UC:0096 The Verdict Day   作:刀の切れ味

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アーマードコアではエネルギーやレーザーと表現されてたところを、ガンダムの世界観に合わせてビームに変えたりしてます。


EP.04 Cord e

 

 事の発端は地球から七万五千キロメートル以上離れた宇宙から始まった。そこには、スペースコロニーが造られ、人々が宇宙へと進出した宇宙世紀の今でも変わらず漂う『火星』がある。

 勿論、火星にもいくつかの植民地やコロニーはあるが、資源に乏しいこの星は未だに未開拓の地が広がったまま。少なくとも、多くの人々がそう思っていた。

 そんな侘しい火星の紅い大地の上を進む戦艦『レウルーラ』、そのブリッジでどこまでも続く地平を眺める偉丈夫、仮面で素顔を隠す一人の男がいた。

 

「大佐ともあろうお方が、何故このような僻地にまで……」

 

「そう言うな、アンジェロ大尉。組織のトップが接触してきたのだ。ならば、こちらも上の人間が対応するのが、礼儀というものだろう」

 

 側に控えていた青年の士官に対して、窘めるように言い聞かせる仮面の男。青年は納得いかない様子だったが、それ以上口を挟むことはなかった。

 

「それにしても……『企業連』か。彼らの目的が何なのか、それはまだ測りかねるな」

 

「所詮はアナハイムとの開発競争に敗れた負け犬どもの集まりでしょう」

 

 このレウルーラとそのクルーたち、彼らは世間で言うところのテロリスト。『袖付き』と呼ばれるネオ・ジオン軍の残党だ。

 シャア・アズナブルによる地球圏への粛清とアクシズ・ショック、三年前に起こった第二次ネオ・ジオン抗争で散り散りになったネオ・ジオン残党勢力の一つなのだ。

 そんな彼らがわざわざこの火星くんだりまでやって来たのは、勿論きちんとした理由がある。

 

「そろそろアサバスカ渓谷だ、周囲の状況は?」

 

「特に怪しいものは──いえ、これは……!」

 

 仮面の男がクルーに問いかけると、周囲を探っていたレーダーがレウルーラへと発せられる信号を見つける。

 火星の大地にある裂け目から伸びる光の線、それはガイドビーコンだ。渓谷にある何かが、レウルーラを導こうとしている。

 

「……いかがしますかな?」

 

「こちらは招待された立場だ、待たせるわけにもいかないだろう。このままビーコンに従うとしようじゃないか」

 

「ではそのように」

 

 レウルーラの艦長であるヒル・ドーソンが指示を出すと、レウルーラがガイドビーコンに沿って渓谷の中へと降りていく。すると、その中腹まで差し掛かったところで、岩壁がゲートのように開いた。

 その先には、ライトに照らされた軍港があった。まさに秘密基地といった大掛かりな仕掛けと徹底ぶりに、仮面の男は少し驚いたように片眉を上げる。

 

「まるでジャブローだ、懐かしいものだな」

 

 軍港に入り所定の位置で機関を停止させたレウルーラに、軍港の壁面から伸びて来た連結橋が繋がる。そして、ドーソンがクルーに着艦作業を進めるよう指示しているのを尻目に、仮面の男はデッキを後にする。

 

「セルジ少尉とキュアロン中尉にMSで待機するよう通達。アンジェロ大尉は私と来てくれ」

 

「はっ!」

 

「さて……荒事にならなければいいのだが、な」

 

 レウルーラのハッチを開いて、連結橋に立つ仮面の男とアンジェロ。それを出迎えたのは壮年の男と側に控える二人の秘書だった。

 

「ジオ・マトリクス本社基地、『ニューザイオン』へようこそ。私は代表取締役を勤めるレオス・クライン。宜しく頼む、フル・フロンタル大佐」

 

「丁重な歓迎、感謝いたします」

 

 遠い船旅を労うように静かに一礼する壮年の男、レオス・クライン。それに対して仮面の男、フル・フロンタルも礼を返す。それからフロンタルらはクラインとその秘書たちに案内され、応接室へと連れて行かれる。

 高そうなソファーに腰掛けたフロンタルと、それを守るように脇に立つアンジェロ。同じような構図で向かい合うクラインは、フロンタルを見て僅かに口角を吊り上げる。

 

「赤い彗星の再来とはよく言ったものだ。やはり、所詮は紛い物か?」

 

「貴様っ……⁉︎大佐に向かってよくもそんな事を!」

 

 開口一番にフロンタルへの侮辱とも取れる言葉、それにアンジェロは激昂しかける。しかし、フロンタルは片手を上げてをそれを制する。

 

