疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです 作:夏之 夾竹桃
「ねぇおにぃ。」
「どうした?」
今、僕の家には羽音が来ていた。
「いや、おにぃって彩羅ちゃんと染羅ちゃんのどっちかと付き合う予定あるのかなって。」
「今のところはない。」
「今のところは?」
「あいつらまだ僕のこと好きらしいからな。このまま責められ続けたらきっといつか好きになる………。」
「おにぃそういうとこ弱いんだね。」
「知ってるだろ。そのくらい。」
「まぁ、色々あったもんね。」
「やめてくれ、今まで思い出さないようにして生きてきたんだ。」
「そんなこと言ったって2、3年前でしょ?そんなにすぐ忘れられるの?」
「人間っていうのは都合のいい生き物なんだよ。」
僕にだって黒歴史はある。そういうことだ。
「そんなもんなんだね。」
「そんなもんだよ。」
そうして、僕たちの間には沈黙が流れた。
「ねぇおにぃ。」
「今度はどうした?」
「暇なんだけど。」
「僕に言われたってどうにもできないよ。」
「おにぃならなんとかできると思ったんだけどな。」
「生憎と僕はそこまで器用じゃないんだ。勉強なら教えられるぞ?」
「嫌だよ。おにぃ成績も普通だし。あと私普通に勉強できるし。何も不自由ないからいいの。」
「まぁそうだろうと思ってた。」
羽音は勉強はできる方である。学力にも問題はない。だからこそ、受験生でありながらここまでの余裕が保てているわけだ。
「そういやおにぃさ、プール行くっていってたじゃん?あれって私行っちゃ駄目?」
「アイツらに聞いてみないとわかんね。」
「そもそも何人で行くの?」
「8人。」
「おにぃってそんなに友達いたっけ………?」
「いるさ………5、6人くらい。」
「数合わなくない?」
「友達の友達みたいなもんだよ。そもそも行こうって言い出したのも僕じゃない。」
「そうなんだね。」
「あぁ、僕はそこまで絡むタイプじゃないからな。」
「絡むのが面倒なだけでいざやるってなったら一番楽しむくせに。」
「冷静に僕を分析しないでくれ。」
「本当のことだからね。で、話戻すけどさ、まずはおにぃでしょ?彩羅ちゃん染羅ちゃん………あとの5人は?」
「まずは僕の友達が2人。でそのうちの1人の幼馴染が3人って感じだ。」
「男女比は?」
「3対5。」
「普通こういうのって4対4じゃない?」
「しょうがないだろ。色々事情があったみたいなんだから。でここにお前が入るってなると3対6になるから………ちょっとややこしいんだよ。」
「なるほどね………女子率多くない?」
「そんなこと僕が一番感じてるよ。」
「おにぃって案外女たらし………。」
「違う、断じて違う。僕はあのときの戒めを胸に生きてるんだ。だから断じて違う。」
「そうなんだ………やっぱりなかなか反省を活かしてるね。」
「当り前だ。」
もうあんな経験2度としたくないからな。あまりにも真っ黒すぎる。と、いうかせっかく忘れながら生きてきたのになんで思い出させるかな………。
「まあ、金輪際この話はしないでくれ?僕の黒歴史なんだ。」
「この話を知ってるのは?」
「今のところお前だけだよ。」
「彩羅ちゃんたちには言わないの?」
「言ったら僕が殺されるに決まってるだろ。」
「まぁ、間違いないね。おにぃが居なくなったら私の捌け口なくなるし、このことは黙っといてあげるよ。」
「やっぱり優しいよな。羽音って。」
「私にメリットあるだけだから。」
「ツンデレは受けないぞ?」
「やっぱり言おうかな………。」
「あぁ、悪かったって。」
「やっぱり素直だよね。おにぃって。」
そんな風に僕達はダラダラと休日を過ごしていた。特に何も考えずゆっくりと時間が過ぎていくのを感じていた。
「ねぇ、やっぱり暇なんだけど。」
「僕だっておんなじこと思ってた。だから我慢しろ?」
