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「ヒロト達ですら道具なのかよ……!」
「しかしあのスピード……どうする、鬼道?」
「あんな力だ、長くは持たん。消耗させれば或いは……だが」
「いいや鬼道、お前も分かってるはずだ。そんな時間は無い」
もう後半も半分を切った。相手の消耗を待っていたら間違いなく時間なんてない。だからこそ、だ。
「俺達も仕掛けるぞ」
「……とは言うがな加賀美。あのスピードをどう捌く?」
「任せろ、俺が何とかする」
「何とかするってお前、さっきのアイツらの動きを間近で見ただろ?」
「ああ、だからこそだ」
「へ?」
「あのスピードを至近距離で体感できたからこそ、一番目が慣れてるのは俺だ。だから俺が攻めの中心になる。フィニッシャーとしての中心じゃなく、文字通りの中心としてな」
「……なるほど?」
「いつもの鬼道みたいな役ってことか?」
「そういうこと」
アイツらのスピードはハッキリ言って化け物レベルだ。まず真っ向からやったら勝ち目は無い。だからここは徹底的に策を弄する。俺が攻めの中心になって、その都度指示とパスを送る。鬼道程の機転は利かないだろうが、単純なスピードに対抗するやり方なら俺でも出来る。俺が前の司令塔になれば万が一の時は鬼道に後ろを任せられるしな。
「という訳だ鬼道、良いか?」
「ああ、構わん」
よし、決まったな。俺を中心とした攻めでアイツらを攻め崩す。間違いなく簡単にはいかないだろうが……やるしかない。俺は試合が再開する前に次の作戦で必要になるヤツらに声を掛けておく。
「……ヒロト」
声を掛け終わってポジションに戻ると、ヒロトと目が合った。明らかに苦しそうな表情を浮かべながらも、その目には不退転の決意が宿っている。
『これくらい、父さんのためなら……!!』
さっきのヒロトの言葉と表情が頭の中で繰り返される。今のコイツを見てると前までの俺を思い出す。絶対に引けない理由はあるものの、自分で自分を追い詰める選択をし続けている……そんな感じだ。
しかもコイツ、リミッター解除の直前にジェネシスの仲間達を気にするようなことも言っていた。吉良がいるから仲間なんて必要ないって言ってたのにだ。
……同じような間違いをしてた俺だからこそ、コイツの間違いを正してやれるのかもしれないな。
「修也、吹雪!!」
「ああ!」
「うん!」
ホイッスルが鳴ってすぐ、俺達3人は同時に攻め上がる。後ろに構える俺にボールを預けた2人は左右前方に展開、そのまま駆け上がっていく。ボールを預かった俺は当然ジェネシス最前線の2人とマッチアップする。
「そのボールを貰うよ、加賀美君!」
「加賀美 柊弥……貴様を潰し、ジェネシスの価値を最上の物にする!」
「かかってこい……雷霆万鈞ッ!!」
全身に雷を纏ってヒロト、ウルビダと衝突する……が、まず普通にやったら勝てない。さっきまではゾーン状態の模倣とフィジカル頼りのアドリブで何とかやり過ごしたが……時間が経ったせいかあの感覚がもう抜け落ちてる。
けどコイツらはもう忘れてるらしい。俺がさっきどういう風にこの状況を突破したのか。
「ここだ!」
「ナイスパス柊弥!」
「なッ!?」
雷霆万鈞で強化した聴覚は後ろから上がってきている守の足音を聞き逃さなかった。フェイントを織り交ぜまくっての時間稼ぎに徹すればさっきしておいた指示通りに守がカバーに来る。そのタイミングでバックパスからの入れ替わりでコイツら2人を突破できる。
正直これはコイツらがリミッター解除なんていう手段に出たからこそ通った一手だ。焦りからの無理な能力強化、それに伴う苦痛による視野狭窄で冷静な判断をする力が鈍ってる。
「守、ツーテンポ上げてくぞ。いけるな?」
「おう!任せとけ!」
「止めろォ!」
ウルビダの怒声混じりの指示を受け、ジェネシスの連中は俺達2人に飛びかかってくる。そのスピードは当然のようにとんでもねえが、本来のパスワークより2つ速いテンポで回すことで正面衝突を回避する。これをアドリブでやるのはそんな簡単な話じゃねえが、俺と守ならいける。コイツの無茶ぶりに何回も付き合ってきた俺と、俺の後ろ姿をずっと見てきてくれたコイツだからこそ出来る超連携。
「止められるもんなら止めてみろッ!」
「くッ、もっと人数掛けるぞ!!」
どれだけ人数を増やそうと関係ない。急上昇した身体能力を自分で制御しきれていない部分もある上、そのせいで連携、統率がガタガタだ。こっちにとっては好都合でしかねえが、そんな雑な包囲網で俺達が止められるはずねえだろ。正直、チームとして完成された連携で止めてくるさっきまでの方が余程脅威だ。
(さて……)
そろそろゴール前だ。この場面で一番点を奪える可能性が高いのは……お前だろッ!!
