疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです 作:夏之 夾竹桃
不意に、聞き覚えのある声が聞こえた。
「何してるの?」
その声は染羅のものだった。
「あぁ、染羅起きたんだね。」
「起きたんだねって………彩羅、何してたの?」
「ちょっと、ね?」
含みをもたせるような言い回しで彩羅が答える。ただ、耳元で囁かれていただけなのにな。いや、これは………大丈夫なのか?
「………あぁそう。じゃあいいよ。」
そう言って、染羅もベッドから降りる。なにも気にしていないというわけではなさそうだ。強がっているようにも感じる。
「そういえば彩羅、話したの?今日泊まっていくってこと。」
「あぁそういえば言ってなかった。」
「そのことに関しては、母さんに聞いたよ。事前に言ってくれればよかったのに。」
もう少しマシな格好はできただろう。準備だってする余地があった。だのに、こうもいきなり来られては正直困る。起きたら2人ともがこっち見てるんだから、そりゃあちょっと驚くからな。
「いいじゃん。昔だってこんな事してたし。」
「それに、雉矢、見られて困るものなんて無いでしょう?」
「まぁ実際そうだけどさ。起きたらなんか目の前にいるって結構怖いから。びっくりするから。」
「まぁそこは………ゴメンね?」
「はぁ………まぁいいけど、次からは言ってよね?」
「「はーい。」」
2人の揃った返事。まぁこれで今日みたいなことはないだろう。
「それはそれとして、何でただの休日に来たのさ。夏休みとかのほうがまだ自由度高かったろう?」
僕がそう言うとしばらく3人の間に沈黙が流れた。そうして数秒経ってから2人同時に「あぁ、その手があったか」みたいな顔をしいていた。
「でも、夏まで待つなんて流石に長いよ。まだ4月だし。だからいいじゃん。」
「あぁ………ゴールデンウィークって知ってる?」
「あれも5月じゃん。待てなかったの!」
彩羅のソレはだんだん言い訳にも聞こえてくるような必死さだった。多分、マジで泊まりに行くことしか考えてなくて大型連休や夏休みのことが頭になかったのだろう。
「まぁ、いいよ。それでさ、何するのさ?」
「何って何?」
彩羅がそう聞き返してくる。
「いや、これから。何もしないわけ無いだろう?」
「まぁそうだけどさ、実際特に何も考えてないよ。昔みたいにできるかなって思っててさ。」
「昔みたいにって………?」
そうして僕は思い返す。昔………10年前………そうだな、鬼ごっことかしてたよな?懐かしいが多分そんなことはしないだろうな。じゃあ尚の事何をするのだろうか?思い出に浸るとかそんな感じなのだろうか。
「思い出に浸ったっていいんじゃないかなって思ってさ。」
「そんなことだろうと思った。とはいえさ、実際僕は2人が僕と別れた後のことが気になってるんだよね。」
「あぁ、前もちょこっとだけ話したけど詳しくは言ってなかったね。あの後、染羅は大泣き。それが何日も続いてさ。私も釣られて大泣き。」
ここまでなら以前聞いた内容だ。
「それで………ちょっとした事件が起こってさ。染羅がさ家出したんだ。引っ越してちょっとしてからの話だからちょうど冬。雪も降ってた。学校から帰ってお母さんと染羅が揉めててさ。染羅はこっちに帰りたいって。それで………染羅は家を飛び出してみんなで探した。見つけたのは私でさ、近くにあった公園。そこに隠れてた。私が『一緒に帰ろう』って言うと『何で雉矢じゃないの?』って怒ってたっけ。それでどうしようもなくなって、私泣き出しちゃってさ。それ見た染羅も泣き出して、その声に気がついたお母さんが来てくれてさ。」
「………もう彩羅、やめて。」
かなり掘り返されたくない過去だったらしい。染羅の顔は真っ赤になっていた。
「まぁ、そんなことがあったんだよ。」
「か、かなり大変だったんだな。」
「大変だったよ。それでしばらくして、とはいえ何年か経ってようやくそこの暮らしにも慣れてさ、中学生になった頃の話ね。私達めちゃくちゃ告白されたんだよ?」