「暇ならなにかしようとか思わないの?例えばさ………彩羅ちゃん達の家に行くとか?」
「僕が行っていいものなのか?」
「いいんじゃないの?どうせ、あの2人だってほとんど無言で入ってきてるでしょ?」
「まぁ、そうなんだけど。でも僕はそんなことはできないな。勇気がない。」
「ヘタレかよ。」
「ヘタレだよ。」
自分でも自信を持って言うことじゃないということはわかってる。しかしそれが事実なら僕はハッキリと言うタイプの人間だ。
「そんな自信持って言うことじゃないよ。」
「これを自信を持って言えるやつがいるなら、それこそ僕はそいつを称賛するよ。その開き直る力は僕もほしいからね。」
「おにぃがそれに該当するとは思ってないの?」
「半分思ってる。」
「自覚があるならそれでいいや。」
こうやってずっと僕達は会話で時間を潰す。如何せん全くすることがないのだ。しょうがないと割り切って考えるしかない。
「それにしても………暇だな。」
「おにぃからその言葉が出るとは珍しい。」
「お前は僕をなんだと思ってるんだ。まぁ………思われても仕方ないような気もするけどな。それにしても何かないかな………?」
「おにぃの部屋の探索。」
「別に何もないが?」
「おにぃだって男なんだからそういう本だったり物だったりの1つや2つ………。」
「断言しよう。無い。探したければ探してみろ見つかるわけがない。」
本当にないのだから見つかるはずもない。しかし………全くの無関心ではないことは確かだ。僕だって男なのだから。
「つまんな。」
「お前は僕に何を期待してるんだ………。」
「おにぃの慌てふためく姿が拝めると思ったのに。」
「僕が慌てるときといったら、あの話を暴露されそうになった時くらいだよ。」
「やった。私おにぃの弱点持ってるじゃん。」
「早めに対処せねば。」
「怖いから言いふらすのはやめておこ。」
僕にとってあの話を暴露されること以上に焦ることはおそらく無いだろう。
「にしても元気なのかね、
「
僕の黒歴史の元凶と言えるそいつの名を口にした羽音に僕は制裁として軽いデコピンを入れる。
「あて………そんなに駄目なの?別に私は良いと思ってるけどな。結果的に人を救ったわけだし。」
「結果はな。過程は散々だったよ。」
「なかなかに順当であり不純な動機だよね。」
「本当………まぁ………過程さえ言わなければいいさ。」
「厨二病乙。」
「うるさい黙れ!他にも絶対こんなこと考えたことあるやついるだろ!なんで僕だけこんなことになるんだよ!」
「ごめんごめん。そんなに怒るとは思ってなかった。」
「全く………僕は人を救えるような器じゃないんだから。ただ、エゴのままに他人を振り回しただけなんだから………。」
「いやー謙虚って言ったらいいのかただの馬鹿なのか。」
「きっとただの馬鹿だよ。」
鳥塚さんのときだってそうだった。僕はあのときお節介に割って入ってかき乱しただけだ。
そうして………染羅の時だってそうだった。僕はただあのとき………一緒に遊びたかっただけだ。誰も救っちゃいない。相手が救われたと思ってるだけだ。
正義感のままに動くなんてそんな強いこと今の僕には出来ない。鳥塚さんのとき、僕はただ怖かっただけだ。知り合ったその人が死んでしまうのが。僕と関わった人が死んでしまうのが………怖かった。
「悲観的だね。」
「もとからだ。」
「そんなことないこと私は知ってるよ?」
「厄介な従姉妹だよ。」
「もっと楽観的に結果だけ見なよ?そうしたら………苦しまないから。」
「まぁ………僕の人生、そっちのほうが性に合ってる気がするな。」
「さてと、私はそろそろ帰るね?きっと母さん達が心配してるから。」
「了解。また辛かったら吐き出しに来いよ?」
「はーい。それじゃあまた。」
「またな。」
そう言って羽音は僕の部屋を出ていく。取り敢えず………一旦あの話をもう一度忘れるとしよう。真っ黒な歴史をもう1度忘れよう。