「ッ!
「ナイス節穴ッ!!」
「いや、カーブパス……!?」
吹雪に向けたパスと思わせ、アウトサイドで鬼回転を掛けたカーブをその真反対の位置に。そこで待ち構えるのは、俺がこの世で最も信頼する男。
「ぶちかませ、修也ァ!!」
「任せろ、柊弥ッ!!」
パスを受け取った修也はそのまま全身に炎を滾らせ、炎の魔神を顕現させる。その魔神に導かれるがままに遥か上空に飛び上がり、全身全霊のシュートを叩き込む。
「爆熱……ストォォォォムッ!!」
「ふん……時空の壁!!」
それを待ち構えるネロにはどこか余裕がある。既にプロキオンネットで爆熱ストームを止めている上、今はリミッター解除で能力の底上げまでしているからだろうな。
けど甘えよ。今お前が相対しているのはこのチームのエースストライカーだぞ?
「な、何だこの力……ぐッ!?」
アイツが時空間を掌握しようと、この男の炎を消せるはずがない。ゴールは死守したものの威力を完全には殺しきれず、ボールは遥か高くへ打ち上がる。
「いくぜ守!!」
「ああ!ぶっ跳べ柊弥!!」
俺と守はそれに反応していち早く駆け出していた。全くの同タイミングで跳躍し、守はそのまま地面に背を向ける形で両脚を俺に向ける。その両脚を足場にして俺は更に跳躍、そのセカンドボールの高さまで一瞬で辿り着く。
「豪炎寺君!!」
「吹雪?……ああ、いくぞ!」
「そういうことか……よし、受け取れェ!!」
俺はもう一度修也にパスを出そうとしたが、吹雪が修也に何やら声を掛けていた。その意図を一瞬で汲み取った俺は、距離の空いている2人の丁度真ん中辺りにパスを送る。それを合図にしたかのように2人は同時に走り出す。
『ォォォオオオオオオッッ!!』
修也と吹雪は加速するにつれそれぞれ炎と氷をその身に纏う。バウンドしたボールの位置で2人は交差、極めてシンプルなツインシュートを叩き込む。炎と氷という相反する2つのエネルギーは互いに相乗効果を産み、凄まじい勢いでゴールへと襲い掛かる。
「何だこのシュート──ぎゃッ!?」
ここに来ての新必殺技。それに動揺したネロは必殺技の展開が遅れてしまった。そうなってしまえば当然待っているのはヤツにとって悲惨な結末。その小さな身体ごとゴールにぶち込まれ、シュートの勢いが消えるまでゴールネットに押し付けられることになる。
「〜〜ッ、最高だぜ豪炎寺!!吹雪!!」
「ふっ、期待に応えたまでだ」
「その通り。キャプテンと加賀美くんこそ、最高のパスだったよ」
「それこそ期待に応えただけだっての。ナイスシュート」
これで4-4……また同点だ。試合は残り5分に差し掛かるところ。間違いない、断言出来る。次の1点を奪い取ったチームがこの試合の勝者に──
「──ッ!」
「柊弥!?」
「悪い、少しグラついた……」
「怪我……ではないね」
「ああ。単純に限界が近いのかもな」
「そうだな。そしてそれはこの場にいる全員同じだろうな」
修也の言う通り、もう皆限界が近い。リミッター解除で負担が爆増してるジェネシスは勿論、そのジェネシス達の動きを制限するために鬼道の指示で動いてくれていた皆も肩で息をしている。そんな冷静な分析をしている修也、一緒にあのシュートを撃った吹雪、俺と一緒に攻めの起点になってくれた守は当然消耗が激しい。前半から動き回ってる俺も……言わずもがなだな。
だからこそ、だ。ここで踏ん張れた方が勝つ。分かりやすくて良いじゃねえか。
「お前ら」
「ん?」
「絶対勝つぞ」
「……あぁ、当然」
「勿論さ。この試合に勝つのは僕達だよ」
「おう!!最後の勝負だ……気合い入れていこうぜ!!」
俺達は互いに拳をぶつけ合ってポジションに戻る。次のラストプレー、キックオフはジェネシス側だ。同点のこの状況でアイツらは何がなんでも速攻で1点を奪い取りたいはず。それなら当然、リミッター解除を活かしたスピードにものを言わせたプレーを仕掛けてくるだろうな。それなら俺は少し後ろ気味に構えておくか。
「……最強なのは、ジェネシスの!!」
「父さんのサッカーなんだ!!」
「くッ」
「しまったッ!?」
ホイッスルが鳴ってすぐ、ヒロトとウルビダは目にも止まらぬ加速で攻め上がる。そのスピードは、修也と吹雪ですら一切反応ができないほど。
「けどそれは読めてんだよ……ッ!!」
「そこを退けッ!!加賀美君ッ!!」
離れたところで2人の初速から目を慣らしておいた俺がノータイムで雷霆万鈞を発動させてすぐさま迎え撃つ。俺とヒロトが同時にボールに蹴り込み、凄まじい衝撃波が周囲を叩く。それと同時にボール越しに伝わってくるヒロトの人並外れたパワー。きっとこれはリミッター解除によるものだけじゃない。何がなんでも勝つっていうコイツの執念が乗ってる。一瞬でも気を抜いたら身体ごと持っていかれそうだ。
……いや、それがどうしたってんだよッ!!
