「…そんな馬鹿な…」
俺の視線の先のテレビには倒れたメイドが映っている。
そして、そこに颯爽と現れる主人公。
「ああああああああああ!」
違う、そうじゃない!
俺が、俺達が求めていたのはそんな暗殺者メイドじゃない!
いっそ倒れているのは主人公を油断させ殺す為の罠であってほしい!
その思いも虚しく、主人公があっという間に敵を倒してメイドを助け出す。
…罠という可能性は無かった。
…この先の展開なんて誰でもわかりそうなものだ。
「…………」
俺は無言でテレビを消した。
「…………」
コンコン
「…誰ですか?」
このタイミングで来る奴はわかりきっているが…
「…メイドは暗殺者属性こそ至高。」
暗殺者メイドを求める会の合言葉だ。
「やっぱお前か…あの展開、どう思う。」
「…今すぐ関係者の弱みを握り、違う展開にさせるべきです。」
「……あいつらは原作の小説を忠実に再現したに過ぎない、それに、1話目に人外に転生した主人公が1話の内に面影の欠片もない擬人化なんて事をした時点で、わかりきっていただろ?」
「…その為の準備も、既にできています。」
「…しなくていい。」
「会長!?」
「今日は……もう疲れた……少し散歩してくる。」
…弱みを握ってアニメを作らせたとして、果たして素晴らしいアニメができるだろうか?
それに、暗殺者メイドが最強のまま存在し続けるという展開を望んでいるのは俺達だけで、俺達以外の奴らにとって暗殺者メイドはあくまで一つの属性でしかなく、取り敢えず誰かと恋愛させて男側に自己投影する事しか望んでいない。
「………熱い?」
ふと、脇腹に熱い感覚。
…いや、痛み?
「づっあぁ!?」
「ははははは!」
その笑っている男の手を見ると血が付いたナイフが。
少し怖いが、自分の脇腹をちらりと見る。
…やっぱりか。
「お前、とうとうやらかしたな、純愛を求める会も、これで終わりってわけだ。」
「ふん、俺が牢屋にぶち込まれたところで純愛は消えん、純愛を求めるのは人類の本能なのだからな。」
相変わらず訳のわからない事を言っている。
…普通の人なら、暗殺者メイドを求める会なんてのも訳のわからない事かもしれないが。
「ところで、今回の話見たか?」
「…あぁ、展開がわかったから途中で見るのやめたがな。」
「そいつは残念、俺がなんとかぶち込ませた展開なのにな。」
「なに…お前まさか原作の小説の作者か?」
「違うぜ、大方お前のとこの副会長も考えた事だ…」
あいつが考えた事?
「おかしいと思わねぇか?アニメの話数は限られてるのに、わざわざあの話を放送したことが。」
「…まさか、お前が。」
「ギャハハハハハ!」
「お前ええぇぇぇぇぇっっ!」
このクソ野郎に飛びかかりたいのに、体に力が入らない。
俺は、こんなところで死ぬのか?
「会長!」
「く…来るな…」
「おー、副会長さんじゃねぇか、久しぶりだな。」
「お前は!純愛を求める会の会長!」
「…逃げろ…殺されるぞ。」
「何…?この会長の傷は、お前が!」
「そんな事すぐにわかるだろ?この血濡れのナイフを見れば。」
クソ野郎はゲラゲラ笑いながら何処かに行った。
副会長は奴を追うのではなく、俺の手当てをしようとしている。
「無駄だ…急所を刺された…大量に出血……が…」
「会長!気を確かに!」
「…俺が…死ん、だら…はぁ…お前が、会長、だ。」
「そんな…俺なんかに…」
「はぁ…はぁ……お前なら、やれる……」
「会長?」
「………」
「会長!……会長おおおおおおお!
ウワアアアアアアアアアアアアアアア!」