疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです   作:夏之 夾竹桃

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第25話 これはデートらしい

 週末。何時もわがままなんて言わなかった染羅がついに耐えきれなくなった結果がこれだよ。いや別にイヤというわけではない。

 

 ちなみにあの日の帰り道、約束通り僕は彩羅を贔屓して帰ったのだが………非常に視線が痛かった。主に染羅からのものだが。

 

 さて、それはそれとして僕は今、結構まずい状況に置かれている。何がまずいって………完全に遅刻だ。集合は9時だったのに対し現在の時刻、8時55分。この時点で僕は諦めていた。しかしまぁ、このまま走り続けなければなるまい。

 

 あとどのくらい掛かるだろうか?丁度今、道のり的には半分くらい。逆算して辿っても10分は固い。更に疲れが溜まっていると来た。なかなかに厳しい。しかし、約束を破ることだけは避けねばならない。だから僕は今、走っている訳だ。

 

 因みに、遅刻の原因は恥ずかしながら寝坊である。いや、昨日眠れなかったのだ。あの…あれだ、遠足の前日の子供がなかなか寝付いてくれないのと同じだ。まぁ素直になるとすれば、楽しみだった。色々考えてて結局このざまだ。なかなかに僕も幼いようだ。さて、そんなこんなではあるもののまだまだ遠いか………走れ!!

 

 そうして、僕はその場所に辿り着く。そこには予想通りの表情をした、予定通りの人物が居た。まぁ、初手最悪だわな。機嫌は悪そうである。当たり前だ。

 

「ごめん!遅れた!」

 

目が合い、咄嗟に僕はそう言った。

 

「………6分遅刻。理由は…?」

 

こういう時、嘘は何も産まない。僕はその問いに正直に答えた。

 

「………寝坊です………。」

 

「正直でよろしい。でも許さない。」

 

「………ごめん、楽しみで眠れなかった………。」

 

そんな事を口走ってしまった。すると、あからさまに喜んでいた。

 

「それなら………ちょっと許す。」

 

なかなか、ちょろいようである。

 

「…ありがと。」

 

「それでも遅刻は遅刻。ちゃんと落とし前つけてもらうからね。」

 

「はい…わかってます。じゃあ………僕はどうしたらいい?」

 

「そうだね………うん、腕組も?」

 

案外簡単なお願いだった。もうちょっとキツめのお願いでも飛んでくるのかと思って身構えていたが、そんな心配いらなかったようである。

 

「あぁ、はい。」

 

そう言って僕は腕を差し出す。その腕にするりと抱きついてくる染羅。こういうところが可愛かったりする。

 

 そうして僕達は歩き出す。見慣れた町並みを眺めながら、まずは目的地へと向かう。

 

「そういえば、まだ服の感想聞いてなかった。この服、どう?」

 

僕的にはよく似合っていると思う。白のワンピに薄いベージュのコート。染羅の落ち着いた雰囲気にぴったりである。

 

 さて、しかしながら気になっていることが1つある。

 

「十分に可愛いと思うよ。ただ………それって染羅が選んだの?」

 

「………黙秘権を行使する。」

 

あぁ、やっぱりそうだろうとは思った。正直、ハッキリ言わせてもらう。染羅がここまでファッションセンスがあるとは思ってない。

 

 恐らくは、彩羅のセンスだろう。昔からそうだったことを僕は今でも覚えている。

 

「しかしまぁ彩羅だわ。よく分かってる。」

 

僕がそんなことを言うと染羅が少しほっぺを膨らませてこう言う。

 

「今は、私だけ見ててよ。」

 

「………それもそうだな。今日は2人っきりって決めたし。」

 

「デートだもん。」

 

その言葉の響きに『そうなのか?』と心の中で疑問に思うも、僕はそのことを聞かない。きっと返ってくる答えは予想通りだろうから。

 

 だから、僕は代わりにこう言う。

 

「そうだな。」

 

そうしてしばらくは2人で歩いた。無言と言うわけではないけれどそこまで言葉は交わさない。このままでいいと言うのは、どちらも理解していたからだ。

 

 そうして、僕達はそこに到着する。

 

「まぁ、やっぱりこの辺だとここ一択だよな。」

 

「確実だし。」

 

