疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです   作:夏之 夾竹桃

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第14話 本音

 ある4月の金曜日の夜。その日も私は、いつものように散歩にでかけていた。やはり誰も居ない空間は落ち着くことができる。誰にも気を使わなくてもいい。誰にも嫌われなくていい。だから私は、この時間が一番好きだ………と、そのはずであったのだが、明らかに嫌な顔をされた。彼女の名を私は知っている。

 

「朱雀さん、こんな時間にどうしたの?」

 

鳥塚 小鳥。ただのクラスメートだ。持っているのはレジ袋。恐らくコンビニの帰りだろう。

 

「散歩。」

 

「あ、あのさ………なんか怒ってる?」

 

「別に、そんな事無い。」

 

何で妙に勘がいいのだろう。私は、別に話をしたいわけでもなかったのに。

 

「………前に話したときから………やっぱり怒ってるよね?なんかあったら言ってよ?」

 

「なんかあったらって………うるせぇよ………ろくに私と関わりたくもないんだろう!?私は全部分かってるんだよ!そんな奴に心配されたって嬉しかねぇんだよ!善人装ってんじゃねぇ私からしたら片腹痛いんだよ!!ふざけてんじゃねぇよ!………本当に………辛いんだよ………。」

 

勢いに乗せて、溜め込んでいたもの全部吐き出してしまった。何も考えることなんてできなかった。全部どうでも良かった。

 

「それが、本音だったんだ。1人で抱えてきたの?」

 

それでも彼女は、私に歩み寄った。

 

「………吐き出せれるような場所はなかった。話を聞いてくれるような人も、もう居なかった………。」

 

「………もしかしてさ、家出してきたの?」

 

「………プチ家出みたいなものなのかな。」

 

本当のことが、さらけ出されていく。今まで隠してたのに。迷惑かけたくなかったから。ずっと隠してた。顔色伺って、周りに合わせてた。嫌われても、それでも尚………ずっと、この生活だった。

 

「………よかったら、家来る?」

 

「いいよ。遅くなりすぎると、お母さんがうるさいし。それに鳥塚さんのところの親だって突然私が来たら困るでしょう?」

 

「家には、今、誰も居ないから。でもそっちの事情か。それだとしょうがないね。でも、本当に辛いんだったら頼ってよ。罵詈雑言でもなんでも垂れ流しに来い?」

 

同級生なのになんて頼りがいのある言葉だろうか。

 

「わ、分かった。でもさ、何で急にそんな嫌な顔しなくなるの?」

 

「え?私が苦手だったのは、朱雀さんが誰の意見にも乗っかってて、まるで自分を押し殺してるみただったから。でもまさかこんな形で自分の思い吐き出されるなんて思ってなかったけど。」

 

「そっか………じゃあ、頼ってもいい?」

 

内心私は少し不安だった。違うと分かっていても、その定義は私の中であやふやなものとなる。だからもう一度聞いた。すると彼女は笑って答えた。

 

「だから、そう言ってんじゃん。いいよって。あ、ごめん引き止めちゃってた?」

 

「あ、確かにそろそろ行かなきゃ。ありがとう。」

 

「いいのいいの、じゃあまた学校でね。」

 

「………うん。」

 

そうして私は、自宅への道のりを歩みだそうとした。しかし、なかなか動かない。体が拒んでる。あそこに帰ることを。

 

「どうしたの?」

 

まだ近くに居た鳥塚さんが私に声をかける。

 

「いや、その………。」

 

「怖い?」

 

まるで心を見透かされているみたいだった。でも………今の私にとっては、嬉しかった。何も、言葉が出ない。なんと言っていいかわからない。でも、今の私は確かに怯えていた。静かに首を縦に振った。

 

「やっぱり。家までついていこうか?」

 

その言葉に対しては、首を横に振る。

 

「じゃあ………やっぱり家来るの?」

 

私は、また首を縦に振った。その言葉を待っていた。私は、また安心感に包まれた。

 

 彼女の家は、一言で言い表すと生活感のない家だった。本の一部だけ、使っていたであろうスペースは、かろうじて人が住んでいるのだろうと予想できる程度。なんと言うか………鳥塚さん1人しか居ないんじゃないかっていうくらい………何もなかった。

 

「鳥塚さんの親って………いつ帰ってきてるの?」

 