自慢げにそういう彩羅。
「でも全部断った。何でかはわかるよね?」
そうして、また彩羅は僕に近づく。それを見た染羅も彩羅に続いた。そうしてまるで打ち合わせでもしたんじゃないかと思うくらいに声を揃えて僕の耳元でそれは囁かれた。
「「雉矢がいるからだよ。」」
ゾクゾクとドキドキと僕は混乱していた。何をすればいいのかわからない。何が正解なのか見当もつかない。僕はその場で動けなかった。声も出ない。夢かとさえ思ってしまったほどに、その時間は揺らいでいた。なにも考えることができない。まるで、考えることを体が拒んでいるようであった。
「雉矢、顔赤いよ?」
「耳まで、真っ赤。」
彩羅、染羅にいじられてようやく声を発することができた。
「し、知ってるよ!」
苦し紛れのその声は、どうやら彩羅、染羅の悪戯心に触れてしまったようだ。
「やっぱり………雉矢しか居ないんだよね。」
「いつも………彩羅ばっかりずるい。」
そう言って2人して僕を押し倒した。この状況色々とまずいのだが何が一番まずいってそれは僕の貞操だろう。
「どうしたの雉矢?」
染羅の声が左から。
「もしかして、エッチなことでも考えてるの?」
彩羅の声が右から聞こえる。誘惑じみた声に、わざとらしさを感じているがそんなことが問題ではない。わざとだろうがそんな事関係なく僕は今、ドキドキしているのだから。このまま、僕は流れに任せてしまうのか?それは………一番の大問題じゃないのか?
「駄目だよそんな事。」
左から声がする。
「私は雉矢なら………いいけどな。」
右から声がする。また僕の脳はショート寸前まで追い込まれている。何も考えられなくなって、僕は………自分の答えがわからなくなってきている。そうして思い出す、1つの結論。僕は、どちらのことも好きではないじゃないか?何故ここまで追い込まれなければならないのだろうか?そう、考えるも依然として胸の高鳴りは収まらない。それはつまり………まだ僕は本当の答えを見つけきれていないということではないだろうか?
「ねぇ、雉矢はそういう事したいの?」
左耳に入ってきたその声で僕はまた現実に引き戻される。
「雉矢も男の子だもんね?」
右からの声。
「た、たしかに僕も男だけど………流石にこの状況ってなると………どうしたらいいのかわかんない。」
「………雉矢らしいね。でも、絶対にどっちかとしなきゃいけないってなったら?」
彩羅がそう聞いてきた。今まで考えもしなかったことだ。
「私と染羅、どっち?」
「僕は………。」
そこまで言った時であった。僕の部屋の扉が開いた。
「あぁ………ジュース持ってきたけどお取り込み中でした………?」
母さんだった。最悪だ。弁明の余地など無いだろう。さてと、どうしたものか。まぁ、どうしようもないだろうが一言言っておこう。
「違う。」
その言葉を聞いた母さんは、ゆっくりと、そしてしっかりと扉を閉めた。その部屋に、しばらくの沈黙が流れていた。
「あ、あ………ああああぁぁぁぁあああぁぁぁ!!!!」
「雉矢………なんか、ゴメンね?」
「ちょっと、やりすぎた。」
「う、うん。大丈夫、大丈夫。なんとかなる。なんとかする。多分大丈夫。」
恐れていたことのその2。親フラ。何故こうもはいってきてほしくもないタイミングではいってくるのだろう。いや、今回に限っては僕は救われたのか?………いや、よく考えてみれば弁明の面倒臭さを加味すると圧倒的に僕の負けであろう。
「それで、結局どっちがいいの?まだ答え聞かされてないんだけど。」
しかも全く回避できていないじゃないか。デメリットだけ背負ってしまった結果って………それはないでしょう………。
「………返事に関しては………待って。」
「しょうがないから待ってあげるよ。」
不甲斐ない結果だ。それと同時に、面倒な結果だ。
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