年末年始に向けて多忙が続くのでしばらく隔週更新が続くかもしれませんがご容赦ください…
いつも感想などありがとうございます、多忙な身に染み渡ります…
「ナイス、吹雪」
「ありがとう加賀美君、豪炎寺君も」
「礼には及ばない」
難攻不落だったジェネシスのゴールをぶち抜いて戻って来た吹雪。その表情は先程のように曇ってない。完全に吹っ切れたみたいだな。
「凄いぞ吹雪ー!」
「やったな!」
後ろから皆もやってきて吹雪をもみくちゃにする。それを予期した俺と修也は早めにその輪から抜け出し、その光景を一歩引いたところで眺めていた。
「さて⋯ここからだな」
「ああ。ここからヤツらは正真正銘本気だろうな」
アイツらの中には何処か余裕があった。自分達が負けるはずはないっていう慢心があったんだろう。だがさっきの一点がその慢心を振り払ったんだろう、ジェネシスの面々がこちらを見る顔付きは険しいものになっていた。吹雪が吹っ切れてくれて安心して前を任せられるようになった今なら、さっきよりも中盤に寄っても問題は無い。攻撃と守備どちらにも参加出来る位置で立ち回るのがベストだな。
「鬼道、俺は後ろ目に構えておく」
「分かった。切り替えのタイミングは必要に応じて指示するが好きに動いてもらって構わない」
「了解」
鬼道、それから修也と吹雪にもその旨を伝えてポジションに着く。FWというよりOMFくらいの意識だな。
「……ヒロト」
ふと視線を感じたのでその方向に顔を向けると、ボールを持ったヒロトがこちらを見ていた。その表情は真剣そのもので、言葉もなしにここからが本番だと語っているようだ。
上等、お前にも譲れない何かがあるんだろうがそれはこっちも同じだ。絶対に負けない。そのためにここに来たんだからな。
「なッ」
「速いッ!」
全員がポジションに着き、試合再開のホイッスルが鳴り響く。その瞬間、ウルビダから軽く送られたパスを受け取ったヒロトは疾風と化す。修也と吹雪が虚を突かれたとは言え、全く反応を許されないほどの超スピード。これを真正面から止められるのは多分俺だけ。
「行かせないぞ、ヒロト」
「なら止めてごらんよ、加賀美君」
それだけ言葉を吐くとヒロトはトップスピードのまま俺に迫ってくる。……重心が左に分かりやすく寄っている。これはフェイントで実際は右に抜けるな。
「こっちだろ!」
「……流石だね」
と、思わせて左に更に加速して抜けていくのがコイツの狙いだ。視線と重心で右を抑えるフェイントを仕掛けてからサイドステップで左に跳ぶと、ちょうどヒロトの正面だった。
そこから俺とヒロトは壮絶なぶつかり合いになだれ込む。ファールギリギリのパワープレイで何度も衝突しながらも段々とこちら側に攻め入られる。
「俺達は負けられないんだ、全ては父さんのために……!」
「吉良星二郎がやろうとしてることがどんなことか、分からないお前じゃないだろ!」
「分かってるさ!それでも俺は負けない、父さんの期待を裏切ることなんて出来ないッ!!」
「クソッ……!?」
吉良星二郎を父さんと呼び、異常な程の忠誠を見せるヒロト。それがどういうことか問いただすと、ヒロトの闘気が一気に爆発しやがった。何度かも分からない衝突の時、その凄まじい膂力に抵抗出来ず大きく弾き飛ばされた。
全身に痛みが走る中顔を上げると、既にヒロトは俺達のディフェンスラインを割っていた。何だあの速さ、さっきまでと比にならないとか、そういうレベルじゃない……!
