疎遠になっていた双子の幼馴染と再開したらやっぱり僕は奪い合われる運命にあったようです   作:夏之 夾竹桃

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第5話 お返しのお返し

 朝、目が覚めた。僕は現実へと戻ってきていた。昨日の夜のことは、やっぱり夢のようだ。思い出す度にあのときの染羅の体温、匂いまでも蘇る。そうして、またドキドキとしていることに気がつく。どうしてこの感覚には慣れないのだろうか?少し苦しい。なのに、心地良い。その感覚に慣れることを身体が拒否している。むしろ、求めている。しかし、一概に染羅のことが好きと言い切れたものではない。まだ僕は何故この感覚を求めるのかという明確な理由が分かっていない。だから、これが恋愛感情なのかわからないのだ。僕は、彼女の存在を欲しているわけでは無い。だから、多分違う………。

 

「僕は…ろくに恋愛もしたこと無いのに何語ってるんだろう。」

 

そう、一言呟いた。何も解ってないのに決めつけるなんて僕もまだ浅いな。分かっているのは、あのときの状況に対してドキドキしていたこと。これを実質的な『好き』と結び付けられることができるのかどうか。まだ、わからないだろう。これから理解していくことはきっとできる。彼女たちといたら、きっと『好き』がわかる時が来るだろう。

 

「今日も頑張るか。」

 

その一言とともに、僕の1日は始まった。

 

 いつものように朝の支度を済ませ、いつもの時間に家を出る。母と挨拶を交わし目の前を見るとそこには、待ってましたと言わんばかりの表情の彩羅と染羅が立っていた。

 

「おぉ、来たね。おはよ、雉矢。」

 

「おはよう、雉矢。」

 

「お、おはよう。呼んでくれたら早めに準備したのに。」

 

「私達も今個々に来たところだから。ちょうど呼ぼうと思ってたとこ。」

 

そうして、僕たちは雑談を交えながら登校をしていた。途中、クラスメートと会ったりもしたが偶然家が近かったということにしておいてなんとか誤魔化すことに成功している。実際家の場所はすぐ近くだ。家を数件挟んだところにある。まぁこれで一緒にいることの言い訳ができたのだからラッキーだ。その後、何事もなく学校へと到着した。そこまでは良かったのだ。それは、生徒玄関にて起こったことだ。

 

「昼休憩さ、北校舎来てよ。」

 

その声を発したのは彩羅だった。うちの学校は、北校舎と南校舎が渡り廊下でつながっている作りをそている。南校舎が生徒教室メインに対し、北校舎は特別教室メインであるため昼休憩などのときには人通りはないに等しい。つまり………嫌な予感はしている。しかし断る義理はない。それに少し、気になっている自分がいる。

 

「あ、あぁいいけど。」

 

僕はそう答えた。何が待ち受けているかわからないがそうした。

 

 昼休憩。あまり乗り気ではないところだが約束してしまったものは仕方がない。僕は北校舎へと向かった。渡り廊下の向こう側に人影が見えた。身長的にも彩羅だ。

 

「来たよ、彩羅。」

 

「ありがと。それで早速本題なんだけれど………昨日の夜、染羅とハグしたんだってね。」

 

その言葉で昨日の記憶がフラッシュバックする。2人しかいない公園のブランコの前での出来事。また少し胸が高鳴り始めていることに気がついた。

 

「………多少語弊はあるけれど、されたよ。」

 

「されたんだ………雉矢は、ハグ仕返したの?」

 

その言葉に声が詰まる。あの時、僕は無意識化ながら染羅のことを抱きしめようとしていた。これは仕返したことになるのだろうか?

