無限転生 ~INFINITI DEAD END~   作:とんこつラーメン

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この世界で私はずっと一人だと思っていた。

一人の方がずっと気楽でいられるからだ。

けど…ダメだった。

どんなに割り切っても、どんなに覚悟を決めても。

一人ぼっちは嫌だ。孤独は嫌だ。

どんなに多くの世界に転生しても、私一人じゃ何もできない。

友達が欲しい。仲間が欲しい。誰かと一緒にいたい。

けど、同時に怖くもある。恐れがある。

勇気と無謀は紙一重。

君は、私に勇気をくれる存在になってくれるのかな?





ほけんしつのおねえさん

 千影によって完全拒絶されてしまった千冬と候補生達。

 罵倒とはまた違う言葉を受け、呆然と立ち尽くしていた。

 

「惚れた男への点数稼ぎに私の命を利用しようとするな…か」

「傍から見たら、あたし達ってそんな風に見られてたのかしらね……」

 

 まるで、千影の台詞が他の生徒達の総意であるように聞こえ、四人共が黙り込んでしまう。

 そうではないと否定をするのは簡単だが、彼女達は分かっていた。

 心のどこかにそんな風な思いが僅かでもあった事を。

 

「皇さん…本当に苦しそうにしてましたわね……」

「それは当然だろう。デビルフィッシュに搭乗するには、一般的にも非合法とされている薬物を注射することが必須事項とされているのだからな」

 

 呪われし白銀の悪魔を乗りこなすには、搭乗者にもそれ相応の覚悟と代価が必要となる。

 それを聞けば、誰もが顔を顰める筈なのに、彼女は何の躊躇いも無くそれをこなす。

 通常ならば絶対に考えられない事だった。

 

「どうして、あんなにもあたし達を拒絶するのかしら……」

「確かにボクたちと彼女は殆どが初対面みたいなものだけど、だからと言って…」

 

 鈴たちは理解していなかった。第三者から見た自分達がどんな風に映っているかを。

 いつも学園唯一の男子にベッタリである光景を見て、他の女子達は好印象を抱く筈がない。

 それどころか、周囲からやっかみを受けても不思議ではない。

 だが、彼女達はそれに気が付かない。

 一夏と一緒にいる事が自分達にとっては当たり前であり、同時に自分達こそが一夏に最も相応しいと無意識下で強く思い込んでいるから。

 

「ある意味、皇の言葉は真理かもしれんな……」

「「「「え?」」」」

「いい機会だから、偶にはお前達も周りの声に耳を傾けてみろ。そうすれば、アイツがどうしてあんな事を言ったのかが理解出来る筈だ」

「「「「………」」」」

 

 千冬から指摘を受け、四人は遂に黙り込んでしまう。

 しかし千冬は気が付いていない。

 あの言葉は自分にも向けられていた事を。

 だからこそ、己は千影から微塵も信頼なんてされないという事を。

 千冬もまた信じ込んでいた。

 自分は教師だから。担任だから、いつかはきっと心を開いてくれると。

 その考え自体が根本的に間違っている事も知らずに。

 

「…行くぞ」

「行くって……」

「どこに?」

「決まっている。皇の元へだ。あんな状態で寮に無事にたどり着けるわけがないだろう。必ずどこかで倒れているに違いない。多少強引にでも、アイツの事を保護しなくては……」

 

 呆然とする候補生達を尻目に、千冬は一人で歩き出す。

 どうして彼女にそこまで拘るのかは本人にも分らない。

 だが、なんでか助けないといけないような気がするのだ。

 彼女がその理由を知るのは、全てが手遅れになってからであるが。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 アリーナの廊下のど真ん中に倒れていた千影を抱きかかえた状態で保健室までやって来た箒。

 以前にも何回か来たことがあるので、辿り着くこと自体は難なく出来た。

 だが、問題はここからだった。

 

「この状態では扉が開けられない…!」

 

 両手で千影の体を抱きかかえているので、どうしても両手が塞がってしまっているのだ。

 かといって、病人(?)である彼女を一時的とはいえ床に置くなど論外な訳で。

 

「くぅぅ…仕方があるまい。今はこいつを休ませることが先決。それに、誰も見ていないんだから問題はあるまい」

 

 足を使ってドアをこじ開けようと試みた…瞬間、いきなり中から扉が開いた。

 

「そんな所で何をやっているのかしら?」

「え?」

 

 現れたのは、白衣を着た銀髪の美女。

 格好からして保健の先生であることは間違いなさそうだが、ここで箒の頭にある疑問が過る。

 

(IS学園の保健の先生って…こんな人物だったか?)