「止めるぞ壁山!」
「はいッス!!」
塔子に木暮、綱海がパーフェクトタワーで迎え撃とうとしたところを超スピードで突破すると、その動きをいち早く察知していた守と壁山がヒロトの正面を捉える。
『ロックウォールダム!!』
「低い。その程度の壁じゃ星には届かないよ!!」
広範囲を塞ぐ二人の必殺技が展開される。が、ヒロトはそれをものともしない。ロックウォールダムの遥か上まで跳び上がり、その脚に凄まじいエネルギーを集中させる。
「流星ブレード……ッ!!」
そしてとうとうヒロトの代名詞、流星ブレードが放たれる。ロックウォールダムを遥かに超える高さから撃ち出されたそれは、当然何にも邪魔されない。そうなれば必然、流星ブレードを迎え撃つのはただ一人。立向居だ。
「立向居!!」
DF陣は間に合わない、俺達も追い付けない。もう立向居に任せるしかない。
「……絶対に、止める」
その時だった。俺の視線の先で立向居の全身から黄金の気が立ち上り始めた。その気は今まで見たことがないほどに強靭で、強大。
「俺も、雷門の一員なんだッ!!」
「立向居……!」
立向居がムゲン・ザ・ハンドの構えに入る。そして現れた腕の数は先程までよりも明らかに増えていた。アイツ、この土壇場で進化しやがった……!究極奥義に完成無し、ムゲン・ザ・ハンドも例外じゃなかったってことか!
「
進化したムゲン・ザ・ハンドが最大火力の流星ブレードとぶつかり合う。先程まで流星ブレードに打ち勝てなかった立向居だったが、今回は違う。一切退くことなくぶつかり合った両者。
そしてその末に勝利したのは……
「よしッ」
「なッ……」
「──ッ、最高だ立向居ッ」
……立向居だった。ジェネシスには驚愕、雷門には歓喜の声が溢れる。ここで立向居が止めたのは控えめに言って大きすぎる。アイツらの手札はまだ残っているだろうが、単体で放つシュートでは恐らく敵味方含め最強だったヒロトの流星ブレードを止めきったことはこちら側の大きなアドバンテージになる。吹雪の得点もあって明らかに流れはこちら側、このまま一気に攻め切る!
「立向居!こっちだ!」
「綱海さん!!」
完全フリーな綱海が立向居にパスを要求すると、立向居がボールを送り出す。綱海からは鬼道、俺とパスコースも開けている。いける、このまま速攻──
「──は?」
俺が攻め上がろうとしたその時、視界の端で青い閃光が迸った。一体何だあれ?気になった俺は足を止めて思わず振り返った。そして、その視線の向こうにいたのは綱海からボールを奪い取った青髪の戦士、ウルビダだった。
「なッ」
「……ふんッ」
直後ウルビダは紫色のエネルギーを纏いながら加速する。そのスピードは……先程のヒロト以上。
「止めるぞ!!」
「ダメだ、間に合わない!」
マズい。あんなスピード初見じゃ誰も抑えきれない。すぐさま雷霆万鈞をフルに回して走り出すが、攻めに移るために前に出過ぎてた……この位置からじゃ間に合う気がしねえ……!
「グランだけがストライカーと油断したな」
「クソがッ、間に合え……!」
しかし容赦なくウルビダは更に加速する。それに呼応するかのように全身に纏うエネルギーも肥大化。そしてヤツは一切スピードを落とすことなくそのままシュートを放った。
「アストロブラスト!!」
形容するなら紫のレーザー。そんなシュートが立向居が構えるゴールに襲い掛かる。威力は多分ムゲン・ザ・ハンドで止められるレベルだ。けどダメだ、速すぎる。いつ蹴り抜いたのかすら見えなかった。俺の轟一閃よりも明らかに速い。
「ムゲン・ザ──」
立向居はすぐさまムゲン・ザ・ハンドの構えに入るが、既にその時には立向居の眼前にシュートが迫っていた。あまりに速すぎるカウンター。威力では決して立向居からゴールを奪えないのは間違いなかったが、その常軌を逸したスピードで一気に掻っ攫いやがった。
次の瞬間にはもうゴールネットは揺れていた。それを認識した頃、俺はまだゴールまで半分の距離すら進めていなかった。
「確かにジェネシス最強のストライカーは俺だ。けど彼女、ウルビダは……最速のストライカーだよ」
「……伏兵って訳か」
「さあどうだろうね?彼女の背負った番号は……10番だよ」
すれ違いざまにヒロトが囁くようにそう告げる。忌々しいけどコイツらの言う通り、完全に油断してた。単体ではヒロトしかゴールの可能性はない、そしてそのヒロトは立向居が完全に止めたことで少なくとも単体での攻め手はもう無いと思い込んでいた。
けど違った。パワーでこそ劣るもののスピードという紛れもないストライカーとしての適性を備えたヤツがもう一人潜んでやがった。多分ここまでがアイツらの作戦だ。もし万が一ヒロトが止められたのなら、そこまで存在感を隠していたウルビダがそのスピードで一気に不意を突く。その性質上二度は通じない。けど高確率でゴールを奪ってくる……いわばセカンドプラン。
そして当然ヤツらの手札はまだ残ってるはず。もしかするとまだヒロトとは違う方向性でゴールを狙ってくるヤツもいるかもしれない。
……ポジションを下げる判断をしておいて正解だった。何があるか分からない、備えておくに越したことはな──
「ッ!?何だッ!?」
ポジションに戻ろうとしたその時、凄まじい轟音がスタジアム……いや、スタジアムの外のどこから鳴り響いた。まるで何かが爆発したような……一体何だ?
