LoveLive! Prismatic Sunshine 作:ジュラーヴリク
今回区切れなくて5000文字とやや長いですが、なんやかんやでイイ感じに書けたはずです。
千歌と曜が松浦家特製の干し魚を三年生の教室まで受け取りに行ったので、先に俺と梨子の二人でバス停に向かうことにした。
ちなみにジャンケンで負けた俺が二人のバッグを運ぶことになった。ちくしょう。
真生「くっそぉ……アイツら学校に教科書置きっぱにしてる割にはカバン重いんだよなぁ……。ナニ入ってんだ?」
梨子「女の子には色々あるものなの」
真生「色々、ねぇ……?」
梨子「そう、色々。……真生くんがジャンケン弱いの、なんか意外かも?」
真生「ああ、ジャンケン弱いのはガキの頃からだよ」
梨子「あ、そうなんだ」
会話が途切れる。
そういえば、大切な人だ。とか言ってる割には、梨子が好きなものって良く知らないな
真生・梨子「……あのさ(……ねえ)」
ハモった。
真生・梨子「先いいよ(お先にどうぞ)」
2回も。
一呼吸置いてから切り出す。
真生「じゃあ俺から。今さらだけど梨子のことをもっと知りたい。好きなものとか、趣味とか」
梨子「私の好きなもの……。うーん、料理とかも結構するし、ライトノベルとかも結構読んだりする……かな。最近だと『紅蓮の剣姫』とか」
意外な答えが返ってきた。
真生「料理好きはともかく、ラノベ好きってなんか意外かも。あれ、『紅蓮の剣姫』って確か楠木亜玖璃が主演でアニメ化決定した」
梨子「そうそう。その『紅蓮の剣姫』! 矢野ともりちゃんとのダブル主演楽しみだよね! ……でもそんなに意外かな?」
意外だ、という俺の反応に少しむくれる梨子。
真生「ゴメン訂正。梨子がサブカル好みなの、意外っていうか予想外だった。……ふくれっ面がかわいいのも、意外なトコだな」
梨子「はみぇ!? ……もう! そういうのナシ! 先行く!」
真生「え? あ、おい!」
顔を完熟トマトよりも赤く染めた梨子が駆け出す。バスには余裕を持って間に合いそうだけど、アイツあんな速かったのかよ
side:果南
果南「はい。今日はサバのみりん干しね」
千歌と曜を呼び出した理由のひとつである、自家製の干物を手渡す。密封してるのでバスに持ち込んでも大丈夫なはず。二人は……いつも通りのリアクションだ。
さて、二つめの理由だ。時間もないしスパッと切り出そう。
果南「千歌、曜。理事長代理の鞠莉にはもう会ってたよね? ……アイツ、予告なしでとんでもないことをやらかすから注意して」
千歌「あー……それは千歌たちも経験した。うん、気をつけるね」
果南「それと真生のことなんだけど、実はアイツにスクールアイドルに勧誘されたときね、ちょっと……ううん。かなりキツい言い方しちゃってさ……」
ふと、真生が一瞬見せた寂しそうな表情がフラッシュバックする。
曜「アイツもそんなに気にしてないと思うけど、わかった。都合つけとくね」
果南「……ありがとう。曜」
幼馴染の陰口を言ってるし、後輩にキツく当たったのを謝りたいから幼なじみに頼んで謝る機会を作ってもらってる。最低だな。今の私。
千歌「困ったら頼ってこい! ……昔、果南ちゃんが言ってくれたコトバ。今、返すね」
千歌から思わぬ言葉が飛んでくる。
その一言に素直に頼れないのが私のダメなところ。親友として、姉貴分として、長年接してきたせいで、変なとこで強がるのが私の悪い癖
千歌「……って、あぁーっ!! ヤッバイ! バスもう出ちゃうよ!」
曜「えっ……うわっ!! ゴメン果南ちゃん! 今日は解散で!! じゃあまた明日!!」
言うが早いか、干物入りのビニール袋を提げながら廊下を全力疾走しだす幼なじみ達。
ゴメンね。一つだけ、私が解決しなきゃいけないのがあるんだ。
side:花丸
善子ちゃんが見学することになったり、たしか兵藤先輩と松浦先輩……だったと思う。とにかく、輪ゴム鉄砲で突入作戦を決行されたり。今日はとんでもない一日だった。
少なくとも、私にもあることを実行に移そうと決意させる程度には変わった一日だ。
ルビィ「っくぅ〜……疲れたぁ〜……けど、今日はちょっとだけ上手くできた気がする! ねね、善子ちゃんから見て、どうだった!?」
善子「……そうね、立ち位置は多分カンペキだと思うわ。ただラストのサビでキレが落ちてきてたようにも感じたわ。指先が曲がってたり、ステップがほんのちょっとだけ遅れたり。重箱の隅をつつくようだけど。アンタ自身も理解してると思うけど、原因は多分スタミナ切れね」
ルビィ「あ、ちょっと待って、メモする! ……えっと、立ち位置はあの感覚で……後半のスタミナ切れとそれに伴うキレの低下……ぅゅ……精進します……」
善子ちゃんの指摘に肩を落とすルビィちゃん。
そういえば、真生先輩も『マルとルビィちゃんは基礎体力の強化が当面の課題になる』って言われてたずら!
