疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです   作:夏之 夾竹桃

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第30話 梅雨はやっぱり嫌い

 ある6月の日の帰り道のこと。2つの傘が並んで歩いる。私の隣には、いつもの虹姫が居た。

 

「………痛い……。」

 

「小鳥…?」

 

もう梅雨入りの季節だ。私は本当にこの季節が嫌いである。

 

「虹姫………肩貸して………。」

 

「う、うん………。」

 

痛い。古傷が痛む。この時期は毎日のようにこれだから本当ストレスが溜まる。

 

「小鳥、大丈夫?」

 

「あぁ………ちょっと今日は大丈夫じゃないかもしれない。」

 

雨の日は本当に嫌いだ。嫌でもアイツの顔を思い出す。

 

 ただ、今の私には虹姫が着いてくれている。まあ、こうして人に頼れるようになったのは小鳥遊君のおかげでもある。

 

 虹姫の傘に入り、私は彼女の肩を借りた。

 

「えっと………どうしたの………?」

 

あぁ、そう言えばそうか。私は虹姫にまだ伝えてない事があったんだ。

 

 しかし、今、それを言うべきなのだろうか?きっと虹姫は打ち明けてほしいだろう。ただこの話をしたあとの空気は最悪になる。

 

 だったら私は………嘘は言わない。

 

「ちょっと色々あってね。古傷が痛むの。」

 

「そっか………まぁ、話すより先に家まで行こっか。ペースはこのくらいでいい?」

 

「………うん。」

 

優しい。その一言に尽きた。虹姫の体温が伝わってくる。いつもあれだけ痛かったのに、不思議と今日はそこまでの痛みは感じない。

 

 そうして、私の家に辿り着く。途中からの記憶は少し曖昧だ。気絶寸前だったのか、はたまた優しさに溺れていたのか。

 

「ごめんね?こんなことに付き合わせちゃって………。」

 

「いやいいけど………それより大丈夫?」

 

「………ちょっとわがまま言ってもいい?」

 

「………うん。」

 

「側にいてくれると助かる。」

 

単純な心の声だった。側にいてほしかった。そうして誰かに助けてほしかった。その声に彼女は返事をする。

 

「わかった。ともかく、今は横になったほうがいいよね………?」

 

「うん。」

 

「ベッドまで歩ける?」

 

「なんとか。」

 

そうして私は一度立ち上がる。が、やはり痛い。よろめく体を虹姫は支えてくれた。

 

「ありがとう…。」

 

そうして、私の自室まで虹姫は付き添ってくれる。

 

 ベッドに横たわり私は虹姫を見つめた。

 

「ねぇ虹姫、正直になって良い?」

 

「いいよ。」

 

「こっち来て。」

 

私は右手を彼女の方まで伸ばし、そう言った。

 

「うん。」

 

そうして彼女は、ベッドに腰掛ける。しかしそうじゃない。私が求めているのはそうじゃないのだ。

 

「そうじゃない………隣………来て?」

 

私がそう言うと、やっぱり一瞬「え?」と言う顔をされた。ここまでは読み解けなかったらしい。

 

「いいの?」

 

「いいよ。来て?」

 

暫く間を置き、そうして掛け布団の上に虹姫は寝転がった。

 

 どちらかが手を伸ばせばそこに相手がいるような距離感。でもお互いに何もしない。

 

 虹姫は側にいてくれる。ただやっぱりもどかしい。

 

「この距離感で本当に良かったの?」

 

「………抱きしめてほしかったりする。」

 

私は痛みと嬉しさで錯乱したいたのかもしれない。つい抱きしめてほしいと、本当のことを言ってしまった。

 

「いいよ。」

 

その答えは、意外であった。予期せぬ回答に私は少し頬を赤らめる。

 

「自分で言ったのに恥ずかしくなっちゃった?」

 

「うん………だっていいって言われるとは思わないじゃん。」

 

「そうかな………?」

 

「だって………。」

 

「好きだから?」

 

「………うん。」

 

正直、この気持ちは読み取られているだろうなと思っていた。しかし、このタイミングで言われると尚のこと恥ずかしい。

 

「好きな人がこんなことしてくれるなんて、なかなか思わないもんね。でもしてあげる。」

 

