疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです 作:夏之 夾竹桃
全く、最悪だった。いたたまれない空気なまま僕たちは今、帰路を辿っている。
「それで、雉矢あの人は?」
染羅の冷徹な声が突き刺さる。もう腹をくくるしかないようだ。逃げ道なんてないだろう。
「中学のときの同級生だ。僕からしたらそれだけの関係なんだけど………向こうにはちょっと事情があるみたいでな、もしかしたら付きまとわれるかもしれない。」
「それって………ストーカーってこと?」
「もしかしたらの話だよ。ここは真に受けなくてもいい。」
「雉矢、正直に話して。一体何があったの?」
染羅が少し焦り気味の声でそう聞いてくる。
「勿論、正直に話すつもりだよ。」
そうして僕は語りだす。昔の黒歴史全部を………。
「………と、言う訳で僕の真っ黒な過去でした。まぁ………そっから向こうも考えたんだろうけどさ流石に頂けない。」
一連の話を終え、僕は今の心持ちを語る。
「いきなり付き合うだなんて言われても正直困る………。僕だって向こうのことをよく知ってるわけじゃないからな。だから諦めてもらうようにはする。」
問題点があるとすれば一切打開策が思いつかないことくらい。しかしわかってるさ、それが唯一にして最大の欠点であることは。
「ここまで言ったからだいたいわかると思うが悪いやつじゃないんだ。だから………危害を加えない限り、大目に見てやってくれ。あいつも、エゴに振り回されてただけなんだから………。」
思えばなかなか可哀想な人だ。ただ振り回されてただけの被害者なんだ。そして僕も、責められるような立場じゃない………。
「雉矢がそう言うならいいけど、万が一の時どうなるかはわからないよ。誰にとっても最悪な結末になるかもしれない。」
確かに、あの人は少し狂気じみているところはある。だからといってそこまで警戒したほうがいいのだろうか?まぁ、それこそ万が一と言うやつだ。頭に入れておいて損はない。
「僕も充分に気をつけるつもりだ。」
「雉矢はたまにそういうところ抜けてるから。」
確かに、自覚はある。本当に気をつけなければ。
「彩羅も、今日は心配かけてごめんな?」
「まぁ、理由がわかったらなんとなく納得したかな。多分所謂ヤンデレになっちゃったんでしょ?」
「最初は予想だったけどな………でもあそこまでいったら流石にそうとしか言い切れないな。」
「誰にも縋れない状況で助けられたんだもん。しょうがないよ。」
「まぁ、あれだな。僕の招いた事態だ。収集は僕がつける他ない。」
こういうときだけ僕は無駄に責任感がある。しかし依然としてなにか打開出来るような案は思いつかないままだ。
「まぁ、私もある程度はサポートするよ。」
「染羅………?」
「だって、取られるのは正直嫌だし。」
「その私情が入っていいなら私もやるけど。」
「あぁ………ありがとな。2人とも。なんか困ったことになったらちゃんと言うよ。」
今の所、どうにか対処はできそうである。もっともこれは、根拠のないただの自身でしかない。だから、行き詰まったとき頼るのも視野に入れることにする。
さて、そんな話をしているといつの間にか僕の家についていた。
「なんか、今日はごめんな?」
「いいんだって。」
「なんかあったら言ってね?」
「あぁ、それじゃあ。」
そう言って振り返ろうとしたとき、後ろから呼び止められた。
「今日私、泊まるけど?」
彩羅の声だ。いや、は?どういうことだ?