善子ちゃんがマルたちのダンスを見たのは、確か今日が初めてだったはず。やっぱり、マルの直感は間違ってないずら!
意を決して、すぐ右隣を歩いている善子ちゃんに話しかける。
花丸「……ねえ善子ちゃん」
善子「いきなりそんな改まって、どうしたのよ?」
花丸「やっぱり、善子ちゃんにもAqoursに入ってほしいずら」
善子「っ! またAqours……なんなのよ……真生もアンタも! なんで私なのよ!? 興味ないって言ってるじゃない!」
案の定、善子ちゃんからはAqoursへの加入を拒否される。でも、それはすでに想定済み。
怒鳴り声が苦手なルビィちゃんには悪いけど、この意地っ張りの堕天使サマは、絶対逃がさない!!
花丸「なんで善子ちゃんを誘うのかって? ……ハッ、理由なんて……ない!」
善子「なによ……なんなのよそれ……大した理由も無しにヒトを興味のないジャンルに引きずりこもうっての!?」
花丸「その言葉、そっくりそのまま善子ちゃんに返すずら! もう高校生なんだし厨二病卒業したいから親友と見込んで厨二要素が出ないようにストッパー役になってくれ? そういうこと言ってる時点で既に未練タラッタラの厨二病真っ盛りずら! その厨二病パワーを誰かに頼りながら無理やり抑え込むより自分なりに発散した方がよ〜っぽど無理がないずら!」
あえて煽る。善子ちゃんが意外と熱くなりやすいタイプなのを、この瞬間ばかりは利用させてもらう。
ルビィ「ねえ……ふたりとも……やめて……やめてよぉ……!」
ゴメンねルビィちゃん。見たくないよね。
マルは親友を言葉で傷つけてる最悪な人間だよね。
花丸「……ッそもそも、幼稚園の頃から図書室の住人で! 基礎体力もクッソ雑魚な! マルにそんなストッパー役が務まると! 微塵にも思ったずらか!? 大誤算ずら!」
ダメだ! 涙を流すな! 今のマルは悪役!
善子「……ッ! ずら丸、アンタ……いい加減に」
ルビィ「……ふたりとももうやめてよおォッッッ!!!」
夕暮れに響き渡った友だちの絶叫に我に返る。
あぁ……やりすぎたかもしれない。
ルビィ「……ッ、善子ちゃんが堕天使とか、占いとか……そういうのが好きで、他の子にッ……そういうのをすすめ過ぎないようなッ……ストッパー役を、花丸ちゃんに頼んでたのも……花丸ちゃんがっ……善子ちゃんをあくあに……誘いたがってたのも……ッどっちも、わかってたよ!」
ルビィちゃんが嗚咽混じりに続ける。
ルビィ「花丸ちゃんも! 善子ちゃんも! ムリしなくていいよ! ふたりともAqoursに入れば! それで! 解決するでしょ!? もうやだよ!! 親友がケンカ別れするのッ……もう見たくない!!」
善子「ごめんなさい……一晩だけ考えさせてッ……!」
花丸「あっ……ルビィちゃん! 善子ちゃん! ……ッあーあ……」
あーあ、やっちゃった。
マルが煽りすぎたせいで、ルビィちゃんはマルが知らなかったトラウマスイッチが発動して、多分活動休止。善子ちゃんも……今後誰が勧誘してももう無理。
花丸「ふぅ……。そして先輩方の努力を一日で無に帰してバッドエンド直行。マルの物語はこれでおしまい。ごめんなさい。……謝って済むことじゃないけどね……」
誰へも向かわない、謝罪の言葉が浮かぶ。
そうだ。電話越しにでもいい。せめて真生先輩にだけでも謝ろう。連絡先を交換した時に20時くらいには手が空いてるって言ってたっけ。
結局、帰りのバスには乗り遅れたし、停留所2つ分を鉛よりも重い足取りで歩いて帰り、家に着いたのは20時近くなってからだった。
花丸の祖母「おかえりなさい。こんなに遅くなるなんて……学校でなにかあったのね?」
花丸「……うん。ちょっと、ね」
嘘だ。ちょっとどころじゃない。
花丸「ごめん。今日疲れたからもう寝るね」
おばあちゃんの声を振り切るように、部屋へ向かう。
花丸の祖母「ちょっとマルちゃん。晩ご飯はいいの!?」
スマートフォンの通話アプリを立ち上げ、震える手を抑えながら真生先輩に発信した。
side:善子
今日の放課後は、とにかく情報量が多かった。
なにとはなしに屋上に足が向いて、先輩から胸を揉まれてたのを真生先輩に助けられたと思ったら、なぜかスクールアイドル部の見学をすることになって……ずら丸とケンカした。ルビィも泣かせてしまった。ああもう、最悪よ。
