疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです   作:夏之 夾竹桃

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第4話 3人の思い出、2人きりの思い出

 その後、特に問題はなく学校の案内は終わった。それぞれが帰路につく。鳥塚さんと別れ、ようやく幼馴染同士の空間がそこに出来上がった。この三人だけの空間が今の今まで作られなかったこと自体それなりに不思議ではある。前の調子だとひと目もはばからず馴れ馴れしく飛びついてきたと思うのだが。成長したということだろう。

 

「ようやく話せるね。雉矢。」

 

彩羅がそう声をかけた。まぁ確かにしっかり話すのはこれが久しぶりになる。

 

「あぁ、そうだな。2人とも改めて久しぶり。」

 

最初に比べれば僕はだいぶ落ち着いていた。2人がそこまでアグレッシブではなくなっていたので、ホッとしていた。

 

「それで、結局のところあの小鳥ちゃんはそういう関係?」

 

立て続けに彩羅がそう聞いてくる。

 

「あぁ、手紙の送り主なんだけどな。友達なのは本当。」

 

「振ったの?」

 

染羅が喰い気味にそう聞いてきた。ある意味振ったということになるのだろうか?そこら辺は少し曖昧な気がする。付きってほしいと言うそれを断ったということに関してならば確かに振ったのかもしれない。

 

「そんな感じ。告白されはしたけどまだお互いのこと知らないから取り敢えず友達になろうって感じ。」

 

「そう。」

 

いつもどおりではあるが、無口な染羅。それだけ聞いてまた黙ってしまった。

 

「それにしても、まだお前らは俺のこと忘れてなかったのかよ。」

 

「忘れるわけ無いじゃん。初恋の人なのにさ。」

 

その執着は本当にどこから湧いてくるものなのだろうか?恥ずかしがってる姿が可愛いとかそんなものではないだろう。確かに可愛かったが、それでもここまでの執着を見せる人というのはいるものなのだろうか?

 

「そっか。だからってここまで執着できるかね?そこは心底不思議に思うよ。」

 

「執着する人達もいるんだよ、私達みたいにさ。」

 

「そういうものとして捉えたほうがいいのか?」

 

「そうだね、そういうものなんだよ。」

 

「なるほど。」

 

なるほどとは言ったもののそこまで理解ができたわけではない。まぁそこまで悩むほどのことでもないな。それそうとして、もう一つ気になっていることがあったんだった。

 

「そう言えば5時間目の手紙、何で僕に渡したんだ?明らかに、そういう………告白系のやつだったじゃん。」

 

「あぁ、あれね?隣の人から回ってきたんだけどさ、そりゃあ見ただけで分かったよ。でも、人心を無下にするのは違うかなって。勝ち取るのはいいけどさ、蹴落とすのは駄目じゃない?って。私達の理念でもあるし。」

 

「そんな考え持ってたんだ。初めて知った。」

 

「だって今まで言ったことなかったんだもん。」

 

そんな会話をしつつ僕たちは道を進んで行った。その間僕と彩羅は、話しをしていたが染羅は結局最後まで無口なままであった。そうして家にたどり着く。

 

「ただいま。」

 

キッチンにいる母に向かってそう声をかける。

 

「おかえり。結局転校生は彩羅ちゃん達だったの?」

 

「あぁ。そんなに変わってなかったよ。」

 

そんな話して僕は自室へと向かう。さてどうしようか?勉強でもしようか?それとも少し部屋の掃除でもするか?いつあの2人が来るかもわかんないしな。とは言え散らかってるわけでもないか。うん、勉強しよ。勉強と言うか課題だな。

 

 それからしばらくは何事もなく課題を続けることができていた。終盤も終盤になった頃インターホンが響いた。特に気にすることもなく僕はもう少しだと自分を鼓舞し最後の問題に取り掛かろうとした時、母の声が聞こえてきた。

 

「雉矢、染羅ちゃんがちょっと来てって。」

 

「はーい。」

 

そこで僕は作業を中断した。言われた通りに玄関へと向かう。

 

「染羅、どうしたの?」

 

「ちょっとついて来て。」

 

言われるがまま僕は染羅について行った。まだ春なので夜7時はすっかり暗くなっていた。そんな中で染羅は迷いのない足取りである場所へと向かっている。僕もこの道はよく通ったものだ。彩羅も交えた、この3人で一緒に。僕も予想はしていた。染羅がどこへ向かっているのか。ここは3人の思い出になっている公園だ。

 

