LoveLive! Prismatic Sunshine 作:ジュラーヴリク
読むにあたり、注意点がいくつか。
・本作品はフィクションであり、実在の人物などには一切関係ありません。
・未成年誘拐や銃砲刀剣類所持等を示唆する描写がありますが、それらを推奨する目的ではありません。
・本話で登場する宮代栄吾という人物は拙作主人公の祖父に当たる人物で、本編に先んじて登場してもらいました。
難しいことは考えず、ゆっくり読んでいってね!!
せつ菜が連れ去られた。
練習後に解散して、帰宅途中にそのまま行方がわからなくなったとのことだ。
果林「峻。……どこに行くつもり?」
峻「決まってるだろ。せつ菜を助けに行く」
果林「助けに行くって……あの子がどこにいるかも、どういう状況なのかも解らないのよ? それに……峻まで安否不明なんてことになったら!」
栞子「先輩、気持ちは解ります。ですが……今の私たちにできることは……」
峻「なにもない。そう言いたいのか? 解ってるさ。そんなことは解ってるんだよ! それでも! 警察に任せて黙ってせつ菜の無事を祈ってるだけじゃいられないんだよ!」
栞子「ではどうするんですか!? いかに先輩が優秀な方でも! 手がかりや救出する手段がなければどうしようも!」
かすみ「三人ともいい加減にしてくださいよォ!」
かすみの涙混じりの怒号で我に帰る。
かすみ「果林先輩も……しお子も……峻先輩も……やめてくださいよ……! 考えたくないのに……イヤなことばっかり考え……ついちゃって……! やだ……!」
果林「……そうね。熱くなりすぎてたわ。ごめんなさい」
栞子「かすみさん……そうですね。私のほうこそ、すみませんでした」
峻「かすみ……みんな、ごめん。……ッ!」
歩夢「あっ、峻くん!」
部室から走り出す。果林たちが言ってることは正しい。頭では理解してる。それでも、大切な仲間として、黙って待ってるわけにはいかなかった。
───
ランジュ「我がマネージャーは世話が焼けるわね。……私よ。急な話で悪いのだけど、ルームサービス込でホテルを取ってもらえる? ええ。大至急お願い」
愛「ランジュ! こんな時になに言ってんのさ!」
ランジュ「峻に力を貸すの! ……愛。お願い。私もだまってられないの」
愛「……わかった。ランジュなりに……せっつーを助けられる可能性が上がるって思ってやってるんなら。手を尽くそう」
ランジュ「愛、ありがとう。……ええ、よろしく頼むわね」
ミア「Hey, it's me. Looks like you've identified 『Bowser Castle』 OK . I'll tell him」
璃奈「ミアちゃん。今の、せつ菜先輩の居場所?」
ミア「That's Right. 峻に伝えなきゃ」
璃奈「うってつけの暗号がある」
ミア「さすがリナ。用意周到だね」
エマ「さてと。二人が帰ってきたときに出迎える準備をしなきゃ。彼方ちゃん、手伝って」
彼方「了解了解。……みんな、だいじょうぶ。二人とも、きっと無事に帰ってくるよ。峻くんも、せつ菜ちゃんも」
彼方が努めて優しく、不安を取り除くような口調で語りかける。本当は自分も心配でたまらないのに。
しずく「そう……ですね。峻先輩であれば、なんとかしてしまいますからね……」
彼方「まぁ、ホントのこと言うなら、彼方ちゃんも峻くんみたく探しに行きたいとこなんだけどね」
───
峻「飛び出したはいいけど、手がかりは皆無だ……どうする……」
連れさられたと思われる場所に来たが、せつ菜の痕跡は何一つ残っていない。
ふと、背後から声をかけられた。
??? 「あなたが宮之原 峻さま、ですね? とある方から貴方に協力するよう依頼されました」
峻「……アンタは? それに、とある方ってのが誰か明かしてくれよ。黒服にグラサン、こっちの名前を知ってる。胡散臭いにも程がある」
黒子「これは失礼いたしました。私は黒子(ヘイヅゥ)と申します。ショウさまより、貴方を案内するよう依頼されております」
峻「ヘイヅゥさん、ね。……今は信用するしかなさそうだな。分かった」
怪しいことこの上ないが、少なくとも敵ではなさそうだ。彼女に促され、黒塗りの高級車に乗り込む。
車内でこれから向かう場所、そこでの立ち回りを黒子からレクチャーされる。ひと段落ついたところで車が停まったのを感じた。
黒子「峻さま、私どもがお送りできるのはここまでです。この車では目立ちすぎますので、これより先は徒歩で向かってください」
峻「了解。ありがとう。ヘイヅゥさん」
黒子「礼には及びません。これが私の仕事ですので」
ヘイヅゥが指定したホテルは……ここだ。
ロビーの受付で周囲に聞かれないよう小声でキーワードを伝え、黒服から預けられた金貨を手渡す。