「負けらんねえのはお前らだけじゃねえ……俺達だって一緒なんだよォォォ!!」
「なッ、またこの力かッ……!!」
直後、一瞬視界が真っ白になった。そして間もなくして視界が色を取り戻し、先程よりも広い視野が、多くの音が俺の脳に刻み込まれる。それだけじゃねえ。限界スレスレの身体の中から凄まじい力が湧いてきやがる。
今なら分かる。これがゾーンだ。極限状態で入り込める全能状態。言い換えれば火事場の馬鹿力ってヤツだな。
「勝つのは俺達、雷門だァァァァ!!」
「ぐッ、がァァァァッ!!」
けどそんな力とは裏腹に、言い表し難い何かが俺の背筋に走る。一度競り負けたらもう二度と立ち上がれないような、何の確証もないそんな直感だ。このヒロトとの奪い合いに負けたらもう終わりだろうな。多分もう走ることすら出来ねえと思う。
いや、それでいい。ここで負けたらもうダメたっていうその危機感が俺の後退のネジを取っ払う。ここで全部出し切れって気持ちになれる。
「う、ァァァァアアアアアッ!!」
(……!力が緩んだ!!)
「もらったァァァァァッッッ!!」
その一瞬の隙を俺は逃がさねえ。全部の力を右足に集中させ、ヒロトを押し退ける。
「させるかァァァァ!!」
「チィッ!!負けるかァッ!!」
ヒロトを突破したその瞬間。今度は先にゴール前まで上がっていたはずのウルビダが俺の前に立ち塞がる。俺の動き出しを潰すかのようにボールに蹴り込むウルビダ。一瞬体勢を崩したが、すぐさま立て直す。
確かにウルビダも強敵だ。とはいえ単純なパワーは俺の方が上、このまま拮抗に持ち込むより早く俺が一気にぶち抜くッ!!
「──ッ!今だ、やれッ!!」
「何をッ……がッ!?」
「悪く思うなよ……!」
「テメェ……ウィーズッ……!!」
俺とウルビダがぶつかり合う中、突如右後方から衝撃が襲う。まるでダンプカーに轢かれたかのようなその重さに俺は為す術なく弾き飛ばされた。その正体はもう1人のFW、ウィーズ。この瀬戸際でファール覚悟のパワープレイを仕掛けてきやがっ……
「……ッ」
「柊弥ッ!?」
「いつまで寝ているグラン!!仕掛けるぞ!!」
「……ああ!!」
「待……てェ……!!」
まずい、急に身体が重い。意識が遠のく。さっき感じてた嫌な予感は合ってたってことかよ……
「……ッ、止めるぞ!!」
「遅い!!」
「は、速すぎるッス!!」
皆がまだ戦ってるのに、俺はもう立つことすらままならない。ここで終わりなのか?俺は、こんなところで終わっちまうのか──
ーーー
(柊弥はもう限界だ……俺達が動くしかない!!)
「吹雪!!」
「うん、分かってる!!」
柊弥が膝を着いて動かなくなって間もなく、攻め上がるウルビダ達を追い掛けて全員が走る。しかし一切躊躇いのない全速力に追いつけるものは誰もいない。あらかじめ後ろで備えていた鬼道を中心としたディフェンスラインですら反応出来ない超速攻。雷門ゴール前まで彼らが辿り着くのは時間の問題だった。
(来る……あの必殺シュートが!!)
