疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです 作:夏之 夾竹桃
さて、夏休みも中盤に差し掛かったわけだが今日も今日とて足が痛い。筋肉痛だ。あれから僕は毎日彩羅と走っている。この体力馬鹿を止められる人はどこかにいないだろうか?
正直な話、僕は彩羅のペースに付いていくのがきつくなっている。そんなに体力がないものかと呆れつつ、今日も彩羅についていく。
「なぁ…彩羅、ペース落としてくれないか?流石に辛いんだが………?」
「もうバテてるの?流石に早いって。」
「お前が速いんだよ………。」
文句を言いながらも僕は彩羅についていく。僕もなかなかいいやつなのかもしれない。
そうして今日も僕はいつもの日の出を目の当たりにする。やっぱり綺麗だ。
「いつ見ても綺麗だよね。」
「まあ…バテてなかったらもっと綺麗だったろうな…。」
息を切らしながら僕はそう言った。いや、それにしても本当に綺麗だ。綺麗なのだが、あの日のことを思い出してしまう。
赤く染まったあの日。彩羅のあの無邪気な笑顔を。
そう言えば、染羅はこの光景を見たことがあるのだろうか?ないだろうな。なにせ、夏の日の出は早すぎるからな。
「3人の思い出の場所だけどな。」
「いいじゃん。今は2人きりで。」
「ちょっと寂しい気もする。」
「それはね………私もちょっとそんな気がしてる。」
なんだかんだ言ってこれまでの人生2人で歩んで来ただけあるな。
「どうする?今日はもう帰る?」
「僕はそうしたい。やっぱり流石に眠い。」
「毎度早起きしてるからね。」
「一体誰のせいだろうな。」
「嫌味?」
「そりゃあな。流石に4時起きはキツイって。日の出見るとは言えだよ。」
「もうちょっと遅くしたほうがいい?」
「できればそうしてくれれば助かるな。」
「………染羅も誘おうかな。」
なかなか、彩羅の口からは出ない言葉だった。
「なに?そんなに驚いた顔して。そんなに意外?」
「めちゃくちゃ意外だよ。普段ならそんなこと言うはずないんだから。」
「私のことなんだと思ってる?って、まぁしょうがないか。今までそうだったもんね。」
「じゃあなんで急に?」
「そりゃあ………なんか寂しくなったから。」
「やっぱり、僕達は3人セットってことか。」
「そうみたいだね。」
そうして、僕たちはいつもよりもちょっと早くその場をあとにする。朝焼けは、段々と町に広がっていった。
そうして、僕は自室まで戻ってきていた。いや、眠いし痛いし疲れたしで本当に動きたくない。幸いにも課題はすでに終わっている。よし、寝よう。
その日、夢を見た。久しぶりに見た気がする。その夢の中で僕の目の前には染羅が居た。
なにかする訳でもなく、僕たちの他になにかあるわけでもない。ただ薄暗い場所に染羅が座り込んでうつむいている。その姿を見ても、僕は何もできずに居た。
話しかけることもできずにその姿を見ていた。不規則に揺れている染羅の肩は彼女が泣いていることを意味していた。そのことは僕も分かっていた。
なんて話しかけたらいいのかはわからない。僕はただ一言「大丈夫」とだけ呟いた。
そこで記憶は途切れた。僕は現実へと戻ってきている。さっきのが何だったのかはわからない。ただ、僕も染羅に会いたくなってきた。
「本当、なんでなんだろうな………。」
そうして時計を見る。8時を指している針を見て僕は少し億劫な気分になった。あれから2時間くらいしか寝てないじゃないか。
まぁ目が冴えてしまったからもう寝ようという気にはなってないが。しかし、起きたところで今日は何をしようか?予定なんて決めてない。
「あの2人のところ行こうかな………?」
そう僕が呟いたときだった。
「おにぃ来たよ!」
「うわっ!」
そんな急に入ってこないでもらえると助かったんだが………せめてノックくらいはしてほしいものである。
「『うわ』とは何だ?せっかく来たのにさ。」
