UC:0096 The Verdict Day   作:刀の切れ味

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久しぶりに投稿です
書き物自体が久しぶりです…


EP.08 5 Point Five

 

(一機、二機……三機、四機……うち二機はジャウザー少尉の方へ……奴らだけで捌けるか?)

 

 インダストリアル7の第六ベイ、その周辺宙域に漂うデブリの合間を駆け抜ける一機のリゼル。グレーブルーに塗装されたカスタム仕様のその機体は、独立戦術部隊『アライアンス』の隊長であるエヴァンジェ大佐の乗機だ。

 エヴァンジェ大佐のリゼルは、指揮官用に調整されたリゼルC型と宙間拠点強襲用バックパック『ディフェンサーユニット』のb装備をベースとしている。特に武装面の変更点が多く、背面に搭載された二門のリニアキャノン、迎撃用のバルカン・ファランクス、面制圧用のバインダー内マイクロミサイルポッド、左腕部には大型ビームブレードを搭載したシールドを装備していた。

 

「来るか……!」

 

 当然、大幅な改装と仕様変更により比例して操縦性はよりピーキーになり、パイロットへの負荷も増している。

 しかし、エヴァンジェ大佐はそんな専用にカスタマイズされたリゼルを難なく使いこなしていた。全身のスラスターを駆使してデブリの隙間を潜り抜けると、二門のリニアキャノンを構える。

 その銃口の先には、大破した宇宙船の残骸の影から飛び出してきた一機のMSがいた。軽装甲で細身なシルエットを有する企業連のMS『AC-03R クレスト軽量型』だ。

 

『敵MSを確認、特務仕様可変機。オペレーション、パターン3に変更。戦闘を開始します』

 

 無機質な音声と共に紅くカメラアイを瞬かせるクレスト軽量型に向けて、エヴァンジェ大佐はリニアキャノンの引き金を引く。それを皮切りに銃身内のリニアアクセラレータによって一気に加速した榴弾は、特徴的な破裂音と共にクレスト軽量型へと発射された。

 しかし、それを予め予見したように宙返りしながら反転するクレスト軽量型は、リニアキャノンの榴弾を軽々と回避してみせる。更に、両肩側部に搭載されたミサイルコンテナ、肩部装甲に内蔵されていたミサイルベイを解放した。

 

「この挙動……やはりUNACか。鬱陶しい人形どもめ」

 

 エヴァンジェ大佐はリゼルの背部に搭載されているバルカン・ファランクスを起動すると、雨霰のように飛来するミサイルを次々と撃ち落としていく。

 その間にも、エヴァンジェ大佐は油断なく周囲に視線を張り巡らせる。そして、デブリ群の合間で散発的に起こる爆発の光を捉えると、腹立たしげに舌打ちをする。

 

「ちっ、()()()()()()に遅れを取るとは……」

 

 僅かに視界の端に捉えた戦況から、味方の苦戦を感じとるエヴァンジェ大佐。その苛立ちをぶつけるように操縦桿とフットペダルを操り、機体を旋回して急上昇。クレスト軽量型のマシンガンの弾幕を掻い潜って一気に肉薄する。

 

「人形如きが私の邪魔をするなっ!」

 

 左腕部の大型ビームブレードの発振機に光が揺らめくと、瞬時に最高出力まで高められたエネルギーが青白い灼熱の刃を形成する。

 そして、エヴァンジェ大佐のリゼルがその長大な光刃を振るうと、デブリの影に隠れようとしていたクレスト軽量型を、()()()()()一挙に両断した。そして、爛れた装甲の断面から火花を散らせながら小爆発を繰り返すと、そのまま周りを漂うデブリの一部に成り果てた。

 

(むっ……敵が退いていく? こちらを誘っているのか……)

 

 周囲のデブリに隠れていた敵MSの一機が、あからさまに背を向けて退いていく。それを見たエヴァンジェ大佐は、あえて追撃はせずに反転。苦戦する味方機の元へ急行する。

 

「ジャウザー少尉! 戦況を報告しろ!」

 

 長銃身のビームマシンガンを構えるリゼルC型、エヴァンジェ大佐同様にカスタマイズされたその機体は、彼の部下であるジャウザー少尉の乗機だ。接触回線でジャウザー少尉に問いかけると、若い青年の声が返ってくる。

 

『大佐! ご無事でしたか……こちらに向かって来た一機は私が墜しました。奴ら、ジャマーの類がばら撒いているようで周囲の状況が掴めませんが、敵の多くは退いて行ったようです」

 

「もう一機こちらに向かって来たはずだが……あの三人が相手をしてるのか?」

 

『ええ、行動パターンから敵はUNAC。であれば、初戦の彼らだけでも……』

 

 そう言ってジャウザー少尉のリゼルが、光の尾を引かせながら宙を駆ける四つのMSを見据える。

 グレーブルーに塗装されたアライアンス仕様の三機のジェガン、それを相手取るの一機のクレスト白兵戦型。しかし、その三機のジェガンの戦い方はなんとも情けないものだった。

 

『お、おいお前ら! ちゃんと援護しろよぉ‼︎』

 

『何やってんだ! 前に出ろよ前に!」

 

『し、慎重に行こうって言ったのに……』

 

 距離を維持しながらマシンガンを連射するクレスト白兵戦型に対して、三機のジェガンは皆一様に前に出ることを渋っているようだった。

 それを見かねたエヴァンジェ大佐は、二門のリニアキャノンを構えて狙いを定めて静かにトリガーを引く。すると、放たれた榴弾は高速で飛翔するクレスト白兵戦型の胴体に、まるで吸い込まれるかのように命中した。

 

『お、お見事です……大佐』

 

