無限転生 ~INFINITI DEAD END~ 作:とんこつラーメン
みらいのきえたこのせかいの、なにもないあしたのゆめをみる。
だれもがすくいをもとめない。だれもがおわりときづかない。
おわるせかいでだんすをおどり、くるいもだえるまでおおわらい。
ひとりぼっちのうさぎさんの、きまぐれとわがままでみんながおわる。
だいちがくされ、そらがよどみ、うみがかれて、いのちがきえる。
まっくろろぼっとやってきて、みんなでなかよくあのよいき。
いまをむししてばかさわぎ。 げんじつみないでにげていく。
ゆめみるそうぎょはゆめをみる。 しゅうえんとぜつぼうのゆめをみる。
なにをしたってもうておくれ。かうんとだうんははじまってる。
むだなあがきははやくやめて、みんなでかんおけつくりましょう。
ゆめみるそうぎょはゆめをみる。 すべてがきえたゆめをみる。
【民名書房刊『ゆめみるそうぎょはゆめをみる』】から一部抜粋。
「な…なんだよ…呪われたモンスターマシンって…」
「そのまんまの意味だよ…」
シャルロットの口から発せられた非科学的な言葉に、思わず一夏は呆然となる。
この科学の発展した今の世に『呪い』なんて言われても俄かには信じがたい。
「詳しく話したら長くなるけど、これだけは覚えておいて」
「なんだ?」
「もしも、あれが本当にボク達の知っている『デビルフィッシュ』で、皇さんがフルスペックを発揮できるのなら……」
「できるのなら…?」
「…勝ち目は非常に薄いと思う」
「「え…?」」
先程までのムードから一変し、急に弱気になる専用機持ち達。
あの白銀のISは、それ程の性能を秘めているのか。
「少なくとも、機体のスペックだけで言えば…この学園にある全てのISを完全に上回っていますわ……」
「んな馬鹿な…」
「冗談に聞こえるかもしれないけど…これはマジよ」
「鈴まで……」
セシリアと鈴が真剣な顔で一夏に注意を促す。
いつもならばここできちんと耳を傾けている所だが、今の一夏は今までの試合の経験により不必要な自信をつけ始めている。
自分と白式ならば、例え相手が何であろうとも必ず勝てる筈だ。
雪片弐式と零落白夜があれば負ける事は無い。
そう思い込んでしまっているので、どれだけ注意を受けても右から左へと受け流していた。
「機体もそうだが、操縦者は大丈夫なのか? デビルフィッシュは……」
そこまで言い掛けてからラウラは止めた。
試合前に言うべき事ではないと判断したからだ。
「…皇に関しては、私と山田先生が後から見ておく。今は目の前に試合に集中しろ」
「わ…分かったよ……」
相手のISが出てきてから、急に場の雰囲気が重苦しくなった。
実際に参列したことは無いが、通夜などはこんな空気なのだろうと思った。
「あまり長引かせるな。…アイツの為にも」
「あ…あぁ……行ってくる!」
何とも言えない空気の中、一夏はステージへと飛び出していった。
・・・・・
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・・
・
(やっと出てきたか)
随分と待たせてくれる。
それ程までに渋るような事じゃないだろうに。
白いISを纏った織斑一夏が私の目の前までやって来た。
その顔はなんだか混乱しているようにも見える。
「す…皇さん…でいいんだよな?」
「あぁ。けど、私の名前なんてどうでもいいだろう?」
「そんなことは……」
ふむ…なんだか弱気に見えるのは私の気のせいか?
緊張…とはまた違うように思えるけど。
(にしても、これが彼の専用機である『白式』…か)
遠くから眺めた事はあるけど、こうして近くで見るのは初めてだ。
その名の通り、なんともまぁ真っ白なISだこと。
名は体を表すとはよく言ったもんだけど、そのまんまじゃないか。
本当に…本当に……。
(なんて汚いISなんだ。真っ黒な我欲に塗れた汚物の塊のようなISだ。こうして見ているだけでも反吐が出る。彼は気が付いているのか? 君が身に着けているソレは紛れもない糞だ。糞の化身だ。私なら、そんな物を与えられそうになったら迷わず拳銃で自分の頭をぶち抜くよ)
どうしよう。久し振りに本気で後悔してるかもしれない。
こんなん近づけただけで『欲深な金牛』が発動するレベルじゃん。
発動通り越して暴走までする勢いじゃん。
下手すれば『偽りの黒羊』まで同時発動しちゃうよ?
