無限転生 ~INFINITI DEAD END~   作:とんこつラーメン

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あくまなさかなちゃん

 担任様からの接触があってから数日後の放課後。

 私が誰にも気付かれる事無く教室から出ようとすると、またもや背後から急に話しかけられた。

 

「皇」

「……なにかな」

「露骨に嫌そうな顔をするのはやめろ」

 

 二度も後ろから話しかけられれば、誰だって同じような顔をするとは思うが。

 

「この間お前に話した模擬戦の詳しい日程と対戦相手が決まった」

「はぁ……」

 

 模擬戦…ね。そう言えば、そんな話をしていたような気がするな。

 本気でどうでもいいから頭の中から消えかかっていたけど。

 

「まず、日時は明日の放課後。場所は第3アリーナだ」

「相手は?」

 

 そう尋ねると、担任は徐に教室の中の方に視線を移す。

 そこには、いつものように取り巻きの女達とキャッキャウフフしている男子がいた。

 

(…成る程。そういうことか(・・・・・・・))

 

 よく考えついたもんだ。まさに一石二鳥って訳だ。

 いや、もしかしたら一石三鳥になるのかな?

 別にどっちでもいいけど。

 

「もう伝えてあるのかい?」

「後で教えるつもりだ」

 

 いや、今すぐにでも教えろよ。

 公私の区別すら出来ない人間が教師をするな。

 この女の場合、教員免許を持っているかどうかも怪しいが。

 

「今、何か妙な事を考えなかったか?」

「さぁ?」

 

 それなのに、無駄に能力だけは高いときている。

 本当に羨ましい限りだね。皮肉抜きで。

 私とは大違いだ。色んな意味で。

 

「ところで、今日の午後からあった実習、どうして休んだ?」

「生理痛」

「その割には元気そうだが?」

「薬を飲んで安静にしていたら収まった」

「……そうか」

 

 適当に誤魔化したが、絶対に信じていないだろうな。

 だって、そんな目をしているから。

 そもそもの話、私の身体に生理痛なんて御大層な現象が起きる筈が無いんだよ。

 

「それと、教師にはちゃんと敬語で話せ」

「尊敬に値するような相手ならば私もちゃんと敬語で話すさ」

「私は尊敬に値しないと?」

「それを一番よく分かっているのは自分自身じゃないのかな?」

「……………」

 

 そこで黙ってしまうという事は認めたということだな。

 この人に改善を要求しようとは思わないが。

 私は無駄な事はしない主義なんだ。無駄無駄。

 

「それじゃ、失礼するよ。今日は疲れたからね」

「あぁ……」

 

 顔を見ることなく、私は適当に手だけを振ってからその場を後にした。

 にしても模擬戦ねぇ……。

 本当は絶対にしたくは無いけど、やらないといけないんだろうなぁ……。

 どうして私がここに送り込まれたのか、その目的は未だにハッキリとしていない。

 だが、自分なりに大体の予想はついている。

 

(『実験』と『収集』…か)

 

 どれだけ多くの世界に転生をしても、人間の本質だけは絶対に変わらない。

 だからこそ、私のモチベーションは常に最低値を保っているのだが。

 せめてもの救いがあるとすれば、割と早く終わりそうなことだけだ。

 少なくても今年中には終了するだろうな。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 次の日の放課後。

 本当は行きたくは無かったが、どうせ抵抗するだけ無駄だと判断した私は観念して大人しく約束の場所である第3アリーナへと向かった。

 

「おや?」

「来たか」

 

 更衣室にてISスーツに着替えてからピットまで向かうと、そこにいたのは織斑千冬ただ一人。

 他には誰の姿も無かった。

 

「いつもの取り巻き連中は向こうに行っているのかな?」

「あぁ」

「と言う事は、山田先生も向こうか。どうしてアナタはここにいるんだい?」

「お前を一人にする訳にはいかないだろう」

「そんな嘘にすらなっていない言葉を聞かされても微塵も嬉しくないよ」

「なに?」

「ハッキリ言った方が良いかな? 邪魔。こんな場所にいないで、とっとと大好きな弟君の元に行ったらどうだい?」

「…それほどまでに私が嫌いなのか」

「嫌い? 随分と自分を過大評価しているんだね」

「…どういう意味だ」

 

 それぐらい自分で考えろ…と言いたいが、今後の為にもハッキリと言っておいた方が良いだろう。

 じゃないと、また無駄が増える事になる。

 

