LoveLive! Prismatic Sunshine 作:ジュラーヴリク
さて、第五話始まります。
『二年一組・高海千歌さん、宮代真生さん、至急生徒会室まで来るように』
人見知りシャウトガールとその小柄な友達、パンチラ堕天使ヨハネさん、もとい津島善子が立ち去った直後、校内放送で生徒会室に呼び出される。
「勘弁してくれ……心当たりはねぇぞ?」
「うーん、呼び出されるようなことしたかな……?」
こっちに戻ってきてからの記憶を遡ってみるが、やらかした憶えは特にない。同じく名指しされた千歌のほうも、心当たりがないのか首を傾げている。
「見方によっては今この瞬間が正にそうだと思うけど……」
「とにかく、こっちは私と梨子ちゃんで片づけておくから、二人は早く行ってきたほうがいいんじゃない?」
「だな。わるいけど頼む」
「そうだね。お願い! 曜ちゃん、梨子ちゃん」
一度昇降口前での勧誘及び宣伝活動を区切り、俺と千歌は校内放送で呼び出された生徒会室に向かう。
生徒会室の扉から発せられる正体不明のプレッシャーというのはどうやら全国共通のものらしい。意を決してノックする。
「失礼します。二年一組の宮代真生です」
「失礼します。同じく、高海千歌です」
「どうぞ」
中から応えが返ってくる。
出迎えてくれたのは、切り揃えた艶やかな黒髪とツリ目気味なエメラルドグリーンの瞳、口元のホクロが特長的な、いかにも大和撫子といった見た目の美人だった。
こんな美人な先輩から呼び出されれば世の男子高校生なら普通は嬉しいはずだ。だが、こちらに対して怒りをあらわにしていれば、そんな考えは霧散するだろう。
「二年一組の高海千歌さん、そしてテスト生の宮代真生さん、ですね? あなた方を呼んだのは他でもありません。この私、黒澤ダイヤです。単刀直入に言いましょう。スクールアイドル部の活動を即刻中止しなさい」
「中止って、なんでですか!? ちゃんと部活の設立届も出しましたし、活動内容だって問題ないはずです!」
活動を中止しろ。そう迫る先輩に千歌が反論する。そりゃそうだろう。やましい事は何一つないのに『活動をやめろ』なんて言われたら誰だって怒る。
先輩が続ける。
「理由を説明しましょう。まずこの設立届ですが、設立に必要な部員数が規定の5人に達していません。そして、あなた方二人が不純異性交遊の関係にあるという疑いが僅かに浮上しています。そんな不埒な輩に学校の名前を背負ったアイドル活動をさせる訳にはいきません。以上の二つが私がスクールアイドル部の活動の即刻中止を求める理由です」
なるほど、あっちはちゃんとした理由があるみたいだ。設立できる条件を満たしてないから設立できません。ごもっともだ、分が悪すぎる。
「……わかりました。仮称・スクールアイドル部の活動は一度やめます」
「ッ! 真生くん! なんで!?」
「……随分、聞きわけが良いのですね?」
「ここで話していても平行線のままでしょうし、友達に待ってもらってます。それに、そろそろバスの時間なので。
ああそれと、『俺と千歌が不純異性交遊の関係だ』という噂はデマです。それも把握お願いします。では、失礼します。千歌、帰ろうぜ」
「あっ、ちょっと待ってよぉ!」
こういう時は一度撤退して作戦を練り直すのが定石だ。
「待ちなさい! 不純異性交遊関係ではないとして、貴方と高海さんはどういう関係なのですか!?」
「……『仲間』です」
ハッキリしてるところだけ答える
side:千歌
生徒会長に活動をやめろと言われて素直に引き下がる真生くん。
なんで? どうして? 昨日の『最後まで付き合う』ってあの言葉はウソだったの?
でも、それを聞くのは違う気がする。普段の彼は考えなしに動くタイプじゃないから。
side:ダイヤ
なぜと聞き返した高海さんの目、あれは2年前にいたスクールアイドルと同じ。真っ直ぐな目。でも、かつての彼女たちと違うのは彼がいる。
いけない……私はこの学院最後の生徒会長。それはそれ、これはこれ。混同してはいけない。ですが、『彼女たちなら或いは』そう思えてならないのは私のどこがそうさせるのでしょうか……?
