疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです 作:夏之 夾竹桃
あれから、どれだけの時間が経っただろうか。結局僕は明確な答えは出せてなど居ない。
そのままもう12月になってしまっていた。そうして僕は今、何をしているかと言うと………寝込んでいる。
いや、なに。ちょっと風邪を引いただけだ。
いや言うほどちょっとじゃないかも知れない。まぁ、幸いながら今日は金曜である。明日、明後日とそれなりに休むことができるのが救いか。
現在の時刻は17時半。彩羅と染羅は今どうしているだろうか。
そんなことを考えているあたり、前に染羅に言われたことが身にしみてわかる。
「雉矢?起きてる?」
聞こえてきたのは今まで慣れ親しんできた声だった。
「………彩羅?」
「うん。染羅も一緒。」
「風邪、伝染るからあんまり近づかないようにな?」
「うん。」
そうして、2人は僕の部屋に入ってきた。染羅は、少し複雑そうである。まぁ………あんなことがあったから無理もないだろう。
「それで雉矢、体調は少しでも良くなった?」
「うーん………正直あんまり。まぁ、そう大したことにはならないだろうけど。」
「油断は駄目だよ?」
「そりゃあもっともだな。まぁ頑張って治すよ。」
「うん。早く直してよ?じゃあこれ、今日の課題とかいろいろ。ここに置いておくね。」
「あぁ、ありがとうな。」
「………あのさ、もうちょっといてもいい?」
「え?伝染ったらまずいだろう?」
「いや………ここにいるからさ。駄目?」
「………自己責任でな?」
「うん。」
僕と彩羅が話している間、染羅は一言も喋らなかった。それが何よりもやもやする。僕がどうするべきなのか自分でもわからないから………何もわからないからもやもやする。
今この場は本当に居心地の悪い空間である。僕が何も決めることができない故にこうなってしまったのだ。
本当に………何をしたらいいのか自分でもわからない。
「ねぇ、雉矢。」
「………どうした、染羅。」
「あれから答えは出た?」
「………ごめん。」
「………急かしたいわけじゃない………ただ、答えが聞きたいだけ………。」
その言葉に僕は何も言い返せなくなる。『答え』、それはきっと序列のことではないだろう。
僕が染羅にどうしていて欲しいのか。それがきっと『答え』なのだろう。
「僕は………染羅とも彩羅とも………一緒にいたい………。」
「それはわかってる。だからそれは答えじゃない………。」
「染羅、少しはタイミング考えたら?」
「いや、いいんだよ彩羅。僕にはこういう時間が必要だったんだよ。多分染羅の言いたいことっていうのは、これから先の関係の話だろう?」
「うん。」
………僕は………確かに2人のことが好きらしい。その中で答えを出すのが今の僕の置かれている状況だ。でも………。
「まだ………答えなんて出ないんだ。何よりも僕は………失うのが怖いんだ。安易な答えで………崩れるのは嫌なんだ………。」
これが………今の僕である。未来が怖い。それが今の僕から出る答えである。
「………ようやく正直になってくれたね。」
「え………?」
「雉矢は感情を隠すのが得意なのは知ってた。それで思い込むことによって怖さを紛らわせてることも。だから選びたくなかったって言うことも。」
「………わかってたんだ………。」
「私も、伊達に幼馴染やってる訳じゃないから。でも、これは役割のお話。序列じゃなくてどこにいて欲しいかの話。」
「どこにいて欲しいか………。」
「多分、雉矢はハッキリしてない。きっと彩羅も私も隣にいてほしいと思ってる。じゃあ、どっちと手を繋いでたい?」
僕はその瞬間ハッキリとイメージしてしまった。駆け出す彩羅を引き止めるために僕がその手を掴むその瞬間を。
「………。」
「………そっか、彩羅なんだね。」
何も言うことができない。僕のこの選択が崩壊を招くかもしれないのに何も言えない………。
「それでいいんだよ。」
染羅は、ただ一言そう言った。2人は暫く僕の部屋に残っているようだった。
ただ、これで良かったのだろうかとその感情だけが渦巻いている。そんな中でも体調面が邪魔をする。
僕の思考を遮るようにして眠気は襲ってきた。そうして僕の意識は落ちていったのだった。
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寒い12月の土曜日。その日僕は慣れない体の重さによって目覚めた。お腹辺りになにかある。
「ん?染羅………?」
寝起きでもすぐにわかった。染羅である。彩羅の姿を探してみるも居ない。
「って、こんなところで寝たら風邪引くだろうがよ………。」
かく言う僕の体調はすっかり………とは行かないものの良くなっていた。
どうしようか。このまま放置というわけには行かないだろう。そうして僕のベッドは駄目だ。多分まだ治ってないからこのままだと伝染してしまう。
「あぁ、母さん………。」
多分それが最善策だろう。そうと決まれば、と僕は染羅の体を抱きかかえる。
この寒い中………僕のことを診ててくれたその人。室内とはいえ冬の朝は寒い。ともかく連れて行かなければ。
なんと言うか………軽いな。女の子っていう感じがする。こんなときに何を考えてるんだろうか。
リビングまで降りてきたときである。母さんの姿が目に入った。
「あぁ、母さん。」
「雉矢?体調は?って染羅ちゃん!?」
「あぁ………つきっきりで診ててくれてたみたいでさ、流石に僕のベッドはまずいから母さんのところ使ってもいい?」
「それは構わないけど………。」
「ありがとう。取り敢えず染羅を連れて行かなきゃ。」
「う、うん。」
そうして、僕は染羅を抱きかかえたまま母さんの寝室まで運ぶ。その途中だった。
「ん?雉矢?」
「染羅………起こしちゃったか?」
「ううん。大丈夫だけど………どうして?」
「………染羅、つきっきりで診ててくれたんだろう?僕に覆いかぶさる感じで寝てたぞ?」
「ご、ごめん。」
「謝る要素はないだろ。それより………本当にありがとうな。それと………大丈夫か?」
「?何が?」
「いや、布団もかけずに寝てたから、今母さんの寝室まで運ぶとこだったんだ。流石に寒いだろう?」
「………雉矢のベッドでも良かったけど。」
「風邪が伝染ったら本末転倒じゃねぇか。」
「それもそうだね。」
「はい、着いた。」
そうして僕は、染羅をベッドに下ろす。
「冷えきってたからな………温かい飲み物とかいるか?」
「………ココアってある?」
「確かあったと思う。ちょっと持ってくるな。」
「ありがとう。もともと看病しに来てたのに………。」
「染羅も結構無茶するんだからな。まぁ待っててくれ。」
「………うん。」
そうして僕はほんの少しの時間そこをあとにした。本当に………30秒程度。
「持って来た………染羅………?」
そこに、染羅の姿はなかった。ただ窓が空いていた。
これは………ヤバい。すぐに彩羅に伝え無きゃならない。
『え!?染羅が!?』
電話越しでもわかるくらいには彩羅も焦っている。
「本当にごめん。今回の件、責任は僕だだから僕が探しに行く。まだ、そんなに遠くには行けてないはずだから。」
『でも雉矢、体調はまだ良くなってないんじゃない?さっきからちょっと鼻声だし。私が行くからそこに居て?』
「だから………今言ったろ?この件は僕が原因なんだよ。それに何より………今日僕は色々わかったんだ。染羅の本当の気持ちだったり………僕自身の本当の気持ちだったり。」
『雉矢………風邪引いても知らないからね?』
「ありがとう。じゃあ彩羅はそのまま待っててくれ。」
『わかった。』
「………じゃあ、行ってくるよ。」
そうして僕は服装もそのままに家を飛び出した。
次回、最終回です。