峻「すみません『テイスティング』をしたいのですが」
受付「かしこまりました」
案内された道順を通り、表向きは存在しない地下4階に足を踏み入れる。白い遮光カーテンで目隠しされた両開き扉。ここだ。
峻「失礼します」
栄吾「こんにちは、Mr.宮之原。グループの者から話は聞かされております」
セラーのドアを潜ると、タキシードに身を包んだ老紳士が出迎えてくれた。
彼はガンソムリエ。顧客ひとりひとりに合わせて武器を見繕うのが仕事だ。
峻「いきなりの訪問、すみません。……テイスティングをお願いします」
栄吾「承知しました。私の見立てですと、貴方にはハイパワーなものがお似合いかと思いますが、今回は携行性と装弾数を重視された方がよろしいでしょう。オーストリア製のグロック。26と34……小型モデルです」
グロック……たしか樹脂製パーツを採用して強度も確保しつつ、大幅に軽量化した拳銃だったか。
栄吾「視認性を向上させた大型のスリードットサイトに、弾倉交換が容易なマグウェルグリップ。さらに銃身も高精度なカスタム仕様です」
カウンターに置かれた二挺のハンドガンを手に取り、操作した際の感触を確かめる。悪くない。
栄吾「ふむ……視線や姿勢のブレ、筋肉の不自然なこわばりもない。身体への負担を最低限に減らしつつ、銃の作動に必要な反動は受け止められる構え……黒子経由で最低限の人物像を聞きはしたが……とても素人とは思えない……」
峻「どうかしましたか?」
栄吾「いえ。職業柄、銃を扱う人物の立ち振る舞いや癖を無意識に観察してしまうのです。大変失礼しました」
栄吾「では改めて、この他には?」
ソムリエが改めてオーダーを受け付ける。
注文するものの用途とはかけ離れた、穏やかな微笑みのままで。
峻「そう……ですね。まずはゴツくて正確なモノをお願いします」
栄吾「ゴツくて、正確……! それならば、こちらはいかがでしょう?」
ソムリエが数瞬ほど考えこみ、一挺の黒いアサルトライフルを掲げる。
峻「これって、M4ですか。アイアンサイトと望遠のハイブリッド仕様で……フォアグリップ付き……」
オマケに各所に確実な操作ができるような加工も施されている。腕の一部になったかのように錯覚するほどに、しっくりくる。
栄吾「派生型含め有名ですからね。ですが、厳密にはAR-15と申します。貫通力に優れた5.56×45mm弾を使用しますので、相手が一般的な防弾装備を着用していても問題はありません。銃身長は14.5インチ……およそ37cm。銃身も理論可能な限り真っ直ぐな個体を吟味し、650m以内であれば高精度の狙撃も十分に可能です。民間モデルのためセミオート射撃のみとなりますが、銃口へのサプレッサー装着を可能にし、銃身以外の各パーツも精度と強度を向上させてあります」
間合いを選ばない仕様だ。流石に、本職のスナイパーを相手にした場合の狙撃戦は不利になるだろうけど。
栄吾「ご希望であれば、アンダーバレルの変更もいたしますが……どうなされますか?」
グレネードランチャーやショットガンにも変更できるのか……。正直、単純な火力が増すのはありがたいけど、一対多で取り回しが悪くなるのは得策じゃない気もする。
峻「いえ。このままで」
栄吾「かしこまりました」
峻「では締めくくりに、オススメをお願いします。デカくて、大胆なヤツを」
アサルトライフルは汎用性に優れるけど、建物内では瞬時に大火力を相手に向けられる銃器のほうが頼りになる。
栄吾「私のオススメは、セミオートショットガン。ベネリM4……!」
ソムリエが『いかにも、我こそが』といったシルエットのショットガンを掲げる。
先程のハンドガンやライフルと同じく、全体ができる限りツヤを抑えた黒色で塗装されている。
栄吾「ボルトキャリアとチャージングハンドルは操作精度を重視した高級モデル。グリップには布を張っておりますので……濡れた手で扱っても滑らずに確実な操作が可能です」
バネ仕掛けとラバー素材で反動を軽減できるストックや、照準を定めやすいように大型化と蛍光色のドットの追加が施されたアイアンサイト、他にも細かく手が加えられている。
栄吾「……イタリア製の傑作です」
峻「最後に……『デザート』もいただけませんか?」
ハンドガンにライフル、ショットガンと十分すぎるほどだが……念には念を入れておきたい
栄吾「ふむ……デザート?」
ソムリエが困ったように微笑みながら、ジュラルミン製のアタッシュケースを取り出す。ケースには曇りひとつない刀身の様々な形状のナイフが十数本収められていた。
栄吾「どれも研ぎ師の手で丹念に研ぎ上げられた業物です」
折り畳み式のナイフと、オーソドックスな形状のコンバットナイフの二振りが目に留まる。
峻「折りたたみ式のコレと……鞘付きのコレを一本ずつ」
