目を覚ますと先程まで寝ていた部屋ではなく、どこか異様な雰囲気を感じる中で、俺は椅子の上に座っていた。
辺りを見渡すと、周りには沢山の本棚で囲まれており、俺の前には机、そしてその机にも本が何冊か積み重ねられていた。
辺りを見渡した事で気付いた事は2つ…
1つは、辺りの配置物や周りの本を見る限りここが図書館だという事が分かった。
何故ここに居るかは分からないが、どうやら俺は寝ている間に図書館に飛ばされたみたいだ。
だが、ここはただの図書館ではない
それが2つに気付いた事なのだが……
図書館とは思えない程、辺り一帯が
普通の図書館では有り得ない様な色で構成されていた。
これが俺が異様な雰囲気を感じた原因なのだ。
明らかに普通じゃない……そもそも寝ている間に図書館に居る時点でおかしいのに、図書館までもがおかしいなんて笑い話にもならない…
一刻も早くこの図書館から抜け出す方法を探そうと警戒しながら辺りをまた見渡していた、その時─────
「お目覚めですかな…」
前の席に座っていた容姿がひょろっとした姿に長い鼻をした男が俺に語りかけてきた。
この男は俺が辺りを見渡した時にはいなかった……いや、おそらくこの男は最初から居た…そしてそんな男を俺は警戒していたにもかかわらず気付けなかったのだ……
「そのご様子ですと、どうやら私の存在に驚かれておられるようだ。初めて貴方から一本取れたような気がしますな」
「初めて…?」
「ふむ……どうやら自己紹介から始めた方が宜しいようですな…」
男は不敵な笑みを浮かべながら、語り出す。
「ようこそ、ベルベットルームへ……。私の名は、イゴール。…今の貴方には、お初にお目にかかります」
今の?
先程の言葉も気になっていたけど、俺はこの男とどこか会った事があるのか?
てか、今イゴールって言わなかったか?
「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所…。本来は、何かの形で“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋…。貴方には、近くそうした未来が待ち受けているのやも知れませんな……いや、貴方の場合はもっと違った意味なのかも知れませんな…フフ」
やっぱり!
あの特徴的な鼻に、独特の喋り方!
ペルソナで出てくるイゴール本人で間違いない!
すげぇ〜!初めて生で見た…ホンマに鼻長ぇ……
あれ?でも何でイゴールは俺と昔会った事あるみたいな言い方をしてんだ?お初じゃないのか?
「フフ…どうやら貴方の顔を察するに、私の事を思い出されてくれたようだ…」
「……お前と会うのは初めてじゃないのか?」
「えぇ…貴方とはとても長い付き合いでございました。しかし、今の貴方はどうやら記憶を失われているようだ…。ですが貴方がここ“ベルベットルーム”のお客人である事には変わりません」
嘘だろ?
イゴールってゲームの世界の空想人物じゃないのか?
……
イゴールは辺りを見渡し、意味深なセリフを吐く。
「それにしても…初めて貴方にお会いした時は何もない空間でしたが……この部屋の有り様は、貴方自身の心の有り様。よもや図書館に変わってしまうとは…」
「どういう事だ?」
イゴールは机に置いてある本を手に取り、ページをめくっていく。
「どうやらここにある本は全て、貴方の忘れた記憶が書かれているようだ…」
「何?」
俺は机の本を取り、本の中身を確認する。─────しかし。
「何も書いてないぞ?」
本の中身は真っ白の白紙のページだった。
そう言うと、イゴールは本を閉じ、俺に目を向ける。
「フフ…今の貴方にはご自分の記憶を見る事は出来ないようですな」
「何?」
「ここから先の話は、また別の機会に致しましょう」
すると、本棚から女の子が現れた。身長は俺よりも低く、金髪の長髪の子だった。
その少女は、イゴール近くの椅子に座り本を開き読み始める。
「ご紹介が遅れましたな、こちらは、リリアル。同じくここの住人でございます」
「……」
リリアルと呼ばれた少女は何も言葉を発さず、本を見続ける。
「彼女はご覧の通り、無口な性格でしてね。彼女の方からまた追々に自己紹介をしてくれるでしょう」
イゴールは、手に顎を置き、そして不敵な笑みを浮かべた。
「ではまた、お会いしましょう」
イゴールがそう言うと、目の前が暗くなり徐々に意識が薄れていった……
ベルベットルームシーンでは、ベルベットルームの出来事だけを書きたいと思っているので、文行は多い時もあれば少ない時もあります