疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです   作:夏之 夾竹桃

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第42話 お人好しだよ

 そうして、それから数日が経った。何時からだろうかはわからない。本当に気がついたら時鳥は干されるようになった。

 

 僕が本当のことを言ったからに他ならないだろう。しょうがないとは言え不憫であると僕は思ってしまった。どうにもお人好しは変わらないらしい。

 

 しかし、これではきっとあの時と同じになってしまうのではないだろうか?

 

「どうしたよ?雉矢?」

 

そう声をかけてきたのは夢七だった。そう言えばコイツは僕が時鳥の事で悩んでいるのをなんとなく察していたはず………。これで行くしか無いか。

 

「なぁ、夢七。話したいことがあってだな、時鳥のことなんだけどさ。」

 

そうして僕は夏休みのあの日の出来事も、時鳥の過去も話した。もちろん黒歴史は話さなかった。

 

「そ、そうか、色々あったんだな。」

 

「あぁ。それでなんだけどさ、僕は今の時鳥を見ているとどうも中学生のときみたいになるんじゃないかって怖いんだ。だからできれば助けてやりたい。」

 

「なんというか、本当にお人好しだな。」

 

「それが僕だよ。で、話を戻すとお前にも手伝ってほしいんだよ。」

 

「………俺それ必要かよ?」

 

「必要だから言ってんだ。頼れるのもお前くらいしか居ないんだから頼む。」

 

「そんなに言うんだったら………まぁやってやらんでもないけど。」

 

「本当にありがとな。」

 

そうして僕は夢七を味方につけることに成功した。さて、実を言うともう算段はできているのだ。そうして準備自体もこれでほぼ終わった。あと必要なのはタイミングだけである。言ってしまえばこれが一番難しい。

 

 時鳥自身、そうして時鳥を干している奴、それから僕たち。この3つ同じ空間に必要だ。なかなかに見分けが難しいのだ。

 

「しかしどうするんだ?」

 

「まぁ、算段はできてる。問題があるとすればタイミングとその場の問題次第なんだよ。」

 

その場に応じて何を言うかも変わってくる。そして何より今回のメインは僕ではない。あくまでも夢七なのだ。そうじゃないといけない理由がある。

 

 僕は今回の一件で時鳥と本格的に決着をつける気でいる。そうして“それ”を教えるのは僕じゃないといけないんだ。一番はじめに時鳥を救ったのは僕なのだから。そうだ。これが救った奴の責任なのだ。

 

「じゃあそうだな………中学生の時、お前はどうやって時鳥さんを助けたんだ?」

 

「あの時は、今とは比べ物にならないくらいに酷かったからな。強行突破でなんとかした。」

 

「あぁ………だからか。そりゃあ難しいはずだよ。」

 

「こういう陰湿なのには慣れてないんだよ。」

 

これが今回一番の課題だったか。しかし、やると決めてしまったのだ。やる他ないだろう。

 

「なに、方法は今から考えるさ。」

 

思い付けばいいんだけれど。なかなか今回は難問だろうな。

 

 陰口だとかそんなものしかまだ無い。このままずっと待ち続けるしか無いのか?いや、それはなんか僕が嫌だ。

 

「雉矢と白鷺君?何してるの?」

 

あぁそうか2人だけじゃなかったな僕たちは。彩羅、染羅の2人。この2人も事情は知っていたはずだ。じゃあ………いや“それ”を教えるには僕たち2人だけよりも彼女たちに協力してもらったほうが俄然効果があるだろう。

 

「彩羅、染羅、ちょっと話があってな。時鳥さんのことなんだけどさ。」

 

その名前を口にした途端少し身構える2人。

 

「いや、今回はなにかされたってわけじゃないんだ。ただ………ちょっと中学生の頃の時鳥を見ているようでな。」

 

「まさかだけど、助けるの?」

 

「僕はそうしたい。そんでもって2人にも協力してもらいたいんだ。」

 

流石に駄目だろうか?いや、それは分かっている。ダメ元なのだ。

 

「………本当、雉矢はお人好しなんだから。あのときの約束守ってくれるよね?」

 

染羅がそういった。あのときの約束はきっとあの夜の約束だろう。だから僕はこう返した。

 

「あぁ、どこにも行かない。」

 

「じゃあ、私は賛成。」

 

染羅が珍しくこの手の話に乗ってくれた。きっとそこまであのときの約束を信用しているらしい。それは、彩羅も同じだったようだ。

 

