視界が眩しくなり、重い瞼を開けると先程までいた図書館ではなく、昨日案内してもらった俺の部屋だった。
眩しさの原因は昨日カーテンを閉めず寝てしまった為、太陽の光が丁度俺の顔の位置を照らしていた様だ。
「朝、か…」
俺は起き上がり、部屋の常備されていた時計に目を向ける。
─────6時10分
本来なら学校へ向かう支度をする時間帯だと思うが、俺はまだ学校の手続きを終わらせていないので、起きてもやる事がない…
そこでここまでに起きた事をまとめる事にした。
まず第一にベルベットルームにて、イゴールの発言から俺はまだ何も契約などしていない事が改めて実感出来た。道理で使えない訳だ…
2つ目にエミヤの能力だが、投影魔術で投影出来る物に制限がある事が分かった。特に英雄など神話に出てくる様な武器は投影出来ない。無理に投影しようとすると全身に激痛が走り、明らかに常人には耐えられない程の痛みを伴う。
だが、身体能力は少なからず影響は受けている様で、常人の2倍もの体力に筋力、走力に飛躍力等が上がっている。怪盗道具も使った事など1度もないのに、使い方が頭に浮かぶ。
一見強そうなスペックに見えるが、それは相手が常人が相手なら、の話だ。この世界では悪魔や天使、堕天使等が街中に徘徊しているくらいの世界だ。更には俺が相手しなけきゃいけない相手は“偽りの神獣”なんて名前からして強そうな奴らだ。このままの能力じゃ手も足も出せず、2回目のポックリとなるだろうな…
そして3つ目……これが1番の気掛かりな点だ
それは─────
─────イゴールとは
記憶が確かならイゴールはゲームのキャラ……現実で会うなんて事は絶対にない筈だ…
それなのにイゴールは……
“貴方とはとても長い付き合いでございました。”
まるで何度も会っているみたいな言い方…
俺を雨宮蓮と勘違いしているか…?
いや、それはない。俺と雨宮蓮では容姿も違うし、口調も違う。似ている点といえば、俺が怪盗服を纏ったらジョーカーと少し似ているぐらいだ。
頭痛がする…
悩みの種を一気に受け取り過ぎて、どれから対処すればいいか分からない…
これ以上考えても無駄と判断し、頭を少しでもリフレッシュ出来るようにジョギングでもしようと考え、部屋を出る。
部屋を出ると居間の方からいい匂いがして、覗き見るように居間を覗く。
そこには兵藤母さんがキッチンで手際良く料理をしていた。
俺は流石に朝の挨拶はしようと思い、居間に入る。
「おはようございます…」
「あら、おはよう。早いのね」
「そうですね…早く目が覚めたので軽くジョギングでもしようかなって思いまして…」
「健康的ね〜、一誠も見習って欲しいわ〜」
「そうなんですね…では、行ってきます」
「は〜い、行ってらっしゃい 」
兵藤家から出て、軽く辺りを見渡しながらジョギングをする。
流石に遠くまで行き過ぎると迷子になってしまう可能性があるので、ほんの少しだけ遠出をする。
色んな店があるんだな…お?
辺りを探索しながら、ジョギングしていると学校の校舎を発見した。
当然その学校は“駒王学園”…
俺が明日通う事になる第2の人生での学校だ。記憶は無いが学校には少し苦手意識を感じる。まぁ今更感じてもなんの意味も無いが……
俺はこれ以上行くのをやめ、元来た道を引き返す。その時に、黒い翼の様な物が目に入った様な気がするが、烏だろ、と思い再び走り出した。
─────あの人間…
兵藤家まで戻ってき、家に入ると何やら慌ただしかった。何事か思い、会話を盗み聞きすると、
「早く朝ごはん食べなさい!学校に間に合わないわよ?」
「わかってるって!」
どうやら一誠が寝坊して学校に遅れそうになっているみたいだった。
てか俺、そんな長い間走ってたんか……
無自覚って怖いわ〜
すると扉を開き、一誠が現れる。
「おう!?ビックリした…おはよう、翔!」
「あぁ、おはよう」
「てか起きるん早くね?あと何処行ってたんだ?」
「早く起きたから、気分がてらジョギングしてただけだ」
「へぇー」
「急がなくていいのか?」
「うわやべッ!?じゃあ行ってくるわ!あと!明日早く起きたんなら起こしてくれー!」
「気が向いたら」
慌ただしく一誠は家を出て行き、それを見送った後、手を洗ってから居間へ向かった。
居間に入ると机に朝食が出されていた。人数分を考えると3人分あったので、おそらく俺の分も作ってくれたみたいだ。
「あらおかえり、朝食出来たから食べていって」
「ありがとうございます」
そう言って俺は席に座り、朝食を取らせて貰った。
今日の予定だが、昼過ぎから手続きの為、1度学校の方へ行かなきゃ駄目みたいで、自室にて色々と準備をしていた。
と言っても、準備する物は筆箱くらいなのですぐ支度が終わる。
まだ時間があるので、ベットに横になり目を閉じる。
学校に行く事に不安は感じる…
記憶を失っても身体はしっかり覚えていたみたいだ…
はぁ〜……行く気失せるわー…
そんな事を思っていたその時
「ッ!?」
『……我は汝…汝は我…』
頭痛と共に、脳内で掠れだが声が聞こえた。掠れ声だった為、声での男女の差別が判断出来なかったが明らかに生きている者ではない気がした。
はぁ……今日もしかして厄日かも…
俺はベットから起き上がり、窓を見る。そこには先程まで満点の快晴だったのが、曇り始めていた。俺は雨が降り始めたら厄介、と思い鞄を持って部屋を出た。
夜霧翔の本当の厄日は、ここからが真骨頂になる事も知らずに……