常、帰ってきますよね」
「⋯ああ、絶対に」
「⋯ですよね!マネージャーである私が皆を信じてないといけないのに、すみません」
「気にするなよ。皆あんなことがあってナーバスになってるだけだ。俺もさっきまで感傷に浸ってたしな」
そこで会話が止まり、しばらく静寂が流れる。⋯困った、どう言葉を切り出そう。
「⋯あ、いけない!2人を残したままだった!」
「おいおい、アイツら出れなくて干からびるぞ」
「戻らなきゃ!!それじゃ先輩、また明日!」
「ああ、また明日」
唐突に身体が跳ねた春奈は焦り全開であたふたし始めた。多分手にボトルを持ってたあたりキャラバンからスポドリを補充してきたんだろうな。
「あ、そうだ」
「どうした?」
突然春奈は振り返ってこちらに駆け寄ってくる。
「え」
そして、勢いそのままに抱き着いてきた。
「明日勝てるよう、おまじないです。先輩だけに特別ですよ⋯沖縄で言ったこと、忘れないでくださいね?」
小さくそう呟いて、春奈はすぐ来た道を戻る。突然すぎたことに俺はしばらく固まっていたが、何が起こったのかを再確認すると急に顔が暑くなってきた気がする。
「忘れるわけないだろ⋯」
その呟きは誰にも届いておらず、静寂だけがそこに残された。この戦いが終わったら春奈に応える。その約束のためにも⋯絶対、確実に勝つ。
ーーー
朝が来た。予定より早く目覚めた俺は落ち着かないから軽くランニングで身体を暖めてから雷門中にやってきた。空気が冷たい、けどそれが少しだけ火照った身体には心地良い。
集合は8時、だけど今は7時。あと30分くらいは誰も来ないだろうな⋯と思っていたが、視線の先には人影が1つ。けどその装いは雷門のジャージとはかけ離れている。
「朝から宣戦布告か?」
「そんな大層なものでは無いよ、おはよう加賀美君」
俺を待ち構えるようにそこにいたのはヒロトだった。見たところ、というか確実に1人だ。
「来てくれるんだよね、富士山」
「勿論。首洗って待っててくれよ」
「ふふっ、楽しみだね。君との決着をどれだけ楽しみにしていたか」
そう言うとヒロトは俺とすれ違うように逆方向へ歩き、背を向けたまま最後に一言だけ言い残す。
「それじゃ、後で」
「ああ、後で」
その直後、背後の気配が消える。楽しみ、ね。俺達としてはそんな穏やかな気持ちじゃないんだけど⋯まあ良い。俺達が勝てば結局同じだ。
さて、皆を待つか。
「早いな」
「お前こそ、鬼道」
まず最初にやってきたのは鬼道だった。
「どうやらもう1人来たらしいぞ」
「調子はどうだ?相棒」
「まずまずだな」
次にやってきたのは修也。何となく予想はしてたけどやっぱコイツらは早いな。
「そういえば修也、昨日吹雪と何を話してたんだ?」
「見てたのか。大したことじゃない、少し喝を入れただけだ」
「ふっ、豪炎寺らしいな」
「あっ、皆さん!おはようございます!」
ここで一気に人が来た。立向居に綱海、木暮、壁山、目金だ。
「おはよう。今日は頼んだぞ、立向居」
「はい!後ろは任せてください!」
「勿論俺達も頑張るぜ!な、壁山、木暮!」
「はいッス!頑張るッスよ!」
「おう!正直監督はまだ信用出来ないけど⋯それでも頑張るよ」
「ちょ、ちょっと!一応僕もいますよ!!」
「あれ、皆もう来てるじゃん!」
それに続くように到着したのは塔子に秋、夏未、春奈のリカを除いた女子御一行だ。両手には謎の袋をぶら下げている。あれは確か昨日商店街で買ってたお菓子か?
「早いね皆、お菓子いる?」
「欲しいッス!」
「俺も!」
「⋯遠足じゃないんだから。あ、俺も何か甘いの欲しい」
塔子からチョコを受け取って口に運ぶ。人のこと言えないというツッコミは無しで頼む。
「吹雪、来たか」
「うん。僕も戦うよ」
それからしばらくしてやってきたのは吹雪。修也の方を一瞥すると軽く頷き、修也もそれに頷き返す。昨日の会話内容が分からないから意図は汲み取れないが⋯まあ、吹雪も覚悟があってここに来たってことだろう。
そして校門の方からもう1人やってきた。
「遅刻だぞ守」
「ええ!?」
「嘘だ」
流石に今日遅刻したら説教どころじゃ済まないな。一応コイツが遅刻とか寝坊はしたことない。大体かなりギリギリに着いてたが今日は結構余裕を持って来たらしい。
「もう皆⋯揃ってないか」
「ああ。一之瀬達がまだだな」
あと来てないのは一之瀬、土門、リカ。そして監督だな。あの3人は来るのか⋯来てくれると良いけどな。
「あ、もう集まってんで!ほら!」
「来たか」
「や、やあ⋯やっぱり、俺達も最後まで戦うよ」
「そーゆーこと。目逸らしちゃダメだよな」
「全員揃ったようね」
もし来なかったらどうしよう⋯だなんて考えていたらそのタイミングで3人共来てくれた。良かった、これで全員集合だ。そしてそのタイミングを見計らったように監督もやってきた。時間よりは早いが⋯出発だな。
「⋯皆、良いのね」
「はい。行きましょう⋯富士山に」
俺が代表して監督にそう言うと、皆も頷きを返す。一人一人と目を合わせた監督もまた頷き、振り返る。
「⋯ありがとう。それじゃあ出発よ!皆キャラバンに乗って!」
『はい!!』
その言葉を合図に全員キャラバンに乗り込む。目的地は富士山麓。
これが最終決戦だ、待ってろよ⋯ヒロト。
というわけで、次回はとうとうエイリア学園の本拠地に乗り込みます。カオス戦の次の話って考えると展開早くね?ってなるんですけどアニメでもそうなんですよね(カオス戦終結、瞳子とヒロトが会っているのを目撃→なんやかんやあってその次の話では出発)
次の話でとうとう雷門サイドはエイリア学園の真実を知り、その次でザ・ジェネシスとの試合スタートですかね。いやあここまで長かった。
大体の流れは原作が至高すぎてそこまで変えるつもりはありませんが、やはり二次小説ならではのオリジナル要素も入ってきます。是非付き合ってやってください。