『ご苦労様でした、鬼瓦警部。しかし貴方達の苦労は無駄に終わってしまったようだ』
周囲を見渡していると、突如空中に吉良星二郎の姿が映される。吉良が呼んだのは鬼瓦警部の名前。ということは、さっきの爆発は鬼瓦警部が何かやったということか?
『確かにエイリア石から出るエナジーには人間を強化する力があります。そのエナジーの供給が止まれば、強化されていた者は普通の人間に戻ってしまう』
段々と話が読めてきた。恐らく鬼瓦警部がやったのはエイリア石の爆破。エイリア石が機能停止すればアイツらの能力が格段に落ちるはず。つまりここからは、本当の地力比べ……のはずだが、この含みを持たせた言い方。何かある。
『ザ・ジェネシスはエイリア石を用いていたジェミニストームやイプシロンとは違います。彼らを相手に訓練した普通の人間なのです。弱点などない、ジェネシスこそ人間の新たなる形なのです』
「そんな……!」
「最初からエイリア石に頼ってなんてなかったってこと……?」
そういうことか。バーンやガゼル達がどうだったのかは分からないが、少なくともエイリア石で能力を強化したのはジェミニストームとイプシロンの2つのチームだけ。ヒロト達は強化されたアイツらを相手に戦って実力を伸ばしただけ。そういう意味では……俺達も同じだ。
「……ッ、お前の勝手でッ!!サッカーを悪いことに使うなァッ!!」
「守……」
その時、守が激昂した。今まで見せたこともないような荒々しい怒鳴り声をあげ、高い所からこちらを見下ろす吉良を睨み付ける。当然、吉良はそれに対して何もアクションはない。
「君達には父さんの考えは理解出来ないよ」
「ヒロト……!」
マズいな、守のヤツ完全にキレてる。このままプレーに入っても良いことがないのは明らかだ。何とか落ち着かせたいが……もう試合を再開しないとだ。無茶をするようなら俺がカバーするしかない。
「吹雪、こっちだッ!!」
「キャプテン!」
試合開始早々、守は前に飛び出して吹雪にパスを要求する。その要求に吹雪はすぐさま応じ、守にパスを出した……が、それはマズい。守を信用していないわけじゃない。けど今のアイツにボールを握らせるのは危険すぎる。後ろでならまだしも前でだ、万が一ボールを奪われることを考えると少し怖い。
「らしくないよ円堂君。そんなに怒ってどうしたのさ?」
「ヒロトォ!お前はこれでいいのかよ!?」
早々に守はヒロトに進路を塞がれる。ヒロトは何故そこまで守が怒っているのかを聞くが、言ったところでアイツには理解出来ないだろうな。
「よく分からないね。怒るのは勝手だけど、少し視野が狭いんじゃないかな?」
「甘いな」
「くッ、待てェ!」
ヒロトが守を抑えていると、横から超スピードでウルビダが割り込んでくる。一瞬にしてボールを奪われた守は憤慨しながらウルビダを追い掛けるが、当然追い付けない。
けど、それは俺が見てる。
「甘くねえよ」
「加賀美 柊弥……つくづく厄介な男だ」
守には悪いが、100%ボールを奪われると最初から思って立ち回ってた。ウルビダのスピードは確かに凄まじい。フィジカル的な問題をその試合の中で解決するのはほぼ不可能に近い。けど最初ならそうなることを理解出来ているならそれ相応の立ち回り方が出来る。
「反撃だ……まずは1点奪い返す!」
俺は雷霆万鈞を発動させ、身体能力の120%を引き出す。強化されるのはパワーやスピードだけじゃなく、五感までもが研ぎ澄まされる。そんな俺の目に映ったのは、守にボールを預けてから注目を浴びることなく前線を上げている吹雪の姿。その近くにはカバーが出来るように修也も控えている。成程な、そういう位置取りなら……これで行くか。