「さぁ、長いこと帰ってきてないからね。まぁお父さんは結構最近帰ってきてたね。」

 

「あぁ………ゴメン。」

 

「いいよ。朱雀さんの秘密聞いちゃったし。このくらい打ち明けて。誰にも言わないでよ?」

 

「う、うん。」

 

「あ、夕ご飯まだだったりする?」

 

「うん。」

 

「じゃあ今から作るね。」

 

そうして彼女は台所へと向かっていった。いつも、この家に1人なのだろうか?寂しくはないのだろうか?私だったら………孤独すぎて死んでいたかもしれない。でも、静かなのはいいな。誰の感情も入ってこないし。その面は、今よりもいいな。

 

 そうして、しばらくして台所から声が聞こえてくる。

 

「できたよ?」

 

「ありがとう。」

 

2人で机を囲み、夕ご飯。

 

「私、こういうの久しぶりだな。」

 

鳥塚さんがそう言う。

 

「私も………こうやって人と話すの久しぶり。」

 

本音で装弾できる人ができたのはいつ以来だろうか?覚えてない。

 

「そういえばさ、家に連絡入れておいたほうがいいんじゃない?」

 

「あ、そうだった。」

 

そうしてスマホを取り出した時だった。

 

「何ならさ、泊まっていく?」

 

悪戯なそんな声が聞こえてきた。

 

「………いいの?」

 

何を言ってるんだろうか、私は。きっと迷惑だろうに。でも、抑えられなかった。

 

「………いいよ。」

 

彼女はそういった。嬉しかった。あそこに戻らなくてもいいんだって、はしゃぎたいくらいだった。

 

「………本当にありがとう。」

 

「いいよ。でも連絡はちゃんと入れてね?

 

「うん。」

 

その日は、本当に楽しかった。連絡を入れたらものすごく怒られたけどそんな事どうでも良かった。ただ2人の時間が本当に楽しかった。お風呂上がり。パジャマは鳥塚さんに貸してもらった。少し大きいな。やっぱり、鳥塚さん平均よりも身長高いから当たり前といえば当たり前かもしれない。

 

「うーん………ちょっとおっきかった?」

 

「大丈夫。」

 

「そう?ならいいんだけど。それで、ベッド使う?」

 

「い、いや流石にベッドまでは………。」

 

「じゃあ、一緒に寝る?」

 

この人私のことをからかってる。どうしたらいいかわかんない私を振り回してる。

 

「もう、からかわないでよ。」

 

「あぁ、流石にバレたか。」

 

「バレるよ………て、いうか、そんな性格だったっけ?」

 

「こんな性格になったの。小鳥遊くんのおかげで。ほら、喧嘩したって言ったじゃん?あれさ、私が本当に苦しかった時の話なんだ。死のうとした時にさ、小鳥遊くんは全力で止めてくれた。私も頑固で、もう耐えられなかったから喧嘩になった。その時に『死ぬのが嫌ならあがいて行くしか無い』みたいなこと言われてさ。そのとおりだなって。じゃあ足掻くのであればとことんやってやろうと思って、仲直りして今の性格に至る。」

 

そんなことがあったなんて………わからなかった。普段の彼女からはそんな負の感情なんて読み取れなかった。そもそも今まで話す機会がなかったのもあるのだが、誰が見てもそんな重たい問題を抱えているようには見えなかっただろう。

 

「なんか、気付いてあげられなくてゴメン………。」

 

「まぁ、気が付かなくて当然だと思うよ?学校は楽しかった。私にとって苦だったのはこの空間。私の家だったから、学校じゃあ死のうだなんて思わなかったよ。」

 

「そうだったんだ………。」

 

「まぁ、今こうして生きてるからいいかなって。結果オーライって言うじゃん。だから、小鳥遊くんには本当に感謝してる。」

 

「小鳥遊くん………か。」

 

あの日の夜のことが思い浮かぶ。鳥塚さんはこのことを知っているのだろうか?

 

「あのさ、小鳥遊くんって好きな人とかいるのかな?」

 

「うーん………居ないんじゃないかな?」

 

そりゃあ、知らないよね。

 

「それで、ベッドどうする?」

 

「な、忘れたままで良かったのに!」

 

結局、私が床で寝ることで決着がついた。

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