栄吾「お届けはホテルのお部屋でよろしかったでしょうか?」
峻「はい。なるべく急ぎでお願いします」
栄吾「かしこまりました」
金貨をソムリエに手渡してから踵を返し、セラーを出ようと扉に手をかける。
栄吾「Mr.宮之原、どうぞ素敵なデートを」
恭しく一礼しながらソムリエが声をかけてきた。
ソムリエの言葉に頷き、気を引き締め直してセラーを後にする。
峻「せつ菜……必ず助けに行く。無事でいてくれ」
───
演劇部部長「……カーット! さすが皆! 名演技だったね!」
ランジュ「フフン。ランジュなら当然よ!」
かすみ「まあ? かすみんなら? あのくらいヨユーのよっちゃんですけども!!」
二人が得意げに胸を張る。
エマ「果林ちゃんも愛ちゃんも、迫真の演技だったね〜。特に最初の峻くんを呼び止めるときのカ果林ちゃんの声!」
果林「ああ……あれね。あんな低い声が出せるなんて思ってなかったわ。正直、自分でもオドロキよ」
愛「てか、せっつーも黒スーツめっちゃ似合ってたじゃん!」
栞子「確かに似合っていましたが、誘拐された当の本人が峻先輩の案内役をする、というのは妙な気もしますね」
せつ菜「ありがとうございます! ただ……あのスーツ、あまり長時間着ていたくはないですね。その……胸とかお尻とか、色々キツくて……」
果林「せつ菜は典型的なトランジスタグラマー体型だものね」
歩夢「それにあのスーツ、ホントは栞子ちゃんが着る予定だったんだから、なおさら仕方ないよ」
かすみ「ぐぬぅ……かすみんだって……」
彼方「ていうか、しずくちゃんと歩夢ちゃん、流石にチョイ役すぎない?」
しずく「それは……言わないでください。ちょっと気にしてたんですから」
彼方「おっと、こりゃ失礼」
歩夢「今回“は”せつ菜ちゃんがメインだったから仕方ないですよ」
愛「歩夢、なんかヘンなオーラ出てるけど……」
歩夢「ううん! 気のせい気のせい!」
ミア「そういえばリナが使ったあの暗号、あれはどこの言葉?」
璃奈「あれは薩摩弁をローマ字表記にしただけ。本場の人にバレたらボロが出てチェストされるからこれ以上は言わない。りなちゃんボード『( ・×・)オクチチャック』」
ミア「chest……?」
せつ菜「ミアさん。チェストはチェストです。」
ミア「OK.『Don't think, feel』ってことだね。これ以上は言わないよ」
思い思いに互いの感想を言いあう。
峻「それにしても、忙しいのに時間を割いてくださってありがとうございました。栄吾さん」
栄吾「いや、峻くん。感謝の言葉を言いたいのは私の方だよ」
ガンソムリエ役を担当した宮代栄吾さんだ。
彼のお孫さんもスクールアイドル部に所属しているらしい。
栄吾「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の皆さん。この度は、このような素敵な映像作品の撮影に参加できたこと、心より篤く御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました!」
峻「栄吾さん……!」
深くお辞儀をする栄吾さん。
せつ菜「整列!」
せつ菜の、いや。生徒会執行部・中川菜々の凛とした号令と共に一列横隊で栄吾さんに正対する。
せつ菜「宮代栄吾さん! 本日はお忙しい中、ありがとうございました!」
同好会全員「「「ありがとうございました!」」」
心からの感謝の意を込め、最敬礼をする。
栄吾「こちらこそ、ありがとうございました!」
本業の近海マグロはえ縄船の船主としての仕事もあるので、明日の昼には仙台に戻らなければならないと、栄吾さんは言っていた。
本当であれば試写会にも同席してほしかったけど、役職に『〇〇長』と付く人は総じて忙しいものだ。仕方ないところではある。
彼のシワが刻まれた渋さと親しみが感じられる笑顔と『年の差は祖父と孫、住所は仙台とお台場。遠く離れてるが、私たちは友だちだ。困った時は気軽に頼ってくれ』という一言を、俺たちは、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は忘れないだろう。
まずは、読者の皆さま新年明けましておめでとうございます。
アナタもワタシも正月太りには気をつけましょう。
閑話休題
ミリオタもかじってる作者的には、峻くんはコルト・ガバメントやデザートイーグルなんかの大口径ハンドガンやS&W M19なんかのリボルバーのほうが似合うんじゃと思ってますが、ジョン・ウィックチャプター2のパロディネタという作劇の都合もあって泣く泣くグロックを持たせました。
話題が二転三転するようで申し訳ないのですが、読了報告・感想待ってます。
今年もゆっくりしていってね!!