「私も。染羅がやるんだったら私もやるよ。」

 

「ありがとうな。僕に付き合ってもらって。」

 

そうだ、今これは全員僕のエゴに付き合ってもらってる。だから、絶対に成功させるしか無い。

 

「でも………どうするかなんだよな。」

 

「夢七の言うとおりなんだよ。僕も現状何も思いついてないんだから。」

 

現状一言で言うのなら………無計画だった。言ってしまえば馬鹿だった。ここまで何も考えが至ってなかった。そうしてさっきも言った通り待つという選択肢は僕にはないのだ。

 

「まさかのノープランだとは思ってなかったけどな。」

 

「本当にただ僕はお人好しなだけなのかもしれないな………。」

 

ここまでの無計画は流石に自分の首を絞めかねない。これはちょっとまずかったな。

 

 さて、結局時が過ぎていくだけのオチなんて僕は嫌だ。何か行動を起こさないと………。

 

「時鳥さんさ………。」

 

そんな声が聞こえた。いや違う。あえて聞こえるように言っているやつがいる。

 

「ちょっと顔がいいからって調子に乗ってない?」

 

それに対し時鳥は無言を返した。学んでいたのだ、無視が効果的であることを。

 

「あぁ………そう。無視か。わかってるじゃん。」

 

まずかった。遅かった。既に時鳥は鬱憤晴らしに使われている。

 

「そんなに無視してたら誰もかまってくれないよ?アンタの好きな小鳥遊くんでさえ。まぁ、小鳥遊もあなたの事煙たがってたけど。」

 

「確かに、私は酷いことをした。それは充分わかってる。だから距離をとっているの。」

 

「反省は?」

 

「誰かを好きになるのはそんなに悪いこと?」

 

「………好きになることを言ってるんじゃない!そのエゴを押し付けることを言ってるの!ちゃんとそこは反省してるの!?」

 

数拍おいて時鳥は続けた。

 

「私は………理性の弱い人間だから。」

 

「だから?それだけ?」

 

「それだけよ。」

 

「それだけで済まされるわけ無いだろ!?小鳥遊くんはそれで心に傷を負ったかも知らないんだよ!?それだけで済ませるなよ………。」

 

そうか………時鳥さんを責めているあの人。正しいことを言っているあの人。名前は確か………。

 

「美羽………?」

 

そう言ったのは彩羅だった。あぁ、あの時か。僕も彩羅、染羅の交友関係を把握しているわけではない。雀田 美羽。そうか、彩羅と染羅が転向してきたときひたすらに質問攻めをしていたあのリーダー格。

 

 あのあと仲良くなっていたということか。

 

「分かったよ………アンタは本当に自分のことしか考えてないんだな。小鳥遊くん受けたが心の痛み、そのまま返してやるよ………。誰も構ってくれないなら、私がかまってやるからさ。」

 

これは、ちょっと不味いが………丁度いいかもしれないな。

 

「………やるか。」

 

「やるのか?」

 

「あぁ。」

 

そうして僕は席を立った。

 

「雀田さん、ありがとな。」

 

「小鳥遊も、言ってやりなよ。」

 

「僕は距離が取れただけでいいんだよ。これ以上は何も望まない。それに何より………もう、時鳥を責めないでやってくれ。コイツは昔もイジメられてた。だからもうコイツのことを振り回さないでくれたら助かる。」

 

「………本当にそれでいいの?」

 

「いいんだ………ここであの時を繰り返したらそもそも僕のしたことが無意味になるからな。まぁ、雀田の言ってることは正しいよ。」

 

「小鳥遊………そう言う事ならまぁ良いけど………なんかあったらもう何もできねぇぞ?」

 

「承知の上だよ。」

 

「………小鳥遊くん。やっぱり小鳥遊くんは………。」

 

そこまで言った時鳥に対して僕は“それ”を言った。

 

「救ってくれるやつなんて他にもいるよ。だから僕に固執するな。」

 

「でも………。」

 

「でもじゃない。あいつ等はお前のことを助けようとしていた。ただ、今回は僕絡みだから僕が出ただけだよ。だからもっと、馴染んだって構わないよ。嫉妬するやつなんてこの教室には居ねぇよ。」

 

「………本当?」

 

「本当だよ。僕達が保証する。」

 

本当に、僕はお人好しだよ。嫌いなはずの「根拠のない大丈夫」を僕は今回も使ってしまったんだからな。

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