「行かせない!」
「止めるっポー」
「止められるモンなら……止めてみろ」
俺が動き始めるより早くコーマとクィールがサイドから迫る。けどそんな寄せじゃ俺を止めることは出来ねえ。真正面がガラ空きなんだ、当然そこから抜けるに決まってんだろ。
一気にジェネシスの中盤まで攻め入ると、次々と俺の行く手を阻むために湧いてくる。ここまで人数掛けられると流石に面倒くせえ、けどそうすることは読めてんだよ。
「修也」
「任せろ」
そこで俺はシュートと遜色ないパスを修也に放つ。人と人の間を縫うようなパスは正確に修也の足元に吸い付き、修也がボールを受け止めた時に鈍い音が響く。
(こっちだ、出せ)
(ああ、分かってる)
意識が修也に向いたが最後、包囲網から一瞬だ抜け出して再びフリーに。修也から戻ってきたパスを受け取って俺はゴールへ走る。
「……ズッ」
「行かせん!」
「それも読めてる」
最後に俺の前には大柄なDF2人が立ちはだかるが、そんなのは関係ねえ。何故なら──
「吹雪」
「ナイスパス、加賀美君!!」
──ハナから俺が撃つつもりじゃないからだ。
「ウルフレジェンドオォォォォォッ!!」
狼の咆哮が再び轟く。咆哮に呼応するかのように暴れ出したシュートは心做しかさっきよりも凄まじい威力でゴールに襲い掛かる。
「ふん……」
それに対してネロは、先程までとは違う構えを取る。直後、ネロを中心に宇宙空間のような領域が展開される。そこに足を踏み入れたシュートは段々と減速していく。
「時空の……壁!!」
ネロの前で完全に勢いを失ったシュート。ヤツはそれを裏拳で弾き飛ばす。あれがアイツの奥の手か……何かまだ隠してるとは思ってたが、さっきよりも威力が上がっているウルフレジェンドで破れない程だとは思ってなかった。
弾き飛ばされたボールは弧を描きながらセンターライン付近までやってきた。そのボールを追い掛けているのは……守だ。
「遅いですね」
「クソォッ!!」
空中でそのボールを奪おうと守が跳ぶ。が、その後に跳んだコーマの方がボールの高さに到達するのが早い。……守、いつもなら間に合ってたはずだな。
「グラン!」
そのままコーマは空中でパスを出す。それを受け取ったのはヒロト。そしてそのサイドにはウルビダ、ウィーズ。
……これは流石にマズい。さっき考えたようにアイツらには絶対攻めにおける奥の手がまだある。それを裏付けるようにヒロトの周りに2人が並び立つ見慣れない陣形。必殺技の発動はもう止められない、こうなったらブロックに入るしかない。
「雷霆翔破ッ!」
雷霆万鈞と雷光翔破の併せ技ですぐさま俺達のディフェンスラインまで駆ける。視線の先ではグラン、ウルビダ、ヒロトがそれぞれボールに背を向けるような形で立ち、ボールを中心に漆黒のエネルギーが周囲に満ちる。
そのまま3人はボールと共に跳び上がり、空高くで禍々しいオーラを纏った球体を創り出す。
『スーパーノヴァ!!』
その球体に向かって3人は脚から斬撃のようなエネルギーを繰り出す。それに押し出されるようにして暗黒の球体は放たれた。俺はその前に躍り出るが、凄まじい圧で全身に悪寒が走るのを感じる。このシュートはヤバい。今まで俺が見てきたシュートとは比較にならないくらいにはヤバい。出てきたのは良いが……これを止めるビジョンが見えてこねえ。
けどやるしかねえ。俺がここで引けば、立向居が全て一人で受け止めることになる。一人で背負わせねえって言ったのは他でもない、俺自身だろ!