「興味が無いって事さ。あなたにも、あなたの弟君にも。この学園自体にも。本当にどうでもいい」

「ならば、どうしてお前はここにいる?」

「さぁね。それはこっちが聞きたいよ。ねぇ、どうして私はここにいるのかな?」

「私が知る訳がないだろう……」

 

 そりゃそうだ。

 

「ところで…それがお前のISスーツなのか?」

「そうだけど、それが何か?」

「いや……」

 

 私のISスーツはかなり特殊で、他の生徒達が身に着けているようなスクール水着のような破廉恥なデザインではない。

 首から下の全身を隅から隅まで覆い尽くすような感じになっていて、肩や肘、膝などには簡易的な装甲が取り付けられている。

 更には顎の部分までちょっとした装甲で守られていて、下から殴られてもビクともしない。

 実際に殴られても平気だったんだから間違いない。

 因みに、基本色はシルバーだ。機体色とお揃いにしたんだろう。知らないけど。

 

「で、まだここにいるの?」

「どこまで私を追い出したいんだ……」

「明らかに嫌そうな顔をしながらここにいられても目障りなだけだよ」

 

 空気だって最悪だし。一人でいる時が一番気楽でリラックス出来るのに、この女は私から数少ない安息すらも奪おうというのか。

 

「どうしたら、お前は私を信用してくれる?」

「何をやっても絶対に信用なんてしないさ。知り合いの言葉を借りれば、あなたの存在そのものが鬱陶しいんだよ」

「…………」

「分かったら、とっとと消えてくれないか。大丈夫、ちゃんとそちらのご要望(・・・・・・・)には応えるさ」

「そうか……」

 

 やっと分かってくれたのか、担任は静かにこの場を後にした。

 ようやくこれでちゃんと『準備』が出来るってもんだ。

 

「まずは……」

 

 拡張領域から二本の注射器を出してから、スーツの二の腕の部分を捲りあげてから肌を露出させる。

 そしてから、まずは注射を一本だけ突き刺してから中身を注入する。

 

「くぅぅ……」

 

 無意識の内に歯を食いしばり、唇の端から涎が零れる。

 全身の感覚が無くなっていくと同時に、急激に『ハイ』な状態へとなっていく。

 けど、それをなんとか理性で押さえ込みつつ耐えていく。

 何度やっても、これだけは慣れそうにはない。

 

「もう…一本……」

 

 震える手で残り一本の注射を刺すと、今度は急激な眠気に襲われる。

 瞼に重りが付いたかのようになり、視界が霞んで意識が朦朧としてきた。

 普通ならば、こんな状態でISを操縦するなんて論外なのだろうが、生憎と私のISはコレをしないと搭乗することすら許されないのだ。

 

「来い……デビル…フィッシュ……」

 

 震える手でペンダントを握りしめると、スフィア特有の音と共に緑色の光が放たれ、白銀の装甲が私の全身を覆い尽くしていく。

 真紅の瞳を持ち、三つの角を持つその姿は、正しく『白銀の悪魔』と呼ぶに相応しい。

 

「ホランド…君は本当に凄い奴だよ…。こんな化け物を顔色変えずに乗りこなしたんだから…。自分の命を削ってまで、愛する者と家族と世界を守ろうとした君のような男こそ…私が本気で信用するに値する人間だ……」

 

 あの部隊には誰もが理想とするリーダーが沢山いたが、ホランドは特に目立っていたような気がする。

 何故ならば、彼自身も同じように成長をしていたから。

 

「問題は…無い…か」

 

 軽く手を動かしてから具合を確認し、投影型モニターを出してから各種部位のチェックを行う。

 

(腕部、肩部、腰部、脚部、いずれも問題無し。頭部センサーも大丈夫。バックパックのロングレンジレーザー砲も、ホーミングレーザーもOK…と。両腕部の大型ブレードにリフボードもグリーンだ。高出力バーナーもよし…と)

 

 この間、僅か10秒足らず。

 体が覚えているので、これぐらいなら今の状態で平気だ。

 

「…行きますか」

 

 腰部に分割した状態で装着してあるリフボードを展開して合体させる。

 僅かに宙に浮いているボードの上に足を乗せてから、バーナーに火を入れた。

 

(久し振りにやってみるか……ホランド直伝のカット・バック・ドロップターン)

 

