UC:0096 The Verdict Day 作:刀の切れ味
ビジュアルアセンでストーリーをクリアする、とっつきオンリーのロマン機体で対戦する、意味深なセリフにフロム脳を爆発させる、それと……リア友に『騙して悪いが』する……
※題名を間違えてたので変更いたしました、すみません……
「……敵?」
インダストリアル7のベイに着港していたガランシェール。格納ハッチを開き、いつでも出撃できるように待機していた大型のMS、クシャトリヤ。そのコクピットに乗り込もうとしていた女性パイロット、マリーダ・クルスは不意に感じた気配に眉をひそめる。
それはニュータイプの直感とも言うべきか。かつてのネオ・ジオンによって生み出された強化人間であるマリーダは、誰かの散り間際の思念を感じ取ったのだ。
『マリーダ、外で戦闘が始まった! ロンド・ベルの連中と……何だありゃ、別の部隊もいやがるのか……⁉︎とにかく、ヤバい状況だ!』
「ギルボア、キャプテンとの連絡は?」
『音信不通だミノフスキー粒子が濃くなってきている……外は敵だらけ、コロニー内を突っ切るしかない!』
「中で仕掛けるのか……⁉︎」
『企業連の部隊も暴れ始めてる、早くキャプテンと姫様を見つけないと撤退のタイミングを失うぞ!』
「……了解……!」
コロニー内で戦闘を行う、それがどれだけ危険な行為かはマリーダにもよく分かっていた。だがそれでも、マリーダにはマスターであるジンネマンとミネバの救出が最優先だった。
意を結したマリーダはクシャトリヤのコクピットに乗り込むと、すぐさまバインダーからファンネルを射出。ビームの集中照射によって隔壁を溶解させると、ぽっかりと空いた大穴をスラスターを全開にして突き抜けていく。
(……敵‼︎)
半ばまで開いたままの隔壁、その向こうにいる熱減体。それがロンド・ベルのジェガンであると悟ったマリーダは、隔壁の隙間からファンネルを潜り込ませる。
「押し通るっ!」
複数のファンネルから放たれたビームがジェガンのコクピットを穿ち、一拍置いて機体が紫炎を噴き上げて爆散する。そのまま隔壁を突き破り、搬入路を猛進するクシャトリヤはついにコロニー内へと侵入する。
それを見計らったかのように、二機のリゼルがMS形態へと変形しながら強襲してくる。マリーダはそれを迎撃すべくクシャトリヤのビームガンを構えるが、視界に入ってしまった足元に広がる景色──コロニーに暮らす人々とその街並みに、僅かながらも躊躇の念を抱いた。
「ちぃっ……」
僅かに生じた隙をつくように、二機のリゼルがクシャトリヤを挟み込むながらバルカンとグレネードランチャーを連射する。マリーダはクシャトリヤのフレキシブルバインダーの強固な装甲で弾丸を防ぎながら、舌打ちと共にファンネルを展開する。
しかし、その瞬間。マリーダの脳裏を閃く稲妻のように何かが過った。先に感じたものと同じような誰かの思念、それも感じた思念は一つではなく複数が混ざり合っていた。
(……っ⁉︎誰だ、これは……この声は……ニュータイプか? それとも私以外の強化人間がいるのか……⁉︎)
機械のような無機質な思念、小さく儚い思念、頭に流れ込んだ煩雑した感応派の渦にマリーダは表情を歪めた。そして、それがマリーダの焦燥を掻き立てた。
「邪魔をっ……するなぁ‼︎」
展開したファンネルで突貫してきたリゼルの両足を撃ち抜き、ビームサーベルでその頭部を両断するクシャトリヤ。力無く黒煙と共に墜落していったリゼルは、そのまま眼下の街に破片の雨を降らせながら爆発し、多数の命を巻き添えにしていく。
そしてマリーダは、今度は距離を取ろうとするもう一機のリゼルにファンネルの狙いを定めた。大気の影響による不安定なファンネルで確実にコクピットを撃ち抜くために、マリーダはリゼルの放つビームキャノンを回避しながら意識を集中する。
しかし、マリーダが攻撃する直前で──クシャトリヤの後方から飛来した青白い熱線が、リゼルの胴体を穿ち貫いた。