私が『夢見る双魚』を持ってなければ、この場でゲロ吐いてたかもしれないレベルで気持ち悪い。
「ど…どうしたんだ?」
「別に。それよりも、早く試合を始めようか」
「そ…そうだな」
彼が手元に一本の近接ブレードを展開する。
成る程、あれが噂に聞く『雪片弐式』か。
で、あれからエネルギー対消滅刃『零落白夜』が発動する訳か。
あんな危険な代物を嬉々として扱うだなんて、彼は大量殺人鬼志望なのかな?
もしそうだったら、良い知り合いを紹介するんだが。
「そっちは何も装備しないのか?」
「生憎と、この『ターミナス303』は基本的にバックパックにある固定武装しかないんだ。拡張領域はあるから追加で装備することは可能だけどね。こんな風に」
証拠を見せる為に、拡張領域から二丁の片手用マシンガンを両手に展開する。
こいつの性能的にも、コレ系の武装が一番効果的だ。
「…そろそろかな」
「何がだよ」
彼の言葉を無視して首だけ後ろに振り向くと、アリーナの壁面から沢山のドローンが出現してきた。
それはまるで羽虫のように空中にて散開し、あっという間に私達の周囲はドローンで一杯になった。
「こ…これなんだよっ!?」
「訓練用のドローンだよ。まだ使ったこと無いのかい?」
「は…始めて見た……」
どうやら、あの取り巻き達と一緒にいる事で『一人で訓練をする』という習慣が無いようだ。
類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。
「け…けど、これじゃあ試合の邪魔になるだろ」
「おや。私は一言も『普通の試合をする』だなんて言った覚えはないが?」
「えぇっ!? じゃあ、今から何をする気なんだよッ!?」
「的当てゲームさ」
「的当てゲーム?」
「そ。今からあのドローンを私達で潰していく。一体に付き一点。制限時間5分の間にどれだけ倒せるかを競うんだ。簡単だろ?」
これなら、普通に試合をするよりもずっと早くに終わらせられる。
やりたくも無い事は、とっとと終わらせるに限る。
ターミナス303の性能を見ることが第一目的なら、普通の試合をする必要性は皆無なのだから。
「ちょ…待ってくれよ! 俺にはこの雪片しかないんだぞっ!? どう考えたってコッチの方が不利じゃねぇか!」
「そうかな? 自慢の機動性と運動性を駆使すれば、そこまで問題視するような事ではないと思うけど? それでも納得が出来ないのであれば、私からハンデをあげようじゃないか。そうだな……私も近接武器しか使わない、もしくはこの場から一歩も動かないというのはどうだろうか? あぁ、その剣で私の腹をバッサリと斬り裂くってのもいいな。他には……」
「もういい! ハンデはいらねぇっ!」
「…本当にいいのかい?」
「当たり前だ! 男に二言はねぇ! そもそも、男が女にハンデを貰うとかカッコ悪くてできるかよ!」
「……そーか」
姉が姉なら、弟も弟…か。
道理で、吐き気を催す程に気持ち悪いISに乗っていても平気な訳だ。
いや…違うな。そうじゃない。汚いのはISと操縦者の両方だ。
相乗効果で最低最悪な事になってるんだ。
「では、私は本気を出してもいいという事でいいんだね?」
「おう!」
「了解だ。それじゃあ、遠慮なく行かせて貰おう」
ちゃんと本人の証言も取れたし、誰も文句は無い筈だ。
なら…久し振りに本気でやりますか。
今日が私の命日になるかもしれないけど。
・・・・・
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・・・
・・
・
しまったと思った。やっちまったと後悔した。
だが、もう全てが遅かった。
「そこ」
千影の駆るターミナス303の乗るボードが空中に緑色の軌跡を描きながらステージを彩り、その巨大なバックパックから放たれる二種類のレーザーが次々とドローンを破壊していく。
「冗談だろ…どうしてあんな動きが出来るんだよ……」
一夏の五メートル前ぐらいで急上昇し、そこから逆さまになりながら二門のロングレンジレーザー砲を発射し、それが複数のドローンを一気に貫通し破壊する。
