疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです   作:夏之 夾竹桃

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第41話 理性の弱い人達

 それから数日。なんと案外何もなかった。僕はてっきり襲われるんじゃないかとビクビクしていたがそんなこと無かった。

 

 そうなってきたらそうなってきたで不気味だ。まぁ、僕のあの日の言葉が相当ショックだったという事にしておこう。

 

 そうして僕は、今日も彩羅、染羅とともに過ごすのであった。

 

「なぁ?雉矢?」

 

最近あまり聞いてなかった声だ。しかし夢七であることはすぐに分かった。

 

「どうした?夢七?」

 

「いや、なんか最近さ、お前疲れてないか?」

 

「なんで急にそんなこと?」

 

「あからさまにお前が疲れた顔してんだよ。」

 

あぁ、まぁだろうなとしか言いようがない。そりゃあ僕だって毎日警戒しながら学校に来ているんだ。疲れたりもするだろう。

 

「まぁ、色々あるんだよ。」

 

「そうか………やけに時鳥さんを気にしてるように見えるのは俺の気のせいか?」

 

あぁ、コイツ僕のストーカーかよ。なんでそんな細かいところまで見てるんだかわからない。

 

「気のせいだよ。」

 

「そうか………なんかあったら言えよな?」

 

「まぁ、気が向いたらな。」

 

なんだ、やっぱりそれとなく察してんじゃないか。まぁ、だったとしても言うつもりなんて無いが。これは僕の問題でありきっと時鳥は僕のことになるとリミッターが外れるので誰に協力してもらおうと意味はないだろう。

 

「良かったの?」

 

彩羅にそう聞かれた。

 

「あぁ、いいんだよ。」

 

僕はそれだけ返した。

 

 そうして間髪を入れずその声は聞こえてきた。

 

「小鳥遊くん。」

 

あぁ、本当に聞きたくない声だ。

 

「………話す気はないぞ。僕はあんな思いはもう御免だ。」

 

「それでも話させてもらう。なんで私じゃ駄目なの?あの時、私が押し倒した時。間違いなく小鳥遊くんは私のことを可愛いと思っていた。なのになんで?」

 

「なんでそんなこと分かるんだよ。と、いうかやめてくれ。僕は目立ちたくないんだよ。」

 

「それが分かってるからこそこのタイミングだったんだよ。私はあの事実さえあるからいい。ねぇ、あの時私のことを見て顔を赤らめてた。あれは何なの?」

 

周りが明らかにざわつき出す。彩羅、染羅たちも少し不安げだ。こんな時、包み隠さず言えるのが僕のいいところのはずだ。

 

「それは………確かに僕は、可愛いと思ってしまったかもしれない。でも僕は………比べてしまったんだよ。」

 

「あの状況で私以外のこと考えてたの?もう少しでキスだってしそうだったのに。」

 

あからさまに大きな声を出している。完全に飲み込まれそうだ。しかしここで押し負けたら僕の不利は確実だ。

 

「そりゃあ………生憎とキスには慣れっこでな。あんな一方的なシチュエーション。受け入れられるわけがないだろう?」

 

「………慣れっこ?」

 

「あぁ、予想外だったか?僕には幼馴染がいるって言ったろう?スキンシップが過剰なんだよ。」

 

「………あぁそういうこと………。」

 

弱々しくその言葉を吐いた時鳥。まぁ次にくる言葉なんて予想できてる。そうして僕は考えてみる。突き放すために何だってするコイツと僕も同じなんだなって。

 

「いいの?それが誰か言っても?」

 

「目の前にいるんだから本人に確認取ればいいさ。」

 

僕は日常を捨てる覚悟なんてとっくにしていた。そうして気がつく。僕もなかなかに理性が弱い側の人間なんだと。

 

「そう………いいんだ………。」

 

「それで、もう終わりか?僕もこれ以上、事は大きくしたくないんだが?」

 

クラスの半数程度がいる教室とは思えないほど静まりかえっていた。まぁ普段目立ってない奴らの言い合いなんだ。それも結構激し目の一触即発状態だった。

 

「まぁ………分かったよ。でも教えて。私の何がいけないの?」

 

「そりゃあ決まってるだろ?お前は彩羅でも染羅でもないからだよ。」

 