 ブランクがあるから、どこまでやれるかは分からないけど。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 千影がいるピットとは逆側のピット。

 そこでは、一夏が自身の専用機である白式を身に着けた状態で、いつでも発進できる体勢にいた。

 

「皇さん…か。なんか急に千冬姉から模擬戦をするように言われたけど、どんな子だったっけ?」

 

 普段から影が薄く、更には幼馴染を始めとする面々がいつも周りにいた為、同じクラスにいながらも一夏は千影の顔は愚か名前すらも知らない状態だった。

 向こうにとってもそれは好都合なので、別に気にするような事ではないが。

 

「さぁな。だが、どんな奴でも問題は無い。一夏ならば必ず勝てる!」

「そうですわ。これまでの試合の中で一夏さんの実力は目まぐるしく上昇してますもの。今ならば、誰が来ても互角以上の試合が出来る筈ですわ」

「相手がどんな奴かは知らないけど、どうせ大したことないでしょ? とっとと終わらせてきなさいよ」

「一夏ならきっと大丈夫だよ。変に緊張しないで、いつものペースでやれば勝てるさ」

「ふん。私の嫁ならば、名も知らぬ雑魚なぞ一撃で蹴散らしてしまえ」

 

 幼馴染の篠ノ之箒に、イギリス代表候補生のセシリア・オルコット。

 中国代表候補生にして二人目の幼馴染でもある凰鈴音。

 少し前まで男装をしていたフランス代表候補生のシャルロット・デュノア。

 そして、現役の軍人でありドイツの代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒ。

 いつも一夏の周りにいる少女達がそれぞれに彼の事を鼓舞していく。

 

「あれ? 織斑先生?」

 

 管制機器の前に座っている一組副担任である山田真耶が、こちらのピットに入ってきた千冬の姿に気が付く。

 

「どうしてこちらに? 皇さんの所にいたんじゃ……」

「追い出されてしまったよ」

「え?」

「どうやら、私はあいつに全く信用されていないらしい。それどころか鬱陶しいとまで言われてしまったよ……」

 

 流石の千冬も、正面から完全拒絶の言葉を言われれば精神的に堪えたようで、力のない薄笑いを浮かべていた。

 

「そんな……」

「あそこまで誰かに拒絶をされたのは生まれて初めてだ。なんというか…キツいな……」

「千冬姉…!?」

 

 いつも強気で凜としていた姉が弱気な顔を見せている。

 一夏の怒りのボルテージを上げるには十分すぎる材料だった。

 

「許せねぇ…! 絶対に倒してから千冬姉に謝らせてやる!!」

「その意気だ一夏。教官に逆らうような奴に遠慮はいらん。全力でやってしまえ」

「おう!」

 

 同じように千冬の事を尊敬しているラウラの言葉を受け、一夏は拳を振り上げる。

 やる気十分となっていると、モニターには向こうのピットから一台のISが飛び出してくる映像が映し出された。

 

「なんだ…あのISは……」

「あ…あれは…まさかっ!?」

「「「「「デビルフィッシュッ!?」」」」」

 

 ソレを見た瞬間、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、千冬の五人が同時に叫んだ。

 真耶も声は上げていないが、驚きの表情は隠せていない。

 一方、何も分からない一夏と箒はどうして彼女達が驚いているのか理解出来ないでいた。

 

「ど…どうしたんだ? なんで急に驚いてるんだ?」

「あのISがどうかしたのか?」

 

 二人が揃って小首を傾げている中、全員が冷や汗を掻きながらモニターを眺めている。

 特に、シャルロットと千冬と真耶は大きく口を開けたまま固まっていた。

 

「な…なんでアレがここにあるんだよ……」

「馬鹿な…! まさか、デビルフィッシュが皇の専用機だというのかッ!? 冗談ではないぞ!! あれをあいつに与えた連中は何を考えている!!」

「そ…そんな……どうして……」

 

 シャルロットは信じられないような目でモニターを眺め、千冬は先程までとは一変して本気で激高し、真耶に至っては今にも泣きそうな顔になっている。

 

「急になんなんだよ? 皆、あのISがなんなのか知ってるのか?」

「IS関係では…物凄く有名な機体ですから……」

「有名な機体…?」

 

 震える唇で絞り出すように話すセシリアに、箒が疑問符を示す。

 だが、それに答えたのは当人ではなく隣にいたシャルロットだった。

 

「あの銀色のISは……呪われたモンスターマシンなんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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