疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです   作:夏之 夾竹桃

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第40話 最悪の再会

 夏休み終盤。あれから僕の日課は散歩になっていた。誰かのせいであまりにも早く起きるもんだからジョギングの帰り、ちょっと寄り道して帰ることが多くなったのだ。まぁ僕はそれを散歩と呼んでいる。

 

 しかし、特に目立った異変というものは見られない。それもそうか、朝早い時間だしな。いつもこうやって8時くらいまで散歩を続けているが何もない。

 

「できたらこのまま何事もなく終わってほしいんだけどな。」

 

と、そう呟いたときだった。

 

「………小鳥遊君?」

 

どうやら、目当ての人に見つかったらしい。振り返らずに僕は聞き返す。

 

「時鳥か?」

 

「うん!やっと見つけた…。」

 

「僕もちょうど話がしたかったんだよ。」

 

「じゃあ、うちに来て?」

 

「ここじゃ駄目なのか?」

 

「駄目だから言ってるんだよ。ね?来て?」

 

正直怖い。しかしどうにかしないといけないことに変わりはないだろう。そうして僕は答えた。

 

「分かったよ。」

 

現在地から時鳥の家までは案外近かった。そうして僕は部屋まで通される。密室に2人きり。過去ここまで嫌な緊張をしたことがあっただろうか?

 

「それじゃあ、本題に入らせてもらう。どうして時鳥は僕に固執するんだ?」

 

「前も言ったでしょう?小鳥遊君だけが私を救ってくれたって。これが理由。あんな状況だったんだもん。好きになって当然よ。」

 

「そうか………仮に僕が他に好きな人がいるって言ったら?」

 

「………あの幼馴染?」

 

「仮にだよ。その時どうする。」

 

「その好きって言ってた人を突き放す。」

 

至極真当な答えである。さて、ここまで簡潔に言われたら僕もちょっと困る。さてどうしたものか。

 

「私からも質問いい?」

 

「あぁ、構わない。」

 

「どうして小鳥遊君は私を突き離そうとするの?」

 

「………単純に、あのときのことを思い出したくないだけだ。」

 

僕にとって最高の黒歴史なんだから当然だ。そうだと思っていたけど時鳥に思わぬ一言を言われた。

 

「私はそれだけには思えない。多分小鳥遊君も私と同じ。邪魔だから突き離そうとしてる。」

 

「え…?」

 

「心のどこかで自分はこうあるべきって決めつけてるんじゃない?多分小鳥遊君はあの幼馴染を少しは意識してる。」

 

「それは………。」

 

僕は、何も言い返せなかった。心当たりがあったからだ。

 

「人間みんなそうだよ。邪魔だったら突き離そうとするのは人間の、生物の本能。なにか違うことがあるとすればそれは、理性が強いか弱いか。たったそれだけの違いなんだよ。」

 

「そう………か………。」

 

何故か僕は諭されていた。そうして何も言えぬまま時間が過ぎようとしていた。

 

「でもね、もう分かってると思うけど私は理性の弱い人間だから。」

 

ゆっくりと這い寄るようにして僕に近づく時鳥。僕は何もできなかった。蛇睨みにあったようにからだが硬直して動かなかった。そうしてそのまま押し倒される。僕の上には時鳥がいた。最早慣れてしまった圧迫感が僕を襲う。

 

 しかし、決定的に違うのは僕は少し恐怖を覚えていたことだった。いつもならそんなこと無い。これは………まずいかもしれない。

 

 僕の顔を覗き込む時鳥。その長い黒髪が僕をくすぶる。それを払いのけるようにして時鳥の綺麗な顔が近づいてくる。あぁ、コイツって可愛くもあったんだなと理解しつつ僕は諦めかけていた。このまま幾度目かのキスをしてしまうのだと思っていた。

 

 不意に、ある人の顔が重なった。彩羅、染羅と時鳥を重ねてしまった。その瞬間僕を襲った感情は嫌悪というか恐怖というかその絶頂に達していた。

 

 僕はようやく腕が動くことに気がつく。そうしてそのまま状態を起こしあくまでも平然を装いつつ時鳥に向かった。

 

「やめてくれ。僕はそういうのは嫌なんだ。」

 