────
「あ、おかえり〜。どうだった?」
「設立するには部員が足りません! って設立届突き返されちゃった。いやー失敗失敗」
「なにそれ〜」
曜ちゃんに聞かれるが、千歌は明るく振舞っている。……本当は、今すぐにでもやり返してやりたいんだろう? でも、ちょっとだけガマンしてくれよ。
「真生くん? そんな顔してどうしたの……?」
「えっ? あぁ、いや……なんでもない」
「……ホントに?」
「大丈夫大丈夫! それより、片づけ押しつけちゃってゴメン」
「ううん、平気。ちょうどバスの時間みたい」
昨日と同じように4人でバスに乗る。周りの空気は昨日よりも和やかだと思う。これからどうするかを頭の中で整理していると、不意に梨子ちゃんが切り出した。
「千歌ちゃん、真生くん、曜ちゃん、昨日待ってもらったスクールアイドルの話なんだけど、私も……みんなとやりたい。ねぇ千歌ちゃん、設立届貸してくれる? ……これで三人。だね」
そう言うと、部員名簿の欄に整った字で名前を書く。梨子ちゃん、ありがとう。
「梨子ちゃん……ありがとう……! ありがとう!」
感極まった千歌が隣に座っている梨子ちゃんに抱きつく。ふと隣の曜ちゃんを見てみると、真剣な面持ちをしていた。
「三人じゃなくて四人だよ。私も正式に転部する。設立届貸して」
「曜ちゃん?」
「実は放課後すぐに話つけてたんだ。水泳はいつでもできるけど、こうして『千歌ちゃん達とナニカをする』のはこれから先、何回あるかわからないから。それに、千歌ちゃんは本気でやろうとしてる。それに本気で応えるのが礼儀だと思ったの」
そして、四人目の欄に曜ちゃんが署名した。
「曜ちゃん……ホントに、ありがとう!
……ところでさ、さっきなんであんなアッサリ引いたの?」
「あぁアレか。分が悪かったからな。あのままだと『中止しろと迫る先輩VS引き下がらない千歌 』を延々やってただろうしな。それに策を練るだけの時間も稼げたから長居する意味もなかった。それだけだ」
「えっ? 私、時間稼ぎに使われたってこと……?」
「まあまあ千歌ちゃん落ち着いて。それでその策って?」
曜ちゃんが千歌をなだめつつ、続けるよう促してくれた。
「簡単だ。なにも校外での活動はどうこう言われてないし、早朝ランニングを装えば基礎練はカモフラできるってハナシ。
それに、あの後ライブの動画を何本か見て改めて考えたけど『笑顔を崩さず何曲も歌いながら踊る』って行為は相当な体力がいる。ライブをやるにしたって、曲の途中で息切れしてたらそれこそ『お遊戯会未満』になってしまう。そこで、基礎体力をつけつつ5人目を見つける。これを優先目標にしようと思う。もちろん水面下でな。どう?」
「なるほど……さすが作戦担当」
「千里の道も一歩から。だね」
「確かに……」
三人からの同意も得られた。当面の活動目標ができたところでバスが十千万前で停車し、曜ちゃんとここで別れる。千歌から明日から梨子ちゃんのペースに合わせて軽いジョギングから始めると言われた。勿論、俺も付き合うことになっている。
side:曜
千歌ちゃんの本気に本気で応えたい。それは半分本当だけど、半分は嘘。こないだから胸の中で燻り続けている粘ついたドス黒い炎に従っただけだ。あぁ……本当に『らしくない』なぁ……
次の日の朝、早速ランニングをしたが、案の定千歌が寝坊しかけた。勘弁してくれよ。
そしてその日の放課後───
『二年一組・桜内梨子さん、高海千歌さん、宮代真生くん、渡辺曜さん、理事長室に来るように』
なにこれデジャヴ? それともイザナミ?
「はぁ……千歌、梨子ちゃん、曜ちゃん、行こうぜ」
「あーあ……今日もか……」
「うぅ……私なんにもしてないのに……」
「両舷前進微速〜……ヨーソロー……」
四人揃って理事長室に向かう。
おいそこで『うわさのバカルテット』とか『実は宮代くんのハーレムなのがバレたんだ』とかヒソヒソやってるよいつむトリオwithエキゾチック褐色ガール、後で覚えとけ。
閑話休題。
気が進まないながらも理事長室の扉をノックする。
「「「「失礼します」」」」
「Come in」
明らかにおかしい。渋みがありつつ親しみも感じるレオナルド先生の声じゃない。独特のクセがある女の子の声だ。まさかイタズラ……?