言ってやった。僕は宣言してやった。堂々と、みんな聞いてる中で彩羅、染羅のことが好きだと。でも、異様に清々しかった。

 

「………あぁ、最初から無理だったんだ。」

 

「当たり前だろう?」

 

僕たち2人の会話はそこで終わった。緊張状態から解き放たれる。そうして僕は周りからの視線に気がついた。

 

「あぁ、そうか。言っちゃったんだったな。」

 

久々に頭に血が上っていて気が付かなかった。

 

「彩羅、染羅ゴメンな?」

 

「まぁ、いいけど………。」

 

「あんなに堂々と言えるんだね………雉矢って………。」

 

その静かな教室は依然混乱に包まれていた。

 

 その後は………そりゃあ死ぬほど大変だった。しばらく沈黙が続いたあと、待ち受けていたのは質問攻めだった。「幼馴染だったの?」に始まり「時鳥さんとは何があったの?」「キス慣れしてるって?」などであった。

 

 まぁ、答えられる範疇で答えたよ。時鳥のことについてはあまり深くは語らなかった。キス慣れ発言については嘘ということにしておいた。まぁ、これが本当だと確実に僕は干されるだろうからな。

 

「まぁ僕にも色々あったんだよ。」

 

と、それだけを語っておいた。そうして放課後。いつものメンツで僕達は帰路をたどっていた。

 

「いや、本当まさか雉矢があんな事言うとは思わなかった。」

 

「あれ結局何があったの?私は居なかったからよくわかんないんだけど?」

 

朱雀さんはそう言えばあの場には居なかったな。

 

「まぁ僕たちが幼馴染であるってことを言っただけだよ。」

 

「あぁついに言ったんだね?」

 

まぁついでにとんでもない暴露もしてたわけだが、これの方は伏せておく。

 

「まぁ、ちょっと早まりすぎた感はあるけどさ、しょうがないってことにしてる。」

 

「ほんと、びっくりしたんだから。」

 

染羅にそう言われる。

 

「彩羅も染羅も本当にゴメンな?」

 

「まぁ、私はいいよ。これで人目気にしなくていいわけでしょう?」

 

あぁ、これはちょっと面倒なことになりそうな予感もするけど、時鳥の1件よりかはいいかな。

 

「私も………便乗する。」

 

「染羅も?」

 

まさかこんなことになるとは思ってなかったな。まさか染羅までそんなことを言い出すなんて思わなかった。いっつもブレーキ役なのにもうリミッターが外れたみたいだな。

 

 あぁ、そういうことか。僕達は理性の弱い側の人間だったんだ。

 

「だって、彩羅ばっかりずるいじゃん?」

 

「まぁ、たしかにそうだな。」

 

「私もやっぱり一緒にいたいからさ。」

 

まぁ、それならそれでいいんじゃないだろうか?もう開き直ってもいいんじゃないかと思ってしまった。まぁ、いつか見た平穏とは程遠いけど、幸せならそれでいいんじゃないだろうか?そうして僕にとっての幸せは彩羅と染羅であった。それだけのことだ。

 

「なんかさ、小鳥遊くんも成長した感じがする。」

 

鳥塚さんにそう言われた。

 

「まぁ、そう思われているんだったらなんか、良かったな。判断が間違ってなかったって思えるからな。」

 

僕は、きっとあともう一歩前に進まなきゃいけないだろう。彩羅と彩羅の2人とずっと一緒に居たいが………きっとあと一歩が必要だろうな。

 

 そうして、そんな雑談をしながら鳥塚さんたちと別れ僕達は、3人きりになる。

 

「じゃあ、僕たちも行こうか。」

 

「そうだね。」

 

「じゃあ………手繋ご?」

 

「あぁ、いいよ。」

 

「えぇー、それじゃあ私も手、繋ぎたい。」

 

「彩羅も?まぁ、いいけど。」

 

「………独り占めしたかったのに………。」

 

そんなふうにいじけられるとちょっと締め付けられそうになるがまぁ、しょうがない………。

 

「まぁ、前も言ったろ?僕達は、三人一緒って。だから我慢してくれ?」

 

「………分かった。」

 

案外聞き分けが良くて助かった。あれからちょっと独占欲も発散されたのだろうか?

 

 まぁ、また独占欲がたまるだろうからその時は………僕もどうにかするさ。

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