「仰るとおり、私は本物のシャアではない。己を器と規定した贋物だ。だが、人々がそう望むのなら、私はシャア・アズナブルであり続ける。紛い物には紛い物なりの、役割というものがあるのだよ」

 

「……その役割というのは?」

 

「全てのスペースノイドを真の自由に導くこと、それだけだ。ただ与えられた役割であろうと、私はそれを全うするのみ」

 

「ふむ……面白い男だな、君は」

 

 自らを器と称したフロンタルに、クラインは興味を示すように顎に手をやる。フロンタルもまた、自身の本質を見抜いたクラインに一目置いていた。

 

「先ほどの発言は撤回しよう。無礼な真似をした、すまなかった」

 

「気にする事はない、貴方の言った事は真実なのだから」

 

「……では、与太話はこれくらいにしておこう。早速、本題に入ろうではないか」

 

 クラインの秘書が入れた紅茶に口を付けながら、フロンタルはクラインの次の言葉を待つ。しかし、それはフロンタルも予想していない言葉だった。

 

「……ビスト財団から『ラプラスの箱』の引き渡しを持ちかけられたろう」

 

「ほう?」

 

『ラプラスの箱』という言葉にぴくりと反応するフロンタル。しかし、クラインは冷淡な無表情を少しも崩さない。

 

「よくその情報が得られたものだ、『企業連』も中々に侮れない」

 

「上層にはビスト財団と繋がりがある者もいる。特に不思議なことでもないだろう」

 

 その中身が世に放たれれば、世界を変えるとすら言われる『ラプラスの箱』。箱を手中に栄華を築いたとされるビスト財団。全て、何の根拠もない噂話でしかなかった。

 しかし、それは確かにある。連邦政府が恐れるラプラスの箱、その呪いは決して妄想の産物などではない。

 

「何故、ビスト財団が君たち『袖付き』に箱の譲渡を持ちかけたのか……そんなことはどうでもいい。重要なのは、箱が開かれるという事実。その一点のみだ」

 

「箱が開かれれば、間違いなく世界は混乱の渦に飲み込まれる。連邦政府がスペースノイドの自治権を認めてくれれば、我々はそれで良いのだ。箱の中身によっては、開かずに交渉の材料とすることもあり得る」

 

「生温い、連邦政府が容易く首を縦に振るとでも?不可能だ、根まで腐り切った大樹に新たな萌芽など、期待できるはずもないだろう……一度切り払い、種から植え直さねばならん」

 

「つまり……そちらの目的は連邦政府の転覆そのもの。そう解釈してかまわないかな?」

 

「その認識で結構。連邦政府が樹立したあの日から、我々は準備してきたのだから」

 

「ふむ。それで、我々と手を組もうということか。しかし、我々は連邦政府を崩壊させようなどとは考えていないのだが……」

 

 口をつけたティーカップをソーサーに戻しながら、フロンタルはクラインを試すように問いかける。

 

「我々はこの宇宙の為に、全てのスペースノイドの為に戦っている。では、貴方はどうだ? 力を振るうに値する理念を持っているのか?」

 

「……」

 

「連邦政府を転覆した後は? その後はどうするというのだね。まさか、代わって企業連が支配するつもりなのか?」

 

「……支配、か。やや意味合いが異なるな。我々が目指すのは『管理』だ」

 

 そう言ってクラインが手元にあったコンソールを操作すると、応接室の壁が開き、大きなディスプレイが現れる。

 暫くすると、その画面にとあるものが映し出される。火星の紅い大地に立つ、二機のMSだ。

 

「RGM-86R ジムⅢ。連邦の現主力機であるジェガンには劣るが、未だ現役の量産機……これが今回の演習の相手だ」

 

 そう言ってクラインが画面を切り替えると、また別のMSが映し出される。しかし、それは連邦ともジオンとも違う、全く系譜の異なるMSだった。

 人型ではあるものの、機械的で独特なシルエット。赤く光るモノアイとセンサー、各所に搭載された多彩な武装。それは正しく兵器といった出立ちだった。

 

「これは……MS、と捉えてよろしいか?」

 

「MSとはやや異なるが、大まかに捉えればそうなる。我々はあれを『アーマード・コア』と呼称している」

 

 クラインがアーマード・コアと呼んだ兵器に、フロンタルとアンジェロは訝しげに視線をディスプレイへと向ける。

 

「『AC-03 クレスト白兵戦型』、あれが我々の主力機と言っていい。我々にも力があることを示すには……丁度いいだろう?」

 

「……では、じっくりと拝見させてもらおうではないか。その、『アーマード・コア』の性能とやらを」

 