警戒しつつ木製の扉を開ける。
「スクールアイドル部の皆サン、Nice to meet you〜♡ワタシは小原鞠莉。この浦の星女学院の生徒であり、パパに代わって理事長代理をすることになったの。美少女な生徒にして理事長代理、てんこ盛りのカレー牛丼みたいなものネ♡」
ウェーブがかった金髪と金色の瞳、果南ちゃん以上にグラマラスなスタイルが特徴的な自称するのも頷ける美少女が、人懐っこい笑顔をこちらに向けながら自己紹介をする。
いや誰だよ。
待て。落ち着け。情報量が多いが思考を止めるな。さっきこの子はオハラと名乗ってた。それに『パパ』や『理事長』という単語。見覚えのある金色の瞳、俺たちがどういう集まりなのかも調べがついてる。
これらの情報から推察するにレオナルド先生の娘ってのは間違いなさそうだ。
眼球運動で千歌たちの様子を確認すると恐らく処理落ちしているのだろう、口元が僅かにひきつりながらも微動だにしていない。
「……で、小原先輩、なにか用があって俺たちを呼んだんじゃないですか?」
「つれないわネ。私のことはフランクに『マリー』って呼んでちょうだい?」
俺までフリーズするワケにはいかない。多少むりやりにでも話を進めることにする。
「ハァ……分かりましたよマリー先輩。俺たちを呼び出した理由を聞かせてください」
「OK. 昨日、生徒会長のダイヤに突き返された設立届を理事長代理権限で受理します。それと1st LIVEの会場としてアキバドームを確保しましょう」
「ホントですか!?」
設立届の受理とアキバドームのキーワードで千歌が再起動する。
「It's joke♡」
……なんなんだよ。正直、こういうタイプは間合いがつかめないから苦手だ。
「……先輩、設立届の受理は本当なんですね?」
一拍遅れて梨子ちゃんが立ち直る。
「ええ。そこは本当。そしてアナタたちの1st LIVEの会場はここの体育館。そこを満員にしたら4人での設立とスクールアイドル部としての活動を正式に認めましょう。ただし、そうねぇ……大きな実りには常に大きな責任とリスクが存在するワ」
「リスク、ですか……」
「そう。もし満員にできなかったら設立届は永久に受理せず、テスト生のマサキもこの学校を去ってもらいます」
場の空気が一気に張り詰める。
非公認の状態から体育館を満員にしてライブを成功させる。そうすれば正式に認めるし俺も退学にならなくて済む。もし失敗すれば……
小原先輩の目は本気だ。
「わかりました。私たちの力で、ここの体育館を満員にしてみせます! 女に二言はありません!」
千歌が言い切る。
ああクソ、ビビって心の中でブレーキを踏んだ自分が情けねえ。でも、コイツのアクセルを踏み込める俺にないトコロがありがたい。
やってやろうじゃねえの。
「いい返事ね。他の二人も、私の話に乗ったと判断するわよ?」
「「はい!」」
改めて四人共通の目標と意思が決まり退室しようとした瞬間、聞き覚えのある凛とした怒号と共に生徒会長の黒澤ダイヤ先輩がノックもなしに入室してきた。
「鞠莉さん!! これは一体どういうことですか!! ……あなた達……まもなく完全下校時刻です。用もないのに校内に長居するのは余り褒められた行為ではありませんよ」
「ダイヤ、Take it easy. どういうことも何も『留学を終えた私、小原鞠莉が今日付けで理事長代理の任に就く』書類のとおりよ」
大層ご立腹の黒澤先輩と受け流すマリー先輩。ワケありみたいだな。
「用が済んだのであれば早くお帰りなさい。ここからは内密な話です」
黒澤先輩に促され、いや、有無を言わさず退室させられる。
「あ、そうそう。マサキ、パパから伝言よ。『君に負担をかけすぎてしまうこと、心から申し訳ないと思っている』」
父娘揃ってホント、なんなんだよ……
帰り道に十千万で作戦会議兼決起集会が行われることになったのは、また別の話だ。とにかく、俺たちには『足掻いてなんとかする』しか方法はない。
side:ダイヤ&鞠莉
「まずは『おかえりなさい』と迎えるべきなのでしょうね。……なぜ今になって戻ってきたのですか?」
「留学中にやることを全て終わらせてきたからよ。それに、母校が無くなるかどうかの瀬戸際を海の向こうで黙って見ているなんてできなかったの」
「はぁ……貴女は昔からいつもそうですね。何もかもが嵐のように突発的で……でもそれは計算した上での言動で……!」
「マリーがダイヤと果南を振り回してる自覚はあるわ。……ねぇ、ダイヤ。話は変わるけど、ダイヤもあの子たちに何かしらの可能性を感じたんじゃない?」
「えぇ。……砂粒程度にですが」
幼馴染で結成したスクールアイドルグループが廃校寸前の母校を救う。かつてのμ'sが成し遂げたこと。2年前に私と鞠莉さんと果南さんで目指し、そして波のように砕けて散ったもの。千歌さん達に同じ思いをしてほしくなかったから、わたくしはそうなる前に押さえつけて止めようとした。これを独善と言わずなんと言うのでしょう。わたくしは、最低ですね。
2年前に喧嘩別れした幼馴染との再会。同じタイミングで結成した幼馴染同士のスクールアイドル。無茶で無謀なのを情熱でカバーしようとするあの感じ。それはかつての私たちと同じ。でも、決定的に違うのは多分、彼の存在。あの時、私たちにも彼のような存在がいたら? ダメダメ。『もし、たら、れば』は考えだしたら無限に続いてしまう。今の私にできることはないのよ。
後半曜ちゃんがほぼ無言だったのを後書きでお詫びしたいと思います。大変申し訳ございません。
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