かと思えば、そのまま急加速の後に生きているかのように曲がりくねった細いレーザーが8本同時に発射され、縦横無尽に動き回った末にそれぞれが一撃でドローンを撃墜していく。
更には、通り過ぎる際に両腕部にある固定されている近接用ブレードを振るって切り裂いていく。
一夏の真上で両手に持ったマシンガンのトリガーを引きっぱなしにした状態で回転し、複数の爆発音と共に数多くのドローンが粉々になっていく。
圧倒的だった。全てにおいて相手の方が何枚も上手だった。
候補生でもないのに、こんなにも凄い人物が同じクラスにいただなんて全く知らなかった。
「ほ…呆けてる場合じゃなかった! 俺もやらないと!」
我に返った一夏が、偶然にも目の前にいたドローンに向かって斬り掛かる。
だが、その直線的な動きは簡単に避けられ、小馬鹿にするようにして去っていく。
「くそっ! なんで当たらないんだよ!!」
自棄になって雪片を振るうと、それが奇跡的に近くにいたドローンに当たって壊れた。
「や…やった! これで5体目…だよな?」
これで5体目…ではない。まだたったの5体目だ。
一方の千影は、もう何体破壊したかは分からない程にスコアを稼いでいる。
もしも、これが通常形式の試合だったらどうなっていたか。
流石の一夏も、容易に想像が出来てしまった。
「勝てない……実力が違い過ぎる……」
これまでも格上の相手と試合をしてきて、辛うじてではあるが勝利を収めてきた。
自分は強くなっていると、確実に実力が付いていると、そう思っていた。
けど、それは間違いだった。そもそも、少し前までド素人だった人間が、たかが数ヶ月の経験だけでプロに追従しようという考え自体が間違っていたのだ。
これまでの勝利は単なる偶然。相手が自分を侮っていた結果。
頭ではそれを否定したくても、目の前の現実がそれを肯定する。
「そーれっと」
ターミナスがステージ全体を周回するかのように大きく動き回り、残される緑色の軌跡が美しく場を染めていく。
ステージの一番上にて激しく縦回転をし、テール側(後方)に力を込める。
左手でボードのサイドエッジを掴み、右手と右腕で細かくバランス調整を行う。
「すげぇ…」
テール側に重心を置き、またもや縦回転。
ボードが千影の真上に来た瞬間、全ての重心をボードの中央に寄せた。
そこから更なる回転を加え、ノーズ側(前方)に重心を移動させる。
「こ…こっちに来るっ!?」
縦回転を終えてから、そのまま凄まじい速度で急降下しながらボードのエッジと二種類のレーザーで次々と残りのドローンを蹴散らしていく。
最後にターンを決めてつつエッジで最後のドローンを破壊した直後、時間切れとなってアリーナ内にブザーが鳴った。
「うーん…5.5?」
「いやいやいや! どう考えても10点満点だろッ!?」
「そっか。まぁ、どうでもいいや。それよりもスコアを見てみようじゃないか」
「見るまでも無いだろ……」
子供でも分かるレベルで勝敗は明らか。
だけど、反射的に目はスコアボードになっている電光掲示板に向いてしまう。
「……え?」
【皇千影95】【織斑一夏500】
「ど…どういうことだ?」
「おや。言ってなかったかな? 君は一機破壊するごとに100点入るようになっているんだよ。つまり、この勝負は君の勝ちだ。良かったね。おめでとう」
「ちょ…ちょい待ち! なんでそうなるんだよっ!? おかしいだろっ!?」
「どこが?」
「全部だよ! どうして俺だけがそんな……」
「そんな事はどうでもいいだろう? それよりも、とっとと戻ったらどうだい? 君の大好きなお姉さんや、取り巻きの女の子たちが君の勝利を祝福してくれている筈だよ」
それだけを言って、千影は自分の出てきたピットへと戻って行った。
残されたのは、訳も分からないままに勝者となった一夏のみだった。
ゆめみるそうぎょはゆめをみる。えいえんにおわらないゆめをみる。
ゆめみるそうぎょはゆめをみる。くつうとぜつぼうときょむのゆめをみる。
ゆめみるそうぎょはゆめをみる。ゆめみるそうぎょはゆめをみる。
ゆめみるそうぎょは……。