「染羅、どうしたの?」

 

「昼間は、彩羅ばっかりだったからさ………ちょっとヤキモチ。かまってほしくてさ。ここ、あの日雉矢が連れ出してくれて一緒に遊んだ場所。私にとって雉矢との思い出の場所。」

 

「かまってって言われても………何したらいいの?」

 

何故だろう、少し脈が早くなっている気がする。何か、期待しているのだろうか?そんなまさか。そんなことがあるのだろうか………。

 

「取り敢えず、ここ。」

 

そう言って、染羅はブランコの元へ近寄っていった。

 

「雉矢も座って。」

 

言われるがまま、僕と染羅はブランコへと腰掛けた。いつ以来だろう?本当に僕たちの成長を感じられるほどにはこのブランコは小さい。

 

「案外、窮屈だな。」

 

「そうだね。これちょうどよかったときの話する?」

 

「10年くらい前じゃん。」

 

「早いね。」

 

「そうだな。」

 

そうしてお互い黙ってしまう。しかし、そこまで嫌な気にはならなかった。その沈黙の末、ようやく染羅が口を開いた。

 

「雉矢、結局のところどっちが好きとか決めてる?」

 

「僕はまだどっちもかな?確かにドキドキはするけどさせられてる感があってさ、自分から好きとは言えないな。」

 

「そっか………私は、雉矢のこと好き。だからさ、嫉妬しちゃってるんだよね。今日の放課後のこと。彩羅になんて言われたの?」

 

「あぁ、危なっかしいって思った時は守ってって、そう言われた。急にささやくんだもん。びっくりしちゃってさ。」

 

「ドキドキしてたんだね。」

 

「わかるんだ。」

 

「なんとなくだけどね。それでなんだけど、羨ましいなって。」

 

そう言うと、彼女はブランコから立ち上がって僕の前へと立った。

 

「雉矢も立って。」

 

そう言われて僕も立ち上がった。お互いに身動きが取れそうにないほど近い。僕の胸の高鳴りは加速していた。

 

「何するの?」

 

「………彩羅ばっかりで、ずるいよ。」

 

その言葉とともに、染羅の姿が一層近づいた。胸に体温を感じる。染羅が僕の胸に顔をうずめていた。背中の方には逃がすまいと手が回されていた。力強く、優しく。

 

「………染羅…。」

 

今まであまり大胆なことをしてこなかったはずの染羅が今、僕に対して抱きついている。夜とは言え、個々は屋外だ。誰かに見つかるかもしれない。そんな中でも彼女は僕のことを離そうとはしなかった。

 

「言ったじゃん。逃さないって。もう、雉矢と離れたくなんて無いから逃さない。私は雉矢が好きだから。」

 

その言葉が更に僕の脈拍を加速させる。そんな時期でもないのに、当たりが熱く感じられた。この公園という3人の思い出の中、僕は染羅と2人きり。何か、いけないような事をしているような気分で………複雑で、暖かくて、ずるいような。そんな感覚だった。

 

「染羅………。」

 

僕の手は自然とその身体を抱きしめしめようとしていた。その時だった。

 

「ごめん、いきなりこんなことしちゃって。」

 

その声がして僕と染羅は現実へと戻ったのだった。少し肌寒いような気がした。染羅のその体温がまだ残っていたのだ。

 

「呼び出しちゃってごめんね。我儘、付き合わせちゃった。また、明日ね。」

 

そう言って彼女は………染羅は逃げるようにして走っていった。その姿はどこか嬉しそうだった。その場に残されて立ち尽くす僕。何をしていたんだろうか?余韻が酷い。まだ僕の心臓はバクバクと酷く脈打っている。現実に引き戻されても尚、夢を見ているような気分だった。

 

「………僕も帰ろうか。」

 

そうして僕はゆっくりと歩き出した。

 

 誰もいない暗い街中を駆け、私はあの場から逃げている。やってしまった。抜け駆けというわけではないが、あんなことするつもりはなかった。でも暖かかったな。ドキドキもしてくれていた。正直な話私がさせていたのだけれど。それでも、嬉しい。あぁ、何で逃げてるんだろうな。送ってもらえばよかった。そうしたら、もっと話しできたのにな。こういう時、彩羅が羨ましい。

 

 でも今日は私の勝ちだよね。彩羅より私の方にドキドキしてくれたんだから。

 

「彩羅なんかより………今日は私の勝ち。」

 

そう、自分に言い聞かせた。少し、口角が上がってた。




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