 

 今にして思えば、今までに一度も保健室にて先生らしき人物と遭遇していない。

 単純にタイミングが悪かったのか、それとも自分が忘れているだけなのかは不明だが、少なくともこのような人物は今までに一度もIS学園内で見かけたことが無い。

 

「…もしかして怪我人…じゃなさそうね。病人?」

「そ…そうなんです! アリーナの廊下で倒れていて、それで……」

「はいはい。詳しい事情なら後で聞くから、まずはその子をベットに寝かせなきゃ。こっちに来て頂戴」

「わ…分かりました」

 

 怪しい人物ではあるが、今はそんな事を言っている場合ではない。

 言われるがまま、箒は千影をベットまで運んで、そのまま静かに寝かせた。

 

「これでよし…と。ご苦労様」

「いえ……」

「それじゃ、この子が寝ている間にまずは軽く検査してみないとね。悪いけど、少しだけ廊下に出てて貰えるかしら?」

「ここにいてはダメなのですか?」

「あら。堅物そうに見えて意外と大胆なのね。同い年の女の子の裸をみたいだなんて。それとも、ソッチ系の趣味でもあるかしら?」

「ち…違います!」

 

 顔を真っ赤にしながら必死に否定をし、箒は素直に廊下に出て行った。

 それを見ながら彼女はクスクスと口を押さえて笑っていた。

 

「可愛い女の子をからかうのは面白いわね。それにしても……」

 

 眼下で静かに寝ている千影を見て、そっとその額に触れる。

 その顔は先程までとは違い、優しさに満ちていた。

 

「どの世界に転生しても、やってる事は何も変わらないのですね…マスター」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 誰かが自分に触れる感触で、私の意識が浮上する。

 未だに重たい瞼を僅かに持ち上げてから周囲を確認すると、視線の先に物凄く見た事がある銀髪の美女がいた事で一気に覚醒した。

 

「あら。お目覚めですかマスター?」

「…なんで君がここにいるのかな? カレン・C・オルテンシア」

「さぁ? どうしてでしょうね?」

 

 彼女の名は『カレン・C・オルテンシア』

 嘗て私がカルデアのある世界に転生をした際に契約をしたルーラーの疑似サーヴァントだ。

 見た目はその名の通り可憐な女の子だが、その中身は冗談抜きの鬼畜。

 真面目と不真面目を光の速さで往復しているので、常にカルデアにいる全てのサーヴァントが振り回されている。

 その主な犠牲者は子ギルくんとクー・フーリンの兄貴だが。

 特に、キャスニキにはめっちゃマウントを取ってくる。

 ケルトの大英雄も彼女の前では形無しだ。

 

「…深く聞かない方が良さそうだね」

「流石は私の愛するマスター。賢明な判断ですわ」

「まだ意識が朦朧としている時に初耳な台詞を言わないでくれるかな」

 

 薬の影響で碌に体が動かない状態だというのに、本気で背筋がぞっとした。

 これはきっと本能的な物だろう。きっとそうだ。

 

「…ところでここは?」

「IS学園の保健室です。マスターは黒い髪のポニーテールの女の子に抱えられてきたのです」

 

 黒髪でポニーテール……あぁ…彼女か。

 少なくとも、私の記憶の中でその条件に該当する人物は一人しかいない。

 

「随分と心配していたみたいですよ? もしかして……」

「カレンが考えているような事は無いよ。彼女は間違いなく赤の他人さ」

「ふーん…」

 

 絶対に信じてないな。それどころか、何か面白いものを見つけた目をしている。

 こんな時の彼女には絶対に関わらないのが吉なのだが……。

 