「………好きだから………?」

 

私のその問いには少し自信がなかった。

 

「………好きだから。」

 

でも、その答えは返ってきた。私が、欲していた答えだった。

 

「もう………恥ずかしいな。」

 

頬を赤くしながら虹姫は言った。なんだよ………両思いかよ………。

 

 恥ずかしがりながらも、虹姫は私の体に手を回す。

 

 優しく、結構緩めに抱きしめられる。

 

「離さないくらい強めでいいよ。」

 

「響いたらいけないと思ったから………。」

 

優しさ故であることはわかっていた。しかし、こうなったらもう少し強引でもいい。痛みも結構引いていた。

 

 そうして、私は虹姫に抱き寄せられるのを感じていた。心音までちゃんと聞こえる。暖かさも感じている。

 

「ずっと………このままがいい。」

 

「私もこのままがいいから、いいよ。」

 

なかなか………恥ずかしい。体が熱る。焦がされるような感覚に陥っている。

 

 それでも何故か幸せだ。

 

 そうして気がつけば泣いていた。

 

「泣いてるの………?」

 

「泣いてる………寂しかった。今まで、ここまでわがままになれる人なんていなかった。だから………。」

 

「いっぱい甘えな?それでいいんだから。よく頑張ってきたんだから。私がいるから。いいよ。」

 

とても頼りになるその言葉に、私は溺れてしまいそうであった。この涙がこみ上げてくる感覚はやっぱり慣れない。

 

 慣れないけれどどうしてか、幸せだ。

 

 ひとしきり泣いて。私は………ようやく完全に復活した。

 

「もう大丈夫なの?」

 

「大丈夫。いろんな意味で。」

 

「それならよかった。私は………力に成れた?」

 

「うん。それで………またやってくれると嬉しいな。」

 

「いいよ。やってあげる。今まで寂しかったんだよね。」

 

虹姫は私の事をちゃんと理解してくれていた。それがとても嬉しくて………どう言い表していいかわからない。

 

 私にとっての好きな人。依存とかじゃない。支えてくれる人。そうして、支えてあげたいと思えるような人。

 

 2人でお互いを補完しあっていきたいから私は………多分虹姫のことが好きになったのだろう。

 

「本当、色々ごめんね?」

 

「いいって言ってるじゃん。私だって自分からやってる訳だし。」

 

どことなく申し訳なさもあった。こんな人生背負ってしまった人を好きになってくれた事に対して申し訳なく感じていた。

 

「それにさ、小鳥はもっとわがままでいいんだよ。」

 

「え?」

 

「ほら、よく自分のことを抑える癖あるからさ。だからもっと素直でいいんだよ。」

 

「もっと………素直でもいいの?」

 

「私は、ある程度なら許容できるよ?だから、もっとわがまま言ってくれて構わない。」

 

「………ありがとう。」

 

「それじゃあ、私は今日はもう帰るね?」

 

「うん、また明日ね。」

 

「また明日。」

 

そうして私は、虹姫を見送った。本当に感謝してもしきれない。

 

 それとともにいつかあのことを言う日が来るかもしれないと思っていた。

 

 しかし、正直虹姫になら話してもい。あいつのこと、傷のこと、あの喧嘩は何が原因だったのか。

 

 多分私は自分からそのことを言うだろうな。

 

「それにしても………いい匂いだったな………。」

 

私ってこんなことを言うようなキャラだったか。また自室のベッドまで戻り考え込む。

 

「さっきまで、虹姫がいた場所………。」

 

同じ所に寝転がる。まだほんのりと暖かく、少しあの匂いも残っている。

 

 好きって言うのはこういうことを言うのだろう。誰もいないだからこそなのだろうか。心臓がバクバクと脈打っている。

 

 どこか、いけないことをしているような気分になる。

 

 私のベッドで寝転がっているだけなのに。そこに残っている虹姫の跡を感じて………どうにも私は落ち着かなかった。

 

 こんなことがバレたら………嫌われてしまうだろうか?でも今は私一人だしバレることはないだろう。

 

 独りしか居ない部屋、独りしか居ない家。きっとバレない。私は暫く、彼女の跡に酔っていた。

 

「私って、変態なのかな………。」

 

そう独り、呟くのだった。

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