『躊躇するな。今のは融合炉を撃ち抜く気概で攻撃するべきだった』
「……っ!」
マリーダがサブカメラを後方に向けると、そこにはビームバズーカを構える重武装のMSがいた。
五つのカメラアイを持つ円筒状の頭部、主兵装のビームバズーカやグレネードランチャー、ミサイルポッドなどの重武装、そして全体的なフォルムは企業連の重MS『AC-05N セレナ』に近いものだ。しかし、その実は全く異なる。
企業連の造り出したMSは、頭部や腕部、脚部といった各種部位を共通規格パーツとして製造していた。つまり、互換性を持つ各パーツを組み合わせることで、パイロットの能力や作戦に合わせてMSを自在にカスタマイズすることができるのだ。
『AC-03 クレスト白兵戦型』や『AC-05N セレナ』は、型番を与えられた
(この機体は、確かガラシェールに随伴している企業連の傭兵部隊の……)
先に感じた気配はこのMSのパイロットのものなのか、そう勘繰るマリーダは警戒を強めつつバインダーにファンネルを格納していく。
『四枚羽のMS……マリーダ・クルス中尉だな? バーテックスの指揮官のジャックだ。状況が状況だ、すまないが私の指揮に従ってもらう』
(バーテックスの指揮官……⁉︎自らこんな所にまで赴くとは、あの強烈なプレッシャーは伊達じゃないということか)
このジャックと名乗ったハイエンドのパイロットこそ、企業連が袖付きへの増援として派遣した傭兵部隊『バーテックス』の指揮官だった。
マリーダも何度かブリーフィングでジャックと会ってはいたが、彼がMSに搭乗して出撃するのは初めてのことだった。
『インダストリアル7の外では、既に我々の部隊と連邦軍との戦闘を開始している。だが、相手にできるのは外の連中だけで手一杯だ。すでに連邦の特殊部隊がメガラニカに侵入し、ロンドベルもまだ新手を繰り出してくるだろう』
「……すぐに姫様とマスターを回収し、撤収するべきです。無用な戦闘は避けるべきでは」
『無論、そのつもりだ。私はこのままメガラニカに向かい、そこでジンネマンとお姫様に合流する。可能であれば、"箱"も回収する。だが、足止めも必要だ。マリーダ中尉、君はここで可能な限りロンドベルの新手を迎撃してほしい』
「このままコロニー内で戦闘を続けろと……?」
『言ったはずだ。躊躇するな、と。迷えば死ぬのは君だ、そして君にはまだやるべき事があるだろう……眼下の巻き添えを気にしている暇はないぞ。これは戦争なのだからな』
「……了解」
『では、よろしく頼むぞ。武運を祈る』
ジャックの駆るハイエンド『フォックスアイ』は背面のブースターの出力を一気に高めると、インダストリアル7の最奥を目指して飛翔していく。
それを見送ったマリーダは、小さく深呼吸をしてから操縦桿を握り直す。マスター、そしてミネバ、二人の無事を祈りつつ、フットペダルを踏み込んでクシャトリヤを加速させる。クシャトリヤのモノアイが射抜く先にはすでに、新たに迫る敵影の姿があった。
(私のやるべき事、か……あぁ、確かに……これが私のやるべき事だ)
──
メガラニカ内のどこまでも長く続く通路、ゆらゆらと揺らめく照明の光がまるで通路そのものが湾曲したかのように錯覚させる。
カーディアス・ビストとその秘書兼ボディーガードであるガエル・チャンは、すぐにその揺れがコロニー内で起こる戦闘の余波であり、MSの類が爆発した衝撃であると察した。そして、互いに何も言葉を交わすこともなく足を早める。
(連邦の動きが想定よりも迅速かつ的確だ……やはり、財団内部に内通者がいたか)
「……っ‼︎お待ちください!」
通路の曲がり角にさしかかった瞬間、ガエルがカーディアスの肩を掴んで引き寄せる。すると、カーディアスの目の前を数発の弾丸が空を切り、火薬の弾ける音が鳴り響いた。
曲がり角の向こうには、黒色の戦闘用ノーマルスーツを着込んだ兵士たちが待ち構えていたのだ。ガエルは携行していたサブマシンガンを構えながら身を隠して様子を伺う。