「雷霆万鈞、フルパワーだッ!!」
直後、俺の身体から放たれる雷は今までの数倍に昇華する。今までは能力の120%を引き出すくらいだったが、今はそれを更に越える200%。消費は勿論凄まじいが、シュートブロックの一瞬くらいなら耐え切れる。
「オ、オオオオオォォォォォォォッ!!」
俺は最大限エネルギーを滾らせて強化した右脚を巨大な球体に叩き込む。その一瞬で理解した、こんなのは到底俺が止められる代物じゃねえ。けどそれが何だ、それが諦める理由になんのか?限界を極めたその先、極限まで力振り絞ってから後悔しろ!!
段々とスーパーノヴァの禍々しいエネルギーが全身を侵食していく。シュートに触れる右脚は嫌な音を立て始め、やがて俺は無様に弾き飛ばされる。シュートの威力はほとんど削れちゃいない。それでも、やれることはやった。これでもダメなら仕方ねえ。
後は頼むぞ、立向居。
「加賀美さんの想いは無駄にしない……絶対に俺が止める!!
立向居が進化したムゲン・ザ・ハンドでスーパーノヴァに喰らいつく。全ての腕で抑え込むが、その勢いは一切衰えない。それどころか邪魔立てされたことに腹を立てたかのように更に膨れ上がる。立向居の顔が苦痛に歪むが、それでも前に出る。
「……がッ!!」
直後、数多の黄金の手は砕け散って立向居は身体ごとゴールに押し込まれる。最後の最後まで立向居は諦めなかった。それだけで十分だ。
「立向居、立てるか」
「加賀美さん、すみません……キーパーである俺がしっかりしなきゃなのに」
「良い。お前の想いは十分伝わったよ。ありがとう」
立向居の腕を引き上げて立ち上がらせる。立向居はしきりに謝ってくるが仕方ないことだ。どうしても攻めに意識が偏ってあの状況を作り出すことを止められなかった俺の責任だ。
それにしても1-3か……しかも吹雪のウルフレジェンドは止められた。あれ以上のシュートとなると……連携技に限定されるな。その中でもファイアトルネードDD、そしてデスゾーン2の二択か。前者はまだ良い。けどデスゾーン2は……
「大好きなサッカーを汚すな!!」
『どういう意味ですか?』
守があんな状態だから厳しい。さっきの吉良の発言に腹を立てたままの守は吉良に向かってそう怒鳴る。すると映像越しに吉良が姿を現した。
「力は、皆が努力して身に付けるものなんだ!!」
『お忘れですか?あなたたちもエイリア石で強くなったジェミニやイプシロンと戦い、強くなったのですよ。エイリア石を利用して強くなったという意味では……貴方達雷門もジェネシスも変わらないのです』
「……ッ、それは!」
『違うと言いたいのですか?残念ながら何も違いませんよ。雷門も最初とは随分とメンバーが替わりましたね。我々と同じく弱者を切り捨て、より強い者と入れ替えたからこそ、そこまで強くなったのでしょう?』
「ふざけるな!!アイツらは弱くなんかない!!」
『違いません。弱いから怪我をし、チームを去ったのです。彼らは貴方達にとって不要な存在です』
「違う、違う違う違う!!」
「おい」
半田が、マックスが影野が少林が宍戸が、染岡が、栗松が、風丸が……アフロディが。アイツらが弱い?不要?
