疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです 作:夏之 夾竹桃
秋も深まってきた頃。あれから時鳥の俺に対する異常なまでの執着は治まった。
そんなある日。僕の部屋には珍しく彩羅と僕だけが居た。曰く、染羅に無理を言って2人きりの時間を貰ったらしい。
確かに、思い返してみれば最近僕は染羅とばかりいた様な気もする。
「それで………まぁ久々に我儘を言ってみようかな………なんてね………。」
顔は笑っている。でも声は………悲しそうであった。
「確かに、私達は付き合ってないけどさ………やっぱり甘えたいなって思っちゃった………。」
「なんか、ここ最近らしく無かったけどどうしたんだよ。」
「何ていうかさ………私も時鳥さんみたいになっちゃうんじゃないかなって心配になってさ。」
「あぁ………つまり、我慢してたってことか?」
「………うん。」
まぁ、ここ最近色々ありすぎたからな。
「そんなに気にしないよ。だって、時鳥と彩羅は違うじゃんか。」
「それでも、不安になるもんだよ?」
「そんなもんなのか。」
僕もはっきり言って彩羅の気持ちが全部分かるわけじゃない。だから、大丈夫としか言えないのだ。たとえ本人が気にしていても、そういうしか僕にはないのだ。
「そんなもんなんだよ。だからさ、今日は2人っきりにしてもらったんだ。」
「なるほどな。」
「………それでなんだけど、甘えてもいい?」
「まぁ、いいよ。」
「じゃあさ、あぐらかいて?」
「?こうか?」
そうして僕が問いかけるとおもむろに彩羅はその上に乗ってきた。
「な、何してんの?」
「一回、やってみたくてさ。だめだった?」
「駄目じゃないけど、何ていうかこういうのは初めてだからちょっとびっくりした。」
「まぁそうだよね。でもさ、なんか新鮮でよくない?」
「まぁ、わからんでもないよ。」
そのまま、僕たちは時間が過ぎていくのを感じていた。何も会話なんてなかったが、それで良かった。なんと言うか、そのほうが落ち着くのだ。
「ねぇ、雉矢。抱きついてもいいんだよ?」
「………はいはい、分かったよ。」
そうして僕は彩羅に抱きつく。と、いうか抱きしめる。きっとそうしてほしかったんだと思う。
「温かいね。」
「そりゃあ、彩羅の方は全身包まれてるからな。」
「雉矢の方はどうなのさ?」
「まぁ、多少なり温かいけよ。まぁ、いいよ。」
「ありがとね。」
「幼馴染なんだからさ。」
そうして僕は考える。やっぱり幼馴染なんだろうか?彩羅、染羅のことを幼馴染としてしか見ることができないのだろうかと。
結局、僕にとってはこの距離が心地いいんだ。だから………停滞を望んでしまうのだろう。なんだろうな、こんなことになっておきながら、それでも僕は変わりたくないんだって情けないにもほどがある。
「やっぱり、幼馴染?」
「やっぱり幼馴染。そのほうがいいような気もしてるんだよ。」
「それならそれでも構わないよ。」
そう言ってくれるけども………悩んでるってことは好きってことなんじゃないだろうかな、なんて考えてしまう。僕もいい加減、決めなきゃいけないだろう?
あと少しと言うわけではない。でも段々と近づいていってる気がするのだ。自分の出す答えというやつに。
「それでも、やっぱりちょっと寂しいかもな。でも慣れてきちゃった気もしてる。雉矢は昔からそうだったから。」
「僕もだんだん、この状況に慣れてきてるかもそれない。まぁ、それってどうなんだろうって話ではあるけども。」
「いいんじゃない?これが私達の距離感ってことで。」
「確かに、そう考えるのが一番普通かもしれないな。」
やっぱりこれが一番良かったんじゃないかと、僕は本気で錯覚してしまった。なんと言うか僕は本当に何も考えてないやつだな。
「………そう、だね。」
少し間をおいて、彩羅の震えた返事が返ってきた。態勢は変わってないので顔は見えないが、ここまで密着してるんだ。呼吸の変化や心音なんかで今の彩羅の状況は粗方分かった。
「彩羅?」
「私だってできることならそうしたかった。でも、できるわけないんだよ………私はやっぱり、雉矢のことが好きなんだから。」
そりゃあそうか。ここまで想い続けてきたのであればその気持ちはそう変わるようなものではないだろう。なんで僕はそんなことにも気が付かづにあんなことを言ってしまったのか。つくづく自分に腹が立つ。
「ごめんね。なんかさ………泣いちゃいそうで。」
「いいんだよ。お前の涙なんて今までどれだけ見たと思ってるんだ。今更だよ。」
何を言ってるんだろうか僕は。いや、きっとなんて言ったらいいかわからないのだろう。
「それもそうなんだけど………。」
「大体、それでいったら謝るのは僕だよ。僕はどうしても応えられなかった。ただ怖かったんだ。僕はこれまでの関係が一番良かった。だから多分………どっちにも応えられないかもしれない。」
何も、頭の中で整理をつけることができないでいた。
「はぁ………寂しいな。」
「ごめん………。」
嫌な沈黙だった。お互いに何も話せない。それでも僕は彩羅を離せないでいた。
「………手、解いたほうがいいか?」
僕から出てきたのはそんな悲しい言葉だった。
「嫌だ!」
その否定の声は力強く響いた。
「それでも離れたくないんだよ!やっぱり好きなんだよ!絶対、雉矢のこと振り向かせるってそう決めてるから………だから絶対に嫌だ!一緒に居たいんだよ………!」
「………そうだったな。」
そうだ。彩羅はそういう奴だった。食い下がらないのが彩羅のいいところじゃないのか?
「だから、絶対にこの手を離さないで?」
「今日、本当に謝ることばかりでごめんな。僕が間違ってたかもしれないよ。」
「有耶無耶にしたら………許さないからね?絶対に白黒つけてよ?」
「あぁ。分かったよ。」
「もう、最初はただ甘えるだけのつもりだったのに。変な涙流しちゃった。」
「本当、悪かったよ。」
「本当だよ。我慢した分と泣かせた分、とことん付き合ってもらうからね?」
あぁ、なかなか面倒なことをしてしまったような気もするが僕が招いたことなんだししょうがないだろう?それに、こういうのも悪くはないだろう。
「うーん、この態勢も良かったけど、やっぱり顔見えないから一回向き合おう?」
「あぁ、いいけど?」
そうして僕と彩羅は向き合う。
「まだ、泣いてんじゃん?」
「好きな人だからこそ見せれる涙もあるんだよ。」
「そんなものなのか?」
「そんなもんなんだよ。」
きっと、彩羅の中じゃもう涙の意味は変わってるのだろう。その意味を僕が完璧に知るような術なんてものはないが………きっと、つっかえていた物が取れたんじゃないかと、僕は思っている。