 

「………しようとした。」

 

「それは自分の意思で?」

 

「………うん。」

 

「そっか。正直に答えて。染羅こと好きなの?」

 

まだわからないはずだ。答えは出てきていないはずだ。ただ、自分からも抱きしめようとしたその事実は残っている。そうするともしかしたら僕は…………。

 

「………好きなのかもしれない。」

 

「曖昧な。」

 

「恋愛なんて、わかんないよ。」

 

「そっか。まだ、わかんないんだね。じゃあまだ、上書きできるよね………。」

 

後半呟くようにそう言った彩羅は僕に向き合った。そうして一言『お返しのお返し』と呟くと僕の方に飛び込んだ。どこか重なり合うものを感じた。しかし、その腕は僕の背には回されていなかった。あっけにとられていると彩羅が話しかけてきた。

 

「雉矢の方からハグして?」

 

「え………?」

 

「いいからして。」

 

駄々っ子のようにねだる彩羅。こんな姿は初めてかもしれない。僕は言われるがまま彩羅に手を回そうとした。しかし、その時はまだ最後まで手を回すことができなかった。

 

「なんか、いけないことしてるような気分。」

 

「学校で女の子にハグしようとしてるから?」

 

「それもあるけどさ。」

 

「染羅のこと?」

 

「やっぱりわかるんだね。」

 

「いいんだよ。これは昨日大胆なことしすぎた染羅へのお返しなんだから。」

 

「………そうか。お返しか。」

 

そう言って僕はゆっくりと彩羅の背中に手を回した。されたことはあったが、自分からハグするというのはこれが初めてかもしれない。僕の初めてというのは全部、彩羅に奪われていく。こんなことしてるから染羅も嫉妬するのだろう。

 

「染羅のこと考えてる?」

 

「………考えてる。」

 

幼馴染というのは怖いものだ。まるでエスパーみたいに内面を読み取られる。

 

「いつかは、ハッキリさせてよ?」

 

「あぁ、分かってる。」

 

そう言いながら僕は彩羅のことを抱き寄せている腕を離した。

 

「もうおしまい?」

 

「こんなはっきりしないやつに抱きしめられたってもやっとするだけだろう?」

 

「まぁ、うん。ちなみに今どっちのほうが好き?」

 

「だからわかんないって。でも、多分まだ同じくらいなんじゃないかな。」

 

「まだ同じくらいか………染羅も強いな。でも十分すぎるくらいにはドキドキしてたよ?」

 

「………恥ずかしいからやめてくれ。あと、それを言うのであれば彩羅だってめちゃくちゃ顔赤いよ?」

 

「あぁもう、知ってるよ!」

 

そう言って吐き出すように言葉を投げかけ彩羅は走っていった。これもまた公園で見たような景色だな。やっぱり姉妹なんだな、と実感させられた。しかし僕もいい加減、気が付けるようになりたいものだ。まだ自分の気持ちがはっきりしないってそれは流石にない。白黒つけなければ。この胸の中にあるもやっとした気持ちを取り除かなければ。

 

 照れ隠しの言葉とともに私は走り出した。正直ここまで大胆なことができるとは思ってなかった。自分を制御できなかった。染羅に対する嫉妬。染羅と雉矢がハグしたというその事実に対する嫉妬。そうだ染羅が悪いんだ。昨日の夜の出来事を染羅が私に離したかたらいけないんだ。こんなこと自業自得だよ。でも、私の中では上書きできた。雉矢は、染羅とハグした人ではなく私とハグしてくれた人になった。これだけでも私は嬉しい。私も雉矢のことが好きだから。染羅が思ってるよりもずっと好きだから。今日のことは染羅には黙っておこう。マウントを取るんじゃなく、私の中での思い出にしよう。でも、このこと染羅が知らないってなるとどうしてもほくそ笑んでしまう。どうしても、嬉しくて。私って性格悪いのかな………。

 

 見てしまった。彩羅ちゃんと小鳥遊くんがハグしてた。私の告白が断られた理由ってこれだったのかな?でも、初対面のはずなのに。自分でもびっくりしているが、私は小鳥遊くんに告白したはずなのにそこまで嫉妬心が起き上がっているわけではない。と、言うか今はそんなことどうでも良くなるくらい2人の関係が気になっている。どういう関係なのだろう?今日、帰りに聞いてみようかな?修羅場になったりなんてしないよね?なんだか怖い。小鳥遊くんが1人の時に聞いてみようかな………。私って本当に小鳥遊くんのこと好きなのかな。その疑問はもう一度私の前に浮かび上がってきた。

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