ずら丸にあんだけ煽られるなんて思ってもみなかったけど、おかげで決心がついた。
そうだ、真生先輩にだけは連絡を入れておこう。友達少ない私を色々気にかけてくれたのも、最初に誘ってくれたのも、アイツだったし。
それに……これから私が一番迷惑かける先輩はアイツだろうから。
スマホを取り出し、通話アプリを立ち上げる。
数コール分の呼び出し音が鳴り、彼の声が聞こえる。
真生「もしもし? どうしたよ」
───
帰宅してからのタスクをこなし、趣味に没頭するべく部屋に戻ると、ちょうど善子から着信が来ていた。
真生「……はいよ。こんな時間にどうした?」
善子「もしもし? 夜分にごめんなさい。……スクールアイドル部のことなんだけど」
真剣な声色だ。
真生「問題ねえよ。こっちもちょうど、やるべきことが片付いたとこだったしな。……その様子だと、お前なりに結論出たんだな」
善子「ええ。アンタにはこれから先も迷惑かけることになりそうだから、前もって伝えておこうと思って」
一拍置いて、善子が続ける。
善子「私、興味も知識もニワカ未満だし、運動神経もそこまで良くないわ。アンタと初めて会った時に見せた『堕天使ヨハネ』なんてワケわかんないトコ、見せちゃうかもしれない。
それにね……さっき、帰りにずら丸と喧嘩して、ルビィも泣かせちゃって……最悪よ。そんな最悪な私だけど、到底許されることじゃないけど! 私は! 二人に謝ってから! スクールアイドルをやってみたい!」
電話越しに荒い息づかいが残る。
真生「……善子。ありがとう」
善子「ハァ……、ハァ……、ありがとうってなによ……。ッ私は感謝されるいわれなんて……」
真生「あるよ。俺にとっちゃ大ありだ……っと、噂をすればお前が謝りたい人から着信だ。ちょっと失礼」
善子との通話を一度ミュートし、マルちゃんとの通話画面に切り替える。
花丸「先輩……夜分に失礼します。マル……善子ちゃんにひどいこと言っちゃった……善子ちゃん、もう入部してくれないかも……しれない……。先輩、ごめんなさい……」
花丸が泣きながら話す。
真生「大丈夫。マルちゃんなりに考えた上でやったんだろ? それに……」
アプリの通話画面を操作し、3人でのグループ通話状態にする。
真生「……意外と、なんとかなってたり」
花丸「先輩、それってどういう……! あっ……」
善子「ちょっと……! あ……花丸、私……アンタ達と……」
花丸「善子……ちゃん……ごめんなさい! さっきはあんなキツい言い方して、謝って済むことじゃないけど!」
善子「……そうね。確かに、あんな言い方されたらこのヨハネでもカチンと来たわ」
花丸「……ッ!」
善子「あんだけ煽られたら『それでもやらない』なんて選択肢、無くなるわよ。明日正式に言うけど、私もスクールアイドル部に入る」
花丸「善子ちゃん……」
善子「それと、私の方こそごめんなさい。花丸に負担かけちゃってた……」
二人の会話に区切りがつく。
真生「さて善子、明日から最低二週間は全身筋肉痛になるのを覚悟しとけよ?」
善子「ぜ、全身筋肉痛……? 二週間も……?」
花丸「マルもルビィちゃんも通った道ずら」
真生「そういう訳だ。改めて明日からよろしくな」
通話を切り上げ、ちょっと早いが床に就く。
───翌日の放課後
善子「えっと、今日から入部する津島善子です! よろしくお願いします! ……改めて自己紹介するの、なんか恥ずいわね」
ルビィ「ウソ……善子ちゃん、ほんとに……入ってくれるの……!?」
善子「ルビィ!? ちょ、わっわっ……!」
感極まり涙を浮かべたルビィちゃんが善子に抱きつき、善子もすんでのところで踏ん張り、抱き返す。
ルビィ「……これからよろしくね。善子ちゃん」
善子「ルビィ……ごめんなさい。昨日は熱くなりすぎちゃったわ。私もずら丸も」
ルビィ「ううん。熱くなりすぎたのは私も同じ」
屋上にしんみりとした空気が漂いだした瞬間、数回手拍子が鳴る。
曜「よし! じゃあ新入部員の自己紹介も終わったとこだし、今日の練習始めていこう! みんな気持ち切り替えて! 千歌ちゃん! 号令お願い!」
千歌「分かった! 整列! お願いします!」
全員「お願いします!」
はじまりの春から変化の夏に、季節は移り変わりつつある。
そろそろ小ネタや他作品ネタを挟まないと作者が死ぬぜ!!