 

 ──

 

 

『Good Morning. Main System Checking Pilot Data』

 

 コクピットのコンソールに示されるメッセージを目で追いながら、静かに操縦桿を握る女性のパイロット。

 彼女が搭乗するのは、企業連が独自に開発したMS『AC-03 クレスト白兵戦型』。遠方に控えるジムⅢを見据えながら、その時を待っている。

 

『この試験では実弾を使用している。失敗すれば、その時は死ぬだけだ。覚悟はできているな?』

 

 通信から聞こえて来る無機質な試験官の声に、女性パイロットは何も言わずに頷く。そして、コンソールをタッチして操作すると、全システムを戦闘モードへと移行させた。

 

『Main system Activating Combat Mode』

 

 内燃機関が唸り、機体が呼吸するように熱を持っていく。完全な臨戦態勢に入ったクレスト白兵戦型は背部の装甲板を展開し、一対の大きな噴射口を覗かせた。

 

『……ミッション開始、全敵戦力を殲滅せよ』

 

 試験官の合図と同時に、女性パイロットは背部の高出力推進機である『オーバード・ブースト』を起動させる。

 青い炎を噴き出しながら、一瞬にして最高速度に達するクレスト白兵戦型。女性パイロットは凄まじいGに耐えながら、遠方で動き出したジムⅢへ照準を定めた。

 

「標的補足……」

 

 クレスト白兵戦型がマニピュレータに握る大型のマシンガンを、突撃して来るジムⅢへと連射する。

 ジムⅢもビームライフルで反撃して来るが、女性パイロットは即座にOBを解除し、慣性を利用した機動でそれを回避していく。

 そして、マシンガンの弾幕をシールドで防ぐジムⅢに向けて、背部に搭載されていたマイクロミサイルポッドを展開し、多数のミサイル弾頭を射出した。

 ジムⅢはそれをシールドで正面から受け止めてしまい、爆風に押されて大きく態勢を崩す。全身のスラスターを駆使して姿勢制御に努めるも、女性パイロットはすぐに追撃を加える。

 

「ノロい、その程度で……!」

 

 クレスト白兵戦型のもう片側の背部に搭載されていた武装、折り畳まれていたグレネードキャノンの砲身が展開し、大口径の榴弾が発射される。それはジムⅢのシールドを貫いて炸裂し、凄まじいまでの爆風で装甲を引き裂いて吹き飛ばした。

 その爆風で火星を覆う紅い酸化鉄の砂が吹き荒れ、周囲は砂塵に包まれる。すると、それを振り払うように、もう一機のジムⅢがビームサーベルを構えて突撃してくる。

 

「むっ……」

 

 ジムⅢのビームサーベルがクレスト白兵戦型のマシンガンを切断し、マガジンに誘爆する。女性パイロットはすぐに反転し、スラスターを噴射して距離を取ろうとした。

 それをジムⅢは、両肩のミサイルポッドを連射しながら追撃する──が、クレスト白兵戦型は鋭いクイックターンから一気に加速、ミサイルを掻い潜って逆に懐へと飛び込んでくる。

 

『──!』

 

「墜ちろっ……!」

 

 急激な方向転換に驚愕したように動きが鈍るジムⅢ。すぐにビームサーベルを振り上げようとするが、それより早くクレスト白兵戦型の左腕部にある発振器から、ビームブレードの青白い刃が閃いた。

 高熱のエネルギーの奔流で象られた刃が振われ、ジムⅢの装甲と拮抗する。しかし、拮抗はほんの一瞬であり、そのままビームブレードはジムⅢを二つに溶断するのだった。

 

『敵MSの撃破を確認……なるほど、それなりの力はあるようだ』

 

 二つに分かれて爆散するジムⅢを確認した試験官が、女性パイロットに試験終了の旨を伝えて来る。

 それを聞いた女性パイロットは、そのままクレスト白兵戦型を着地させ、脱力するように深く息を吐くのだった。

 

『君が撃破した彼らのようになりたくないならば、更に腕を磨くことだ……ようこそ、企業連へ。ジナイーダ・ゼヴィン、君を歓迎しよう』

 

 最後に格納庫へ帰投するように言い残して通信を切る試験官。それを聞いた女性パイロット、ジナイーダは腹立たしげにヘルメットを脱ぎ去った。

 

「このような試験でパイロットを推し量るとは……やはり、噂通りの連中か……」

 

