疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです 作:夏之 夾竹桃
あれほど長いように感じられたゴールデンウィークも過ぎ去った。そうして僕らの日常は戻る。そうして、僕は気がついた。烏丸さんがどことなく元気になっているように感じられた。まぁ、きっと進んだのだろう。自分の思うままに。そこに何が関わっていたのかは僕は突っ込まないようにしよう。さて、いよいよ僕は取り残されたような感覚を感じていた。僕はただ一人、このまま時が過ぎていくのが怖い。だって、成長してないのは僕だけじゃないか。さて、どうしようか?
「なに悩んでるの?」
1人、お昼休みに物思いにふけっていた時だ。聞き覚えのある声。いつも聞いているその声。そこにいたのはやっぱり彩羅だった。そうして彼女は続ける。
「まぁ、だいたい予想はついてるけどさ。」
どうも何もかも見透かされているようだ。まぁ、彩羅と染羅にならいいけど。それでも、心配はかけたくないものだ。
「予想がついてるなら、別に構わなくたっていいんじゃないのか?」
「ここに来てようやく突き放すの?遅いよ。何を悩んでるかくらい私は知ってる。成長の速度なんて人それぞれだしさ。まぁ、これを成長っていうのかどうかはわからないけど。」
「ハハ………お見通しってわけだ。でもまぁ、離れないでくれよ?僕はこの日常が好きなんだ。まだ、この状況に甘えていたいんだ………。」
「なるほど、それが本音なんだね。まぁ、わかるよ。私もこの生活が好きだもん。雉矢がいて、染羅がいて、私がいる。この日常は確かに楽しい。けど………それでも私は、雉矢が好きなんだよ。」
「どうにも、僕たちの意見は変わりそうにないな。」
「多分、変わんなくたって私達は勝手にこの状況を楽しんでおくからさ。」
「ただ………予想でしか無いけど、この関係はいつかバランスが崩れると思ってる。この距離感で迫られ続けたら………いつか僕はどっちかに堕ちてしまうんじゃないかって、そう思い始めてるんだ。」
「そっか………じゃあ先に言っておくよ。」
と彼女は一拍おいてから言葉を綴る。きっと、勝利の宣言をするんじゃないかと僕はそう思っていた。
「私は、どっちに堕ちたって構わないよ。それが、雉矢が選んだことならね。」
結構、意外な答えに僕は驚いていた。そうして驚いていると、彩羅は
続ける。
「驚いてるの?まぁ、私からはそんなこと言いそうにもないからね。そんなこと自分でも解ってるけどさ。でも、染羅と決めたんだよ。どういう結末であれ、私達は納得することって約束した。って前も言わなかったっけ?」
「あ、あぁ………以外だった。2人とも、我欲がなかなかに強かったからな。だから、忘れてたかも。」
「そんなに思い切り言わなくたって………。まぁ、いいけどさ。ゆっくり、進んでいけばいいよ。雉矢。」
「あぁ、ありがとうな。」
僕はそうお礼をした。また、慰められる。それでもいいんじゃないだろうか………と、前にもこんな感じの決意をした気がする。いや、したな。僕はやっぱり止まっているらしいな。まぁ………やっぱりしばらくどうにもなりそうには無い。それならそれで良いのだ。僕は僕のままで良いのだ………。
「さてと、それじゃあどうする?」
「どうするって何が?」
僕が彩羅にそう聞く。
「いや、だってお昼休みまだ時間残ってるじゃん?だから何して時間潰す?」
「あぁ………いや、普通に話すくらいしかないんじゃないか?」
「えぇ………つまんないな………前は何したか覚えてる?」
その声とともに、何週間か前の記憶が蘇る。あの暖かさとともに、あの悪戯な顔とともに。あの包容を思い出す。よくもまあ学校であんなことが出来たものだ。しかも、別に僕達は付き合っているというわけではない。本当、どうかしていたようだ。しかしだが………いまここでは流石に無茶ではないか?いや、断言しよう。無茶である。