立向居は冷や汗と共に身構える。二度進化したムゲン・ザ・ハンドですらジェネシス最強の必殺技、スペースペンギンの前では一瞬で打ち砕かれたのだから無理もない。
(けど、俺が守らなきゃ誰が守るんだ!?加賀美さんを見ろ、動けなくなるまで戦ったんだ!!いつもあの人はそうだ、誰よりも無理をして、誰よりも傷付いている!!)
立向居の視線の先には膝を着いたまま動かない柊弥がいた。そんな柊弥を見た立向居の脳裏に、これまで柊弥から掛けられた言葉が去来した。
『だからお前は自分を信じろ。自分を否定することは可能性を縛ることと同じだ⋯少なくとも、俺はお前を信じてる』
『バカ言うな立向居。一人で何とかする必要なんてねえだろ……俺達は仲間なんだ』
(そんな人に俺は信じられてるんだ!!その期待に応えてみせるッ!!)
そんな立向居の正面では、容赦なくジェネシスの3人が必殺技の体勢に入っていた。
「これで終わりだ!!勝つのは我々、ジェネシスだァァァァ!!」
ウルビダがペンギンを呼び出し、それと同時にヒロト、ウィーズが跳躍。その最高点にて全てが交わる。
『スペースペンギンッ!!』
そしてとうとうスペースペンギンが放たれる。その内に秘める超エネルギーがフィールド全体の空気を揺らす。それを直に感じるのは当然ゴールキーパーである立向居。
「このシュートだけは、何が何でも止めてみせるッ!!
黄金の輝きを放つ八本の腕が迫り来るシュートへと立ち向かう。その全てが真正面からシュートに喰らいついて離さない。しかし、その上から殺意すら感じさせるペンギン達が襲い掛かる。
やがて、その手にヒビが入り始める。
「負けるか……もう、1点もやるもんかァァァァッ!」
その時、立向居が更に殻を破る。
「
三度、ムゲン・ザ・ハンド……いや、立向居は進化する。新たに現れた4本の腕。その全てが上からペンギン達を抑え込む。黄金の輝きに包み込まれたペンギン達は、まるで浄化されたかのようにその姿を消す。
「なッ、そんな……馬鹿な!?」
「何故……何故決まらない!!」
シュートを放った張本人であるウルビダ達だけでなく、ジェネシスの誰もが……モニタールームから高みの見物をしていた吉良ですら驚愕した。最強の戦士達でジェネシスがその能力の限界すら取り払ってもなお破れない、雷門の絶対的守護神。
「綱海さん!!」
そしてそのボールは立向居から綱海へ。綱海から壁山へ。その壁山から更に他のメンバーへと繋がれる。まるで想いのバトンを繋ぐかのように。
「キャプテン!」
「おう!」
そして最後に受け取ったのは円堂。その視線の先に立っていたのは……一度は沈んだはずのあの男。
「行こうぜ……柊弥!!」
円堂がパスを出す。すると、まるで示し合わせたかのように柊弥は立ち上がる。
(何が極限、何が立ち上がれねえだ)
無限に引き伸ばされているかのように感じられたボールが届くまでの時間、柊弥はまるで風に吹かれているかのような感覚に包まれていた。オーバーヒートした身体が冷まされていく……訳ではなく、むしろその逆だった。その闘志、その肉体は今もなお燃え続けている。
(さあ行くぞ加賀美 柊弥、アイツらが待ってる)
円堂からのパスを受け取った柊弥はすぐさま反転、加速。その姿は雷鳴の如く。
「いくぞォォォ!!」
そのスピードは柊弥の全力と比べればお粗末なものだった。未だリミッター解除したままのジェネシスの面々からすれば、恐れる必要のない程度のもの。
「柊弥!!」
「守!!」
「くそッ、止まらないぞ!!」
「止めろ、止めろォ!!」
その言葉を火蓋にジェネシスの全勢力が柊弥と守に注ぎ込まれる。多勢に無勢という言葉があるように、そのままだったら2人共呑み込まれて終わりだった。しかし、そんな2人の両サイドから新たな影が飛び出してきた。
「柊弥!円堂!」
「僕達もいるよ!」
「お前ら……ああ、行こうぜ!!」
豪炎寺、吹雪だ。新たに増えた2つのパスコース、幾らジェネシス全員が束になろうともその全てを止め切ることは困難だ。その上、一切の意思疎通を交わすことなく繰り広げられるパスワークはもはや反則級。スピードでは大きく上回っているはずのジェネシスは、追いつくことすらままならない。
そしてジェネシスのディフェンスラインを突破した4人。その中から1人がボールと共に前へ飛び出した。
「決めるッ!!」
そう、柊弥だ。ゴールと柊弥の間にもはや邪魔する者はいない。仲間達の想いを背に、雷鳴を鳴らしながら飛び上がる。
「らァァァァァァッ!!」
託された想いの数だけ柊弥はボールへ蹴り込む。その脚が、全身が裂けそうになってもボールへエネルギーを注ぎ込む。やがて、フィールドの頂点で一際強い雷光が煌めく。
(来るッ!!)