 見る人を惹きつける美貌と、静かに沸る闘志を感じさせる鋭い目線。ジナイーダはヘルメットのバイザーに反射して映る自分に、小さく舌打ちする。

 企業連と契約し、彼らから依頼を受けて活動する傭兵となるための試験。撃墜されたジムⅢにも、ジナイーダと同じように試験を受けるパイロットが搭乗していた事だろう。

 共食いを強いるようなやり口に苛つきを覚えるジナイーダだったが、それを肯定してしまえる自分にも嫌悪を感じていたのだ。

 

(これではアイツと同じ……いや、違う。私は違う、アイツとは……)

 

 葛藤を噛み締めて、ジナイーダは機体を格納庫へと向けて発進させる。しかし、クレスト白兵戦型の歩みは、先ほどの戦闘とは打って変わってゆっくりとした歩調だ。

 まるで揺れる心境を表しているようだが、ジナイーダはそれを否定するように、クレスト白兵戦型の足元に転がっていたジムⅢの残骸を踏み躙るのだった。

 

 

 ──

 

 

 人気がなくなり、すっかり静かになった応接室。ソファーに腰かけていたクラインは、ティーカップに残っていた紅茶を口に含み、その苦味に少しだけ顔を顰めていた。

 

「やはり私に紅茶など似合わんな……」

 

『お前はもう上に立つ人間なのだ。それくらいの嗜みを覚えておいて損はないだろう』

 

 応接室のディスプレイから聞こえて来る男の声、それは先ほどの試験官のものと同じだった。

 

「こちらも会談を終えたところだ……彼らからは良い返事が貰えた」

 

『ふむ。袖付きの首魁、フル・フロンタルか。どのような男だったのか、興味が尽きないな』

 

「お前が想像しているような人物ではないとだけ言っておこう……それで、今回の試験の結果はどうだ、ストラング?」

 

 試験官ことストラングは、先ほどの試験の様子を思い出す。今日だけでも、何人ものパイロットが試験で命を落とした。その中で生き残った、素養の持ち主たちを。

 

『合格したのは四人。中でも、ジナイーダ・ゼヴィンという女性パイロットは別格だった。彼女は……間違いなく素養の持ち主だ』

 

「そうか……」

 

 素養の持ち主、その言葉を聞いたクラインは、思案に耽るように目を閉じて、ソファーに背中を預ける。

 

『クライン、お前はどう思う? 我々が選別しているあのパイロットたちは、真にニュータイプと呼べるのだろうか?』

 

「ふん、ニュータイプなどと曖昧な表現を使うな。誰もその本質を理解していない、ただの撃墜王と同義に成り果てた思想だ」

 

『……お前はニュータイプという言葉が嫌いだったな』

 

「嫌悪しているわけではない。だが、ニュータイプなどあってはならない存在だと思っている」

 

 そう言って静かに拳を握りしめるクライン。そこに込められているのは怒りか、憎悪か、あるいは……羨望か。その胸中は、クラインとは長い付き合いであるストラングにも分からない。

 

「かつてジオン・ズム・ダイクンは、ニュータイプをこう説いた。お互いに判り合い、理解し合い、戦争や争いから解放される新しい人類の姿、と……」

 

『……』

 

「己のことすら理解できない人間が、どうして他者を理解できようか? そして、分かり合えたからといって、争いが無くなるわけでもない。だが……そう呼ばれる者たちがいることは確かであり、それはこの世にあってはならない『イレギュラー』だ」

 

 我々の目指す世界にニュータイプは必要ない。そう言ってクラインは立ち上がると、ストラングにとある命令を下した。

 

「各コロニー、地球圏にある全部隊に通達しろ……『作戦を開始せよ』と」

 

『遂に……遂に始まるのだな』

 

「そうだ、既にDOVEは決定を下した。我々企業連は……地球連邦政府に宣戦布告する。国家という枠組みを解体し、新たな揺り籠を作るのだ」

 

 アナハイムやジオニックといった軍産企業が発展していく道程で、数多くの企業が開発競争に敗れ、斜陽に身をやつしていった。

 やがてそれらの企業は、とあるAI関連の開発を行なっていた企業を母体に、一つの巨大な組織となる。

 彼らは企業連を名乗り、歴史の影で機会を待ち続けた。一年戦争、デラーズ紛争、グリプス戦役、ネオ・ジオン抗争、その全てを傍観してきた。

 しかし、彼らは人知れず戦場に現れては、じっとその様子を傍で見ていたという。まるで争う人々を見定めるように……そして今、彼らは遂に動き出したのだ。

 




閃光のハサウェイ、めちゃくちゃ面白かったですね〜

しかし、ケネス大佐は元パイロットらしいですが、ペーネロペーに搭乗してたら間違いなくメインスラスターがやられていたに違いない。そして水没して浸水していたに違いない、中の人的に。

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