「そりゃあ、いきなり来られたらこんな反応になったっていいじゃないか?と、いうか心臓に悪いからノックくらいはしてくれ。」
「まぁ、そこは謝る。けどあんなに驚くことって無いじゃん?」
「僕は今寝起きなんだ。心構えなんてできてるわけ無いだろう。」
「おにぃなら休日でもこの時間は起きてるはっずじゃない?」
「生憎と、今日は二度寝をしたもんでね。」
「珍しいこともあるもんだね。」
まぁ、僕にしては確かに二度寝というのは珍しいことだ。しかしここ最近はもっぱらこの生活が染み付いてきている。流石にまずいな。
「まぁ、ちょっとあってな。」
「そうなんだ。悩み事?」
「ちょっと違うな。」
「てっきり私が日向ちゃんのこと掘り返したから最近になって悶始めたのかと思った。」
「………あ。」
そうして僕は思い出す。さて、言っておくべきだろうか?まぁ、差支えはないだろう。と、いうかむしろこの場では頼りになる。
「おにぃ?」
「時鳥な………なんか帰ってきたみたいなんだよな。」
「そうなの!?」
「そうしたら………ヤンデレ化してた。」
「………マジで?」
「こんなこと嘘で言うわけ無いだろう?本当だ。そんでもって、ちょっとマズイかもしれない。」
「えぇ………て、いうかなんでそんな大切なこと忘れてるかな………。」
「他にも色々事情があってだな………まぁ忘れていたけど一番重要なことに変わりはないな。」
「日向ちゃんがヤンデレ化か………あのときのおにぃの妄想が本当になったわけだ。」
「最悪の形でな。でもあれだよ?学校が同じとは限らない。」
「まぁ、それ以前の問題にそんなに警戒する必要ある?」
「あるんだよ。それが。彩羅と染羅。」
「あぁ………納得。にしても日向ちゃんそんな深刻なヤンデレ化果たしたの?」
「果たしちまったんだよ。本当に困ったな。」
「まぁ、確かにね。おにぃはどうする気でいるの?」
「そりゃあ、もとの戻ってほしいさ。やっぱり、事実を伝えたほうがいいのかな?」
「それでも何も変わりそうにはないけどね。でもやっぱりさ、この問題は雉矢がどうにかしないとね。これは雉矢が日向ちゃんを助けたから起こった問題だよ?助けたんなら最後までやらなきゃ。それが助けた側の責任でしょう?」
「全く持って言うとおりだよ。でもな………どうにも打開策が思いつかないんだよ。彩羅や染羅を巻き込むのはどうも危ない気もするし。」
「まぁ、一番の問題はそこだよね。正直私もこればっかりは思いつかない。」
なかなかに難しい話だ。ヤンデレはどうやったら直るのだろうか?ぼく個人の考えとして直ることは無いと思っている。
いや、もしかしてそもそもヤンデレを直すという発想自体が間違っているのではないだろうか?じゃあどうする?まさに白紙状態なのだが?
「うーんわからん。」
「私も同じく。」
さて本当に困った。一体どうしたらいいのだろう。考えても考えても出てこない。
「やっぱり一旦保留かな。」
「それで、もしもがあったらおにぃは責任取れるの?そういうことだよ?」
「あ、あぁそうだな。」
まさか説教されるとはな。真面目に考えよう。ヤンデレを直すことはできない………やっぱり、時鳥の考えてることがわからないと何も始まらないな。
かと言って僕は時鳥の家を知っているわけでない。中学の頃の他のやつと会うという手もあるにはあるものの多分取り合っちゃくれないだろうな。あのイジメの件以降僕はひたすらに無視されていたわけだからな。
まぁ、会うことができたらちゃんと話をしなきゃな。
「うん、やっぱり直接会ったほうがいいような気がする。」
「私もどことなくそんな気はしてる。家は知ってるの?」
「知らない。ただ、そこについては問題ないと思う。」
「………虱潰し?」
「まぁそれもしつつ、歩いてたら多分会えると思う。」
「………まぁ、考えてることは分かったよ。ストーキングされに行くわけだね?」
「………そうだ。」
我ながら馬鹿な発想だ。しかし、一番可能性があるのはこれなのだ。それに賭けると僕は決めた。