「ふざけんなよクソ野郎……訂正しろ、アイツらは弱くもねえし不要でもねえ。テメェの物差しで俺達の仲間を語るな」
『本当にそうでしょうか、加賀美君。実際彼らは君よりも劣っている選手だ』
「強さってのは能力で決まるモンじゃねえんだよ。それにチームを抜けたから不要になんてなってねえ。今も俺達の背中を支えてくれてる……テメェみたいな能力や損得でしか人を見れないようなヤツには分からねえだろうが、アイツらは常に俺達の心の中にいるんだよッ!!」
『精神論ですか、くだらない……そんなものでこの実力差が覆るとお思いですか?』
「そう思うならそこから見てろよ……次のワンプレーで証明してやる」
アイツらが弱い、不要なんてコイツに決めさせてたまるか。絶対に認めねえ……俺が見せてやる、俺達全員の力を。
「守、お前も見てろ……一度は仲間を見失った俺がアイツらの強さを証明する」
「……柊弥」
ポジションチェンジだ。俺がまた最前線に戻る。後ろは鬼道に任せるが、まず後ろに負担なんて掛けさせない。アイツらのゴールにぶち込むまで、ボールは絶対に渡さない。
「吹雪、修也。ボールを俺に集めてくれ。絶対に決める」
「……勝算はあるのか?吹雪のウルフレジェンドが止められたばかりだぞ」
「当たり前だろ。勝つ気しかねえ」
「分かったよ加賀美君。ゴールまでのサポートは僕達に任せて」
「ありがとう」
ポジションに戻り、試合再開。吹雪からのキックオフパスで後ろの俺にボールが渡る。
『加賀美、頑張れよ!怪我なんてしてまたこっちに戻ってきたら、承知しないからな!』
『俺はここで安静にしてなきゃだけど、思いだけは常にお前達と一緒にいてえ。だから連れてってくれよ、俺の魂』
『エイリア学園との戦いが終わって、僕の怪我が治ったら⋯また僕とサッカーやってくれるかい?』
俺は、皆に支えられてここまで来れた。今この場にいないヤツらもいる。皆俺の大切な仲間だ。
一度は周りが見えなくなってそんな大切なことも忘れてた。けど、そんな俺だから分かる仲間の大切さ。アイツらがいてくれるだけで俺は無限に強くなれる。
だからこそ俺はここで証明しなくちゃならない。アイツらは弱くない、不要でもない。俺の全存在をこの瞬間に賭ける。今の俺の存在こそが、アイツらの強さの証明なんだから。
ーーー
「……加賀美」
鬼道は後ろからボールを持つ柊弥を見ていた。吹雪からボールを受け取ってしばらく動かなかった柊弥だったが、次第にその変化に気付かされる。大地が揺れるような闘気が、呼吸が苦しくなるほどの覇気が周囲に満ちる。仲間への強い想いが柊弥の全潜在能力を引き出した。限界の先……極限集中状態へ。
「行くぞ、皆」
そう呟いた瞬間、柊弥の姿は閃光へと変わる。一番最初に柊弥と衝突したのはヒロトとウルビダ。常人ならばこの2人に挟まれて無事でいられるはずがない。
「ここは通行止めだよ、加賀美君」
「お前達では私達には勝てん。我々ジェネシスこそが最強なのだ!」
「ほざけよ」
直後、柊弥の全身から黄金の雷が迸る。しかしそれに身を灼かれてもヒロトとウルビダは止まらない。2人同時に柊弥に襲い掛かるが、目にも止まらぬボール捌きとフットワークで気付いた時にはその姿を捉えられていなかった。
「馬鹿なッ……」
「これは……あの時の?」
「偶然だ!俺が力ずくで止めてやる!」
その後ろに控えていたウィーズが柊弥に容赦のないタックルを仕掛ける。ウィーズと柊弥の体格差は歴然。重く鈍い音が周囲に響いた。
「……は!?」
「本当に偶然だったかどうか……分かったかよ」
真正面からパワーでぶつかればどちらが勝つかは火を見るより明らかのはずだった。しかしその結果は全員が予想していたものとかけ離れていた。ウィーズのタックルをものともせずその場で受け止める柊弥。力負けするなどと思っていなかったウィーズの表情は一瞬にして驚愕に歪む。
「退け、邪魔だ」
「ぐぉぉッ!?」