そうして僕らが見上げたのはショッピングモール。なかなかにデカい。昔から出かけるといったらここ一択である。

 

「どんなふうに見て回る?」

 

「まずは………どうしようか…?」

 

そんななにも考えてないような答えが返ってくる。まぁ、そうだろうとは思っていた。

 

 と、言うのもである。染羅はそこまで物欲がないのだ。だからこそ、ファッションにも疎く、基本こういうときは彩羅頼みなのである。

 

 もっとも、物欲がないと言ったものの僕に関しては例外のようである。

 

「じゃあまぁ、本屋行く?」

 

「………行く。」

 

そんな染羅ではあるが、本はそこそこ好きなようだ。

 

 そうして、僕はその本棚を見つめる。染羅が目色をいつもと少し変えながら見ているコーナーを見ていると………頭が痛くなりそうだ。

 

「染羅…それ面白いの?」

 

「面白いかどうかは解かんないけどさ、興味をそそられるんだよね。」

 

その手に取られた本を見てみる。量子論………何が彼女をこうさせたのだろう。

 

「なかなかに難しそうだけど?」

 

「まぁそこは、慣れだよ。私は結構昔からこういうの読んでるからね。」

 

僕の記憶の限りではこの系統の本はなかった気がするのだが。

 

 まぁ、僕の知らないことがあったとしても何も不思議なことはないか。そりゃあ、結構時間が経過しているから当然だろう。

 

「………買おう。」

 

しばらく沈黙があった後、染羅はようやく決めたようであった。

 

「なかなかに時間かかったけど………この一冊でいいのか?」

 

「あり過ぎても読み切れないだけだよ。」

 

「その考えは意外だったな。」

 

「別に私もずっと読んでるわけじゃないし、面白そうなところがあったら読んでっていうのを繰り返して気が付いたら読み終わってる。」

 

「な、なるほどな。」

 

「それにお父さんが言ってた。知識は拒むもんじゃないって。」

 

なるほどな。それなら納得ではあるが………一体どういう教えなのだろうか?

 

「それじゃあ、私はこれ買うけど雉矢はなにか見つけた?」

 

「い、いや、僕はいいかな。本とかあっても僕はなかなか読まないタイプだからさ。」

 

「面倒くさがりなの?」

 

「空いた時間には読むだろうけど………それでも手を付けなさそうだなって。」

 

「なるほどね。それなら納得。」

 

そんな会話を経て、僕達は本屋をあとにする。そうしてまた、お互い何をしようかと考えながら歩いていた。そうして、ふと思い出す。

 

 どれほど前だかは忘れたが、ここで彩羅が迷子になったときあったな。あのときはみんな大騒ぎだったな。

 

「………雉矢、彩羅のこと考えてない?」

 

「な、なんでそう思ったのさ。」

 

「なんとなくだけど。でもいまので確信した。彩羅のこと考えてたね?浮気者………今日は私と2人っきりって約束なのに………。」

 

「ごめん………いや、ふとここで彩羅が迷子になったことあったなって。」

 

「あぁ………そんなこともあったね。ああ言う抜けてるとことか変わってないよね。」

 

「なんとなくだけどわかるよ。根本的なことは変わってない。でもそれ、染羅もおんなじだよ?」

 

「それは………そうかもしれない………。」

 

「昔からヤキモチ焼きでさ、僕に異常に固執して………いや、懐かしいな。」

 

「ヤキモチは………焼いてないもん………。」

 

「そうか?結構焼いてると思うけどな?」

 

「それは、雉矢が悪いんじゃん。」

 

「まだ、俺はどっちのものでもねぇよ。だから取り合ってるんだろ?きっと、俺はどっちかに堕ちるときが来るから。」

 

「その時………雉矢はどっちに落ちると思ってるの?」

 

その問いに僕はただ正直に答える。自分のありのままの気持ちである。

 

「そんなの僕にも解かんないよ。だって、たとえ僕が誰と付き合おうとも彩羅と染羅からは離れたくないからな。それだけ、僕の中では大事な存在なんだよ。」

 

少し顔を赤くする染羅。そうしてその言葉を言う。

 

「………せめて、私達のどっちかにしてよね………?」

 

「多分、そうなるよ。」

 

僕は、正直に答えた。

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