その直下で備えるネロは最後の力を振り絞る。ゴールから動かないゴールキーパーと言えど、何度も撃ち込まれれば当然消耗は激しい。しかもリミッター解除による代償も当然付きまとう。
しかしそれでもネロは退かない。それがエイリア学園最強のチーム、ジェネシスのキーパーとしての矜恃。
「──ッ、受け取れェェ!!」
「なにッ!?」
この試合でネロは雷霆一閃に苦渋を舐めさせられている。だからこそ、次に柊弥はエネルギーを溜め終えたボールを真下に叩き落とし、それをゴールへ放つという動きに備え、残された力を全て集中させていた。
しかし、柊弥が起こしたアクションはその予想を裏切るものだった。柊弥は確かにボールを下に叩き落とした。ただし、本来より
「ナイスパス、柊弥……!!」
(決めろよ……お前ら!)
円堂、豪炎寺、吹雪の元だった。自分が意図的に巻き起こした爆発に巻き込まれ落ちていく中、柊弥の脳裏ではかつての円堂とのやり取りがフラッシュバックしていた。
『ジ・アース?』
『ああ!正義の鉄拳、ムゲン・ザ・ハンドと同じようにじいちゃんのノートに載ってた"チーム全員で撃つシュート"なんだ!』
『チーム全員?……ああ、全員でエネルギーを注ぎ込む的な、そんな感じか』
『そういうことだ!皆の想いが一つになった時に撃てる、最強のシュートだ!』
(皆の想いが一つに……ここだろ、今この瞬間しかねえだろ!!)
柊弥の視線の先では、落ちてきたボールを中心として円堂、豪炎寺、吹雪の三名が向かい合うように立っていた。するとその三人の他にもフィールドに立つ全員の身体が煌き、その光がボールへと注ぎ込まれる。その全てを受け取ったボールは光と共に遥か高くまで登っていく。そして、それを追いかけるように三人も飛ぶ。
『ジ・アース!!』
三人が同時にその光へ蹴り込むと、光は11本の矢へと分裂しゴールへと降り注ぐ。そしてその道中で矢は束ねられ、1本の巨大な矢へ。
「ぐァァァァァァッ!?」
ネロだけでなく、ジェネシス全員が対抗してシュートへ立ち向かった。だが、雷門イレブンの根源である仲間の力を象徴するそのシュートの前に抵抗すら許されず弾き飛ばされる。
「グラン!!」
「止める!!」
ジェネシス最後の砦となったのはヒロトとウルビダ。2人は同時に迫り来る光の矢にツインシュートを叩き込む。しかしその直後、2人の顔は動揺に歪む。
(馬鹿な、何故まだ動けるッ!?)
「君は……君達は一体何なんだ!!加賀美君ッ!!」
「仲間と一緒にどんな困難にも立ち向かう……ただの、人間だァァァァァァ!!」
墜落したはずの柊弥がそこにいた。負ける訳にはいかない、そんな想いに突き動かされた2人が止めようとするシュートに反対側から更に蹴り込む柊弥。そのボールからは、己の仲間全員の想いが伝わってきた。
想いの力が、柊弥に最後の力を与えた。
「勝つのは、俺達だァァァァァァ!!」
雷鳴が吠えた瞬間、均衡は崩れた。光の矢は全てを押し退け、ゴールを貫いた。
「そうか、これが──」
光に呑まれながら、自分ではなく押し込んだボールに強い眼光を向ける柊弥を横目にヒロトは思い知らされる。
これが、仲間の力なんだと。
「うオオオオオオオオオオオオァァァァァァァァ!!!」
その試合の結果を告げたのは、ホイッスルでも実況でもない。極限を越えてもなお最後まで戦い抜いた一人の少年の、飾ることのない、本心からの雄叫びである。
というわけで、ジェネシス戦完結です。いやー長かった、これでエイリア学園との戦いも終わりですね!!めでたしめでたし!!
ちなみに明日も更新します。エイリア学園編のアフターストーリーですかね(すっとぼけ)
改めまして皆様、今年も本作をよろしくお願い致します!
1/1 16時追記
地震に襲われました。棚は倒れるわ津波警報は出るわでヤバいので更新休みます。申し訳ありません。