あろうことか、柊弥はそのままウィーズを大きく弾き飛ばした。勢いよくぶつかったとかではなく、接触したその状態から文字通り弾き飛ばしたのだ。
「次は誰だ……どこからでも掛かって来いッ!!」
「……ッ、いくぞ!」
鬼の形相で吠える柊弥。それに気圧されつつもジェネシスの面々は柊弥に向かって襲い掛かる。その光景は奇しくも福岡での柊弥対ジェネシスの構図と同じだった。
しかしあの時とは明らかに違う。その強大な力を柊弥は理性を持って使いこなしている。一切無駄のない身体捌き、エネルギーの扱い。加えて五感の超強化。如何にジェネシスが強い戦士だとしても、それを上回る。もはや誰も柊弥の動きを捉えることが出来ない。
「グラビティション!!」
「フォトンフラッシュ!!」
『プラネットシールド!!』
普通にやってもこの男を止めることは出来ない。本能でそう感じとったジェネシスのDF達は惜しみなく必殺技を発動する。重力空間を作り出し、本来オフェンスで使用する必殺技で柊弥の視界を奪い、その上2人が巨大な惑星をまるで鈍器のように振り下ろす。
「こんなモンで……
「バケモンが……ッ!!」
「クソッ、止まらねえ!!」
しかし、何と柊弥はその全てを打ち砕く。光から守るため眼を閉じたまま過重力に囚われながらも迫る2つの惑星を蹴り砕き、その直後凄まじい量のエネルギーを放出し重力空間を打ち破る。全ての必殺技を打倒した柊弥はそのままゴールへと走る。
(福岡でアイツのシュートを受けた時はグランが来てくれなかったら危なかったけど、今は問題ない!俺一人で止められるくらいにトレーニングも重ねた!!)
自分が守るゴールへと迫る柊弥を見ながらネロは福岡での柊弥を思い出していた。あの時の柊弥のシュート、雷帝一閃は確かに凄まじかった。自身の最高の必殺技である時空の壁ですら打ち破るほどだ。しかしあれからネロは全力でトレーニングに打ち込んだ。エイリア学園最強のチームのキーパーという責任がネロに妥協を許さなかったのだ。
(修也や染岡のように力強く、アフロディや吹雪のように軽やかに)
直後、柊弥は空中に跳び上がる。そして目にも止まらぬスピードでボールに何度も蹴り込む。その一撃一撃が空気が震えるほどに力強い。しかも、ボールに注ぎ込まれるエネルギー量が理不尽なレベルで膨大である。まるで柊弥一人だけではなく、何人もがそのシュートに関わっているかのように。
(そして……皆の想いをこの一撃に乗せるッ!!)
柊弥は十分すぎるほどに力を溜めたボールを下に叩き落とす。そのボールが描く軌道はまるで何本にも束ねられたイナズマのようだった。
「
そして放たれた雷霆の一撃。仲間の存在を再確認した柊弥が生み出した、柊弥だけの究極奥義はこの瞬間更に進化した……いや、究極奥義が進化したのではない。柊弥自身がこの瞬間に進化してみせたのだ。
(速ッ───)
その雷霆一閃はあまりに強く、あまりに速かった。仮に必殺技を展開しようと手で触れようと、一瞬で打ち破られていたであろうという事実がネロの脳裏に一瞬で刻まれる。
「これが……俺達全員の力だッ!!」
柊弥はそう叫ぶと同時に吉良がいる方向を見上げていた。吉良がどう感じたかは定かでは無いが、2点差だった点数は2-3まで縮まり、その瞬間にホイッスルが鳴った。そこにあるのは柊弥が一人でジェネシス全員を抜き去り、ゴールまで奪い去ったという事実。仲間が自分の力であるという柊弥の主張を裏付けるのには、あまりに十分すぎた。
離脱したメンバーを侮辱する吉良、それを否定するためにゴールを奪う柊弥。ずっと描きたかったシーンの1つです。
それにしても3話かけてやっと前半終了か…後半はどうなることやら。
更新についてなんですが、前書きの通りしばらく隔週更新が続くと思います。執筆状況をツイートしてますのでよろしければTwitter( )のフォローをお願い致します。リプで作品に関する質問なども大歓迎です。