「あんな体たらくでよくもアライアンスに配属が叶ったものだ。連邦上層部の目は節穴か……」

 

 目の前で爆散したクレスト白兵戦型に、呆然と足が止まる三機のジェガン。彼らはアライアンスに配属されたばかりの補充パイロットであり、実戦経験も乏しかった。

 ただ、それを加味しても三人の戦いぶりは特殊部隊に配属される実力があるとは思えないほどだ。それだけ連邦軍に人的資源の質が落ちているのか、それとも──

 

「ジャウザー少尉、後方で待機するニーニャ中尉たちとレビヤタンに合図を送れ。後退した敵を追撃する。そう遠くない位置に奴らの母艦もいるはず、こちらから仕掛けるぞ」

 

『了解です!』

 

 ジャウザー少尉のリゼルが信号弾を射出すると、小さく赤い光が断続的に閃く。エヴァンジェ大佐が待機させておいたMS部隊と、さらに後方で備えていた母艦『レビヤタン』の一番艦と二番艦、それらに進撃するよう合図を送ったのだ。

 しかし、合図に対して返信が返って来たのは二隻のレビヤタンからのみ。待機していたMS部隊からは返信がなかった。エヴァンジェ大佐はメインカメラを最大まで拡大するも、待機していたはずのニーニャ中尉たちの姿は見つからない。

 

「……ジャウザー少尉、ニーニャ中尉たちに通信が繋がるか?」

 

『いえ、まだミノフスキー粒子の影響が……あっ⁉︎』

 

 ニーニャ中尉らが待機していたはずのポイントで、二度の爆発が起こる。次いで、飛び交うビームの軌跡が幾つも閃く。あれは後方で待機していた部隊が何者かと戦闘を繰り広げているのだ。

 

「ジャウザー少尉! あの三人を連れて後退するぞ、ニーニャ中尉たちと合流する! 後からついてこい!」

 

 三人の部下はジャウザー少尉に任せ、エヴァンジェ大佐はニーニャ中尉たちの元へ向かうべく、リゼルをウェイブライダー形態へと変形させた。

 しかし、エヴァンジェ大佐が離脱しようとした隙を狙ったかのように、何処からともなく無数の小さな熱源体が飛来し、三機のジェガンを取り囲んだ。

 

『サイコミュ……⁉︎まずい、避けてください‼︎』

 

 ジャウザー少尉の警告が届いたのか、三機目とも自身を狙う十字形のファンネルの存在に気づく──が、回避行動に出るには少し遅かった。

 

『そ、そんなはず……!』

 

 四方からビームを浴びせられ、四肢を撃ち抜かれる一機のジェガン。ただ運良くイジェクションポッドが作動し、ハッチからコクピットブロックが飛び出した。そして、その一瞬の間を置いた後にファンネルの追撃がもの抜けとなったジェガンを貫き、爆散させた。

 

『うわぁっ⁉︎だ、駄目だ、避けられねぇ……‼︎』

 

『ちょっ、おまっ……危なっ⁉︎』

 

 他二機のジェガンも同様にファンネルによる無数のビームの雨に晒される。しかし、パイロットの焦りとは裏腹に、AMBACによる姿勢制御と微細なスラスター噴射を駆使して回避、被弾を最小限に抑えていた。

 

(あの包囲の中で躱すか‼︎やはり()()のパイロット候補として用意された強化人間、不安定ではあるが実力は確かだったか……)

 

 急速旋回し、再びジャウザー少尉らの元へ向かうエヴァンジェ大佐は、機体が中破寸前まで追い込まれながらも奮戦する新人パイロット二人に内心舌を巻いていた。

 

「ファンネルを操っているのは……上? 奴か‼︎」

 

 自分たちの頭上を高速で駆けぬける青い軌跡、それがファンネルを操るサイコミュ搭載型のMSと睨んだエヴァンジェ大佐は、リゼルをMS形態に変形させて二門のリニアキャノンを構える。

 そして、スコープの照準の先に映る紅い重装甲のMSに狙いを定めると、トリガーに指をかけた。

 

『……大佐、右です‼︎右に新手が──』

 

「ちっ……‼︎」

 

 ジャウザー少尉の警告を聞くや否や、エヴァンジェ大佐のリゼルがバク転するように機体を翻しながら回避行動を取る。すると、先までエヴァンジェ大佐のリゼルがいた位置に、灼熱の青い熱線が迸る。熱線を掠めたデブリは赤熱化して溶け出し、その威力が戦艦の主砲レベルであることを物語っていた。

 

「ジャウザー少尉、あの重MSの頭を弾幕で抑えろ! サイコミュを使わせるな。私はあの足の速い強襲型を堕とす!」

 

『……っ、了解!』

 

 ビームマシンガンを構えて紅い重MSを追うジャウザー少尉のリゼルを尻目に、エヴァンジェ大佐はメインカメラが遥か彼方に捉える機影に意識を向ける。

 背部の大型ブースターから蒼炎の尾を引かせながら飛翔するMS、クレスト強襲型はデブリ群の中を駆け抜けながらエヴァンジェ大佐との距離を詰めてくる。

 

(機体は標準機だが、あれは人形ではない。手練れのパイロットだな……あのサイコミュ搭載型と併せて我々の足止めのつもりか? 舐めた真似をしてくれる……‼︎)

 

 クレスト強襲型にも負けず劣らず、トップスピードを維持したまま突進するエヴァンジェ大佐のリゼル。そのカメラアイが搭乗者の仄暗い戦意を映し出すように、鈍く翡翠の光を放つ。

 

「何処に隠れているのかは知らんが……そこで見ているがいい、ジャック。貴様を倒すのは私だ、私でなければならないのだ……‼︎」

 




水星の魔女が終わってしまったので、Gレコでガンダム成分を補充
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