「にしても、なんで保健室の先生?」

「似合いませんか?」

「私の中じゃ、こんな場所に相応しいのはナイチンゲールやアスクレピオスとかだから、ぶっちゃけ違和感しかない…と言いたいけど、どうして普通に馴染んでるんだ?」

「白衣です」

「は?」

「白衣パワーです。眼鏡もあれば完璧ですね」

 

 彼女と普通の会話をしようと思った自分が間違いだった。

 

「にしても、よく私の事が分かったね。あの頃とは性別以外は何もかもが変わっている筈だが……」

「姿形がどれだけ変わっても、魂の色だけは変えようがありませんから。普通の人間達ならばいざ知らず、私達には通用しませんよ」

「…それもそうか」

 

 サーヴァントには下手な誤魔化しは通用しない…か。

 伊達に人類史に刻まれてはいないって事だな。

 

「それはそうとマスター」

「なんだい?」

「どうして、そんなこと(・・・・・)になってるんですか?」

 

 私の身体を指差して、カレンが怪訝そうな顔をして呟く。

 彼女の疑問は御尤もだ。他の奴等はともかく、彼女にならば話してもいいだろう。

 この世界における私の『真実』を。

 どうせ、嘘なんかついてもすぐにバレるに決まってるし。

 

「話せば長くなるんだけど……」

「では省略してください」

「…容赦ないな。これでも、本当にヤバい状態なんだが」

「自業自得です」

「それを言われたら何も言い返せない……」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「…という訳さ」

「成る程」

 

 文字通り、この世界の私について何もかもを話した。

 この体の『誕生』から今現在に至るまで。

 そして、専用機と『薬』についても。

 

「マスター」

「なんだい」

「その超不幸体質、いい加減にどうにかなりませんか?」

「私に言われても」

 

 どうにか出来れば誰も苦労しない。

 私だって、普通に生きて普通に死ねればどれだけ満足か。

 

「あんまりこんな事は言いたく無ないですけど、このままだとマスター…確実に死にますよ? 外的要因ではなくて、完全完璧に自分のせいで」

「分かっているよ。自分の寿命があと僅かだってことぐらいは。けど、私にとっては些細な問題に過ぎない」

「無限の転生を繰り返している貴女にとってはそうかもしれませんが、周囲の者達にとってはそうではないでしょう?」

「その為に『夢見る双魚』があるんだよ」

「至高神ソルの欠片にして、マスターの魂と融合しているスフィアとかいう物体の事ですか」

「今はターミナスのコアとなっているけどね」

 

 この世界で死んだら、機体から離れてまた私の中へと戻ってくるのだろう。

 これだけしつこいと、逆に愛着も湧いてきてしまうのはなんでだろう。

 

「私が死んだら、夢見る双魚の第二の反作用で全てがリセットされる。だから気にする必要は皆無だよ」

「私達の記憶は変わっていませんが?」

「それは単純に、私がスフィアを手に入れたのが『あの世界』から消えた後だからだよ」

 

 私が人理焼却の世界に転生したのは…いつ頃だったかな?

 ハッキリと覚えている部分もあれば、曖昧な部分もあるからな。

 

「それはそうとカレン。話は変わるんだが…」

「どうしました?」

「君はちゃんと免許とかは持っているのか?」

「……怪我なんて、適当に薬でも塗って包帯を巻いとけばなんとかなりますよ」

「アスクレピオスとナイチンゲールに土下座して謝れ」

 

 医療行為を完全に舐めきっている…。

 もしも重症患者とかが来たらどうする気だ?

 

「もうそろそろ、廊下にいる彼女を呼ばないといけませんね」

「話を逸らすな。こっちを見ろ」

 

 私の言葉を無視して扉へと向かっていきやがった。

 本当ならば肩でも掴んで止めたいが、今の衰弱しきった私では立ち上がる事は愚か指一本動かす事すら困難だ。

 

「ちゃんとお礼を言わないとダメですよ?」

「それは彼女次第かな」

「相変わらず捻くれてますね」

「ブーメランだと言っておこう」

 

 そうこう言っている内に扉は開かれ、私を運んできた少女…篠ノ之箒が入ってきた。

 さぁて、どんな理由で私を保健室まで連れてきたのか。

 ちゃんと話して貰おうか。内容次第じゃ…すぐに出て行って貰う事になるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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