「エコーズの突入部隊でしょう、ここを突破するのは不可能です……私が時間を稼ぎます、ご当主は迂回して格納庫へ!」
「……頼む」
エコーズの突入部隊をサブマシンガンで牽制するガエルを尻目に、カーディアスはメガラニカに隠されたある格納庫を目指す。
そこには『箱の鍵』がある。本来ならジンネマンら袖付きに譲渡されるはずだった鍵だが、連邦軍の介入により交渉は決裂、物別れとなってしまった。
こうなった以上、カーディアスは鍵が連邦の手に渡ることだけは避けねばならないと考えていた。つまり、カーディアスは箱を破棄しようとしていたのだ。しかし──
「何処に行かれるのですか、お父上」
「……っ‼︎」
格納庫へと通じるゲートを超えたカーディアスを待っていたのは、戦闘用ノーマルスーツと銃火器で武装した兵士たちだった。
そのうちの一人がカーディアスに拳銃を突きつけながら歩み寄ると、ヘルメットのバイザーを開いて自身の素顔を見せる。それを見たカーディアスは、驚愕と納得が入り混じった複雑な表情を浮かべた。
「アルベルト、お前が連邦軍の手引きを……マーサの差金か?」
「その質問に答える義務はありませんな」
やや短躯でどこか卑屈な雰囲気を醸しだすその男の名は、アルベルト・ビスト。カーディアスの実子であり、アナハイム・エレクトロニクスの役員を務めていたが、ビスト家の人間としては才覚に乏しい小心者だった。
そんなアルベルトは今、実の父親であるカーディアスに銃口を向けている。普通の親子の関係であれば、まずあり得ないであろう光景だ。しかし、この一族においては決して
かつてカーディアス・ビストの父親は、カーディアスの祖父にあたるサイアム・ビストによって謀殺されているのだ。それも、ビスト財団当主として相応しくないという理由からである。
「彼を拘束して連行しろ……私はユニコーンの回収に立ち会う」
アルベルトが指示を出すと、武装した兵士たちが警戒しながらカーディアスににじり寄る。カーディアスは抵抗する意思はないことを示すように両手を頭の後ろで組んでいたが、その目は注意深く周囲や兵士たちの装備を観察していた。
「軍を利用しているつもりなのだろうが、利用されているのは……っ‼︎」
拘束用の手錠をかけられる瞬間、カーディアスは目にも留まらぬ速さで兵士に掴みかかると、悲鳴をあげる間すら与えずに頸椎を捻る。そして、力無く項垂れる兵士のホルスターから拳銃を引き抜くと、死体を盾にもう一人の兵士の眉間をバイザー越しに撃ち抜いた。
そのまま照準を横にずらしたカーディアスは、同じく拳銃を構えるアルベルトと視線が合う。その目には怯えと、確かな怒りが含まれていた。
「『大を活かすために小を犠牲にする』、よくお父上はそう仰っていた……同じように私を撃つのか? サイアムが息子を手にかけた時と同じように……貴方がアイザック叔父さんを殺したように‼︎」
「……っ」
カーディアスは引き金を引けなかった、しかし、乾いた銃声は一発だけ鳴り響いた。力無く拳銃を取り落とすカーディアスと同じく、拳銃を投げ捨ててその場から逃げ出すアルベルト。銃口から硝煙が立ち昇っていたのは、アルベルトの拳銃の方だった。
「アルベルト、私は……」
とめどなく血が流れ出す傷口を抑え、膝をつくカーディアス。咳き込むごとに口から血の塊を吐き出し、すでに意識が遠のき始めていた。
それでも、とカーディアスは自身を奮い立たせると、覚束ない足取りで歩き始める。向かう先は言わずもがな──箱の鍵である白亜の巨人が眠る場所だ。
ボス・サヴェージ
「わからんのか?人殺しなんだよ。やりすぎたんだ、スレッタはな!」
サーダナ
「百合展開からこうなるか?……新しい、惹かれるな……」
⑨
「グロすぎる……修正が必要だ……」
水星の十二話で、やっぱりこの作品はガンダムなんだな、と思い知らされました。