「待ってくれ、泊まるってどういうことだよ?」
「言ったじゃん。明日からウォーキングするって。」
あ、あの話マジだったんだ。
「いやいや、だからってなんで泊まることになってるんだよ!?」
「だって雉矢朝弱いじゃん。」
「いや確かにそうだけど………。」
と、言うか早朝のウォーキングだったんだな………。
「だから、私が起こしてあげようかなって。」
「えぇ………。」
そこまで言って、染羅が口を挟んだ。
「それだったら、私も泊まる。」
「染羅も!?」
「彩羅ばっかりずるいし、だいたいそんな約束してたなんて初耳なんだけど?」
あぁ………色々忘れてた………最悪だよ本当に。
「まぁ………わかったよ。」
2人のゴリ押しに対して、僕は渋々そう返事をするしかなかった。
そうして、母さんに事情を説明しすんなりとOKを貰った。まぁ、色々と余計なことまで言ってきたが、あえて言わないことにする。
「いやーいつ以来だろうな雉矢の部屋に来るのって。」
「結構頻繁に来てるだろ。」
調子に乗る彩羅に対して軽くツッコミを入れたところで僕たちは何時ものように床に座り込む。
「なんか雉矢の部屋に来たときっていつもこの構図な気がする。」
「まぁ、基本的にこうなるしかないからな。そんで、着替えとかは?」
「あぁ、後で持ってくる。」
こういう時、家が近いのは非常に便利である。
そうして特に何事もなく時間は過ぎていく。ご飯も食べ終わりお風呂にも入ってそうして………僕の取り合いだ。
「どっちかの隣。真ん中は駄目だから。」
そう言い出したのは染羅だった。いつもこんなに強気に出ていただろうか?ともかく、今日は何処かお怒りな気がする。
あまりことを荒げたくはないが………。
「えっと………じゃあ染羅の隣…?」
「ええ、それ理不尽じゃない?」
「やっぱりこういう言い合いになるよな………。」
「だって今日彩羅が1日中雉矢のこと取ってたじゃん。だから夜くらい譲ってよ。」
「それだと一緒にいた時間の割に合わないじゃん。今までの分、染羅が我慢しなよ。」
あぁ、喧嘩になりそうだな。さて、どうしようか。まぁでも、これしかないかな。
「じゃんけんで決めたら?」
「「ずっとあいこになるから却下!」」
本当………息ぴったりだな。だからこそ、こうして対立し合うのだろう。
「じゃあ、僕が他の部屋で寝るのは………?」
「………今日は、独占したいんだよ…。」
染羅の呟きが聞こえた。そりゃあそうかもな。独占欲は2人とも強いはずだ。ただ、今日染羅はその光景を見せつけられていた。
「そうか………まぁわかったよ。彩羅、染羅、決めた。」
「「どっち?」」
「僕、今日は染羅の横で寝るよ。彩羅、ごめんね………?」
そうして、彩羅の方を見ると何処か察したようだった。多分、お互いの性を理解したのだろう。
「まぁ、今日は負けてあげるよ。」
その強気な言葉で、喧嘩?は収束したのだった。まぁ、そこまで大事にならずに済んで本当に良かった。
こういうのを鎮めるのはなかなか難しい。それは、この2人を小さいときに見ていた僕はよく知っているのだ。
まぁだから今回、こんな感じで決着がついたので安心しかないわけだ。
そうして、僕たちは3人で1人用のベッドに寝転がる。
「なぁ、やっぱり狭いって。かなりきついし………。」
「雉矢とはこのくらいの距離感のほうがいいもん………。」
どこか寂しそうに染羅はそう言った。それが引っかかりつつも僕たちは眠りについたのだった。
さて、どれほど経っただろうか?少なくとも今、朝ではない。まだ真っ暗だ。僕は自身にかかった重圧によって目が覚めた。薄目で眺める。
なにかに乗っかられているようだがまだ暗くて何も見えないでいた。
そうして、次第に暗闇に目が慣れていく。段々とシルエットが見えてくる。表情が覗えてくる。そうして何が起こっているのかを理解する。
「雉矢、大好きなのに………。」
彼女はそう言葉を発した。とても近い。柔らかい吐息すら直に伝わるのを感じた。
「今なら………キスしてもバレないかな………。」
そんな声が聞こえた。僕は一体………どうするべきだろうか?そんな事を考えていると唇に柔らかいものがあたったのを感じた………。
「2回目だけど………ドキドキは変わらないな………。」
染羅の………そんな声が聞こえた。