「流石に………ここでやるのは………どうなんだ?」
「いいじゃん誰もいないしさ。別に危ないことするわけじゃない。ただ抱き合うだけじゃん?」
「いや………教室だと流石に………。」
「どうしたの?何時もしてるのに。」
「いや………やっぱり教室は………恥ずかしいよ………。」
恥ずかしい………その感覚が僕の心に有った。顔が少し熱い………。体が火照っている。そのことがよくわかっていた。何時も、と言うわけではないが結構頻繁に僕はこの2人と抱き合っている。いや………相当僕もクズじゃないか?なかなか、酷いことをしているのは解ってる。やっぱり少し、焦っている。
「どうしたの?」
「いや………なんでもない。でもやっぱり恥ずかしいよ。誰かに見られたら………結構まずい。」
「でもそのリスクがちょっと………ゾクゾクしない?」
「え………そんな趣味あるの?」
「いやいや!違う!違うけどさ、なんか今日は我慢できないんだよ。」
「そんなに甘えたかったのか?」
僕がそう聞くと少し間を置き、小さく、頬を赤らめながらも確かにコクっと小さくうなずいたのがわかった。こういう素直なところが………ちょっと可愛いと思ってしまっている僕がいるのは確かだ。しかしそれでも、この場じゃ危ない。誰かに見られたら非常に面倒なのだ。だから僕はこう言葉を紡ぐ
「うーん………帰るときな?」
「………わかった………しょうがないけどそれで手を打つ。でも絶対の約束だからね?忘れないでよ?」
「あぁ、わかったよ。約束する。」
僕がそう言うと、彩羅は「やった!」と心底嬉しそうな声ではしゃいでいた。
「でもじゃあ、残りの時間暇になったな………。」
「別にいいんじゃないか?暇でも。案外いいもんだよ。暇っていうのは。考え事に打ち込めるしさ。」
「私はそんなに考え事をするようなタイプじゃないの!まぁ………普通に話すかな………。」
「やっぱりそうなるか。まぁ、話してるのは楽しいからいいけどね。」
楽しいというより、落ち着くといったほうが正しいな。そうして、しばらく雑談は続く。他愛のないものであり、僕たちにとっては日常のようなものだがそれでも幸せなのだ。この時間がずっと続いてくれればいいのに。この関係性がもっと続いてくれればいいのに。いや、甘えなのは僕が1番わかっているんだ。だからまだ、許してほしい。きっとケジメをつけるから、夢を見させてほしい。
「あぁ、もうそろそろ時間になるかな…?」
そう切り出したのは彩羅の方であった。僕はその言葉に反応する。
「あぁ、もうこんな時間なのか。そろそろ席に戻ろうか。みんなも戻ってくる頃だろうしな。そういえば………染羅は?」
「あぁ………トイレ行ってくるって言ったっきり見てない………いや、見つけた。」
「え?どこ?」
僕がそう聞くと彩羅は出入り口を指差す。そこにはいかにも嫉妬の目で僕等を見ていた染羅がいた。あちゃ………機嫌を戻すには結構時間の要りそうなことをしてしまったかもしれない。
「あぁ………染羅………こっち来る?」
気が付いたら僕はそんな言葉を口走っていた。そんな言葉で染羅は許してくれるだろうか、なんて考えていたが素直にこちらへ来てくれた。そうして、彩羅に向かって一言。
「せめて、私の見てるところにしてよ………。」
すると、彩羅は反論する。
「でも私知ってるよ?夜、染羅が急にいなくなる時があるって。その時何してるかも。だから、こういう時くらいいいんじゃないかな?」
「それは………わかった………許す。」
案外、すんなりと許してくれた。どうにも僕のあの行動もバレているらしい。しかし、あのとき人気はなかったからついてきてるとも考えにくいな。さすが姉妹とでも言うべきなのだろうか。どちらにせよ、僕はまだこの生活を続けることになるだろうな。
「でもその代わり………雉矢、今度2人で遊びに行こ………?」
「「………え?」」
僕と彩羅の声はほぼ同時だった。