多少、声が震えていたかもしれない。酷い顔をしていたかもしれない。それでも僕は精一杯を使って訴えた。

 

「………そう。」

 

「悪いけど、帰らせてもらう………。」

 

そこから、僕はまっすぐ家に帰った。そのはずだが記憶はあまり残っていない。

 

 気がついたときにはベッドの上で横たわっていた。まさか、これほど怖いとは思っていなかった。軽くトラウマになってしまったかもしれない。

 

 取り敢えず今は疲れたな。寝よう………。

 

 そうして、どれほど経っただろうか。僕は目を覚ました。いつもと違う柔らかい枕。この間経験したみたいに暖かい枕。

 

「雉矢………起きた?」

 

「染羅………染羅!」

 

僕は………嬉しさのあまりに染羅に抱きついていた。

 

「ちょ、雉矢?」

 

今一番側にいて欲しかった人の一人だ。しばらくの間、僕はそのまま動けなかった。

 

「雉矢、私もいるんだけど?」

 

彩羅の声だ。

 

「あ、あぁごめん………。ちょっと色々あってな………。取り乱した………。」

 

「一体何があったのさ?」

 

そうして染羅から一旦離れた僕は今朝の出来事を2人に話しはじめる。正直、思い出すだけでも怖い。

 

「まぁ………時鳥に会ったんだよ。そこでちょっとな。」

 

どうしても話すのを躊躇ってしまう。

 

「まぁ………なんとなく予想はついたよ。話さなくても大丈夫。」

 

本当に、染羅と彩羅が来てくれて助かった。

 

「ありがとう………ごめんな?情けないところ見せて。」

 

「何回も見たことあるから大丈夫。」

 

まぁ………それもそうか。少しガッカリしつつも僕はようやく平常心へと戻ることができた。

 

「そう、それでいま何時だ?」

 

「15時過ぎたくらい。」

 

「マジかよ………。」

 

どんだけ寝てんだよ僕は。どおりでお腹も空いているわけだ。と、いうか眠るというか気絶のほうが正しい気もする。

 

 眠る直前の記憶があやふやなのだ。

 

 さて………1日のとんでもない時間を失ってしまったが………まぁ収穫は得ることができた。

 

「そうだ………話さなきゃ。あいつも、まぁ、案外まともだった。ただ僕に関しての理性がすっ飛んでいるだけだ。」

 

まぁ、致命的だな。

 

「話し合いで解決って言うのはなかなか難しいように思える。」

 

「やっぱりそうなんだ………。」

 

「て言うか雉矢さ、この状況で家がバレたらまずくない?」

 

「あ。」

 

しまった。そのことを考えてなんていなかった。正確には考える暇もなかったわけだ。

 

 いやしかしまずいぞ。この状況で家に来られたら僕は本当になすすべがない。やっぱり馬鹿な発想だったというわけだ。

 

 自体は悪い方にばかり転がっていく。さて………本当にどうしたものか。

 

 僕には願うことしか残されていなかった。

 

 

 時が経ち、夏休みも終了した。最悪な知らせとともに僕達の2学期が始まったのだった。

 

 その日、始業式の日。学年の殆どが騒然としていた。

 

 その美麗で華奢で大人びていて、しかしどこか可愛げのあるその転入生に釘付けにになっていた。

 

 僕も目が離せなかった。その現実を疑いたかった。

 

 時鳥 日向。そいつはやってきた。僕はあのときのことを思い出す。少し………気分が悪い。

 

 そうしてホームルーム。全校集会の主役をかっさらったそいつの話題が絶えない中、担任はそいつを連れて入ってくる。

 

 あぁ、現実なんだなと実感する。本当にやめてほしい………夢なら覚めてほしい。願いは届かなかった。ただそれだけの現実だった。

 

「初めまして。時鳥 日向です。よろしくお願いします。」

 

教室の全てがざわつく。暗い顔をしている僕と険しい顔つきの染羅と彩羅。

 

「小鳥遊?どうかしたか?」

 

隣の席の奴が聞いてくる。生憎と何も答えられそうにはない。だから僕は便利な言葉を使う。

 

「いや、なんでもない。」

 

そうだ………きっと何でもないんだ。何も変わることは無いんだ………はぁ、現実逃避も程々にしよう。

 

 さて………本当に困ったことになった。

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